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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-414 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜ビオラ・スクルージ商会戦争〜 四章〜ヴィクスン商会商会長アマリア・艶花・ヴィクスンの謀〜 scene.1

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン・レインフォール>


 キロネックスとの面会から四日後、アンルワッフェ侯国とヴィクスン商会がほぼ同着。希望日も被っていたけど、僅かにヴィクスン商会の手紙の方が先に到着していたのでヴィクスン商会の商会長との面会を優先することにした。


 ヴィクスン商会の拠点が置かれているのはプラト港という小さな港。

 元々はルージャル王国という小さな王国が保有していた港だったけど、栄養源の乏しい暖流の影響で漁場としての価値が薄かったため、他の港のように奪い合いは発生しなかったらしい。


 しかし、プラト港には他の港にはない価値があった。それは、ポーツィオス大陸へのアクセスの良さだ。

 海流の関係で他の港を使うよりも大幅に時間が短縮できるという港の利点に気づいたヴィクスン商会のトップ――アマリア・艶花・ヴィクスンは破格な金額を突きつけてルージャル王国から港を買い取り、港を独占した。

 この港の力か、昔からの付き合いで顔が効くからかは分からないけど、ヴィクスン商会はポーツィオス大陸と取引をする商会の中でトップの業績をキープし続けているらしい。


「ヴィクスン商会は海外取引の大手なのですね」


「業績ランキングを集計すると、二位のシーワスプ商会に二倍近くの差をつけている。イエローダイアモンド公爵家から仕事を引き継いだグリーンダイアモンド公爵家に関連する商会が三位、ワイゼマル商会が四位だけど、二位以降は団子になっているから、ヴィクスン商会の凄さがひしひしと伝わってくるよねぇ」


 シーワスプ商会の商会長は予想を裏切り人情味がある人物だったけど、二度も簡単な取引で終わるとは思えない。……アマリアとの面会、一層気を引き締めていかないとねぇ。


 手紙にあった住所に向かうと、そこには豪華な洋館があった。

 どうやら金持ちの道楽で建てられた建物ではなく、異国の貴人を招くために建てられた屋敷らしい。プラト港はルージャル王国の影響を受けない独立都市――小さな国家の性質を帯びているため、一応、他国の貴人を招くための建物を持っておいた方が良いと考えたのだろう。……まあ、実際に他国の有力貴族や王族が招かれたことはなく、貴族の代理人と商談を行う場や他の商会の来客を接待する場として使われているみたいだけど。


