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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-448 ファンデッド伯爵領にて〜ファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家の顔合わせ〜 scene.9

<一人称視点・アルマ=ファンデッド>


 出端を挫くようなトラブルもありましたが、その後は特にトラブルもなくサロンまで移動することができました。

 この日のためにメレクが自ら花を選りすぐり、廊下も使用人達の手によってピカピカに磨かれ、応対する使用人達も基礎をきっちり学び直したことで背筋を綺麗に伸ばして美しい姿勢で応対しています。

 今のファンデッド家は私の目から見ても、どのようなお客様を迎えるにしたって十分な準備が調っていると自信を持って言えますよ。


 サロンに集まった私達がそれぞれ席につくと予定通り侍女達の手でお茶がそれぞれの前に配膳されます。

 侍女が仕事を終えて部屋を後にするのを待っていたのか、圓様が口火を切りました。


「本日はファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家の顔合わせの場です。双方お話ししたいことがあると思いますが、まずはボクに発言の機会を頂けないでしょうか?」


 メレクとクィレル様からアイコンタクトを受けた圓様は真剣な表情で頭を下げました。


「まずは、この場を借りてファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家の皆様に謝罪をさせて頂きたいと思います。……ボクはメレク様とオルタンス様の仲が良好で、アルマ先輩とバルトロメオ殿下もようやく互いを想う気持ちに気づいたということで、パーバスディーク侯爵家の起こした例の事件の終結したタイミングでダブル結婚式を提案しました。しかし、今思えば急ぎ過ぎていたのかもしれません。もっと恋人として仲を進展させる時間が必要だったと思っている方もいらっしゃるのではないかと思います。皆様の気持ちをしっかりと斟酌せずに話を進めたこと、本当に申し訳なく思っております」


「まあ、でもそれが圓にとって一番良い道だと判断しての提案だったんだろ? 俺はあの時の提案、嬉しかったぜ。……まあ、結婚式代を全額お前が出すって話は流石にやめて欲しいと思ったけどなぁ。俺達はもう既に十分、お前から色々なもらっているんだ」


「……私も圓様のお考えに異論はありませんでした。私とメレクのことを考えてあの時の提案をしてくださったことは分かっていましたから」


「ルーセント伯爵家としても良い話だと思っていたよ。オルタンスもきっと喜んでくれると思っていたからね」


「お兄様の言う通りですわ。私も早くメレク様と結婚したいと思っていましたもの」


「――オルタンス嬢!」


 確かに圓様が仰る通り性急なところはあったかもしれません。しかし、婚約を結ぶのが大幅に早まっただけであって、婚約から結婚までの期間は基本を踏襲していますから、別にルールに反している訳ではありません。

 私も圓様の提案は嬉しかったです。……まあ、お金云々の話に関しては私も流石にそこまでして頂くのは、という気持ちでしたが。


「それともう一点謝罪があります。当初、ボクは結婚式の費用を全額負担すると言っておりました。実際、今もアルマ先輩、バルトロメオ殿下、メレク様、オルタンス様への祝福の意味を込めて流石にそれくらいのことはさせて頂きたいとは思っているのですが……皆様の結婚式ですから、やはり自分達の子供達の新たな門出を祝福したいというご家族の気持ちもあるでしょう。そこで、ファンデッド伯爵家、ルーセント伯爵家、アグレアスブリージョ大公家から均等に頂戴し、ラインヴェルド陛下のポケットマネーからも拝借し、残る費用は全てボクが持つという形を提案させて頂きたいと思います。これがボクにできる最大の譲歩です」


「まあ、圓の気持ちもあるしなぁ。ちょっぴり不服だが、最大級譲歩してくれたんだろう? だったら、それでいいぜ。……しかし、よく兄上が払ってくれるって言ってくれたなぁ」


「一緒に馬鹿やってくれる可愛い弟の門出なんだから、金くらい出せって蹴り飛ばしたら言質を取れたよ。まあ、どちらにしろあの陛下もバルトロメオ殿下のことが好きだからねぇ、どさくさに紛れて払うつもりだったんじゃないかな?」


「ファンデッド伯爵家としても異論はありません」


「ルーセント伯爵家としても、圓様の意見に反論はない。……問題は費用だな」


「そもそも、まだどれくらい掛かるか算出できていませんからねぇ。皆様には申し訳ないのですが、これから私情で忙しくなりますので、今回の顔合わせのタイミングでダブル結婚式の要望を全て聞き取ってプランを決めてしまいたいなぁ、と思っています。皆様、ご協力お願いします」


 結婚式についての話し合いはまた後ほど、まずは顔合わせです。

 気を遣ってくださったのか、圓様は控えていたジェルメーヌさんを伴ってサロンを後にしました。それに続いてバルトロメオが退出しようとしましたが、圓様に止められました。圓様はこの顔合わせをファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家の顔合わせではなく、ファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家、バルトロメオの三者による顔合わせだとお考えなのでしょう。


