Act.9-408 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜ビオラ・スクルージ商会戦争〜 一章〜ワイゼマル商会の長ヴァルフォンスとの交渉と、ヴァルフォンスの要望〜 scene.4
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン・レインフォール>
「圓様、貴女は言ったわよね? 少なくとも神界という世界に女神オルレアンは存在しないと。しかし、あの生徒会選挙で女神オルレアンは私達の前に姿を見せたわ。……あれは、一体何だったのかしら?」
「リズフィーナ様の疑問に答えたいところですが、まずは神というものについて少し解説をしたいと思います。神と一口に言っても様々な形が存在し、自然界の中で神的な存在として誕生した自然神、その世界……或いは単一宇宙なりマルチバースなりを縄張りとする神話的な力を有する生物、旧支配者や外なる神と呼ばれる区分の存在……まあ、他にも挙げればキリがありませんが。その中で最も皆様が思い浮かべられる神に近い概念は管轄者や監視者と呼ばれる存在ですね。人々の信仰によって誕生した彼らの役目は人の魂の転生を正常に行うための装置――転生システムの守護であるようです。必ずしも信仰された神全てがこの管轄者や監視者と呼ばれる神になる訳ではなく、何かしらの条件があるのではと言われています。その中に女神オルレアンが存在しないことは確認済みです」
……まあ、確認済みというか、神界に赴いた時に居なかったから恐らくいないだろうって話なんだけど。
「では、あの時に現れた女神オルレアンが偽物だったのかというと、私は本物であると解釈しています。彼女は『典幻召喚』という魔法が掛けられた特別な神聖典により誕生した存在です。魔法の効果は『原典』から作品内部のキャラクターの力を借り受けて虚像を召喚するということができるというもの。鍵穴に鍵を差し込むことで発動します」
「……もし、この『原本』がただの神聖典ならばその女神は偽物だと判断したと思うわ。でも、これは貴女が書いた『神聖典』なのよね? だとしたら、間違いなくあの女神様は本物だったってことだわ」
リズフィーナは納得したみたいだけど、アシュガルダ、ヴァルフォンス、マッカルヴァス、クオドラの四人は当然ながら必要となる前提知識がないため、リズフィーナが何故女神を本物だと断じたのか理解できず、「この聖女様は気でも狂ったのか」という目でリズフィーナを見ている。
「先程は一般的な神について話しましたが、ここからはこの世界――ユーニファイドに限定して話していきましょう。先程、オルレアン神教会の創世神話が嘘だと言いましたが、では、本当の創世がどのように行われたのか気になりませんか? まず、この世界は一人の女神――創世の女神ハーモナイアによって創造されました。まあ、実際にはより上位の存在により、『管理者権限』と呼ばれる権能を与えられ、この世界の基となった三十のゲーム、まあ、物語的なものなのですが、それらの要素を繋ぎ合わせる形で創造したというのが正しいのですけどねぇ。しかし、アイオーンとヌースという二人の神によってハーモナイアは倒され、その力のほとんどを簒奪されてしまいました。ハーモナイアを倒した二人の神はその後、残る二十八のゲームに登場する者達に権能を分け与え、唯一神を極める戦争を始めます。この『管理者権限』を持つ存在を、この世界では神と定義します。私は未来の世界からこの時代に転生する際にハーモナイアから彼女の残り香である最後の『管理者権限』を受け継いだので、その条件に合致します。ちなみに、リーリエなどの姿は『Eternal Fairytale On-line』と呼ばれるゲームでのボクの姿ということになりますねぇ」
「……理解し難い話だが、一先ず理解したこととしよう。しかし、何故、女神ハーモナイアはアネモネ殿に神の力を託したのだ?」
「そもそも、この世界の基となった三十のゲーム――これはどのようにして生まれたと思いますか? このゲームは全て、虚像の地球と呼ばれる世界でノーブル・フェニックス社と呼ばれるゲーム会社の手によって作られたものです。開発チームのメンバーは時代の変遷と共に変化はしていますが、代表的なメンバーは高槻斉人、飯島綸那、フルール・ドリス名義を使っている百合薗圓……既にリズフィーナ様が私を圓と呼んだことから察している方もいると思いますが、私の前世は制作チームのメンバーの一人です」
「……つまり、本当に創造主ということですか!?」
言葉にしたのはマッカルヴァスだけだったけど、他の三人も同じくらい驚いている。
まあ、『管理者権限』を持つから神っていうレベルの話だったと思ったら、本当に世界の根幹を作っていたメンバーだったことが判明した訳だからねぇ。
