表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1235/1358

Act.9-381 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜スクライブギルド編〜 File.4 scene.3

<三人称全知視点>


 今回の作戦に参加する諜報員はジェルメーヌ、ガブリエーレ、ヨゼフィーネの三人だけとなっているが、実際にはそれ以外に数十人の諜報員が作戦成功のために動いている。


 彼女達の仕事は陰陽術や魔法などを駆使して今回のアンブローズ男爵邸への襲撃を隠すことであった。

 これが正規の手段での大捕物であれば問題はない。しかし、今回、ヴェモンハルト達が行おうとしているのは「暗殺」という非合法な手段を用いたアンブローズ男爵の排除と、アンブローズ男爵の有する情報の獲得である。


 非合法な手段で国の平穏を守っていることは絶対に知られてはならないこと――【ブライトネス王家の裏の杖】はそれを肝に銘じて常に任務をこなしてきたため問題はないが、今回はラインヴェルド達というどうしても目立ってしまう最悪なゲスト達がいる。

 そのため、ラインヴェルド達が暴れても問題が生じないようにアンブローズ男爵邸への王都近隣の者達の注目を逸らす必要が出てきたのである。


「では、我々とNBr(ニュー・ビーアール)-熾天(SERAPH)-7(SEVEN)・イヴ=マーキュリーは後ろに控えておりますので、どうぞいつも通り任務を遂行してくださいませ」


「……合同任務という扱いですが、そちらはあまり動かれるつもりはないのですね」


 新型ブリスゴラの実験ということでイヴ=マーキュリーの新型ブリスゴラを全面に出すと予想していたヴェモンハルトはジェルメーヌの言葉を意外そうに受け取った。


「流石に混沌の指徒クラスでなければ良い戦いは期待できないでしょうからね。ラインヴェルド陛下、オルパタータダ陛下、エイミーン陛下、今回の任務の前半戦――アンブローズ男爵との戦いはスザンナ様にとって因縁の相手を倒し、前へと進む重要なものとなります。くれぐれも前に出過ぎないようにお願い致しますわ」


「ちっ、分かってるって。まあ、どの道、ただの使用人程度じゃ戦闘じゃなくてただの蹂躙になっちまうしなぁ……じゃあ、いっそのことその新型ブリスゴラと戦わせてくれよ」


「そう仰ると思いましたわ。圓様より許可は頂いておりますので、【ブライトネス王家の裏の杖】の皆様が任務を終えるまでの間、どうぞ極上のバトルをご堪能ください。――ガブリエーレさん、ヨゼフィーネさん、お二人は保護対象の保護に向かってください。私はここでラインヴェルド陛下達と新型ブリスゴラの戦いのデータを撮りつつ、一人も逃げ出す者がいないように目を光らせておりますので」


 「お前ら結局、何をしにきたんだよ」という視線をヴェモンハルト達はラインヴェルド達に向けた後、保護対象の保護の任務を請け負ったガブリエーレとヨゼフィーネに少し遅れる形で屋敷へと突入した。

 ちなみに、アンブローズ男爵邸に注意を向けさせないようにする役割の諜報員達は同時に屋敷からの脱走者を討伐する任務を負っている。表門を封じたジェルメーヌを含めるとアンブローズ男爵邸を囲む巨大な包囲網が完成しており、屋敷からの脱出はこの時点で陸も空も現実的ではなくなっていた。また、脱出用の地下通路も見気を使って事前に調査が行われており、入り口全てに諜報員が派遣されているため、戦闘を行わずに脱出することは不可能である。


 この襲撃の段階で既にアンブローズ男爵陣営は詰んでいるのだが、襲撃を受けるアンブローズ男爵だけでなくヴェモンハルト達【ブライトネス王家の裏の杖】の面々もその事実に気づくことはできなかった。


「――ッ!? お嬢様。それに、その方々は――」


「クリムゾン・プロージョン」


 屋敷に入った直後、使用人の一人が見知らぬ者達を伴ったスザンナの姿を見つけて声を掛けようとする……が、その瞬間、スザンナの放った「クリムゾン・プロージョン」が発動して使用人の体内の血液の液体成分である血漿が気化し、その圧力で筋肉と皮膚が弾け飛んだ。


「アアアアァッよくもマドッグを殺しやがってぇ――」


 その使用人と仲が良かったのだろう使用人の男が叫びながら血走った目をスザンナに向けた直後、使用人の男の声が不自然に途切れ、使用人の男の身体が弾け飛んで鮮血の華を咲かせた。


「アンブローズ男爵が多種族同盟と敵対する邪教『這い寄る混沌の蛇』と繋がりがあることが判明した。アンブローズ男爵家の行いはブライトネス王国への叛逆行為――よって我が国の汚点は我々の手で殲滅するッ!」


 恐怖と怒り――様々な感情がない混ぜになった視線を向けていた使用人達の思考はスザンナが大声で叛逆者達の殲滅を宣言した瞬間一様に停止し、次の瞬間、様々な感情が使用人達の思考を駆け巡った。

 「何故、こんな目に」と嘆くメイド、「逆賊だと!? 巫山戯るんじゃねぇぞ!」と憤る者、「こうなったらお嬢様達を突破して屋敷から逃走するしかねぇ、アンブローズ男爵のことなんか知ったことじゃねぇぞ!」と覚悟を決める者――そんな使用人達にスザンナは冷たい視線を向ける。


