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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-410 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜ビオラ・スクルージ商会戦争〜 二章〜アルマトゥーラ商会と、不楽本座の秘密〜 scene.2

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン・レインフォール>


 受付嬢のミルフィも秘書のアンドリュアスも、ついでにソフィス、ミレーユ、ミラーナ、ルードヴァッハ、リズフィーナ、アスカリッド、クラウディアも困惑する中、カルパッチョは半ば強引に予定の中にボク達との面会を押し込み、自らボク達を応接室へと案内した。


「……アネモネ様、もしかしてこの方とお知り合いなのかしら?」


 ミレーユが不思議そうに尋ねる。……まあ、疑問に思うのも仕方ないよねぇ。


前世、現世(・・・・・)含めて初対面の筈ですわよね? カルパッチョ様。いえ、元『Abroad Merchandises』社員、空舟(そらふね)清七(せきしち)殿とお呼びでしょうか?」


 ボクがにっこりと微笑みながら見気で突き止めたカルパッチョの素性を口にすると、カルパッチョは「私のような一介の社員の名前を覚えて頂けていたとは、光栄です!」と感極まって涙を浮かべた。

 ……いや、社長の院瀬見(いせみ)花奏(かなで)さんからは一言も話を聞いていなかったし、知ったのもつい先程なんだけどねぇ。まあ、夢を壊したくないし元から知っていたことにしよう。


「……なるほど、社長の前世の同郷のご友人……の転生者ということですか」


 アンドリュアスはカルパッチョの前世に纏わる話を聞かされていたらしく、ボクの言葉から前世関連の繋がりがある人物であることを察したらしい。


「友人? とんでもない! アンドリュアスさん、この方は雲上人ですよ! 私の前世の故郷、大倭秋津洲帝国連邦において経済界の影の王者と言われたお方です! 事情通の花奏社長から何度かお話を聞くことがありましたが、芸能界にも顔が聞き、ゲーム開発の分野では高槻氏と共に第一線を走り続けるパイオニアであり、アニメ制作の分野ではあの映報アニメーション株式会社が大倭秋津洲帝国連邦を代表するアニメ制作会社になる切っ掛けとなった『ドリルお嬢様の優雅なお茶会』の脚本を書いた超重要人物であり、小説家や漫画家としても大成し、ドラマの脚本を書けば大ヒットを記録し、とにかく表にはなかなか出てこないお方ではあるものの、業界通であれば知らない人はいないという超重要人物なのですよ! かくいう私も『スターチス・レコード』シリーズの大ファンでして、先生の作品ということで『ダイアモンドプリンセス〜這い寄る蛇の邪教〜』も随分とやり込ませて頂きました。――よろしければ、サインを頂けないでしょうか!!」


 少し食い気味なカルパッチョに押されつつ、色紙を取り出してサラサラとサインを書いて手渡す。

 嬉しそうに受け取った色紙を眺めるカルパッチョを微笑ましく見つつ、ボクは少し話を進めることにした。


「しかし、オンライン系はプレイ未経験でしたのに、よくアネモネのことをご存知でしたね」


「花奏社長から『Eternal Fairytale On-line』のお話もよく聞いていました。リーリエ、アネモネ、マリーゴールド、ネメシア、ラナンキュラス――五つの上位アカウントを巧みに操り、『Eternal Fairytale On-line』の頂点に君臨するお方がいることと、そのお方が『Eternal Fairytale On-line』の開発にも携わった百合薗圓先生であることも花奏社長のお話で知りました。……しかし、ゲームのアカウントのまま転生とは珍しい形ですね。この世界がゲームに酷似していることと何か関わりがあるのでしょうか?」


「鋭いですねぇ。まあ、この世界について私が知っていることは後ほど話すとして……本来はスクルージ商会に関することでお話しがあったのですが、その前に聞かなくてはならないことができました。カルパッチョ様は『這い寄る混沌の蛇』についてどこまで掴んでおられるのですか?」


「『ダイアモンドプリンセス〜這い寄る蛇の邪教〜』で描かれた情報は全て……お恥ずかしい話、世界観を共有しているという噂の『蛇の海〜絆縁奇譚巻ノ一〜』は遊んだことがないため分からない状況です。流石に転生直後はゲームとの関わりがある世界だと気づけませんでしたが、アンルワッフェ侯爵家の援助を受けて商人として働き始めると、大陸の様々な国についても知ることになり、いくつか聞き覚えのある国があったことからまさか……とは思いましたが、この大陸が『ダイアモンドプリンセス〜這い寄る蛇の邪教〜』と所縁ある場所と知ったのはお恥ずかしい話、八年前くらいです。そして、この地があの大陸である以上、あの邪教徒達もこの大陸の各地に潜んでいるのではないかと思い、秘密裏に調査を進めていると、連中に関すると思われる情報もいくつか手に入り、確信に至りました。現在はアンルワッフェ侯爵家と連携し、ライズムーン王国で起こる事件に関わる火族の男を探っています」


「……随分と『這い寄る混沌の蛇』に対して敵愾心を持たれているようですねぇ。連中が危険なのは私も重々承知していますが、それを踏まえてもかなり勇足になっているように見受けられます。……私怨でも混ざっているのでしょうか?」


