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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-463 大商会時代の前日譚〜ペドレリーア大陸より、二つの使節団の来訪〜 scene.1

<三人称全知視点>


 そして、ペドレリーア大陸の港湾国セントエルモとシーワスプ商会によるベーシックヘイム大陸への使節団派遣当日となった。

 港湾国セントエルモの王城とシーワスプ商会の本店にそれぞれビオラ商会合同会社警備部門警備企画課諜報工作局――諜報部隊フルール・ド・アンブラルの諜報員が一名派遣され、彼女達の手によって両組織の使節団はベーシックヘイム大陸へと転移した。


 それぞれの転移先はビオラ商会合同会社が保有するブライトネス王国の拠点の一つだった。

 伯爵位の貴族が保有するのに適した広さの屋敷へと空間魔法で転移した両組織の使節団は、その屋敷で顔を合わせることとなった。


「港湾国セントエルモの使節団の皆様と、シーワスプ商会の使節団の皆様ですね。この度はベーシックヘイム大陸に足をお運びくださりありがとうございます。本日よりペドレリーア大陸とベーシックヘイム大陸間の移動をはじめ、使節団に纏わる様々なサポートをさせて頂くことになりましたビオラ商会合同会社の職員を代表して、私、フィエーロがご挨拶をさせて頂きます」


「シーワスプ商会の商会長を務めるキロネックス・シーワスプです。この度はよろしくお願いします」


「港湾国セントエルモの使節団先発隊隊長を務めることとなりました、宰相補佐ヴォルノ・エクルスヴァートと申します」


「お二方、ご丁寧にありがとうございます。では、まず我々の方からお伝えしなければならないことをお話しさせて頂きますね。まず、シーワスプ商会の商会の皆様ですが、ビオラ商会合同会社の視察を希望とお聞きしております。アネモネ会長からも許可は出ており、社内でも通達がなされていますので基本的にビオラ商会合同会社に関するところであればアポイントなく訪問することが可能です。また、アネモネ会長がブライトネス王家御用達のマルゲッタ商会、老舗のジリル商会、亜人種族を中心に広域の物流を担っているル・シアン商会――現在、三大商会として数えられる有力商会にも話は通しているので、見学は可能だと思います。ただし、こちらは事前のアポイントメントが必要となりますので、よろしくお願いします」


「アネモネ会長に気を遣わせてしまいましたな。……ご厚意をありがたく受け取り、訪問させて頂きます。アネモネ会長には、是非、お礼をお伝えください」


「承知致しました。港湾国セントエルモの使節団については、以前の訪問の際にオルゴーゥン魔族王国とラングリス王国が受け入れを許可したようですね。こちらも、両国陛下より改めて使節団を受け入れる旨を言付かっております。また、ビオラ商会合同会社、ビオラ=マラキア商主国、クレセントムーン聖皇国の一社と二国も使節団を受け入れる準備ができております。残る多種族同盟加盟国にはアネモネ会長自ら報告はしましたが、許諾は得ておりませんので、交渉は各自で進めてください。これは、シーワスプ商会が追加で視察を希望する場合も同様となります」


「委細承知しました」


「シーワスプ商会も同様です。お心遣いありがとうございます」


「皆様、様々予定を立てているとは思いますが、本日から皆様がベーシックヘイム大陸でベースとするこのブライトネス王国の国王陛下に謁見して頂きたいと思います。ブライトネス王国内で視察を希望される場合はその場で許可を取ってくださいね」


 その後、与えられた屋敷の部屋に荷物を置いた二つの使節団はフィエーロの案内でブライトネス王国の王城へと向かった。



 既に使節団の訪問が伝えられていたこともあり、使節団の面々はすぐに謁見の間へと通された。

 謁見の間には玉座に座るラインヴェルドと王妃のカルナ、ヴェモンハルト、ルクシア、ヘンリー、ヴァンの四人の王子とアーネストの姿がある。ちなみに、ディランはアクアと共に逃走してこの場にはいない。


「まあ、別に公式の場でもないからな。気楽にしてくれて構わない」


「――ッ! 父上!」


 別の大陸から使節が来ると聞いて興味を示したからか、両国使節の謁見に参加したヘンリーから向けられる失望の視線を無視し、ラインヴェルドは平伏している両使節団の面々に楽にする許可を与えた。


「港湾国セントエルモの使節団の隊長を務めることになりました宰相補佐のヴォルノ・エクルスヴァートと申します」


「シーワスプ商会の商会長を務めております、キロネックス・シーワスプと申します」


「シーワスプ商会の方は会長自らか。良かったのか?」


「はい、シーワスプ商会の方は信頼できる部下に任せてきましたので」


「港湾国セントエルモの使節団は……まあ、他の大陸だし、順当な人選か。流石に王自らはなくても、宰相クラスは派遣すると思っていたが」


 事前に圓経由で受け取った使節団の構成員に関する情報は謁見の間にいる全員に共有されている。

 ヘンリーは港湾国セントエルモの使節団の人選をブライトネス王国を軽んじた故と判断したらしい。「圓も乙女ゲーム内で随一の頭脳派な天才完璧腹黒王子だって言っていたし、実際にかなり賢い奴の筈なんだけど、なんで最近こうも莫迦な思考回路になっているんだろう」とラインヴェルドもそんなヘンリーに首を傾げていた。ラインヴェルドに心配される時点で既に色々と末期である。


