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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-373 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜スクライブギルド編〜 File.1 scene.4

<三人称全知視点>


「アイツが噂の混沌の指徒か。ざっと見積もっても冥黎域の十三使徒相当か?」


「……おかしいわね、海洋都市レインフォールでレミィシアさんが交戦したラム=バカルディは確かに強かったけど、ここまで強い感じはなかったわ」


 黒華が混沌の指徒に対して抱いた印象は普通の蛇道士よりも少し強いレベル――冥黎域の十三使徒に僅かに劣る実力者というものだった。

 しかし、パヴスェルの強さはその領域を逸脱している。


 かなりの練度に達した見気の使い手であるラインヴェルド、オルパタータダ、菊夜、沙羅、雪菜、黒華が彼の気配に気づけなかったのだ。その実力は冥黎域の十三使徒――場合によっては冥黎域の十三使徒に名を連ねている一部よりも実力が高い可能性がある。


「……あの、流石に少しおかしくはないでしょうか? 瞬間移動を使ったとしても、剣の出現した位置とは別の位置に姿を現していた筈ですから、名乗りの瞬間まで気づけなかったということは、私達の見気の察知を掻い潜っていたということですよね? そんなことが本当に可能……あっ」


 ここで言葉にして雪菜も気づいたのだろう。雪菜だけでなく、ラインヴェルド、オルパタータダ、黒華――新年祭のパーティに参加していたメンバーの顔が強張る。


「シャッテン・ネクロフィア・ シャハブルーメ、『縮小大臣(ミニ・ミニスター)』ラクツ=ファーナー……もしかして、お前、奴らの仲間か?」


「お見事! 実に見事です! せっいかぁい! ですよ!! これは一応の上司に当たるロベリア様にもお伝えしていないことですが、わたくしは互助倶楽部『綺羅星の夢』の一員、その中でもシャッテンさんとラクツさんと行動を共にしています! お見事ついでに良いことをお教えしましょう! シャッテンさんの仕事は死者蘇生、ラクツさんの仕事は完全なる隠蔽と魔導機兵(エーテリアス)の制作と『縮小魔法(ミニ・ミニマジック)』の使用、そしてわたくしの仕事は残留思念回収用の魔導機兵(エーテリアス)の転送です! わたくしの武器、この神話級(ゴッズ)――『ニコライの外套』には一度認識した空間と外套の布面を接続する力があるのです!! ああ、この神話級(ゴッズ)は私物、自らの力でこの領域まで至らしめたものです。その力を認められて神話級(ゴッズ)を下賜されている冥黎域の十三使徒とは違いますからね!」


「……つまり、裏を返せば自力で神話級(ゴッズ)を作り出せる化け物ということね」


 『ニコライの外套』の効果は凶悪だが、それ以上に自力で神話級(ゴッズ)を生み出すことができる実力の方が危険であると菊夜は判断したようだ。

 味方には覇王の霸気が覚醒している猛者が六人もいるが、これだけの人数差がある中でも油断できる相手ではないと確信し、菊夜は瞬時に生み出した糸を束ねた槍に覇王の霸気を変化させた黒い稲妻を纏わせた。


 ラインヴェルドとオルパタータダも油断できない相手だと察し、好敵手相手に獰猛な笑みを浮かべながら油断なく覇王の霸気を纏わせた武器を構える。


「『管理者権限』を持つ元神に最強の魔法少女、他にも『王の資質』の持ち主がひー、ふー、みー、よー、いつ……ほう、未覚醒者を含めて七名ですか! 素晴らしい! そうでなくっちゃ! では、始めていきましょう! 最高の奇術を!!」


 マントをバサっと広げた瞬間、無数の木の槍がラインヴェルド達へと放たれる。

 その全てが武装闘気と覇王の霸気を纏っており、ラインヴェルド達も求道の霸気を纏わなければかなりのダメージを負ってしまうレベルだ。当然、王の資質を持たない弓月と千聖、『王の資質』が覚醒していないテティスとフィロレンティアでは回避以下の選択肢を取ることができない。


時間停止ワールドクロック・ロック!!」


 木の槍による攻撃から全員を守り切ることは物理的に不可能だと判断した黒華は時空魔法を発動してラインヴェルド達に時空耐性を付与した後、砂時計付きの盾である「時停の盾クロノス・ヴェルザンディ」を傾けて世界の時間を停止させた。

 いくら強力な能力を持っていても止められた時間の中で一方的に攻撃をされては勝ち目がない。時間を一度止めてしまえば無防備を晒しているパヴスェルの討伐も容易だろうと黒華は考えていたのだが……。


「わたくしに時間魔法は通じませんよ! 木の槍を止められたとしても次の攻撃はどうでしょう!!」


「「威国覇槍(イコク・ハソウ)!!」」


 そう高らかに宣言して新たな攻撃を仕掛けようとしていたパヴスェルは菊夜と沙羅が放った「威国覇槍(イコク・ハソウ)」に飲まれて消滅した。

 黒華が時間停止で木の槍を止めつつ反撃に打って出ることを読み、事前に菊夜と沙羅の二人で「威国覇槍(イコク・ハソウ)」を放つ準備をしていたのである。


 結果として想定とは違った形にはなったものの、込められた武装闘気や覇王の霸気の量は咄嗟に放ったため不十分な形だったとはいえ菊夜と沙羅の放った「威国覇槍(イコク・ハソウ)」はしっかりとパヴスェルに命中していた筈だ。

