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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-442 ファンデッド伯爵領にて〜ファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家の顔合わせ〜 scene.3

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン・レインフォール>


 ファンデッド伯爵家のメイドに無理を言って貸してもらった一室を即席の茶会会場に仕立て上げ、手早く紅茶とお茶菓子を用意する。

 「E.DEVISE」でアルマ達を見守っていると、ラインヴェルドからジト目を向けられた。


「……お前、アルマ達のことを観察しているんだろ?」


「なんでバレた!?」


「いや、バレるだろ? なっ、バルトロメオ」


「まあ、この状況で眼鏡かけて上の空になっているとしたらそれしかないよな」


「……失敬な。君達が不穏な動きをしないか警戒くらいはしているよ」


「親友、もう少し俺を信用してくれてもいいと思うんだけどなぁ」


「普段の行いを振り返り給え、ラインヴェルド君」


「で……アルマはどんな感じなんだ」


「過保護だねぇ、バルトロメオ殿下。やっぱり恋人のことは気になるか」


「過保護はお前の方だろ、圓」


「……バルトロメオ殿下に言われるならともかく、お前に言われる筋合いはないよ、ラインヴェルド陛下。……正直、見ていて焦ったい。いざラウンジに行ってもすぐに会話はなく、互いに緊張して、相手が先に口を開くのを期待して……ロウズさんとアルマ先輩、二人ともどれだけ不器用なんだって突っ込みたくもなった。メレクさんとフランさんも帰ってきても、それは変わらない。四人が四人とも不器用に言葉を交わす姿はどこか微笑ましくもあるし、焦ったさも感じるものだけど、当の本人達にとってはきっとこれが家族団欒なんだと思う。空中分解し掛けていたファンデッド家も、ようやくここまで来た。……感慨深いよ」


「お前は何目線で見ているだよ?」


「さぁねぇ。……アルマさんは職場でできた繋がりを、ジェルメーヌさんという掛け替えのない相棒や、自分のことを慕ってくれる後輩達のことを家族に話しているみたいだ。これってかなりの進歩じゃないかな? 父からも義母からも否定的な目を向けられた侍女の仕事を、堂々と天職だって言えるようになったんだから。……まあ、アルマ先輩がそう感じるようになったのも偏にバルトロメオ殿下のおかげみたいだけどねぇ」


「ん? 俺か?」


「アルマ先輩は転生者で前世の記憶があった。家は確かに歪ではあったものの、継母から虐められることもなく、それなりの幸せを享受できていたんじゃないかな? でも、継母から向けられるさっさと良縁を見つけて嫁いでいって欲しいという明け透けな感情に気がつけないほど鈍感では無かったし、当初はその気持ちに応えるつもりではいたものの、やっぱりどこか何かが違うと感じていたところはあったのだと思う。……アルマ先輩にとっての転機は行儀見習いだったんじゃないかな? 侍女のお仕着せに袖を通し、彼女はしっくりくると感じたんだと思う。そして、最初に配属された内宮で行儀見習いの期間を終え、そのまま侍女に就職――その後、能力と勤務態度が認められて王子宮へと異動した。しかし、王女宮とは違い、王子宮は権謀術数が渦巻く蠱毒の如き環境だからねぇ。レイン先輩のように真面目な侍女もいるけど、大半は王子のお手つきを狙う肉食女子。それに、四人の王子をそれぞれ担ぎ上げて王に付けようとする派閥争いの場でもある。仕事が楽しいというのは確かにあったと思うけど、一方で貴族令嬢として生まれたという現実から目を逸らしていた面もあったのだと思う。……かつての彼女には侍女を続けるためのプラスの理由が無かったんじゃないかな? でも、兄貴分のようにアルマ先輩を気にかけるバルトロメオ王弟殿下や、アルマ先輩の実力を見抜き、彼女を信頼したレイン先輩の存在が少しずつ意識を変えていった。王子宮で侍女として働くのが楽しいと、そう彼女が自信を持って言えるようになったのは君達の存在が大きいと思う。後は、アルマ先輩の良き後輩となった、王子宮配属のシェレンさん、ルリカさん、メヒリャさんの存在もねぇ」


