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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-447 ファンデッド伯爵領にて〜ファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家の顔合わせ〜 scene.8

<一人称視点・アルマ=ファンデッド>


 しかしそんな私達一家を気にするでもなく、クィレル様は上機嫌です。


「紹介しよう、妻のエレアノールだ」


「本日はお招きありがとうございます。紹介に与りましたエレアノールですわ」


「よっ、ようこそファンデッド領へ!」


「ルーセント領からの長旅でお疲れでございましょう。遠いところありがとうございます」


 夫人同士にっこりと微笑みあっている姿は大変穏やかで良いですが……その背後ではお父様がお義母様に腕を抓られていました。勿論、即座に見なかったことにして目を逸らしましたよ。

 ちなみに、バルトロメオもお父様の残念な姿を一瞥したようですが、すぐに見なかったことにして目を逸らしたようです。……しかし、バルトロメオ、少しキョロキョロとし過ぎじゃないですか?


 まあ、気持ちは分かります。ルーセント伯爵夫人が馬車から降り、残るオルタンス様が馬車から降りれば主要人物が一堂に会することになりますからね。あの目立ちたがりな陛下のことです、きっとその瞬間が来るのを虎視眈々と狙っていることでしょう。


 ……しかし、本当にお父様も懲りないですよね。大公妃殿下の件、結局まだあれも完全に許された訳ではないのだと思います。失った信用はなかなか取り戻せないものなのです。

 そんなお父様の様子を冷めた目で見ていたのは私だけでは無かったようで、メレクも同じような視線をお父様に向けていたのですが、ハッとした様子を見せて馬車の方へ視線を向けました。


「それから本日の主役でもある妹のオルタンスだ。少々跳ねっ返りだがメレク殿とは気が合うようでね。とても大変ありがたいことだ」


 馬車から降りてきた少女の姿に、一瞬にしてメレクは釘付けになりました。

 その眼差しはまさに、恋する少年といったものです。


 一方のオルタンス嬢もメレクの姿を見てはにかみ笑いをしています。なんでしょう、この可愛らしい生き物達は! 初々しくて仲睦まじい可愛らしいカップルですね!!

 クィレル様は茶色みがかった金髪の持ち主ですが、オルタンス嬢はクィレル様より更に茶髪に近い美しい金髪の少女です。一見お二人は似ていないかなとも思いましたが、こうして実際に並ぶととても容姿が似ていますね。特に目の形などが。

 そして、本当に美形揃いですね。周りの空気すら輝いて見えるのは気のせいではないような気がしてきました。


「お初にお目にかかります、ファンデッド先代伯爵様。ルーセント伯爵クィレルの妹、オルタンスにございます。本日はお時間を頂き、ありがとうございます」


「……ご丁寧な挨拶、痛み入ります。お目にかかれるこの日を妻共々楽しみにしておりました」


 落ち着いた声音に淀みない挨拶、そして美しいカーテシー。

 どこに出しても恥ずかしくない完璧な淑女としての振る舞いを見せたオルタンス嬢に、お父様はちょっと……というか、かなり緊張した様子で歓迎の言葉を述べました。


「さあ、遠路遥々お越し頂いたのです。何もない我が家ですが、茶と茶菓子を用意しておりますので中へお入りください」


 えぇ、ここまでは順調過ぎるくらい順調でした。多少お父様の挙動が不審だったりと完璧とは言い難い場面もありましたが、本当に未だかつてないくらい順調にことが運んでいたんですよ!

 なのに、何故このタイミングで全てを台無しにするような真似をなさるのですか!!