 ペドレリーア大陸だけでなく、ポーツィオス大陸の建築様式も取り入れ、二つの国の文化を融合させたこの館は、ヴィクスン商会を象徴しているように見えた。


「お待ちしておりました。ビオラ商会合同会社の商会長様ですね」


「お初にお目に掛かります。ビオラ商会合同会社から来ましたアネモネと申します。こちらは秘書のソフィス伯爵令嬢です」


「私のような侍女にもご丁寧にありがとうございます。本日、案内役を仰せつかりましたロゼリエ=寒蘭=ベルヌーイと申します」


 侍女のロゼリエに案内され、屋敷の中をソフィスと共に進んでいく。

 玄関から応接室までそこまでの距離は無かった。流石は来客応対を主軸に据えた屋敷……来客にストレスを掛けないような工夫が詰まっているねぇ。


「アマリア様、アネモネ様と秘書のソフィス伯爵令嬢をお連れ致しました」


「ロゼリエさん、ありがとう。アネモネ様、ソフィス様、どうぞお入りくださいませ」


 チャイナドレス風の妖艶な衣装に身を包んだ美しい白銀の髪を持つ美女はここまでボク達を案内したロゼリエに感謝の言葉を掛けた後、ボク達を応接室の中へと招いた。

 ボク達に好意的な視線を向けているけど、勿論、心を許すなんて論外。心の中では、既に葱を背負ってやってきた鴨をどう料理しようかと思案を巡らせているみたいだからねぇ。


「突然、面会を希望して申し訳ございませんでした。無名の商人からの突然の手紙ですから、さぞや驚かれたことでしょう」


「確かに驚きましたわ。ですが、私も是非アネモネ様とお会いしたいと思っていましたので、これ幸いとお受けさせて頂きました。お噂はこの辺境の小都市にも届いておりますわ。セントピュセル学院の改修事業を提案し、途方もない利益を生み出した手腕は実に鮮やかでした。技術を惜しみなく提供する大胆さと、大陸の中枢たるオルレアン神教会に絶大な恩を得る強か。私も見習いたいと思いました。……して、本日はどのようなご用件でいらしたのですか?」


 一気に本題まで話を進めてきたけど、相変わらず友好的な笑顔を浮かべている。こういう時って真剣味を帯びて少しだけ緊迫した空気感になるんだけど、全く纏う空気感が変わらないのはなかなか恐ろしい。……ここまで友好的な態度を取られると勘違い(・・・)してしまう商談相手も多いんじゃないかな? ……油断したところを一突きして気づいた時には取り返しのつかない事態になっている。

 なるほど、噂に違わない商人だねぇ。


「我々ビオラ商会合同会社とスクルージ商会の関係があまり良好ではないことは既にご存知だと思います」


「えぇ、お噂は聞いておりますわ。スクルージ商会はペドレリーア大陸でも五本の指に入る商会ですわね。ベーシックヘイム大陸では有力なビオラ商会合同会社様でも流石に厳しい戦いを強いられているのではないかと思っておりましたわ。……我々ヴィクスン商会も起業したばかりの頃は大変な思いを味わいました。同業他社の信頼を勝ち取り、仲間として認めて頂くまでにはかなりの時間を要したものです。ビオラ商会合同会社様が置かれているのは、かつての我々よりも苦しい状況だとお察し致しますわ。同じ苦しみを味わった者として、何かお手伝いできることがあれば良いのですが」


 友好的な態度を取り続けているけど、見気で心の中を窺えばボク達を見極めようという鋭い観察がなされ、いかにボク達を出し抜くかという点に思考が裂かれていることが分かる。

 ……何も知らない者なら騙されてしまうだろう。残念、相手が悪過ぎたねぇ。


「いえ、ご心配には及びませんわ。スクルージ商会相手に苦戦する可能性は億が一にもありません。特別なルートで商品は輸送していますから、仕入れルートを攻撃される心配はありませんし、ネガティブキャンペーンをされても容易に耐えられるだけの蓄えはあります。そもそも、ペドレリーア大陸の支店にはあまり重きを置いておりませんからね。最近は、ラスパーツィ大陸という別の大陸のマーケットの開拓に力を入れる方針を取っておりますので。……まあ、正直どうでもいいと言えばどうでもいいのですが、売られた喧嘩は買うのが礼儀というもの。ただ、本気で二つの商会が争えば経済に悪影響を及ぼし、他の商会にも迷惑が掛かってしまいます。そこで、事前にスクルージ商会以外の全ての商会に迷惑料をお支払いしようと各商会を訪問しているところです。……まずは、繋がりのある商会や大手様からという流れでクロエフォード商会、ワイゼマル商会、アルマトゥーラ商会、シーワスプ商会を順に訪問させて頂きました。クロエフォード商会とワイゼマル商会には既にお支払いを終えており、アルマトゥーラ商会は前回の面会ではそこまでお話が進まなかったのでまたの機会に、シーワスプ商会には会頭にお断りをされてしまったので代わりに会頭が希望したビオラの本社視察を受け入れることになりました」


 腹の探り合いがこういう交渉ごとでは基本になる。嘘を混ぜると後々の信用に関わるから何を話すか、何を話さないか――この選択が重要になるねぇ。

 今回の場合は事実をそのまま口にした方が相手に衝撃を与え、作戦を瓦解させることが可能だからあえてそのまま真実を話した。……というか、振り返ると面倒なことを全部抜きにして正面から殴りに行くことの方が多いよねぇ……脳筋って言われても否定できないのが辛い。


