表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1275/1358

Act.9-421 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜ビオラ・スクルージ商会戦争〜 六章〜『天人五衰』と医学を志す少女〜 scene.1

<一人称視点・エイリーン=グラリオーサ>


 五大商会のうち、スクルージ商会以外の全ての商会と交渉を終え、七、八割の中小商会にも迷惑料を支払うことができた。

 スクルージ商会が動いたという情報もまだ入ってはきていない……まあ、もう間も無く何らかのアクションは起こすだろうけど。

 先手を取れたのは間違いないかな?


 そして、現在――ボクはリズフィーナの招待を受け、エルシーに扮するソフィスと共に学院の敷地の外れにある「花の楽園」の名で呼ばれる花園に向かった。


 ちなみに、他にミレーユとミラーナも招待されていたようで、ライネと共に僅かに遅れて「花の楽園」にやってきた。

 ……メンバー自体はエルシーを除いて前回、「花の楽園」に呼ばれた時と同じだけど、このタイミングで呼ばれたことを考えると、「ただ友達と一緒に食事をしたかった」というだけじゃ無さそうだよねぇ。


「その後、各地の商会との交渉は順調かしら?」


「現時点でスクルージ商会以外の全ての商会と交渉を終え、七、八割の中小商会にも迷惑料を支払うことができたという状況。スクルージ商会もまだ動いていないし、先手を取れているのは間違いないねぇ。……で、リズフィーナ様がボク達を招待した理由は別にあるでしょう? 何か聞きたいことがあるんじゃないかな?」


「勿論、ミレーユさんやミラーナさん、圓様やソフィスさん――友達と一緒に食事を楽しみたいという気持ちもあるわ。でも、圓様の仰る通り、聞いておきたい話もあったわ。勿論、差し支えなければだけど……」


 前回、ルクシア殿下の話で食事が不味くなってしまったので、今回も変にシリアスな話で食事が不味くなってしまうのではないかとミレーユは戦々恐々としているみたいだねぇ。

 まあ、自称ミレーユの大親友は全くミレーユの気持ちに気づいていないみたいだけど。……今回の話は別に食事を不味くするような類のものでもないし、別に問題はないか。


「内容にもよるけど、答えられる範囲の質問なら答えるよ。食事のお礼もしたいしねぇ」


「では、単刀直入に質問させてもらうわ。『這い寄る混沌の蛇』と関係があるという『天人五衰』とは何かしら?」


「『天人五衰』とは武装思想家組織を名乗るテロ組織だ。ボクの故郷大倭秋津洲帝国連邦の植民地、大東亜共栄圏下の中華地方――その大連という都市に拠点を置く世界規模の犯罪組織といえば伝わるかな?」


「いかにも恐ろしそうな組織ですわね。……『這い寄る混沌の蛇』のように巨大な組織なんですの?」


「いいや、構成員は組織名が示す通り五名」


 世界規模犯罪組織と聞いてミレーユは相当巨大な組織を想像したのだろう。

 でも、それがたったの五人と聞いて「思っていたよりも小規模ですわね。圓様が警戒し過ぎなだけで、実はそんなに恐ろしい人達でもないんじゃないかしら?」と甘く見積もってしまったらしい。……まあ、『這い寄る混沌の蛇』に比べて組織規模は小さいけどさぁ。


「組織名が示す通りとはどういうことかしら?」


「天人五衰という言葉は、元々ボクの世界に存在した宗教の一つ――仏教の用語が由来となっている。仏教においては、人は死ぬと前世の行いに応じて地獄道、餓鬼道、畜生道の三悪道、修羅道、人間道、天界道の三善趣のいずれかに生まれ変わるとされている。天界道とは、天人と呼ばれる者達が住まう世界で、享楽のうちに生涯を過ごすとされている。つまり、幸せに暮らすことが確約されている世界ということになるねぇ」