 『這い寄る混沌の蛇』は確かに危険だ。でも、この世界にはミレーユ達もいる訳で自分が手を下さなくても『這い寄る混沌の蛇』が壊滅する可能性は十分ある。

 にも拘らず、カルパッチョは積極的に『這い寄る混沌の蛇』との戦いに介入している。いくら信頼を築いているとはいえ、アンルワッフェ侯爵に前世の秘密を打ち明けるというのはかなりの博打だ。それほどの危険を冒してなお、彼が連中と戦おうとする理由――それを、彼自身の口から聞かなくてはならない。


「私には小中高と腐れ縁の友人がいましてね。最年少で九段に昇進、竜王、名人、棋王、王将、叡王の五冠を獲得し、その一方で大倭秋津洲帝国連邦で趣味で始めたというチェスでは大倭秋津洲帝国連邦で唯一のチェス・グランドマスターになったという嫌味たらしいほど輝かしい経歴の持ち主でした。……それなのに、素人の私とよく将棋を打ちましてね……その度にこっ酷く負けたものです。――鷹見(たかみ)蒼甫(そうすけ)、彼をご存知ですか?」


「えぇ、存じています。あの方とは非公式戦をした経験がありましたが、とても楽しかった。迷いのない指し手、一見すると悪手……しかし、後々になって響いてくる厄介な一手、変幻自在の攻防はとても楽しいものでした」


「……そういえば、一度五番勝負で全負けたことがあると言っていましたね。棋士ではない素人の方とは聞いていましたが、まさか圓様だったとは。……でしたら、この話もご存知ではありませんか? 鷹見蒼甫変死事件」


 残り三つの冠にも手が届きそうだった、八冠王誕生を目前にした鷹見蒼甫が突如として謎の死を遂げたという事件。

 まあ、彼の親友だからその事件の名前が出てくるのは有り得ない話ではないけど、ここでその名が上がるというのは当然ながら警察当局が辿り着けなかったその先(・・・)についても知っているということ。


「蒼甫にはとある資産家がスポンサーとして付いていました。彼の才能を早くから見抜いていた清華家四之宮公爵家です。……しかし、その家は突如として遺産を巡る骨肉の争いが起こって崩壊、四之宮(しのみや)愛凪(あいな)という公爵令嬢を残して全滅に追い込まれました。その彼女もスラムに堕とされたという噂もありましたが、詳細は分かっていませんでした。……蒼甫は恩のある四之宮公爵家のために、不可解な事件を将棋の対局と並行して調査し始めました。そして、それから五年後、彼は事件の真相と犯人……そして、その犯人に関する重大な秘密を知ったんだと思います。蒼甫と最後に会ったのは、事件が起こる三日前――その時、投げかけられた一つの問いがその犯人の秘密に関わる重要なものでした」



<三人称全知視点>


「なあ、清七。お前って異世界ものが好きだったよな?」


 いつものように蒼甫と将棋を指していた清七は、蒼甫の口から飛び出した予想外な言葉に一瞬耳を疑った。

 将棋のみに生涯を捧げてきた腐れ縁のこの男からそういった言葉が飛び出すとは想定すらしていなかったのである。


「……まさか、お前まで俺のことをオタクって馬鹿にするのか? 俺は中学時代に馬鹿にされて以来、趣味のことは周囲に隠してひっそりとオタライフを満喫してきた。……もし、そのつもりならもう縁を切るぞ」


「いや、そういう訳じゃなくてだな……」


 今よりオタクに寛容では無かった時代、清七はオタクであることを理由にクラスメイトから虐められ、孤立したことがあった。

 その時、腐れ縁の関係にあったにも拘らず全く清七を助けようとしなかった蒼甫には今でも少し恨みを抱いているのだが、他人の心の機微に疎い蒼甫は全く気づいていないようである。


「純粋な疑問として、異世界は実在すると思うか? ……そして、その異世界から転生してくるということはあり得ると思うか?」


 その時の蒼甫の顔は至って真剣だった。荒唐無稽なことを真剣味のある表情で話す蒼甫に、流石に自分を馬鹿にするつもりはないのだと察した清七が僅かに思案を巡らせる。


「……変な宗教にでも宗旨替えをしたのか?」


「俺は生まれた時から無神論者だよ。宗旨替えをしたつもりはない」


「……創作には異世界が登場する作品もあるし、俺もそういった作品は好きだ。だが、それが実在するかって言われたら答えられる奴はいないだろう。実在を確認したって奴がいる訳でもないし、大抵は厨二病扱いされて終わりだ。ってか、『異世界に』転生ならともかく、『異世界から』転生ってどういうことだよ? まあ、ないという訳ではないが、そういう作品の方が稀有だろ? ……ってか、一体どっからそんな話になったんだ」


「俺のことを見つけてくれた四之宮公爵家には多大な恩があることは知っているよな。その恩返しとして、あの家で起きた事件の真相をずっと探ってきたんだ。その関係なんだが、確実な証拠はないし、少し意見を聞きたかっただけだ」


 「一体何がどうなったら四之宮公爵家の悲劇と異世界転生の話が繋がるんだよ!」と問いたかったが、蒼甫から発生するプレッシャーは凄まじく、決して尋ねられる空気では無くなっていた。


「……もうすぐ、真相が分かる気がする。だけど、もし、俺の推理が正しければ……。ここから先は話せない……俺の友人を危険に晒したくはないからな」


 蒼甫は「対局があるから」とその場を後にし、それが蒼甫と清七の最後の会話となった。

 それから三日後、蒼甫は謎の変死体として発見されることとなる。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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