「まるで見て来たみたいに言うなァ。……見気で記憶でも読んだのか?」


「まあ、そんなところだよ。どんな気持ちが発端であれ、アルマ先輩は直向きに職務を全うし、信頼を勝ち取って来た偉大な先輩だ。その努力が彼女に幸せを運んでくれることを祈っている、ただそれたけだよ」



<一人称視点・アルマ=ファンデッド>


 パーバスディーク侯爵家が我が家にやって来た日に起こった事件終結から一週間後、ビオラ商会合同会社の建設部門の一行がファンデッド伯爵家……いえ、その頃はまだファンデッド子爵家だったわね。ファンデッド子爵家にやって来ました。

 その目的はファンデッド家が伯爵位を叙爵するにあたりファンデッド邸を伯爵家の持ち物に相応しいものへと増築することでした。


 ちなみに、既に圓様によってリフォーム代は全額支払われてしまっていて、私達は一銭たりとも出すことはできなかったわ。……まあ、到底全額払える金額では無かったけど、私達の家だしせめて一割くらいは出したかったわね。そのお金も私達が総出でかき集めなければ手に入らない金額ではあるのだけれど。


 その建設部門一行というのは棟梁(マスタークラフト)である藍晶様と、設計師長(マスターアーキテクト)のリルー=ハイドランジア様を筆頭に建設部門の黎明期から建設部門を支えてきた精鋭中の精鋭達でした。

 仕事が増えて来た近年だと地下鉄敷設計画など大規模な仕事に掛かりきりになっている方々のようで、例え高位の貴族であっても彼らに直接設計と建設を依頼することは難しいとのこと。……そんな方々が下級貴族である私達の屋敷のリフォームと増築をして良いのかしら?


 リルー様は私達の要望を丁寧に聞き取り、その要望を一つの形にしてくださいました。

 ファンデッド子爵家の思い出の篭った屋敷の大切な部分は残しつつ、伯爵位を叙爵するに相応しい屋敷へと作り変えていくリルー様の設計は見事という他にありません。勿論、その設計を現実に変えていく藍晶様達も見事という他にないのですが。


 ファンデッド伯爵邸が実際に完成したのは丁度一ヶ月前のこと。実は、今回の帰省で初めて屋敷を見た訳ですが、全く違和感を感じなかったのですよね。

 新たな我が家にやって来たという感動は良い意味で欠片も無かったのです。寧ろ、かつてのファンデッド子爵邸よりも馴染むというか、「帰ってきた」と感じたというか、そんな不思議な感覚がありました。


 さて、不器用な家族なりの家族団欒を楽しんだ後、「到着したばかりだから自室で少し休んだ方がいい」とお義母様が気を遣ってくださったので、私はそのお言葉に甘えることにしました。


 ちなみに、お茶の席では簡単な(……と言っても、実際はかなりの時間を要して少しずつ不器用なりに歩み寄って、という形なのでかなりの時間を消費した訳ですが)お互いの近況報告を行いました。

 少し前に絵の才能に気づいたお父様は最近絵を描く時間が増え、お義姉様はそれに触発されたのかレース編みをするようになったとか、メレクにはお父様が思っていた以上に領主としての才覚があったのか、クィレル様やビオラ商会合同会社の領地経営アドバイザーの方の薫陶を受けて伯爵領を統治できるほどの実力を発揮しているとか。彼自身もやり甲斐を感じているようで、何よりだと思います。

