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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-372 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜スクライブギルド編〜 File.1 scene.3

<三人称全知視点>


「覇王の雷霆ッ!」


 剣の刀身に覇王の霸気を纏わせたグエルヘヴンは地を蹴って加速し、ラインヴェルドとオルパタータダを無視して弓月と千聖に斬り掛かる。

 その霸気の強さはラインヴェルドやオルパタータダが予想していた以上のものであった。


「いい霸気持っているじゃねぇか!」


「一番可能性が高かったグルーウォンスの国王が使ってこなかったって聞いたからてっきり未習得だと思っていたぜ」


「我が会得したのはつい最近だ。とはいえ、肥沃な三日月地帯ファータイル・クレセントを支配する最強の王となる我の王の資質だ――元々素質は並の王以上だろう。我ながら素晴らしい力だと惚れ惚れしているよ。難しいと言われた霸気を纏わせる技術の修得にもあまり時間が掛からなかった。これで分かっただろう? 我と貴様らでは格が違うのだよ!!」


「「だが、何もかもが足りねぇな!!」」


 確かにグエルヘヴンの覇王の霸気はラインヴェルドとオルパタータダの予想を上回っていた……が、決してラインヴェルドとオルパタータダ以上のものという訳ではなかった。


神退(カムサリ)」「神去(カムサリ)


 グエルヘヴンと弓月達の間に割って入ったラインヴェルドとオルパタータダが同時に覇王の霸気を纏わせて薙ぎ払いを放つ。

 二人の霸気を受け止め切れなかったグエルヘヴンの剣は砕け散り、余波でグエルヘヴンは城の壁まで吹き飛ばされた。


 城の壁に蜘蛛の巣状のヒビを生じさせるほど、グエルヘヴンは吹き飛ばされた衝撃でダメージを受けていた。しかし、絶命はしていないようで満身創痍ながらも額から流れる血を拭い、折れた剣の刀身を裏武装闘気で簡易修復して戦場に舞い戻る意思を見せた。


「おっ、まだやろうってのか! いい覚悟だ! なら、その覚悟ごと粉砕してやる! オルパタータダ!」


「よし、あれだな! 歯ぁ食いしばれッ!」


 ラインヴェルドとオルパタータダはそれぞれ武器を構え、「威国覇槍(イコク・ハソウ)」を放つ準備を整えた。

 命中すればグエルヘヴンどころか農耕国ウェセスタリスの王宮ごと消滅させるほどの威力の攻撃を躊躇なく放とうとするラインヴェルドとオルパタータダにギルベルタは内心「こいつらマジでやるつもりなんですの!?」と内心毒吐き、額から噴き出した冷や汗を拭いつつラインヴェルドとオルパタータダの目の前――つまり、「威国覇槍(イコク・ハソウ)」の攻撃範囲に神速闘気を纏って足を踏み入れた。


「おい、なんでこのタイミングで攻撃範囲に入ってくるんだ! 危ねえだろ!」


「私、一言もグエルヘヴンを殺害して良いとは言っていないと記憶していますが」


「お前、『圓様の世界でいうところの『よろしい、ならば戦争だ』ですね』って確かに言ったよな? あれって、グエルヘヴンを消し飛ばしていいってことだろ?」


「違います。まあ、私がわざと勘違いするようにミスリードしたのですけどね。圓様はグエルヘヴンを無力化して生け捕りにすることをお求めになられています。やはり、殺害してしまったら色々と不都合がありますからね。回避できる面倒は回避した方が良いに決まっています。グエルヘヴンは無力化されましたので、後は私にお任せください。勿論、地下のスクライブギルドでは両陛下にご活躍頂ける機会を作るつもりですので、ご安心ください」


「「……仕方ねぇな」」


 ラインヴェルドとオルパタータダは武器を下ろして「威国覇槍(イコク・ハソウ)」のために凝縮していた武装闘気を四散させた。

 ラインヴェルドとオルパタータダの戦意喪失を見気で確認しつつ、ギルベルタはグエルヘヴンに肉薄すると、その腕と足に手枷と足枷を嵌める。


「拡流石製の手枷と足枷か。それを嵌められたら流石に抵抗はできねぇか」


「では、グエルヘヴンの処遇が決定するまで身柄は預からせて頂きます。皆様、これから王城内で清掃が始まると思いますが、気にせず王城内の諜報員の指示に従ってスクライブギルドに突入してください。皆様のご武運をお祈りしております」


 リチェルド達が止める間もなくギルベルタは気絶しているグエルヘヴンを抱えて姿を消した。


「ってことで、お前らの王様の処遇は多種族同盟、ダイアモンド帝国、ラージャーム農業王国、オルレアン教国の合議で決定することになる。それまではビオラの諜報員が身の安全を守るから安心するといいぜ」


「……正直、全く安心できる要素が皆無なのですが」


「まあ、アイツらって容赦ないし怖い連中だけど、捕虜に対する扱いは信頼に足るんだぜ。で、お前らはどうする? 国王の奪還のために俺達と戦うか?」


「多種族同盟とオルレアン神教会を敵に回すのは愚策ですし、国王陛下もかなりの罪を犯していたようですからな。……国民には我々の方から説明をしておきましょう」


「そうしてくれると助かるぜ。それじゃあ、俺達は城内に入る。なんか、内部で国王以外の『這い寄る混沌の蛇』の関係者を一掃するつもりらしいから、巻き込まれないように気をつけろよ」