 突如飛来した見覚えのある短剣が地面に突き刺さると同時に金色の光を放ちます。

 いつの間にかバルトロメオは私を庇うように前に立ち、剣の鞘に手を掛けました。


 クィレル様も同様にルーセント夫人とオルタンス嬢を守るように一歩前に踏み出し、メレクもお父様とお義母様を庇うように一歩前に踏み出しつつ、オルタンス嬢の方に一瞥を与えました。

 何かあれば即座にオルタンス嬢の元に駆けつけるというメレクの信念が瞳から感じ取れました。


「役者も揃ったみたいだな! 久しぶりだな、ルーセント伯爵夫人。それと、こうして話すのは初めてだったか? オルタンス嬢。改めて、ラインヴェルドだ。一応、ブライトネス王国の国王をやっている。よろしくな!」


「よろしくな、じゃねぇだろ、兄上! 普通に登場してくれよ! 兄上には何も期待してねぇけど、せめて俺達のことを祝福する気持ちがあるなら大人しくしておいてくれよ、なぁ!」


「バルトロメオ、俺の座右の銘を知っているか? 『俺が良ければ全て良し』だ!」


「それ、兄上だけじゃなくて隣国のオルパタータダ陛下もだろ。……ああ、今更ながらレジーナ様の気持ちが分かるようになってきたぜ。こんな思いをしてきたんだろうな」


「さて、格好良く登場するまでは決めていたがそこから先のプランがねぇ。どうすりゃクソ面白い盤面に……おっと」


 ファンデッド伯爵家の二階の一室が一瞬煌めいたかと思うとその部屋からレーザービームのようなものが放たれてラインヴェルド陛下に襲い掛かりました! ――もう、意味が分かりません!!


「――回避成功だぜ! 俺の勘は正しかったみてぇだな!」


「そうみたいだねぇ。……しかし、そのニヤついた顔は本当に腹が立つよ。折角、いい雰囲気で進行していたというのに、いきなり冷や水ぶっ掛けるとかさぁ。ラインヴェルド陛下、君は少し自分の愉しさを優先し過ぎじゃないかな? ……で、勝ったつもりでいるの?」


「――ッ!? これは、重力魔法!? やりやがったな!!」


 さっきの光は、文字通り身体が光と化した圓様だったようで、光条からローザ様の姿へと戻った圓様はラインヴェルド陛下のすぐ間近に現れました。

 ラインヴェルド陛下は即座に剣を抜き払ってニヤリと笑いましたが、それから数秒も経たないうちにその勝ち誇った笑みが歪みます。


「ちっ、この程度で俺を止められると思っているのか!!」


「力の使い所を間違っているよ。はい、おまけの超能力! でもって――」


 完全にラインヴェルド陛下の身体の自由を奪った圓様は容赦なく足払いを放ってラインヴェルド陛下を転ばせました。

 更にラインヴェルド陛下を地面に押し付けようとする力が強まる中、圓様は容赦なくラインヴェルド陛下の頭にヒールを踵部分を突き刺してグリグリと踏みつけます。……うわぁ、痛そう……どころの騒ぎではありませんね。本人達にとっては戯れあっているだけなのかもしれませんが、お義母様、ルーセント伯爵夫人、オルタンス嬢は顔を真っ青にしていますし、お父様に至っては魂を飛ばして……って、お義母様達よりもメンタル弱いってどういうことですか!?


「……観念したかい?」


「ああ、痛ぇ! 分かったよ、観念したよ!!」


「じゃあ、今後は心を入れ替えて生きると誓えるかな?」


「んな訳ねぇだろ! ――って、痛ぇ!!!」


 満面の笑みに青筋を浮かべ、圓様はドレスのスカートの中がラインヴェルド陛下に見えてしまっているのも全く気にすることなく容赦のない踵グリグリを続けます。……何故、この方は学習しないのでしょうか。

 結局、ラインヴェルド陛下は断固として譲らず、諦めた圓様がラインヴェルド陛下を解放しました。……もうこの人の根性、どうなっているのでしょう?