「オルレアン神教会で言うところの、天国に似ているわね」


「ただし、天国と明確に違う点が一つある。それは、天界道での幸せが永遠のものではないこと。天人だって寿命が極端に長いだけでいつかは死ぬ。そして、死を迎える時には五つの変化と苦しみが現れ、これを天人五衰と呼ぶ。……この苦しみは地獄の苦しみよりも遥かに苦しいとされている。仏教の関連書物『往生要集』では、人間より遥かに楽欲を受ける天人でも最後はこの五衰の苦悩を免れないと説いて、速やかに六道輪廻から解脱すべきと力説している。つまり、欲を捨てて無我の境地――阿耨多羅三藐三菩提に至って涅槃に入ることが人の幸せであると説いているんだ。しかし、『天人五衰』はその教えに真っ向から対峙している。仏教では禁忌とされている三毒――貪・瞋・癡、貪欲、怒り、無知の心を心棒し、苦痛すらも受け入れ、人間らしく生きることが何よりも幸せであると説いている。まあ、彼らの主張はそちらがメインではないんだけどねぇ。『天人五衰』は構成員のコードネーム以外、重要な情報は各国の捜査機関も掴めていない。しかし、ある共通点を持つことが分かっている。それは、不幸せな出生で苦痛に塗れた半生を送ってきたということ。彼らは『不幸せな出生で苦痛に塗れた半生を送ったのだから、後の人生は天人のように素晴らしい人生を送るべきであり、送れる筈だ』という思想を掲げている……まあ、つまり、天人五衰にも等しい苦痛を味わったんだから、天人ほどの幸せを享受してもバチは当たらないんじゃないかという思想だねぇ。そういう思想のもと、各地で戦争介入や暗躍などを行い、好き勝手やっているというのが現状だよ」


 まあ、『天人五衰』の活動方針は全て首魁――不楽本座が決めているんだけど。


「『天人五衰』の構成員は先ほども言ったように五名。全員が、仏教の天人五衰に由来するコードネームを持つ。衣裳垢膩、羽衣が埃と垢で汚れて油染みる。頭上華萎、頭上の華鬘が萎える。身体臭穢、身体が汚れて臭い出す。腋下汗出、腋の下から汗が流れ出る。そして、首領の不楽本座――自分の席に戻るのを嫌がり楽しみが味わえなくなる。……捜査機関が把握していることはここまで。後、強いて言うなら全員が特A級の犯罪者ということかな? 仏教勢力、各国捜査機関――それぞれが懸けられている懸賞金の合計額は衣裳垢膩、頭上華萎、身体臭穢、腋下汗出が大倭秋津洲円換算で五十三億一千万円、首魁の不楽本座ともなれば七十八億ほどの金額になる。まあ、もう少し情報が判明すればばらつきも出てくるだろうけどねぇ。敵の情報が少ないからこそ、少し高めに見積もっているというところもあるんだろう」


「でも、圓様はそれ以上のことをご存知なのよね?」


「まあねぇ、連中とは相見えたこともあるし。それに、裏の世界では有名だからねぇ。その名前と生い立ちも把握しているよ。まずは、衣裳垢膩から。本名は小鹿島(おがしま)秀平(しゅうへい)。大倭秋津洲の孤児院の子供だったけど、裏世界と繋がる孤児院に傭兵候補として売られ、戦争の世界に身を投じることになる。全ての武器を扱うことができるという才能の持ち主で、「その武器に蓄積された記憶を読み取る」という超共感覚(ミューテスタジア)保有者。まあ、実際は武器だけに留まらずあらゆるものの記憶を読み解くことができるという驚異的なものなんだけど。次は頭上華萎。本名は浅輪(あさわ)博重(ひろしげ)。金に振り回された人生を送ってきた男で若くして巨万の富を手に入れるも、部下の裏切りに遭って大切な妻をも奪われる。そうした転落人生を数多く経験してきたらしい。元々は花屋の息子として生まれたが、その『並み外れた金運』によって家庭が崩壊し、家庭内暴力に苦しむ少年期を送った。制御できない莫大な幸運を操る力を持ち、その不完全な異能は『気紛れなノルン・ブレッシング・女神の寵愛オブ・ネームレス・グローリー』と呼ばれる。自分も意図しない瞬間に想像を絶する幸運が訪れるが、その反動で想像を絶する不幸が訪れる。この能力から逃れる手はなく、その並み外れた幸運で絶対に死なない。厄介なのは、この並み外れた幸運が戦闘でも変則的に適応されること。繰り出す攻撃の一つ一つが致命的なラッキーヒットとなり、自分に対する攻撃はあらゆる要因によって失敗させられる。偶然攻撃が外れる、外れないような狙いを定めない攻撃はそもそも命中しないなど、あらゆる偶然が味方し彼を傷つけることはできなくなる。敵対する者にとっては厄介極まりないものだけど、これも全て浅輪を永遠に苦しめるための『気紛れなノルン・ブレッシング・女神の寵愛オブ・ネームレス・グローリー』の呪いの如き効果と考えると色々と考えさせられるよねぇ」


