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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-413 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜ビオラ・スクルージ商会戦争〜 三章〜シーワスプ商会商会長との面会と、ビオラ特殊科学部隊のボディガード〜 scene.2

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン・レインフォール>


「それほどの財力を持ちながら……全く疑問ですよ。貴女ほどの力をお持ちならペドレリーア大陸の経済なんて気にせずに動けばいい。それで淘汰されるなら、それまでのこと……そう切り捨てるのが正しい商人の在り方だと私は思います。……何故、商売敵に塩を贈るような真似をするのですか?」


「通常、商人が追い求める先にあるのは寡占市場です。同業他社を駆逐し、自分達だけがその業種を独占すれば言い値を付けられる。しかし、その先に待っているのは消費者にとっての暗黒の未来です。……私は様々な商会が乱立し、牽制し合って適正な価格を目指す、それが健全な市場であると考えています。賃金を増やして労働者階級でもある消費者の購買意欲を高め、実際に商品を購入してもらい、そこで得られた利益の一部をまた消費者に還元する。得られた利益の一部は他社よりも利益を上げるための新商品の開発や備品購入に充てる。このサイクルが企業を発展させる力となるのです。一方、競い合うライバル企業がいなければ成長する意味が無くなり、停滞します。……一人で富を溜め込む商人は人々の羨望と恨みを集めることになるでしょう。苦しい生活に喘ぎ、その怒りは富を持つ者に向くことになるでしょうねぇ。……私は皆様から見れば外来種かもしれません。ですが、決してペドレリーア大陸の市場を破壊しようとは考えていないのです。共に切磋琢磨しながら高め合っていければと思っておりますわ」


 そもそも、ペドレリーア大陸の市場にはノータッチでいくつもりだった。フィートランドがフォルトナ王国の傘下に入り、フォルトナ=フィートランド連合王国が発足し、「多種族同盟加盟国だし、ビオラの支店を置こうか?」みたいな話にならなければベーシックヘイム大陸で終わっていたことだった。

 ラスパーツィ大陸に関しても同様……海洋都市レインフォールの一件が無ければ、支店を置くという話にもならなかった。


 別に際限なく利益を求めている訳じゃない。ビオラの社員が、ビオラが投資した人々が幸せな暮らしを送れればそれでいい。……最初はブライトネス王国の王都という狭い世界だけの話だった筈だけど、いつの間にか拡大していって今や三つの大陸に跨る大企業……溜め息も吐きたくなるよ。


「……アネモネ殿のお気持ちはよく分かりました。……しかし、この金貨は受け取れませんな」


「――ッ!? それは、アネモネ様のお気持ちを踏み躙るということですか!?」


 堪忍袋の尾が切れたソフィスが覇王の霸気を滲ませながらブチ切れる。漆黒の稲妻が静電気のようにビリビリと弾け、少し痛いねぇ。


「……アネモネ殿は、我々を対等な存在だと仰りました。しかし、この施しを受ければ対等な存在ではなくなると私は思うのです。勿論、アネモネ殿にそのような意図はないことは承知の上ですよ。まずは、この難局を乗り切り、その上で切磋琢磨したいと仰られるのでしょう? しかし、私は本当の意味でアネモネ殿と、ビオラ商会合同会社の好敵手となりたい。……まずは我々の力でこの難局を乗り越えて見せましょう。もし、乗り越えられた暁にはベーシックヘイム大陸にあるビオラ商会合同会社を視察させては頂けないでしょうか? 東方の故事に『彼を知り己を知れば百戦殆からず』という言葉もありますからね」


 狐顔の油断ならない大商人と聞いていたから、かなり気合を入れてきたんだけどねぇ……なんだか少し拍子抜けというか。

 もっと陰湿で商人らしい図太さを有した人物だと偏見を抱いていたことを心の中で謝罪した……実際には燃え上がる闘志を心に秘めた律儀な商人さんだったってことだねぇ。


 結局、ここまで言われたら金貨の入った袋を渡す訳にもいかず、ビオラ商会合同会社への視察を受け入れる約束をキロネックスと結んでルーニマリシス王国を後にした。



<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン・レインフォール>


 キロネックスとの面会から二日が経過した。


 セントピュセル学院での学生生活も穏やかそのもので特に動きは見られない。スクルージ商会に動きもなく、アンルワッフェ侯国から謁見の日時を記した手紙が届くこともなく、他の商会からの手紙も無し……ということで、今日も穏やかな気持ちで王女宮筆頭侍女の職務に励んでいた。