 王宮に突入後、ラインヴェルド達は王宮の入口付近で合流した諜報員のフィロレンティアと共に国王の執務室へと向かった。


「王宮からスクライブギルドへと通じる道は全部で五つ、そのうちの一つがこの執務室にあります。見気で入り口の場所は把握済みですが、私がメイドとして潜入中、この五つの場所には近寄らせてもらえなかったので、階段を出現させる仕掛けについては分かっておりません」


「ということは、これから手分けして階段を出現させる仕掛けを探すんですね?」


「いえ、直接パイルバンカーで床を吹き飛ばして地下への通路を露出させるつもりですが?」


 雪菜の表情がピキリと凍りつき、黒華、菊夜、沙羅が死んだ魚の目になり、弓月と千聖、テティスが溜息を吐く中、フィロレンティアは四次元空間からパイルバンカーを取り出して起動――金属の杭を高速回転させて地面に打ちつけた。

 衝撃で床にヒビが走る中、パイルバンカーの打ち込まれた部分の床は砕け散り、地下への階段がぽっかりと口を開ける。


「よし、行こうぜ!」


 ラインヴェルドとオルパタータダを先頭に一行は階段を降り始める。

 階段は螺旋を描きながらどこまでも続いていると錯覚するほど深くまで続いていた。燭台などもなく、光源は執務室の床から降り注ぐ淡い光のみである。


「フィロレンティアさんの火魔法のおかげで周りの状況が確認できるけど、普通に探索しようとしたら光源が必須になるわねー。スクライブギルドとして機能しているってことは当然出入りをする筈だけど、一体どうしているのかしら?」


「やっぱり、見気じゃないかな? この力があれば暗くても周囲の状況を確認できるし」


「弓月様のお考えは可能性としてはあり得ないものではありませんが、見気はここ最近になって『這い寄る混沌の蛇』側が会得した技術ですからね。単純に毎回の光源を持ち込んでいたのだと思います」


「まあ、それ以外に考えられないわよね。でも、何故燭台を置くスペースがない訳でもないのに燭台を置いたり、何らかの光源を設置したりしないのかしら? その方が便利なのは明らかなのに」


「黒華、アイツらはそういう論理的な考え方で捉えられないからこそ混沌なんだ。あんまり深く考えない方がいいと思うぜ」


 階段を降り始めてから十五分が経過しても階段は更に地下へと続いていた。

 終わりがないのではないかと錯覚する無限の階段――しかし、ここに来てようやく光明が見え始める。地下から小さな音が聞こえ始めたのである。


 その音は階段を降りるごとに次第に大きくなっていった。「ガシャン、ガシャンコ」と聞き慣れない音が絶え間なく鳴り続けている。


「印刷機の音みてぇだな」


「……スクライブって言っていたからてっきり手書きだと思っていたけど、意外と現代的みたいね」


 千聖も含め臨時班の全員が手書きによる写本を想像していたが、千聖達の予想を裏切り、地下で行われていたのは活版印刷機による印刷であった。

 真っ暗な空間で大量の活版印刷機が動き、『這い寄るモノの書』や『蛇の魔導書』などの邪悪な書物が複製される光景はなかなかにシュールである。


神退(カムサリ)!」


神去(カムサリ)!」


「黒槍・群蜘蛛!」


「日輪赫奕流・劫火赫刃爆」


蒼焔の弾丸(ブルーショット)!」


飛蝶雷(サンダー・モルフォン)!!」


崩魂霊聖矢メルトスピリチュアル・シュート!」


弾丸の豪雨(ラッシュ・アワー)!」


「『獣化の天恵(モデル:龔工)』! 水蛟龍の逆鱗(デリュージ・ヒュドラ)!!」


 敵の気配が周囲にはないことを確認すると、ラインヴェルドとオルパタータダは覇王の霸気を纏わせた剣で、菊夜は武装闘気を纏わせた糸を束ねた槍で、沙羅は霊力を変換した炎を纏わせた刀で、弓月は蒼焔を収束させた弾丸で、千聖は無数の蝶の形をした雷撃で、雪菜は神聖属性の魔力で作り出した矢で、黒華は時間魔法で停止させた無数の弾丸で、そして、テティスは膨大な水を収束させた蛟で大量の活版印刷機に攻撃を仕掛けて破壊していく。


「とりあえず、任務完了ってところか? しかし、混沌の指徒がいると思っていたのにがっかりだったぜ」


 もうここにはないと活版印刷機を破壊し終えると螺旋階段を上ろうとしていたラインヴェルド達だったが、突如としてラインヴェルドが動きを止めた。

 何もない中空から突如として出現した剣の切っ先を紙一重で躱したラインヴェルドの額を冷や汗が伝う。


「ざぁんねぇん! 回避されてしまいましたか! いやぁ、流石は名高いラインヴェルド陛下」


 金色の左目のみを晒し、右目は銀色の髪で隠している。

 腰まで伸ばした銀髪の一部を三つ編みにし、純白のシルクハットを被り、真っ白な外套(マント)と白スーツ――全身を純白に包んだ男はラインヴェルド達の見気の察知を華麗に掻い潜り、突如として意識外の場所へと姿を見せた。


「さてぇ! わたしは誰でしょうかぁ?」


「混沌の指徒だろ?」


「だぁいせいかい! わたしはぁ、パヴスェル! 混沌の水先案内人にして、地獄の道化師! さぁさぁ、始めましょうかぁ! 愉快な愉快な血の匂い香る大奇術を!!」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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