 まあ、この二人だけで既に尋常じゃない戦力だけど、このクラスの戦闘力保持者が後二人(・・・)いるってのが恐ろしいよねぇ。


「三人目にして、ボクが純粋な戦闘力という点で最も恐ろしい相手だと考えているのが身体臭穢。スラム街出身の青年で名前はない。その身体は鋼の如く強靭で、その手から繰り出される斬撃は不可視の領域に達し、その動きには一切の音が存在せず、その斬撃は何もかもが規格外な斬撃は大気が斬り裂かれたことに気づかないほど鋭く、軽く振るっただけで放たれる剣圧で生じる空気の刃は鋼鉄すらも斬り裂く。ただの木の棒であっても名刀と互角に張り合える強さを誇るという異常っぷり。特殊な異能を持たない代わりに極められた異能にすら匹敵する常識外の身体能力を持ち、世界でも一握りの存在のみが全ての筋肉を本来意識して操作できないものを含めて完璧に操作する、脳から送られる信号を短く情報密度の高い戦闘用の脳信号に変える領域にも到達している剣の化け物。誰が最強の剣士かという論争では、橋姫紅葉と並んでよく候補に上がっているよ。四人目は腋下汗出、本名は羅刹(らせつ)美登里(みどり)。長きに渡り追われてきた羅刹童女と呼ばれる鬼女で、吉原に花魁の羅刹太夫として身を置いていた時期もあるらしい。本人の意思とは無関係に追われる日々に辟易していたところ、不楽本座から天人五衰に誘われ、所属を決めたという噂もある。ボクの友人の赤鬼小豆蔲さんとは旧知の仲だけど、迫害されてもそれでも平和を愛し、世界平和のために身を削る小豆蔲さんの生き方には嫌悪感を抱いている。『認められるためには力を示さない、力を示して掴み取るものが平和である』という思想を掲げ、武力行使を含め全ての実力行為を必要なものであると考えているそうだよ。でも、これは認められなかった過去に起因する思想であって、実際のところは普通の人間が営むようなありふれた生活を営むことを望んでいるんじゃないかと睨んでいる」


 この中でやっぱり一番の強敵は身体臭穢だと思う。橋姫紅葉も別ベクトルで最強の剣技に至り、それを独自の方式で進化させていった猛者だけど、そんな紅葉と比較してもやはり頭一つ抜きん出た強さを持っているように感じた。

 ボクは再び彼に相対した時、勝てるだろうか? 正直、剣という一点では全く勝てる気がしない。


「そして、首魁の不楽本座。本名は前回の話にも出ていたけど、四之宮愛凪。かつて壮絶な骨肉の争いの果てに地位を追われた公爵令嬢。何もかもを手に入れた恵まれ過ぎた生活を送っていたが、当主の死と同時にその遺産や爵位を継承するべく一族郎党が争いを繰り広げ、その果てでスラムに堕とされた可哀想な少女として知られている。しかし、その実態は全てを手に入れた故に退屈していた天才であり、骨肉の争いも自らの手で引き起こした。まさに『自分の席に戻るのを嫌がる不楽本座』を体現した人物と言えるねぇ。電子機器の扱いに非常に長けており、超人的な頭脳の持ち主である。一方で戦闘能力は全くなく、身体臭穢に護衛を依頼していることが多い。……理解し難いというか、理解したくもない思考回路をしているなぁ、とは思っていたけど、まさか『這い寄る混沌の蛇』の首魁アポピス=ケイオスカーンの前世を持つ転生者だったとはねぇ」


 つまり、『天人五衰』が生まれた切っ掛けは『ダイアモンドプリンセス〜這い寄る蛇の邪教〜』が開発されたことにあるってことなんだよねぇ……風が吹けば桶屋が儲かるみたいなレベルの予測できる訳がない話だけど。

 いや、まさかこんなところにゲーム作った弊害が出るなんて流石に思わないよ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

 よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)


 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