 ボクの返答はアマリアにとっては予想外な角度から放たれた不意打ち……かなり困惑しているだろう。

 しかし、困惑したままでは終わらず瞬時に再計算を行い、最適解を導くのは流石という他にない。


「なかなかお優しいお方ですわね。ペドレリーア大陸の商人達を気遣ってくださるとは、感謝に堪えませんわ」


 この言葉の言外には「……厄介な相手かと思いましたが、随分と甘い方ですわね。こういうお人好しに付け込むのは容易ですから助かりますわ。さて、どう料理しようかしら?」というアマリアの思惑が隠されている。

 当然のように心を読んだソフィスは青筋を立てるけど、ここで怒りで我を忘れられても困るから超能力でソフィスにテレパシーを送って静止した。便利だねぇ。


 僅かにボクが打算を持ってこういう提案をした可能性も考えてはいるみたいだけど、ペドレリーア大陸の商会との顔繋ぎが目的なら明らかに大き過ぎる出費だからねぇ。

 ペドレリーア大陸のマーケットにそこまで重きは置いていないにも拘らず、被害者でありながら迷惑料を支払う度が過ぎたお人好しだと思われたんじゃないかな?


 そして、こういう隙を見逃すほどアマリアはお人好しではない。優しさに付け込んでビオラ商会合同会社を乗っ取ろう……そういう企みを持ったんじゃないかな?


 ……うーん、仮にボクが商会長の座を譲るって言ってもあのアンクワールとモレッティが許してくれるとは思えないし、ジェーオは嬉々としてどさくさに紛れて幹部の座を降りそうだよねぇ。

 それに、嬉しいことにボクが商会長だからと取引をしてくれている方々もいる。融資の件も今までのようにはいかないだろうし、業績の悪化する未来しか見えないなぁ。


 うちは特殊だからねぇ。一流の商人如き(・・・・・・・)にトップは務まらないんだよ。

 ボクみたいな利益度外視で融資をするような酔狂な人間と、冷静な視点で業務を進める優秀な幹部達……この両輪があって初めて成り立つ商会――そのバランスが崩れたら今みたいな影響力は無くなるとボクの超共感覚(ミューテスタジア)が言っている。


「しかし、この金貨は受け取れませんわ。……もし、貴女様が私達に申し訳なさを感じていらっしゃるのであれば、もっと別のお話を致しましょう」


「……別の話とは?」


「我々ヴィクスン商会はポーツィオス大陸にも支店を持っておりますわ。ビオラ商会合同会社はポーツィオス大陸に伝手はないと伺っております。どうでしょう? 我々が手を組めば互いに更なる利益を得られると私は思っているのですが。勿論、言い出したのは私ですからビオラ商会合同会社の傘下に下る覚悟はありますわよ」


 あくまで下手に出ている風を装っているけど、傘下入りの形でビオラ商会合同会社の中枢に入り、そこから出世して乗っ取りを目指す……それがアマリアの策だろう。

 いやぁ、楽しいねぇ(・・・・・)。ここまで予想通りに事が運ぶと笑えてくるよ。


 既にビオラの幹部達にこうなる可能性は話してある。許可も取っているから問題ない。

 さて、一つ大きな峠を越えたか。ここから先は……まあ、多分大丈夫だろう。

 ――ボクはビオラの仲間達を信じているからねぇ。


「確かに私達にとっては良いご提案ですが……本当によろしいのですか?」


「えぇ、勿論ですわ。ベーシックヘイム大陸を代表する商会の一員に加えて頂けるなんて光栄ですわ」


 微笑を浮かべつつ、内心で愚かな女商会長を嘲笑うアマリアの心のうちを見気で覗き、ボクはアマリアに気づかれないように口角を歪めた。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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