「……平和だねぇ」


「平和ですわね」


「これだけの量の書類を抱えて……お二人とも、状況と言動が全く合っていないと思いますわ」


 ソフィスと共に王女宮筆頭侍女の執務室でアーネスト経由で届いた大量の書類を片付けていると、念のためにボクに確認をしてもらうために書類一式を持ってきたスカーレットからジト目を向けられた。


「スカーレット様なら、筆頭侍女の確認も必要ないと思いますけどねぇ……一応、確認する決まりだからちゃちゃっと済ませようか」


「そういえば、私って圓様の確認を通さずにお父様から送られてきた書類を進めていますけど、大丈夫なのでしょうか?」


「まあ、あのブライトネス王国の唯一の良心……宰相アーネスト閣下が自分の愛娘の実力を理解していないとは思えないし、信頼して書類を送ってきてくれている筈だから大丈夫だと思うよ? ……ボクの机から強奪したものについては知らんけど」


 ……いや、そもそも成人していない公爵令嬢で筆頭侍女とはいえ行儀見習いで王宮に来ているという立ち位置、更には他国の元首という立場の人間にブライトネス王国の心臓部たる重要書類を任せている時点で十分にアウトだと思うけど。


「圓様もソフィス様もペドレリーア大陸の学院に潜入しているのですわよね? ……お忙しいのではありませんの?」


「大きなイベントも特になく、面会を希望した商会からも連絡はない。……まあ、夏になればグリーンダイアモンド公爵家の件が進展するし、忙しくはなるんだけど。王女宮筆頭侍女の職務も今のところ大きな仕事はないし、ヒゲ殿下ことバルトロメオ殿下と王子宮筆頭侍女のアルマ=ファンデッド伯爵令嬢、メレク=ファンデッド伯爵とオルタンス=ルーセント伯爵令嬢のダブル結婚式については色々と忙しい時期を避けて新年祭を終えた後、来年の冬から春頃の予定で先は長いし、いつもなら騒がしいラインヴェルドとオルパタータダも心を入れ替えたのか最近は王女宮に突撃してこなくなって真面目にバトル・アイランドに挑戦しているみたいだし……いや、真面目に働けよと思うけど。各タイトル戦の運営には関わってないし、まさに閑期という感じだねぇ。最近はトラブル続きで忙しかったから、こうやって少し暇になるとなんだか少しだけ物足りないというか、寂しいというか……いや、トラブルは望んでいないんだけどさぁ」


 ちなみに、あの新年祭のゴタゴタの裏でタイトル戦は密かに始まっている。

 一月からトーナメントが始まった剣帝戦は四月に初代剣帝を決めるオルパタータダとオニキスの三番勝負が行われ、オニキスの勝利に終わった。純粋剣技のみを競うタイトルということで、魔法剣が得意な面々や闘気による身体強化に頼っている面々は揃って全滅したらしい。後はルール違反で闘気を使ったシューベルトとティアミリスはかなり早い段階で失格になったみたいだよ。


 現在は剣聖戦のトーナメントが終盤を迎え、剣座戦のトーナメントが中盤に差し掛かり、剣鬼戦のトーナメントがスタートしたという三つのタイトル戦が進んでいる状況で、剣聖戦にはミリアム、アルベルト、藍晶、ダラスも残っている。……まあ、ラインヴェルド、オルパタータダ、アクア、プリムヴェール、レミュアといった猛者達も残っているし、ここからが本番なんだろうねぇ。


「圓様のお気持ち、よく分かりますわ!!」


「……お二人のお気持ち、さっぱり分かりませんな。平和が一番ではありませんか」


 ボク達に気を遣って「少し休憩しろよ」という意味を込めて紅茶を淹れてきてくれたオルゲルトに感謝しつつ、書類を退かして場所を作り、冷蔵庫からケーキを出してソフィスとオルゲルトとスカーレットに出した。


