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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-402 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜ビオラ・スクルージ商会戦争〜 序章〜ダルカ・クロエフォード、倒れる〜 scene.3

<一人称視点・エイリーン=グラリオーサ>


 ミレーユとシャイロックの因縁は前の時間軸まで遡る。……といってもあれは未来の出来事、現時点のシャイロックには全く身に覚えのないことで逆恨みを受けているって状況なんだけどねぇ。

 革命でダイアモンド帝国が斜陽になっている頃、『商人王』の異名で知られていたのがこのシャイロック・スクルージという男だ。


 ……まあ、彼がミレーユとルードヴァッハとの商談で口にした言葉は利益を優先して追い求める商人という生き物の在り方としては正解と言わざるを得ないものだったんだけど。


 採算度外視で善意のままにダイアモンド帝国に小麦をタダ同然で売るなど、実際に行う商人の方が圧倒的に少なかった筈だ。

 別に商人だって慈善事業でしている訳じゃない。彼らにも生活がある訳で、あの先行き不透明な時代に帝国が復興することを期待し、空手形で小麦をタダ同然で販売するという選択肢はどれだけ善良な商人に声を掛けても失敗に終わるものだったと思う。


 ただ、シャイロックの場合はそれが些か行き過ぎていて、あの帝国の状況を考えても明らかに暴利な金額を提示していたし、彼の「他人の痛み苦しみも、その死すらも商機として見る」という視点は明らかに一線を越えていたんだけど。……まあ、現実には戦争を望む武器商人はかなりの数いるしねぇ。シャイロックの行いはまだマシだと評価できるのかもしれないけど。


 でも、彼だって最高の人生を送れた訳じゃない。人生の絶頂は唐突に終わり告げ、自身は食べ過ぎが原因となった生活習慣病で弱っていき、資産を託した番頭は商才が無かった故に富を食い潰し、最後は誰にも看取られることなく孤独な死を迎えることになるんだけど。……本編でもその辺り、かなりサクッと描いた覚えがあるねぇ。


「あの金の信者……っていうか、金の亡者の性格はボクもミレーユさんと同じくらいは理解しているつもりだよ」


「まあ、創造主様だから当然ですわよね?」


「本来、この案件はもっと遅く行われる筈だった。生徒会選挙でのミレーユさんの宣言、実際あれはもっと後で行われるものだったからねぇ。あの話はダイアモンド帝国の飢饉がもっと侵攻してからのこと。もっと目に見える形で小麦の価値は上がっているから、ダイアモンド帝国と約束を結んでいたダルカさんとミレーユさんとの間に溝を生じさせようとダルカさんに働き掛け、それが失敗したと分かるとダルカさんへの腹いせをしつつ、ダイアモンド帝国……というか、ミレーユさんにクロエフォード商会よりも安い金額で小麦を売る代わりにクロエフォード商会との契約を破棄するように持ち掛ける。勿論、彼の目的は徹頭徹尾、金だからねぇ。彼の狙いはダイアモンド帝国の小麦を仕入れるルートを独占した上で暴利を吹っかけ、ダイアモンド帝国から絞れるだけ絞り取ることだろう。まあ、この時点で既にルードヴァッハさん辺りに話が行っている筈だし、あの聡明な曇り眼鏡なら彼の狙いも看破しているんじゃないかな?」


「あの……圓様? ルードヴァッハ様が曇り眼鏡とはどういうことでしょうか?」


「フィリィスさん、それは気にしなくていいことだよ」


「……では、クロエフォード商会への攻撃が早まったのはわたくしのせい、ということかしら?」


「まあ、影響がないとは言えない。ただ、それは微々たるものだ。基本的にシャイロックはダイアモンド帝国を敵に回らないように立ち回っている。君の知っている唯一の例外を除いてねぇ。……詳しいパーセンテージまでは分からないけど、ミレーユさんの過失は五パーセントくらいはあるかな? 残り九十五パーセントは間違いなくボクにある。発端はミレーユさんのものと同じく例の生徒会選挙。そこでボクが打ち出したセントピュセル学院の改修工事の件だ。あの話で利益を上げることになるのは建築業者だからねぇ。彼からしたら、自分がいないところで多大な利益を上げるのが気に食わないのだろう。自分ほどの商人に声が掛からないのはおかしいとか、新人者の商人の癖に大きな顔をしているとか、色々と思うところはあるんだろうけど、勿論、それは全て折り込み済み。あの生徒会選挙の一手はシャイロックを釣り上げるための仕掛けでもあったからねぇ。……で、上手く餌に掛かってヘイトを稼いだんだけど、どうやら想定していた以上にクロエフォード商会に対するヘイトも稼いでいたらしい。……いや、あの件は建設部門を持っていなかったクロエフォード商会にも話をしていないし、他のスクルージ商会と肩を並べる五大商会のいずれにも話はしていないんだけどねぇ」


「……圓様がよく使う手ですね。私としてはあんまり率先して悪者になり、身を危険に晒す作戦はおやめ頂きたいのですが」


 ソフィスに心配と呆れがない混ぜになった顔を向けられたんだけど、これが一番被害が少なく効率が良いからねぇ。変える気はないかな?


