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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-440 ファンデッド伯爵領にて〜ファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家の顔合わせ〜 scene.1

<三人称全知視点>


 ファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家の顔合わせの三日前――アルマの姿は王城の馬車停車場にあった。

 アルマの側には護衛役を買って出たジェルメーヌとローザの一声で同行が決まったバルトロメオの姿がある。この二人に発案者のローザ()を加えた三人がアルマの護衛という扱いになるのだろう。……メンバーの大半が明らかにアルマよりも高貴な身分なのだが、その点については藪蛇を突くことになりそうなのでスルーすることにしたアルマであった。


「やあ、少し遅れて申し訳ない」


「クィレル様!」


「領地に帰ってから出直すよりも、王城から直接行った方が早いからとアルマ嬢を誘うつもりだったんだけどね。まさか、先手を打たれるとは……流石は圓様だね。ところで、バルトロ。肝心の圓様がまだ来ていないみたいだけど、何か聞いていないかい?」


「ん? いいや? なんか珍しいよなぁ。アイツ、時間はきっちり守るタイプだし、そもそも時間指定したアイツが遅れるってことはあり得ない。……ってなると、変な奴に絡まれているのか?」


「――誰が変な奴だ! お前もうちょっと言葉選べよ!!」


 バルトロメオの問いに若干の怒りを滲ませて突っ込みを入れたのはローザをお姫様抱っこしたラインヴェルドだった。

 ちなみに抱き抱えられたローザはかなり不機嫌そうな顔をしており、ラインヴェルドの背後ではショートの濡羽色の髪と紫紺色の瞳を持つ色白の、ロリィタ風に改造したナース服を纏った少女という魔法少女の姿に変身したクレールと黒ロリィタのドレスを纏ったグローシィ=ナイトメアブラックに似た姿の魔法少女に変身したデルフィーナがそれぞれ裏の武装闘気で創り出した剣の切っ先をラインヴェルドの背に向けている。


「すまない、遅くなった。……実はラインヴェルド陛下が女性と密会しているんじゃないかって噂が立ってねぇ。その誤解を解くためにカルナ王妃殿下とビアンカ王太后様のところにクレールとデルフィーナとオルパタータダを連れていく筈だったんだけど、嫌な予感を感じたオルパタータダが逃走。そして、変なところで臆病なクソ陛下がボクに弁護を依頼して……というか、時間ギリギリまで王女宮筆頭侍女の執務室で仕事を片付けようとしていたところを襲撃され、無理矢理お茶会をしていたビアンカ王太后様とカルナ王妃殿下の元に連れていかれて遅れた。その後、何故かそのまま着いてくるって言い出して現在に至る。……ということで、振り切れなかったのでこのクソ陛下も連れて行くことになりました。まあ、空気だと思ってスルーしちゃってください」


「おい、流石に酷い扱いが過ぎると思うぜ、親友! ってか、俺が圓に証言を依頼したのは俺よりも確実に信じてもらえるからだ」


「そりゃ、築き上げてきた信頼が違うからねぇ」


「それで、誤解は解けたのか?」


「勿論。ただ、クレールさんとデルフィーナさんの目的が目的だし、ビアンカ王太后様もカルナ王妃殿下も複雑な顔をしていたねぇ。……まあ、彼女には彼女がああならざるを得なかった理由があったとはいえ、グローシィ=ナイトメアブラックの犯した罪は重い。そう簡単に割り切れる話じゃないよ」


「ってか、お前が遅れたのって俺だけが理由じゃないよな? 証言が終わったら俺をクレールとデルフィーナに命じて離宮から追い出して、何やら話をしていたみたいだし」


「そりゃ、お茶会の邪魔をしたのにお詫びの品も無しに退散する訳にはいかないでしょう? 少しでもお茶会に花を添えたいと新作のケーキをお渡ししてきたんだよ。それと、『今度はゆっくりお茶会をしたいわ。プリムラも交えてね』とお茶会のお誘いももらったよ」


「ふーん。まあ、そのケーキはファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家の顔合わせに花を添えるために是非出してもらうとして」


「てめぇが食べたいだけだろ?」


「酷い良い草じゃねぇか。……ところで、圓。お前、離宮を出る時までそんなラピスラズリのブローチなんてつけていたか?」


「付けていたと思うけどねぇ」


「あんまり宝飾品身につけないタイプだろ? お前って。……やっぱり、見間違えじゃねぇな。なんか隠しているだろ!!」


「……全く、無駄に記憶力が良いねぇ。このブローチの宝石には特殊な技術でカメラのような機能を付与してある。このブローチを通して、音と映像を届けることが可能だ」


「……ちなみに、一応聞いておくが、誰にだ?」


「カルナ王妃殿下とビアンカ王太后様に」


「おい、まさかまだ浮気を疑っているのかよ!!」


「違うよ? ラインヴェルド陛下がファンデッド伯爵家とルーセント伯爵家の顔合わせの場に突撃するなんて言い出したから、ご迷惑をお掛けしなかったかをしっかりと確認したいとお願いされたんだよ。ついでに、これがあれば抑止力になるんじゃないかって」


「もっと悪いじゃねぇか!! おい、圓! そのブローチ寄越せ!!」


「……奪って破壊すればいいと思っているかもしれないけど、奪ったことも含めて筒抜けになるからねぇ。ということで、ラインヴェルド陛下……とおまけでバルトロメオ殿下。くれぐれも暴れる方向で羽目を外し過ぎないように、お姉さんとの約束だよ」