 ただ、学べば学ぶほど圓様の規格外さを改めて思い知り、領地経営アドバイザーの方と二人で遠い目になることが度々あるとか。


 ところで、この領地経営アドバイザーというのはビオラ商会合同会社で領地経営コンサルタント部門に所属する方だそうです。領地経営コンサルタント部門は圓様がザール公爵、ウォルザッハ侯爵、インヴェルザード伯爵、ジードラバイル子爵、ヒューレイツ男爵を叙爵したのと同時期に選抜されたアドバイザーの方々が中核となっていて、圓様流の領地経営のメソッドとこれまでの顧客対応の経験を融合させ、それぞれの領地にあった領地経営の方法を的確にアドバイスしてくれると人気だそうですよ。

 それほどの方々にとっても、やはり圓様の存在は規格外らしいですね。……あの方、「たまに自分は凡人だ」みたいなことを言いますけど、圓様が凡人なら、私達って一体何なのでしょうか?


 しかし、家族の中で一番社交的な筈のメレクまでたどたどしかったのはちょっと珍しかったですね。

 あの場の雰囲気に呑まれてしまったということもあるのでしょうか? あるいは、顔合わせを目前にして緊張していたということもあるのかもしれません。だとしたら、メレクに申し訳ないことをしてしまったかもしれませんね。


 顔合わせの時には挽回できるように頑張ろう! と決意を固めながら自室に向かうべく廊下を歩いていると、お義母様が呼び止めました。


「……アルマ」


「……お義母様?」


「ごめんなさいね、呼び止めてしまって。これから少し、時間いいかしら?」


「大丈夫ですが……どうかなさいましたか?」


「……その。別に大したことではないのだけれど、少し相談事があって」


「相談事ですか?」


 お義母様の顔色は良く、追い詰められている様子もありません。……まあ、旧パーバスディーク侯爵家が起こした一件で当時のパーバスディーク侯爵様は恐らく暗殺されていて、エイフィリプ様は無害化されて(いえ、ある意味厄介な存在になったのかもしれません。まだ味方であるだけマシですね)、降格の憂き目にあった現在のパーバスディーク男爵は諜報員の監視下に置かれているそうです。妙な真似をした瞬間に即時暗殺が許可されているとか……本当に物騒な話ですね。

 ジェルメーヌさんによると、パーバスディーク家に遠縁にあたる要注意人物に指定されていた人物が諜報員の目を盗んで蒸発したという事件もあって、かなり諜報員達もピリピリしているようです。……本当にあの家は厄介極まりないですね。


 とはいえ、我が家との接点が消えた今、お義母様のお話というのは深刻なものではないのでしょう。

 そのことに少しホッとしつつ私が話の続きを促すと、お義母様は安心したように微笑んで階段の先にある部屋の一つを指差しました。


「あちらの部屋で話をしたいのだけれど、いいかしら」


「分かりました」


 お義母様に促されるままに入ったその部屋は確かリフォーム前から存在していた空き部屋の一つだったと思います。

 しかし、とても殺風景だった筈のその部屋はすっかり様変わりしていました。


 壁紙は全て真新しい明るい色のものに置き換えられ、カーテンや調度品は全て可愛らしいものになっています。

 些か家具が部屋の広さに対して少ない気がしますが、きちんと隅々まで掃除がされている部屋からは清潔感を感じさせます。


 圓様から聞いた話によれば、既に親子二世帯で将来的に暮らすことを想定したリフォームと増築を進めており、いずれ用意することになる当主夫妻の部屋も必要となるその日に向けて準備が進められているようです。

 となると、可能性があるとすればオルタンス様が婚約者の期間、生活するための部屋でしょうか?


 そういえば、圓様が「フラン様からのお願いで一室空き部屋を残してもらうことになったそうだよ。うちの社員は意見を聞いてその部屋の内装工事や調度品の搬入を行おうとしたそうだけど、フラン様が『私にこの部屋の準備を引き受けさせてもらえないかしら』と頑なに譲らなくてねぇ。うちとしても、顧客の希望が第一だから、お任せすることになったんだよ」と言っていたわね。……もしかして、この部屋のことだったのでしょうか?

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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