 咄嗟に武装闘気と求道の霸気で防御を固めたとしてもあの攻撃は耐え切れるものではない。


 菊夜達の予想通り菊夜と沙羅の攻撃を浴びたパヴスェルは綺麗さっぱり消滅し、攻撃の凄惨さをありありと伝える半円錐状のクレーターだけが残されていた。


「目標消滅……今の攻撃でパヴスェルを撃破することができたと考えるべきかしら? ……それとも、『ニコライの外套』で転移されたと捉えるべきかしら?」


「まあ、恐らく後者だろうな。菊夜達の攻撃から逃れられず、『威国覇槍(イコク・ハソウ)』を食らって消滅したってのはちょっと希望的観測が過ぎる気がする」


「僅かな残留思念も残されていないようですね。パヴスェルには逃げられたと考えるべきでしょう」


 菊夜とラインヴェルドの意見を裏付けるように周囲に残された残留思念――僅かな霊力を観測していたフィロレンティアが結果を報告する。

 厄介な敵を取り逃してしまった菊夜と沙羅の表情が僅かに翳る。


「まあ、気落ちすることでもねぇよ。敵の情報を得られただけでも大きな戦果だ。それに、当初の目的であるスクライブギルドの破壊も達成している。それに、あのまま長期戦になっていたら負傷者なり死者なり大きな被害が出ていた筈だ。『命大事に』が基本の圓の方針から外れることになるし、犠牲を払って戦果を得てもきっと喜んではくれないだろうぜ」


「圓様はそういうお方ですからね。……皆様、お疲れ様でした。残りの雑事は我々諜報部隊フルール・ド・アンブラルが引き受けさせて頂きます。任務の臨時報酬の後ほどお届けに参りますので、しばらくお待ちください」



 スクライブギルドの壊滅任務が終了した後、ラインヴェルド、オルパタータダ、菊夜、沙羅、弓月、千聖、雪菜、黒華、テティス――臨時班の面々はベーシックヘイム大陸へと転移した。


 一人、地下のスクライブギルド跡地に残ったフィロレンティアは手早く戦闘の動画を添付した任務の報告メールを圓に送ると螺旋階段を登り、王城で任務に当たっていた諜報員達とスクライブギルドへ通じる他の入り口を見張っていた諜報員達と合流する。

 既に王城内に潜んでいた『這い寄る混沌の蛇』の関係者達は全て諜報員達の手によって葬られていた。


 農耕国ウェセスタリスで活動する諜報員達の纏め役を引き受けていたフィロレンティアは諜報員達から報告を受けた後、王宮の門前で他の騎士達と共に待機していたリチェルド兵士長の元へと向かう。


「スクライブギルドだったか? その様子だと邪教徒の拠点は無事に制圧できたんだな?」


「残念ながら幹部級の賊一人を取り逃しましたが、当初の目的であるスクライブの壊滅は完了致しました。グエルヘヴンの身柄は一度我々の方で預かった後、オルレアン教国に移送することとなります。最終的な処遇はその後の多種族同盟、ダイアモンド帝国、ラージャーム農業王国、オルレアン教国の合議で決定することとなりますので、それまでしばらくお待ちください。……王を失い、これから国は混乱に陥ることになることが想定されます。我々にできることは然程ありませんので、皆様のお力で混乱に対処して頂けたら幸いです」


「……まあ、そりゃ貴女方が動くってことはどこかで血が流れるってことだしな。国王陛下が邪教に関与し、その咎を受けた……その正しい行いを咎めることはできない。色々と文句を言いたいことはあるけどな。……民の不安が長く続くのはよろしくない。できるだけ早く処遇を決定してくれると助かる」


「承知致しましたわ。その旨、必ずや我らが上司にお伝えさせて頂きます」


 そうは言うものの圓もかなりの仕事を抱えている。

 セントピュセル学院への潜入と王女宮筆頭侍女の職務、商会長としての仕事で多忙を極めており、流石に最低でも農耕国ウェセスタリスの処遇を決める会談の開始までに一週間ほど掛かると予想していたフィロレンティアだったが、報告を受けたその日のうちに圓はリズフィーナ経由でバーデルゲーゼに、直接ダイアモンド帝国を訪れてマティタスに会談への参加を要請すると共に、マティタスにラージャーム農業王国国王イグル・ビリーリーフ・ラージャームへの会談参加要請の書簡の作成を依頼――自らその手紙と招待状を携えてラージャーム農業王国に赴き、イグルに会談への参加を要請した。


 主要参加国三国の首脳達の会談への参加を取り付けた圓は農耕国ウェセスタリスのスクライブギルドの壊滅から三日後、農耕国ウェセスタリスの王宮にて農耕国ウェセスタリスの未来を決める会談に参加するべく、もう一人の多種族同盟側の代表であるラインヴェルドと共にアネモネの姿で農耕国ウェセスタリスに赴く。


 このあまりに速い圓の対応にはリチェルド達だけでなく、農耕国ウェセスタリスに残っていたフィロレンティア達諜報員達までもが予想を良い意味で裏切られ、衝撃を受けた。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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