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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-386 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜スクライブギルド編〜 File.5 scene.1

<三人称全知視点>


 アンブローズ男爵領のスクライブギルド攻略の二日後、アクア、ディラン、マグノーリエ、プリムヴェール、ジョナサンにリオンナハト、カラック、アモン、マリア、リオラ、リズフィーナというゲストを加えた臨時班の面々は独立港湾都市セントポートに潜入していた諜報員達の時空魔法で独立港湾都市セントポートの隠れ家に転移し、隠れ家の会議室で独立港湾都市セントポートに派遣されている諜報員を統括するオウロアーナから説明を受けていた。


「スクライブギルドの存在が明らかになってから、我々は廃港を中心に捜査を進めてきました。『這い寄る混沌の蛇』は反体制の邪教徒――人の目を避ける筈ですからね。現に、王家が『這い寄る混沌の蛇』に加担していた農耕国ウェセスタリス以外に置かれたのは人々から見放された場所かそもそも人が行くことがない秘境でした」


 デューグモント王国の廃都は政治主導権争いによって相次いで生じた血の惨劇により、国民達から呪われた土地と見做されて放棄された。


 アンブローズ男爵領の場合はスタンピードによって滅び、その後呪われた村という噂が流布した廃村に置かれていた。


 ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸の中間に位置する無人島はペドレリーア大陸からラスパーツィ大陸からも離れた秘境にあり、通常であれば発見すらされない場所だ。


 王城の地下というあまりにも大胆な場所にスクライブギルドを設置するという事例は「灯台下暗し」を狙った極めた稀な事例で、基本的には人の寄りつかない場所に設置されていると考えた方が良いというのが圓達の見解だ。『這い寄る混沌の蛇』という組織の性質を踏まえても目立つ場所に設置しているとは考えにくい。

 更に言えば、独立港湾都市セントポートはオルレアン神教会とも深い繋がりを持つ地域である。オルレアン神教会の影響力の強い地域にスクライブギルドを配置しているという時点で盲点を突くという狙いは達成しているため、これ以上の盲点を突く罠は仕掛けられていないだろうと圓達上層部は考えていた。


「それで、実際にスクライブギルドは発見できたのかい?」


「えぇ、それは勿論。元々、我々は情報収集をしておりましたからその情報を精査し、怪しい場所を実地調査するだけですから、スクライブギルドの情報を得てから二日でスクライブギルドの場所を発見しましたわ。場所はロックポートという廃港――かつては漁港として賑わいを見せていたものの、現在、独立港湾都市セントポートの海の玄関口となっているセントラルポートが整備されたことで徐々に活気を失い、最終的に放棄された港の一つのようです」


 アモンの問いにオウロアーナが廃港になった経緯を含めて答える。


「ということは、他にも似たような港がいくつもあるということか?」


「リオンナハト殿下の仰る通りですわ」


「では、何故数ある廃港の中でロックポートが怪しいと考えたんだ? 他にも条件に当て嵌まる港はある筈だが」


「それは、幽霊船の噂があるからですわ」


 まさか、ここで怪談話が出てくるとは想定していなかったマリア達の顔が僅かに驚きの色を示した。


「幽霊船ですか?」


「そんなものが、本当に実在するのですか?」


 マリアに続いて従者のリオラが不思議そうに首を傾げつつ疑問を口にした。


「まあ、実在するかは分かりませんが、火のないところに煙は立たない……正体が枯れ尾花か本物の幽霊かは別として何かしらはあると思いますが、重要なのはその噂が存在するということですわ。実際、噂の影響もあって廃港に近づく者はゼロという状況が続いています……まあ、無かったとしてもわざわざ廃棄された港に近づくような方の方が稀だと思いますが。もし、何者かが意図的に情報を流したとすれば、それは何故でしょうか?」


「その場所に一般人を近づけさせないため……用心に用心を重ねて『這い寄る混沌の蛇』がその噂を流布したということかしら?」


「まあ、私個人は少しやり過ぎだと思いますけどね。そもそも廃港に近づく人が皆無なのに、噂を流した人物がいる――矛盾しているとは思いませんか?」


 噂が出るということは、目撃者がいるということだ。しかし、実際に目撃するためにはわざわざ廃港に赴く必要がある。

 廃港マニアが立ち寄ったなどといった可能性を考えることもできなくはないが、流石にでき過ぎている。また、海からやってくる幽霊船となれば他の港で同じような目撃証言が出ていないのもおかしい。


「おいおい、少々杜撰過ぎやしねぇか? あのタチ悪い邪教徒共もこういう失敗をするんだな」


「それで? 今回の臨時班の任務はスクライブギルドに赴いて潰せばいいってことなんだな?」


「いえ、アクア様。……今回の件、我々はデューグモント王国の廃都のパターンではなく、アンブローズ男爵領のパターンなのではないかと考えています」


「それは面白いね……まさか、港湾都市セントポートに『這い寄る混沌の蛇』と繋がる裏切り者がいるだなんて」


 プリムヴェール達良識を持ち合わせた臨時班のメンバーが「笑顔でそういう不謹慎なことを言わないで欲しいなぁ」と内心思う中(ジョナサンに目をつけられたら面倒なので決して口に出したりはしない)、リズフィーナはあまりの衝撃に固まってしまった。