「勿論、今回の使節団は多種族同盟の皆様を軽んじた訳ではありません。そもそも、我々は正式な使節ではなく、言わば先発隊なのです。多種族同盟はいくつもの国の集合体、見所も沢山あります。それを全て一つの使節団で見て回るのでは時間が圧倒的に足りません。そこで、我々は複数の隊に分かれて各国を巡り、そこで見聞きしたものをレポートに纏めて本国に提出することになりました。そこから、更に調べる必要のある点や疑問を持った点を洗い出し、その情報をもとに再度使節団を派遣することになります。その使節団には国王陛下や宰相閣下、ワイゼマル商会の商会長も参加することになります」


「まあ、確かに全ての国をしっかり見ようとなれば時間も掛かるしな。なかなか効率が良い方法だと俺は思うぜ。ブライトネス王国内の視察に関しては俺が許可する。後で、玉璽を押した許可証を渡すから上手く活用してくれ。……ああ、そうだった。キロネックス商会長、一つ聞いておきたいことがあったんだ。ビオラ商会合同会社の商会長にライバル宣言をしたって聞いたんだが、それは本当か?」


「えぇ、その通りでございます。確かに、そう宣言しました」


「その言葉に、偽りはないか?」


 フランクに接していたラインヴェルドの表情がその瞬間に真剣味を帯びた。


「ああ、すまんな。確かに俺とアネモネは親友だ。随分長い付き合いになる。俺が誰よりも信頼を置く人物だ」


「……国王陛下が最も信頼を置く友人だったのですね。ご気分を害されるのも当然でしょうな」


「いいや、そういうことじゃねぇよ。……その言葉に二言はないか、そう聞いているんだ。ビオラ商会合同会社ってのは、想像を遥かに超える巨大組織だ。キロネックスは鰯って魚を知っているか?」


「えぇ、勿論存じております」


「単体だと弱い魚だが、群れるとなかなかに厄介だ。強力な海の魔物すら撤退させてしまうこともあるらしい。群れる利点はいくつかあるが、さっきの例えは大きな生物に見せかけることができるという点だな。ビオラってのは、鰯の魚群みたいな組織だ。だが、鰯との違いはその魚一つ一つが鮫や鮪、強力な力を持つ魚ってことだ。優秀な才能を持ち、夢に向かって邁進する本物の天才や秀才達が集結した商会――だからこそ、あの商会は頭二つ以上抜きん出ているって訳だ。そして、それを統率するのが人望の厚く、天才と呼ぶに相応しいアネモネってことになる。本人は否定するかもしれないが、今のビオラはアネモネが一から作った組織だ。仮にそれを横から掠め取ろうとしても、誰もそんな奴については来てくれないだろう。……まあ、それは関係ない話だな。ビオラ商会合同会社の恐ろしさを知って、その言葉を撤回したいと思うようになるかもしれない。だが、それを俺は許すつもりはない。アネモネが、親友が、お前の言葉を嬉しがったんだ。だからこそ、使節団の受け入れを認めたし、俺達も親友の想いを汲んで受け入れた。それをどうか忘れないで欲しい」


 決してキロネックスは約束を違えるつもりは無かったのだが、ラインヴェルドのその言葉を聞いて、少しだけキロネックスは震えた。

 あの時選んだ道は間違っていたのかもしれないと、ふとそんな考えが頭を過ぎった。


「ブライトネス王国の第二王子のルクシアと申します。これから厳しくも険しい道を行くことになるキロネックス様に、私から気休めですがプレゼントを差し上げたいと思います。ビオラ商会合同会社はその気になれば万能にして全能の商会となることも可能でしょうが、会長の意向により強いところと弱いところが明確になっています。ビオラ商会合同会社が取り組んでいない点を攻めるのが、やはり良いのではないでしょうか? ビオラ商会合同会社が採用していない技術が、実はビオラ中央図書館に所蔵されている本に書かれているということもありますので、一度足を運ぶことをおすすめします。それと、技術面であればドワーフ族を頼るのが良いかもしれませんね」


「ああ、そうだった。キロネックス、これを持っていくといい。お前と同じ志を持ち、ずっと昔から準備を進めてきたお前の先輩みたいな奴が、つい先日、翠光エルフ国家連合ヴァンヤール州で店を開いた。一度挨拶をしておいた方が良いかもしれないなぁ」


 ルクシアとラインヴェルドからアドバイスとある人物の名刺を受け取ったキロネックスは、そのアドバイスと受け取った名刺の存在を頭の片隅に置きつつ、まずは予定通りビオラ商会合同会社の本社へと向かった。

 一方、ヴォルノ達港湾国セントエルモの使節団一行はラインヴェルドの許可を得て王城内を見て回った。


 それぞれの思いと目的を抱き、二つの使節団がいよいよ本格的に動き出す。果たして、彼らはこの視察を通して一体どのような答えを出すのか、それはまだ誰にも分からない。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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