「さっきは療養中に押し掛けるのは申し訳ないと言ったばかりだけど、事前に考えていた対抗策を実行するためにはダルカさんの協力……とちうか作戦の共有が必要となる。フィリィスさん、どこかで面会の機会を設けてもらえるようにフィリィスさんの方からお願いしてもらえないかな?」


「分かりました。お父様にその旨、手紙でお伝えしますね」



 フィリィスからスクルージ商会がクロエフォード商会に攻撃を仕掛けたという話を聞いてから三日後、ボクはアネモネの姿でソフィスを伴ってクロエフォード商会が駐留している街へと向かった。

 ちなみに、ミレーユは頼りになる知恵袋……というか、最早『帝国の深遠なる叡智姫』の本体と言っても過言ではないルードヴァッハを呼び出した上でミラーナを伴って別働隊で同じ街に来ている。この機に乗じて「ミラーナに教えを施してほしい」とお願いするつもりらしい。


「これは、ミレーユ様……。わざわざいらしていただけるとは……」


 ミレーユは事前にお見舞いに行くことをフィリィスに伝えてなかったらしく、ダルカはミレーユの当然の来訪に驚き、宿屋のベッドの上、慌てて起き上がろうとする。

 そんな彼を片手で制し、ミレーユは優しげな笑みを浮かべた。……こういうところは、やっぱり一国のお姫様だと思うよ。


「ご無事なようで何よりですわ。お加減はいかがかしら?」


「……娘から聞いたのですか? 申し訳ございません。ただ、疲れが出てしまっただけで、本当に大したことはないのです。姫殿下に足をお運びあようなことでは……」


「気にする必要は全くございませんわ、ダルカ殿。貴方は我が帝国にとって重要な方――文字通り生命線ですわ。それに貴方はわたくしの大切な読み友、フィリィスのお父様ですわ。貴方の元気がないと、フィリィスと読書談義もできなくて楽しくないんですの」


「ミレーユ姫殿下、ご厚意に感謝致します。……アネモネ閣下、創造主たる貴方様を呼びつけるような真似をしてしまい申し訳ございません」


「まあ、本来ボクが出向く案件だからねぇ。目算を誤り、迷惑を掛けたのはボクだから出向くのは当然のことだよ」


 本人は大したことがないと言っているけど、顔色はあまり良くない。

 勿論、それはソフィスも見抜いていたことで一言断りを入れてからダルカに近づくと光属性の回復魔法を掛けた。


「気休めですが、少しは体力を回復できたと思いますわ」


「……これが、魔法というものですか。私のような者のためにありがとうございます、ソフィス様」


「いえいえ、この程度のこと、些細なことですわ」


 今のソフィスの力は聖女にも匹敵する。ダルカに掛けた疲労回復魔法「心身全快(ヴァイタル・ヒール)」は、ソフィスがよく自分に使っていることもあって(ソフィスが無茶できる要因。扱いは栄養剤みたいな感じかな?)かなりの練度だ。……まあ、こういう魔法に頼らないのが一番なんだけどねぇ。

 本人は謙遜しているけど、実際、疲労が綺麗さっぱり消える凄い魔法ではあるんだよ?


「わたくしで力になれることがございましたら、遠慮なく言って頂きたいですわ」


「しかし、その……本当に大したことではないのです。あくまでも商売上のことですので……」


「でも、妨害を受けたとお聞きしましたわ。もしや、何か暴力的な攻撃を受けたりとか……例えば、盗賊を雇って襲わせたり……」


「いえ、決してそのようなことはございません」


 慌てた様子でミレーユの言葉を否定するダルカ。ミレーユは直接的な方法を取ったと思ったみたいだけど、そういうあからさまなことをするのって創作の中だけだと思うんだけどなぁ。……まあ、前例はあるんだけどさぁ。ゼルベード商会とか、ガネット商会とか……まあ、後者は隠れ蓑企業で本業はマフィアだけど。


「クロエフォード卿。我が主、ミレーユ姫殿下は、聡明な方です。どうか、今、貴方の商会が置かれている状況をご説明ください」


 ダルカはできる限りミレーユの力を借りたくない……というか、巻き込みたくないと思っていたみたいだねぇ。

 でも、ここでルードヴァッハが部屋の入り口に現れたことで流れが変わった。


 ――実に良いタイミングで来てくれたねぇ。


「ああ! ルードヴァッハ、来てくれたんですのね」


「遅くなりました、ミレーユ様。……アネモネ閣下、私の方から推論を述べさせてもらってもよろしいでしょうか?」


「ん? あっ、別に断らなくても良いよ。とりあえず、ルードヴァッハさんの想定とボクの想定していることは全く同じとだけ言っておこうか?」


「では僭越ながら……商売上のことは言い辛いということであれば私の方で推論をお話しさせて頂きますので、どうかそのままお聞きください」


 ダルカから聞き出すのは厳しいと即座に判断したルードヴァッハは推論を述べることにしたみたいだねぇ。

 その答え合わせの前に、ボクがルードヴァッハの推論とボクの推論が一致……というか、ルードヴァッハの推論が正しいものであることを明らかにしておく。


 ……まあ、ボクにとっては推理するまでもなく知っていることなんだけどねぇ。一応、この世界の元となったゲームを作った訳だし。それに、諜報員達にも裏を取ってもらったしねぇ。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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