「独立港湾都市セントポートはオルレアン教国の飛び地――この地に『這い寄る混沌の蛇』の協力者いるなんてあり得ないわ!!」


「勿論、何の証拠もなくオルレアン教国と深い繋がりのあるこの地を貶めるような発言をしている訳ではありませんわ。……独立港湾都市セントポートの都市長の役目を担う司教の館――そこに潜入した諜報員がとある記録を発見しました。二十三年前から十六年前に掛けてこの独立港湾都市セントポートでは神聖典の写本を担当するスクライブが何人も行方不明になるという事件が起こっていました。犯人は独立港湾都市セントポートの政と神殿管理を担うオルレアン神教会の代理人――ザウーラス・ポーシヴ・マクヴァレン司教の叔父、つまり前司教ルーシヴァ・ポーシヴ・マクヴァレンの弟のマルテイン・ポーシヴ・マクヴァレンだったそうですわ」


「だってさぁー、リズフィーナ様、知ってたぁ?」


 ジョナサンのあからさまな挑発が全く聞こえないほどリズフィーナはパニックになっていた。

 オルレアン神教会の一員たるマルテイン司祭がスクライブの誘拐事件に加担していたという事実も衝撃的だが、それ以上に衝撃的なのはその事実をオルレアン神教会が一切把握していなかった点だ。


 司教の館にマルテインの罪に関する資料があったということは、前司教ルーシヴァや現司教のザウーラスはその事実を知りながらオルレアン神教会への報告義務を行った――つまり、自分達のところで握り潰したということである。

 当時の司教ルーシヴァがマルテインとグルで民達からの信頼を取り戻すためにマルテインという分かりやすい犯人をでっち上げたのか、独立港湾都市セントポートの汚点であるスクライブ誘拐事件を本国に知られたくなかったのか――理由までは分からないが、もし、オウロアーナの言葉が事実であれば見逃すことはできない。


「リズフィーナ様、いかがなされますか? もし、『這い寄る混沌の蛇』と繋がりがあるのであれば処分(・・)の対象になりますが」


 当たり前のように処刑することを前提とするオウロアーナに恐怖を覚えつつも、リズフィーナは「一度会って話をさせてもらいたいわ。……そして、仮に『這い寄る混沌の蛇』の信徒であっても処断せずに捕まえたい」と意思を表明した。


「……致し方ありませんわね。ただし、それは相手が捕縛可能な場合に限ります。流石に、貴女方を守りながら相手にも手心を加えてというのは我々にもかなりの負担が掛かりますからね」


 『這い寄る混沌の蛇』の討伐を目的として動いている多種族同盟の臨時班と捕縛を目標としているリズフィーナ達では方針が百八十度違う。

 多種族同盟側……というより、諜報部隊フルール・ド・アンブラル側はミレーユ達の方針を尊重してかなり譲歩しているつもりだが、それでもリズフィーナ達というゲスト達の身の安全と敵の命を天秤に掛ければ、彼女達の目の前での討伐も止むなしという立場を取っている。


 「あの邪教徒達に改心の余地などない。さっさと始末してしまえば良いものを」などという本心を隠してオウロアーナはにっこりと微笑んだ。


「……ところで、そのスクライブ達はマルテイン司祭の逮捕後に保護されたのか?」


「プリムヴェール様、残念ながら行方不明となっています」


「しかし、それだけのスクライブ達を一体どこに隠したのでしょうか? 流石に独立港湾都市セントポートのどこかに監禁していた可能性は低そうですよね?」


 マグノーリエの問いの答えは独立港湾都市セントポートで得られた情報だけでは出せないものだった。

 しかし、諜報員達が各地のスクライブギルドで入手した情報を総合すれば、答えが見えてくる。


「スクライブ達の移送先はおそらくペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸の中間に位置する無人島にあるスクライブギルドでしょうね。『這い寄る混沌の蛇』は大量の写本を用意する必要があった――そのために独立港湾都市セントポートからスクライブを誘拐、洗脳して写本を行わせていたのでしょう。あれだけ巨大な街を地下に何故建造しなければならなかったのか、ずっと我々も疑問に思っていましたが、この誘拐事件の情報を得たことでパズルが組み上がりました」


「大量の写本が必要だったのは、俺達――というか、圓との戦いのために戦力が必要だったからだろうな。しかし、手書きよりももっと効率の良い写本の方法が発見され、スクライブギルドが分割して置かれるようになった……ってところか?」


「ディラン様の仰る流れでしょうね。……フランシスコ・アル・ラーズィー・プレラーティ、オーレ=ルゲイエ、アダム・アドミニスト・カリオストロ・フィリップス・アウレオールス・テオフラストゥス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイム・アルケミカル・ニコラス・フラメル・サン=ジェルマン・ヴァイスハウプト――優秀な技術者達を味方に引き込んだことで活版印刷機を作れるようになったのでしょう。そうなれば、人力に頼る写本はお払い箱――マルテインが討伐されたのを機に、新たなスクライブの誘拐からは手を引いたのでしょうね」


 『這い寄る混沌の蛇』の発展の流れの一部が明らかになったところで会議は終了し、リズフィーナ達は司教の館に向かうこととなった。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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