「……まあ、俺もファンデッド伯爵家の心証を悪くしたくはないし、今回は自重するつもりだけどなぁ。……兄貴、観念して諦めろよ」


「後、バルトロメオ殿下と違ってラインヴェルド陛下、君は通常業務もあるから毎日王城に届けるよ。しっかりと職務に励むこと。その間、クレールさんとデルフィーナさんが交代で護衛に入ってくれるから安心して王様の仕事をすると良いよ」


「あーあ、八方塞がりじゃねぇか。……まあ、今回は純粋に兄として可愛い弟の晴れの舞台を応援したいって気持ちだったから別にいいんだけどさぁ」


「あっ、兄貴!!」


「……で、本音は?」


「そりゃ勿論、圓の行くところにトラブルありだろ! 面白いことが起きそうだなぁっていう期待故だよ! ああ、勿論、バルトロメオ達にとって大切なことだってことは分かっている。流石に邪魔するほどクソ野郎じゃないから安心してくれ」


 心の底から感動しそうになったバルトロメオはにっこりと笑いながらクソ野郎発言を放ったラインヴェルドに「やっぱりクソ兄貴はクソ兄貴か」と落胆し、アルマとクィレルは前途多難な旅になりそうだと二人揃って溜息を吐いた。



 ラインヴェルドの愛人疑惑が囁かれた、実際はブライトネス王国を揺るがした暗殺事件の犯人の関係者であるクレールとデルフィーナ、次々とトラブルを巻き起こす王様らしからぬ王様であるラインヴェルドというメンバーが加わり、最初は前途多難な旅になるのではないかと不安になっていたアルマとクィレルもすぐにそれが杞憂であったと理解することとなった。


 圓の用意した黒塗りの車はいかにも高級車といった見た目であり、実際に内部も王族専用馬車に比肩……或いは凌駕するほどの素晴らしいものであった。

 空間魔法によって拡張された車内はまるで王宮の一室のようである。


 更に車を守る装甲は銃弾どころか反物質爆弾の爆発にすら耐えられる強度を誇るらしく、安全性も申し分ない。寧ろ、「何を警戒しているのよ!」とアルマが突っ込みを入れたくなるほど無駄に高性能だった。

 運転席にはローザが座っている。運転は自動運転が搭載されているらしく、ハンドルを握る必要はないようだが、万一の場合に備えて運転できる人が座っておいた方が良いということらしい。


「クィレル殿、アルマ先輩、本当に五月蠅い奴らでごめんねぇ。あっ、スペードのロイヤルストレートフラッシュだ」


「畜生、全然揃わねぇじゃねぇか。イカサマしてあるんじゃねぇか?」


「賭け事している訳じゃないし、わざわざイカサマする必要はないでしょう? まあ、普段の行いの差だよ。もっと真面目に生き給え」


 折角時間が空いたということで小説の執筆を始めようとした圓だったが、ラインヴェルドが遊びたいと駄々を捏ね、結局自動運転を監視しながら「E.DEVISE」で小説を執筆し、その上でポーカーに興じていた。

 ちなみに他の参加者はバルトロメオ、クレール、デルフィーナ、ジェルメーヌで、このうちラインヴェルドがノーペアで最下位、バルトロメオがワンペアで五位である。誰もイカサマは仕掛けていない筈だが、あまりにも出来過ぎた結果に「絶対にお前ら何か仕掛けただろ!」とラインヴェルドは譲らなかった。


 一方、クィレルはというとラインヴェルド達のことは見なかったことにしてアルマと談笑をしていた。

 アルマを飽きさせないようにとクィレルが気を配っていることはアルマにも伝わっている。本来、それはバルトロメオの役割の筈だが、当の本人は白熱するゲームに夢中らしい。


 それで良いのかよ、とクィレルは内心溜息を吐きつつ、近衛騎士時代にバルトロメオを補佐していた時代を思い出しながら話を続けた。

 アルマが「先にお客様が到着してしまったら家族がびっくりして腰を抜かさないかしら」などと考えていると、その気持ちを察したクィレルが快活に笑いながら答える。


「何、安心したまえよ。私はアルマ嬢をファンデッド家に送り届けたら、妻と妹と合流するために一旦ファンデッド領にある宿場町に向かうからね」


「……館に逗留されて夫人達のご到着を待たれるのでは」


「いやいや、先に伯爵にご挨拶はさせていただくつもりだが、私がそちらの好意に甘えて寛いで待っていたと知れては『何故迎えに来ないのだ』と妻達に説教を食らってしまうからね」


「……まあ、ラインヴェルド陛下っていう少なくとも身分だけはクィレル様を上回る厄介者がお邪魔させてもらうことになるから、ファンデッド伯爵家の皆様、特にロウズ様あたりは永続的な胃痛に悩まされそうだねぇ。例のパーバスディーク侯爵の一件で顔合わせは済んでいるし、知らない相手でもないから多少は大丈夫だと思うけどさぁ」


「アルマ様、その節は本当にご迷惑をお掛けしました」


「ジェルメーヌさんにはもう十分謝ってもらったし、大丈夫よ!」


「というか、礼節を尽くさなければならないのは俺よりも圓じゃねぇの? この世界の創造主の産みの親で複数の国の元首、多種族同盟最大の宗教の神にして、大商会のトップだろ? 高が一国の君主を怒らせるよりも怖いのは明白じゃねぇか」


「……騎士達に任せず正面切って暴れに行くラインヴェルド陛下やオルパタータダ陛下が高が一国の君主な訳ないでしょ? ……まあ、自分で言うのもなんだけど基本的に温厚篤実な性格だから、あんまり心配しなくても良いと思うけどねぇ」


 圓はアルマの緊張を解こうと微笑を浮かべて言葉を掛けたが、これまでの圓達の行いを間近で見てきたアルマはその言葉をそのまま鵜呑みにすることはできなかった。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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