「お嬢様、何故、このようなことを……わ、私達は邪教徒などと関わりは――」


「確かに、邪教徒と繋がりを持つ使用人はほんの一握りだろう」


 スザンナの言葉に安堵の表情を浮かべるメイド。しかし、スザンナの視線は依然として冷たいままだ。


「エフィニア=アンブローズ――私がアンブローズ男爵家を去った後、アンブローズ男爵の期待を背負わされてしまった不運な子だ。魔法省で一度彼女に会ったことがある……あの子は昔の私と同じ顔をしていた。自分の思い通りにならなければ罵声を浴びせ、躾と称して暴力を振るう……そんなアンブローズ男爵を非道だと思った者達はアンブローズ男爵と真っ向から戦って職を追われたか、自ら辞めたかのいずれかだ。今、ここに残っている使用人はこの状況を目の当たりにしても何も感じない心無き者か、アンブローズ男爵と共に私の弟や妹達を、アンブローズ男爵の被害者たる女性達に酷い仕打ちをしてきた者達だ。今回の断罪、私怨が籠っていないのかと問われれば嘘になる。――恐怖か、腐ったアンブローズ男爵家に触れて感覚が麻痺ってしまったかは知らないが、わざわざ殺さないという選択肢を取る価値がないと私は思うのだ」


 「クリムゾン・プロージョン」の呪文と共にメイドの身体が弾け飛ぶ。

 使用人達もこの時点で言葉でどうこうできる状況ではないと確信したのだろう。魔法を使える使用人達は交戦の姿勢を取り、残りの使用人達は逃走を選ぶ者と武器を取りに行く者に分かれた。


「逃がさないっすよ! 真なる凍結(トゥルー・フリーズ)


骨喰の焔華(ソドム・ブレイズ)焔球(ファイアボール)よ〜!」


魔導武装マジカル・アーマメント。――さあ、エレガントに切り伏せてあげよう! 分子裁断モレキュール・ディバイド!」


酸性雨(アシッド・レイン)……酸性槍(アシッド・ランス)


クマの滑撃シヴォラーレ・リゼリゼ


「高速錬金術式――武装硬化」


叢雨忍術(レインファントム)篠突く手裏剣(しのつくあめ)


 しかし、相手はブライトネス王国を暗殺という形で影から支えてきた【ブライトネス王家の裏の杖】である。

 逃走を選んだ者達と武器の調達のために戻ることを選んだ者達――その場を離れる選択肢を選んだ者達はアゴーギグの魔法によって一瞬にして均一に凍結させられて仮死状態に追い込まれた。このアゴーギグの魔法を合図にアンジェリーヌ、ヒョッドル、シュピーゲル、リサーナ、カトリーヌ、レインが一斉攻撃を仕掛け、使用人達の抵抗を許さずものの一分で使用人達を全滅に追い込んだ。


 その後も騒ぎを聞きつけた使用人達と幾度か交戦することになったものの、一度も使用人達の攻撃を許さず一方的な蹂躙劇と成り果てた。

 当初は『這い寄る混沌の蛇』と繋がりを持つ信徒や蛇導師が使用人に紛れ込んでいる可能性を疑っていたヴェモンハルト達だったが、使用人の八割を討伐し終えた時点で予想が外れたことを悟ったようである。……まあ、悟ったところでやることは変わらないのだが。



「賊が侵入しただと!?」


 ユナイクは使用人の一人から「未知の敵の侵入を許してしまった」という報告を受け、怒鳴り声を上げた。

 苛立ちを隠そうとしないユナイクは頭に青筋を浮かべたまま使用人の胸倉に掴み掛かる。


「だったらとっとと取り押さえろ! アンブローズ男爵家の使用人ともあろうものが何をしているッ!」


「し、しかし、対処に向かった使用人は全滅……叫び声から確実に敵の侵攻を許したことは分かっているものの、調査に赴けば殺される可能性が――」


「だから何だというのだ! 命を張ってでもアンブローズ男爵家の利益のために働くのが貴様達使用人の役目だ! 分かったらさっさと働けッ! この愚図共が!!」


 実質、ユナイクから死刑を宣告された使用人達は顔を真っ青にしながら僅かに後退った。


「また使用人に暴言や暴力を振るっておられるのですか? 男爵」


 絶体絶命の状況に追い詰められた使用人達にとって、その場にそぐわない軽やかな声と共に現れた黒髪の妖艶な雰囲気の美女はまさに救世主だった。

 このタイミングで何故、彼女が現れたのか? 何故、その顔に僅かながら返り血が付いているのか? そういった疑問は使用人達の脳裏に浮かぶことすらない。


「くっ、スザンナ。何故、お前がここに!? まあ、いい! 出来損ないのお前にもできることはあるだろう? 今すぐに屋敷に侵入した賊をどうにかしろ!!」


「あら、折角久しぶりに娘が実家に帰ってきたというのに酷い言い草ですわね」


「何が娘だ。俺の言うことを何一つ聞けないお前など最早娘でもなんでもない。もう一度、娘だと思ってもらいたければヴェモンハルト王子と婚約しろ! さっさと既成事実でも作って子をなせ」


「貴方のような人に娘と思ってもらわなくても構いませんので、そのお話はお断りさせて頂きますわ。しかし、男爵は面白いことを仰りますわね」


 何がおかしいのか「クスクス」と笑うスザンナに「何がおかしい!?」とユナイクが激昂する。


「先程、私に男爵は賊を始末しろと仰りましたが、それは無理な相談ですわ。何故なら、ここに至るまでにアンブローズ男爵家の使用人を物言わぬ死体へと、肉塊へと変えてきたのは私達なのですから」

 お読みくださり、ありがとうございます。

 よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)


 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