「さて、今回は顔合わせという名目だが、メレク殿とオルタンスの婚約、バルトロとアルマ嬢は既に結ばれており、文字通り両家の顔合わせという形になった。……事後の確認とはなってしまったが、この場にこの婚約に対して反対の意見を持つ者はいるだろうか? 私としては、双方どちらもこの婚約に反対する者はいないと思っているのだが? ……そちらはどうかな? ファンディッド子爵」


「もっ、勿論ですとも。我が家からすればオルタンス嬢はメレクには勿体ないほどのご令嬢です」


「まあっ、そのようなことはございませんわ!」


「こら、オルタンス」


 お茶を楽しむ中、とうとう本題を切り出したクィレル様にお父様が応えたところで、オルタンス嬢が声を上げました。

 当主同士の会話に口を挟むのは淑女の作法としては本来マナー違反ですが、クィレル様とはあまり強く窘められる様子はありません。それどころか悪戯っ子のような笑みを浮かべておいでです。……きっと楽しんでおられるのですね。


 その視線がメレクに向けられることに気づいて、私は呆れつつもオルタンス嬢のお気持ちが聞けるならばこれは良いことだと黙っておくことにしました。

 隣に座るバルトロメオもクィレル様に一瞥を与えていたので、きっと気づいているのでしょうね。


 彼女は私達のそんな思惑に気が付くことなく、満面の笑みでメレクを見つめています。


「メレク様はとてもお優しくて、私を変わり者として扱わずきちんとお話を聞いてくださる良い方ですわ。それに領民のことを常に第一に考えられておいでですし、ご家族のことも大切に思われていて、きっとこの方とならば幸せな家庭を築けると私は思いましたの。私の方こそ、メレク様は勿体ないお方なのですわ!」


「オ、オルタンス様! えっ、ええと……どうか、その、落ち着いてください」


 あらあら、ここで彼女の気持ちを受け止めて愛の言葉の一つも返せれば良いのでしょうが、メレクは真っ赤な顔で俯いてしまいましたね。

 この弟の反応に私としては親近感を覚えずにはいられません。……バルトロメオとの事を思い出した訳ではないですよ。


 そんな二人のやり取りをクィレル様とバルトロメオは微笑ましそうに見つめています。


「妹はこの通り跳ねっ返りなところがあってね、驚かせて申し訳ない」


「い、いえいえ。意見をきちんと述べられる、素敵な妹君ですな」


「ありがとうございます、ファンデッド先代伯爵様! これからこの家に嫁ぐ者として、どうかご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします!」


「は、はい」


 オルタンス様とは社交界にデビューしてから数回ほど参加したお茶会で偶然お会いして少し言葉を交わした程度の仲ですが、勝ち気というよりは、真っすぐでとても素直そうな方ですね。

 私の知る『スターチス・レコード』に登場するオルタンス嬢はどこか張り詰めた雰囲気があって、兄を尊敬するあまりにコンプレックスを抱いているという設定だったと思うのですが、目の前の彼女からは微塵も感じられません。

 ……やはり、元となったゲームが私の知るものとバージョンが違うからでしょうか?


 圓様曰く、『スターチス・レコード』にオルタンス嬢は登場しないそうです。私が知る『スターチス・レコード』には主人公マリエッタを助けるいわゆるお助けキャラとして、図書委員のオルタンスが登場します。ですが、この世界のオルタンス嬢は既に学園を卒業して外交官として働いています。

 詳しいことは分かりませんし、そういった考察は圓様の領分なので素人はここまでにしておきますが、一先ず言えるのは圓様と私が暮らしていた世界は所謂並行世界と呼ばれる関係にあるのでしょう。大筋の内容は一致していますから、実はそれほど離れた世界ではないのかもしれません。


「アグレアスブリージョ大公家の意見に関しては俺が当主だしなぁ。ということで、ブライトネス王家の意向はってことになるが、保護者役の兄上があれだろ? まあ、こうなることは見越していたから、母上に一筆書いてもらってきた。ってことで、おっさん、俺の母上から手紙だ」


「おっ、王太后様から!?」


 ……あの、バルトロメオ。王太后様が書かれた手紙をそんなぞんざいに放り投げて本当に大丈夫なのですか!?

 バルトロメオから手紙を受け取ったお父様が衝撃で気絶し掛かりそうになりながら封を切って手紙を開けました。


「まあ、中身は一言で言えば婚約を祝福するって内容だから特に問題はないぜ。なぁ、おっさん」


「……バルトロ、おっさん呼びはやめた方が良い」


 衝撃のあまりお父様は完全に固まってしまいました。


「当家も……勿論、私も姉上と王弟殿下の婚約を祝福します。異論はありません」


 代わりにメレクが引き継いでくれました。……娘としてはお父様にしっかりと言ってもらいたかったですが、メレクが祝福の言葉を言ってくれたのもとても嬉しかったです。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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