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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-453 ファンデッド伯爵領にて〜ファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家の顔合わせ〜 scene.14

<一人称視点・アルマ=ファンデッド>


 中世ヨーロッパ風の異世界であるこの世界の結婚式も実は前世の結婚式とほとんど変わらない内容です。

 いえ、このユーニファイドという世界は複数のゲームが融合した世界なので、このブライトネス王国では、と言った方がいいのかもしれませんが。


 教会で新郎新婦が司祭の前に立ち、誓いの言葉を述べ、指輪の交換を行う。教会の力が強い中世ヨーロッパ風の異世界らしい特別なミサが行われる風習もありますし、より厳格に教えを守る地域では秘密主義を嫌って結婚式を教会の戸口で行う、結婚の証人である立会人が目の前の光景をよく記憶に留めておくために、互いに激しい平手打ちと拳骨を食らわせた……なんてかなり手荒いことをしていることもあるようですが、そうした地域は寧ろ稀だと言えます。

 教会での儀式が終われば、婚礼の祝宴の会場となる家へと移ります。貴族ともなれば、家の力を示す必要がありますから、当然、新郎新婦の家が総力を上げて祝宴を開きました。


 婚礼の祝宴は貴族家の手腕が問われる場面です。当然、これまで婚礼の祝宴の準備を代行に任せるということはありませんでした。

 今回のビオラ商会合同会社による結婚式準備の代行は異例中の異例ということになりますが、今後はこういった商会の協力を仰ぐというケースが増えていきそうですね。


 さて、ファビエンヌ様から受け取った小冊子の資料には結婚式の大まかな流れと、それに付随してどういったものが必要になるのか、費用はどれくらいになるのかといったことが事細かく書かれていました。ビオラ商会合同会社が用意できる最上のものから、明らかに下級貴族を対象としたもの、将来、現在は質素な結婚式を挙げている平民でも手が届きそうな金額に抑えられたものに至るまで。

 ファビエンヌ様曰く、この小冊子は圓様とファビエンヌ様達ブライダル部門のメンバーとなる皆様で会議を重ねて作ったものだとか。ドレスや食事といった他部門に跨るものに関しても部門統括長級の方を会議に招いて交渉し、バラバラに依頼するよりもややリーズナブルな値段で抑えることができたようですが……蛍光ペンで赤線が引いてある明らかに今回の結婚式で使用すると思われるパックプラン、本当にリーズナブルと言っていいのでしょうか!? まあ、明らかに最上級のプランですからね、これだけの費用になるのは当然といえば当然なのですが。


「今、お配りした小冊子のプランは必要と思われるものから、ボクの前世で定番であったものに至るまでとりあえず全て詰め込んだものになります。必要でないと判断したものは外すこともできますので、実際の金額はもっと安くなるかと」


「ムービーを流すとか、ケーキ入刀とか聞いたことがねぇものも混ざっているなぁ」


「前世における一般的な結婚式の要素も混ぜましたからねぇ。基本的に貴族の婚礼の祝宴となれば、新郎新婦の家族が招待客をもてなし、緩やかに食事をしたり、踊ったり、挨拶をしたりという流れですが、お望みとあればボクやアルマ先輩に馴染み深い形でも可能です。当社は様々なご希望に対応致しますので」


「ほう、料理は『Rinnaroze』の料理長殿が担当してくださるのか」


「そちらもご希望があれば、ビオラ商会合同会社と取引のある他の料理店やビオラ商会合同会社の料理店に変更することもできますし、他のものと同様、新郎新婦のご親族の方々の方で手配したいということであれば削ることも可能です。ただし、今回はラインヴェルド陛下より強いご希望があり、僭越ながら料理長はボクが、副料理長にペチカさんが付くという形になりますのでご承知おきください」


 『Rinnaroze』は大衆から貴族まで幅広い階級に人気のあるお店です。料理長のペチカ様は身分によって優遇することはないため、敷居そのものは他の店に比べて低いと言えます。

 人気店故に連日長蛇の列になりますが、その行列にさえ耐え切ればリーズナブルな値段でラインヴェルド国王陛下から直接スカウトを受けるような王都随一の料理人の料理を食べられるのですから、並ぶのに見合った以上のものが得られると評判ですね。


 店長兼料理長のペチカ様は圓様の弟子で(本人は否定していますが)、あの方の精神を受け継いだのか元々の気質なのか、かなりストイックなお方だそうです。ストイックといっても美食を追求する姿勢であって、他の料理人達に対しては他の有名店のシェフとは比較にならないほど優しいと聞いたことがあります。

 誰よりも自分に厳しいペチカ様は常に厨房に立ち続け、ほとんど店を休むことがないと言われています。そのペチカ様を結婚式のために一日お借りすることができるのです。それだけでも、この結婚式のプランには価値があると言えるでしょう。