『ワォン!!』


 そして、美味しい匂いに釣られたのか睡魔を吹き飛ばして影の中から現れた真月の前にもケーキを置く。流石に真月の分の紅茶の用意は無かったので、真月の分はボクが淹れたよ。


「……おっ、メールが来たみたいだねぇ」


「……結局仕事をしていますな」


「休憩中くらい『E.DEVISE』を外してもバチは当たらないと思いますわ」


 ジト目を向けるオルゲルトとスカーレットをスルーし、メールの内容を確認。…….ふむふむ、なるほどねぇ。


「圓様、差し支えなければ内容をお聞かせして頂けませんか?」


「まあ、気になるよねぇ。……差出人は、ビオラ特殊科学部隊のシアさん」


「ビオラ特殊科学部隊といえば、闇の三大勢力の一角でしたな。王家の影やラピスラズリ公爵家の上位互換であるビオラ商会合同会社警備部門警備企画課諜報工作局とは別ベクトルで恐ろしい組織だとか。……ブリスゴラと人造魔法少女の技術が代表例だと私は聞き及んでおりますが」


「……まあ、禁忌何それ美味しいの? ってレベルで裸足で倫理観を踏み付けて突き進んでいる組織だからねぇ。一応、監督者の立ち位置にあるボクが言うのもなんだけど。……で、話に入る前に前提から話さないと意味が分からないと思うから少しだけ話させてもらうよ。魔法の国への侵攻後、ビオラ特殊科学部隊は法儀賢國フォン・デ・シアコルと魔法の国の現身の技術を駆使し、三賢者や八賢人相当の魔法少女を完成させた。丁度、スカーレットさんにこの世界の秘密を教えた頃だねぇ。その時に完成したのはプリンセス・エクレールという一騎当千と軍勢の良いとこ取りをした魔法少女だった。完成して日が浅い時点で既にラインヴェルド陛下の実力を上回っていた彼女の戦闘力は、ブライトネス王国の騎士団を揃えても勝利は厳しいくらいの強さという認識でいいと思う。あくまで、あの時点での話だから、急激な成長を遂げているラインヴェルド陛下達とあの頃から成長しているプリンセス・エクレールが戦えばどうなるか分からないけどねぇ。……その時点ではプリンセス・エクレールさえ完成すれば十分かな? なんて思っていたんだけど、その後状況が変わってねぇ。新型のブリスゴラと並行して新たな人造魔法少女の開発を進めていたんだ。その開発が成功したのは、ネファシェム山に赴く数日前――偽天翼族(セラフェル)と因縁深いとある種族の化石から得られた力も使える有望な人材……ではあったんだけど、作ったはいいけど配属先に困ってねぇ。一応、ビオラ特殊科学部隊のボディガードの役割を与えたんだけど、ご存知の通りビオラ特殊科学部隊にはかなりの戦力が揃っている上に、そもそも拠点を攻撃されることが皆無だからねぇ。彼女の仕事は全く無かったんだ。……で、流石に暇過ぎるということで上司のシアを飛び越え、直接ボクの許可を得たいと申し出た。それが、今回のメールの内容だよ」


「……つまり、配置換えを希望したということですか?」


「いや、ビオラ特殊科学部隊のボディガードは継続。それとは別に試験を受けて騎士団に所属したいって書いてあったよ。……あんまり騒ぎにしたくないから、シアさん達にも内密にしてもらいたいって書いてあるねぇ。ビオラ特殊科学部隊のボディガードもしっかりと継続してくれるならボクに言うことはないかな? ってことで、彼女の希望は通すことにするよ。……あっ、今の話は分かっていると思うけど他言無用でよろしくねぇ」


「承知致しましたわ、圓様」


 迷うことなく笑顔で答えるのはソフィス一人だけ、王家の影でもあるオルゲルトと常識的な令嬢のスカーレットは「報告するべきなのでは……」と思いながらも部屋を取り巻く空気には逆らえず、「承知致しました」と小さく呟いた。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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