「皆様、大変お見苦しいお姿を見せてしまいました。……特に、本日はファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家の顔合わせの日。この素晴らしい日を楽しみにしていた皆様、特にメレク様、オルタンス様、アルマ先輩には大変ご迷惑をお掛けしました」


「本当に、そうだぜ!」


「ラインヴェルド、主に君のせいだよ」


 すっかり雰囲気に呑まれてしまったのでしょう。

 ルーセント夫人もオルタンス嬢も陛下の挨拶に応えられないほど困惑しています。


 お父様も頼りなく、メレクにもまだこの状況を打破する力はありません。

 残されたクィレル様とバルトロメオがさて、どうしようかと頭を働かせているようです。


「皆様、とりあえず一度屋敷の方に入りませんか? この場で立ち話という訳にもいきませんし」


 とにかく、そのまま玄関先で立ち話という訳にもいきませんし、まずは屋敷のサロンに移動して仕切り直そうと私は皆様に提案しました。……本来は、ルーセント様やお父様、メレクが提案するべきところですが、致し方ありません。


「流石にこれ以上皆様をお待たせするのは申し訳ないのですが、もう少しだけお時間を頂けないでしょうか? ……さて、ラインヴェルド君、お仕事の時間だよ」


「ん? 仕事? もしかして、お前はもう王城に帰れ……ってことか?」


「えっ……帰りたいの?」


「いやいやいやいや、そんなつもりはねぇよ! ……仕事っていうのはもしかして――」


「君の得意分野だよ。――メレク伯爵様、つい先程旧ファンデッド子爵領内の辺境に迷宮が出現したと全迷宮統括者ギアマスター・リーダーより連絡を受けました」


「――め、迷宮ですか!?」


 メレクもお父様もお義母様も圓様の話を聞いて一気に顔が青褪めました。かくいう私も間近に急に危機が迫ったと知らされて少し気が動転しています。


「ラインヴェルド陛下はバルトロメオ殿下とアルマ先輩の仲が更に睦まじくなるように兄としてできることをしたい……というもっともらしい理由をつけて同行しましたが、結局のところはただ暴れたいだけです。きっと、今回の旅に同行することで何か面白いトラブルが起こることを期待していたのでしょう。ということで、メレク伯爵様かロウズ先代伯爵様の許可さえ頂ければ、速やかにラインヴェルド陛下を迷宮に派遣致しますが、いかがなされますか?」


「し、しかし、国王陛下をそのような危険な場所に行かせる訳には――」


「ロウズ様のご心配はもっともです。……実力的には不要ですが、クレールとデルフィーナを護衛としてつけるつもりでいます」


「護衛? ……監視の間違いじゃねぇか?」


「勿論、クレールとデルフィーナに手渡す宝飾品を通して、映像は全て王太后様と王妃殿下の元に送られますのでそのつもりで。……まあ、もう既にスリーアウトチェンジでお釣りが来るレベルだし、これ以上罪を重ねてもあんまり変わらないと思うよ。それと、ビオラ特殊科学部隊に連絡を取って一人派遣してもらえることになった。ルイーズさんも現地で護衛に加わるから問題はないと思うけど」


「……ファンデッド伯爵領の領軍は自警団に毛が生えた程度の戦力ですから、世界最強クラスの国王陛下の助力を得られるのはとても嬉しいことです。……お願い致します、どうかファンデッド伯爵領を救ってください! 国王陛下!」


「おっ、おおう、なんか真面目な顔でメレクに言われると俺が悪いことをしているような気になるぜ。……ビオラ特殊科学部隊を派遣するってことは、そういうことなんだよな?」


「ああ、そっちは陛下へのご褒美だよ。迷宮統括者(ギア・マスター)との戦いは許可できないけど、代わりに君の望む強い相手と戦えるように手配しておいたよ。アイテムも持たせたから、思う存分暴れるといいさ」


 その後、ラインヴェルド陛下はクレールさんとデルフィーナさんを伴って迷宮へと向かいました。

 私達はラインヴェルド陛下達を見送った後、予定通り事前に準備しておいたサロンへと向かいます。……ラインヴェルド陛下も楽しみを見つけてファンデッド伯爵邸を離れましたし、流石にもうトラブルは起きないですよね?

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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