 ただ、そこに圓様が加わり、圓様が料理長として腕を振るうとなるとまた話が変わってきます。

 ペチカ様は最年少料理人でありながら既に王国料理長級の腕の持ち主、この時点で将来有望な存在ではありますが、そんなペチカ様が勝てない唯一の料理人であり目標が圓様です。基本的に『クラブ・アスセーナ』でしか腕を振るわないあの方が自ら腕を振るう――その幸運には例え王族と雖も預かることは難しいでしょう。


 ……これは、凄いことになりそうですね。


「流石に二人だけってことはないだろう? 他の料理人はどうするんだ?」


「ペチカさんの愛弟子の精鋭料理人達をお借りしようかと。結婚式のパックの料理のプラン自体が『Rinnaroze』の出張版みたいなものですからねぇ。今回はボクが入るという変則的な形になると思いますが」


「今回の件、一応俺が大公家を興しているとはいえ王族っていう扱いなんだよなァ。兄上も何か言ってきそうな気がするんだ。……あのクソ兄上が絡めるところがあるとすれば、やっぱり料理だろ?」


「今回の件はファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家だけの話ではありません。ブライトネス王家としても何かしら助力はしたいという話になることは想像がついているよ。……まあ、あるとすればドレスと料理、後は宝飾品かな? 王宮専属の料理長と大食堂の料理長、この二人を貸し出すっていう提案は出てきそうな気がしているよ。それと、宝飾品は王太后様や王妃様が動きそうなんだよねぇ。まあ、その辺りはドレス関連と共に要相談で。ドレスに関しても服飾関連が得意なルーセント伯爵家、凄腕のお針子の腕を持つ離宮筆頭侍女様を有する王太后様、色々と思惑はありそうだからねぇ。恐らく役割分担になると思うけど、その辺りは相談して上手く調整していきたいねぇ」


「お気遣い、感謝するよ。確かにあのお方もご子息の晴れ舞台だ。色々とお考えがあるだろう。……今夜の晩餐の時にでもじっくりと議論をするのが良いだろうな」


 じっくりと議論……つまり、そういうことですよね。やはり、圓様の仰る特別ゲストとは王太后様のことですか。

 しかし、結婚式の費用以外にもルーセント伯爵家やブライトネス王家は別の形で負担をしてくださいます。……それなのに、ファンデッド伯爵家は何も出せそうにないのですよね。大した特産品もありませんし、強いていうなら温泉が出るくらいですし。


「アルマ、そう気を落とすなって。無理をするような話ではないからな」


「メレク様、気を落とさないでくださいませ。お兄様は折角の得意分野を活かせる機会を十分に活かしたいだけですから」


 バルトロメオもオルタンス嬢も気遣ってくださいますが、やはり我々だけ何も出せないというのは辛いところがあります。無理をしても焼石に水ですからね。

 お父様もお義母様もメレクもどんよりムードになっています。


 ……何かこの状況を打開できるような特産品(・・・)があれば良いのですが。


「宝飾品やドレスの費用、ヘアメイク、ブライダルエステ、ウェディングケーキ、引出物、プチギフト、装花、テーブルコーディネート、写真や映像、BGMに関する費用、その他諸々の費用はパンフレットを参照して頂くとして、最後に神父役に関してですねぇ。一応、既に黒百合聖女神聖法神聖教会の中庸枢軸教会の総法導皇にして大聖女マリシア=ミッドナイトサン、つまり白夜にも話はしているので、特に希望が無ければ白夜が対応します。ただ、ご希望があれば黒百合聖女神聖法神聖教会の各宗派の四天法導皇やフォティゾ大教会の最高司教様、オルレアン神教会の方々などにもお願いすることは可能です」


 改めて、圓様の人脈は凄さを実感します

 しかし、私達はフォティゾ大教会の信徒でもオルレアン神教会の信徒でもありませんので、わざわざこの二つを希望する理由はありません。

 黒百合聖女神聖法神聖教会一択ですが、そうなるとやはり白夜様でしょうか。癖の強く最近はネガティブなイメージが強くなっている各種教会の方々よりも外面はまず間違いなく真面な方ですし。……裏の顔は諜報員のトップだそうですから、ベクトルが違うだけで恐ろしい方に変わりはないのですけどねぇ。


「ああ、それとも白夜で不服ならボクがリーリエの姿で神父役を務めよっか?」


「……うーん、それは恐れ多過ぎるから少し自重しようぜ、親友」


 発言したのはバルトロメオでしたが、ほぼ間違いなく圓様を除く部屋の全員の心が一致した瞬間だったと思います。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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