「それと、女神ハーモナイアですが、彼女は元々三十番目のゲームFDMMORPG『SWORD & MAJIK ON-LINE』において、人間のメンテナンスを不要とするエラーチェックおよびゲームバランサー機構としてデザインされたAI、人工知能です。作ったのは化野學という優秀な科学者ですが、彼は前世の仲間でボクが依頼して彼に彼女を作ってもらったという形になります」
「……女神ハーモナイアの実質的な生みの親ということか。なるほど、世界の基となるゲームとやらを作り出し、女神の基となったシステムの制作にも関わり、『管理者権限』も有している。神という以外に形容する方法は確かにないな」
「ただ、ハーモナイアに力を与えたのは『形成の書』と呼ばれる神界の力すら及ばない正体不明の高位システムですからねぇ。『管理者権限』を全て集めたところで届かない高みに存在する訳ですから、困ったらとりあえずあれを崇めておけばいいんじゃないかとは思っていますよ。まあ、そういいものでもありませんけどねぇ。とりあえず、宗教関係でお答えできる範囲はお答えできたかと」
「……確かに、他言無用をすれば命はない。そう仰るほどの話だったな。……このペドレリーア大陸にお越しになったのも『管理者権限』を持つ神と戦うためということか」
「まあ、シャイロックとの戦いは別件ですけどねぇ。流石にペドレリーア大陸の経済を焼け野原にする訳にはいかないということで、一つ一つ商会を巡りつつ補填金をお渡ししようと動いていた最中だったのですが、ヴァルフォンス様から是非国王陛下と面会してもらいたいとお願いされてしまいまして」
「ヴァルフォンスは私とアネモネ殿……いや、圓様を引き合わせることで港湾国セントエルモにとって大きな利益が生まれると考えたのだろう。結果として、我々はこの世界の真実という想定以上の収穫を得たことになるな。……さて、今後のことを考えると多種族同盟に加盟するべきだろう。『管理者権限』を持つ神々の戦いは既にペドレリーア大陸にも波及している。我々も決して他人事ではいられないからな。この世で最も安全なのは圓様の庇護を得ることだろう。勿論、持ちつ持たれつの関係故にこちらも戦力を出す必要はあるが」
「加盟を希望する場合は多種族同盟加盟国のうち三国以上の承認が必要となります。入りたいと希望すればすぐに加盟できる訳ではないですからねぇ。……まあ、これまでに加盟が否決されたことはありませんが」
丁度ここに三つの国の代表者もいるし、この状況で三人が承認すれば加盟は可能ではある。……ただ、現時点での港湾国セントエルモの加盟はあまり望ましいことではないのだけど。
「ただ、加盟するにしてもペドレリーア大陸での臨時班の任務が終わるまでは待って欲しいですねぇ。全て終わった時に、加盟を希望するか否かを問いますので、その時にお答え頂ければと思います」
「では、それまでに国の方針を決めておくとしよう。……ヴァルフォンス、マッカルヴァス、クオドラ、そなた達からは何かこの場で言っておきたいことはあるか?」
「では、私マッカルヴァスから多種族同盟に要望が一つあります。多種族同盟に加盟するにしても情報があまりに無さ過ぎる状況です。もし可能であれば、こちらの使節をベーシックヘイム大陸に派遣し、加盟国の視察をさせて頂きたいのですが」
マッカルヴァスは口にこそ出さなかったものの、その言葉の裏には多種族同盟加盟国が有している先進的な技術や、ペドレリーア大陸にはない文化を学び取り、国の発展に役立てたいという思惑が透けて見える。
例え、多種族同盟に加盟しないという選択をしてもこの使節派遣で得られるものはそのままだからねぇ。……まあ、機密も多いことは承知の上だろうし、ダメ元での依頼なのだろう。
「流石にそれは各国に聞いてみなければ決められないことですが、恐らく許可が出ると思いますよ」
「うむ、加盟が遅くまだまだ僅かな恩恵しか受けていないが、オルゴーゥン魔族王国は使節を心より歓迎するつもりじゃ」
「まだまだ多種族同盟の中では若輩者ですが、ラングリス王国も歓迎致しますわ」
アスカリッドとクラウディアが許可を出したことで、少なくとも二国に関しては視察が可能となった。
「私からは施設派遣が叶った場合、軍事方面を見せて頂きたいと思っている。……こちらは機密が多いこと、難しいことは承知の上だ」
「各国の軍事機密は当然極秘ですが、騎士団の訓練くらいなら参加も可能だと思いますよ。加盟国のみに使い方を広めている特別な技術に関してはお教えできませんが、見て盗むくらいは見逃しましょう。後は各種戦闘娯楽施設は多種族同盟以外にも開放していますので、挑戦お待ちしております」
ボクの提案があまりにも破格だったと感じたのか、クオドラが少し拍子抜けしていた。
……でも、正直闘気や八技を見て盗むことは相当難しいからねぇ。騎士の訓練を視察しても圧倒的な強さに打ちのめされるだけだと思うよ?
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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