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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-370 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜スクライブギルド編〜 File.1 scene.1

<三人称全知視点>


 農耕国ウェセスタリスは一般的にラージャーム農業王国に並ぶダイアモンド帝国の属国に区分される農業国家として認知されている。

 その源流となったのはラージャーム農業王国と同じくダイアモンド帝国の源流となる狩猟民族達によって肥沃な三日月地帯ファータイル・クレセントに土地を追われた先住民達だ。


 その先住民のグループが狩猟民族達による侵攻後、ラージャーム農業王国と農耕国ウェセスタリスの二つの国に分かれたためこの二国は兄弟のような国である……というのが、ダイアモンド帝国を含む諸外国の一般的な認識だ。しかし、実情は大きく異なっている。


 ラージャーム農業王国と農耕国ウェセスタリスとの間で建国から現在に至るまで、同じ源流を持つ国でありながら両者の交流はほとんどないのである。では、何故、同じ源流を持つこの二つの国が現在のような関係に至ったか。

 その説明のために歴史の針を狩猟民族達が侵攻する以前まで戻すとしよう。


 先住民達は肥沃な三日月地帯ファータイル・クレセントで得られる実りにより飢えを知らない豊かな生活を送っていた。まさに、神話に描かれる楽園(エデン)のような場所――そこで暮らす人々は奪い合う必要のない潤沢な実りを前に争いなど起こそうとすることもなく平和な生活を営んでいたのである。

 しかし、その平穏を脅かす者が現れる。それが、先住民族達の族長の次男――つまり次期族長の弟だった。


 先住民の仲間達から慕われ、将来が約束された兄と常に比較し、次男は常に劣等感と羨望を兄に向けていた。

 そんな中、次男は怪我を村に迷い込んだ一人の女性を介抱し、その女性に惹かれていく。


「貴方はとても優秀だわ。素敵な人。それなのに、その才能を発揮することができないのはとても残念なことだと思うの」


 その女性は次男の劣等感と兄への羨望を見抜き、次男の弱みに付け込みつつ距離を詰めていった。

 そして、次第にその方向性は先住民達の関係性を破壊する方向へと進んでいく。


「これだけの豊かな実り、独占した方が良いに決まっているわ。王である貴方の元に全ての富が収束する……なんて素晴らしいのでしょう」


 元々、次男に強い野心が備わっていた。その野心が『這い寄る混沌の蛇』の信徒である女性によって大きく燃え上がる炎と化した。

 兄を倒して富を独占する――そう決意した弟は同志達と共に内乱を引き起こそうとした。


 しかし、作戦決行の日――内乱を起こしたタイミングで肥沃な三日月地帯ファータイル・クレセントに狩猟民族達が侵攻を仕掛けてきたのである。

 次男の計画は失敗し、ラージャーム農業王国と同様に時間もまた狩猟民族達への恭順を誓わざるを得なくなった。


 しかし、次男はまだ諦めていなかった。いつか、肥沃な三日月地帯ファータイル・クレセントの実りを独占する――その強い野心とダイアモンド帝国とラージャーム農業王国に対する恨みはダイアモンド帝国の初代皇帝となる狩猟民族の長の恨みが時代が進むと共に消滅の道を進んでいったのとは対照的に王家の中で継承され、より深く濃いものへと醸成されていった。


 『這い寄る混沌の蛇』との蜜月関係も秘密裏に続いていた。

 農耕国ウェセスタリス側は打倒ダイアモンド帝国とラージャーム農業王国に『這い寄る混沌の蛇』の力が必要と考えており、『這い寄る混沌の蛇』側は万一、ダイアモンド帝国の初代皇帝の恨みの炎が消えた際のダイアモンド帝国滅亡のサブプランとして農耕国ウェセスタリスを利用しようと考えていたのである。

 『這い寄る混沌の蛇』側と農耕国ウェセスタリス側――両者の思惑が一致した形である。



「農耕国ウェセスタリスは『這い寄る混沌の蛇』と強い繋がりを持つ国と圓様より聞いておりました。この地に派遣されている調査員はその実態の調査のために動いていたようですが、その調査の途中でスクライブギルドを発見したようです」


 飛空艇で農耕国ウェセスタリスを目指す道中、ラインヴェルド、オルパタータダ、菊夜、沙羅、弓月、千聖、雪菜、黒華、そして圓による調整を経て青髪の美女へと変貌を遂げた元凶禍龔工――テティス=龔工=ナーイアスは今回の農耕国ウェセスタリスを目指す対スクライブギルドの臨時班の担当となった諜報員――ギルベルタから説明を受けていた。


「で、そのスクライブギルドは一体どこにあるんだ? 農耕国ウェセスタリスって国土の九割が平野なんだろ? となると、僅かな山を隠れ蓑にしているのか、農村に偽装しているかだろうが……前者は広い土地が確保できないし、後者は流石にバレるだろ? オルレアン神教会の教会は当然、国内にもある。流石に連中も目が節穴って訳じゃねぇだろう?」


「ラインヴェルド陛下、残念ながらどちらもハズレです」


「アハハハ! 満面の笑みでバッサリ切り捨てられてやがる! 超ウケるんだけど!!」


「じゃあ、オルパタータダ! お前、どこにあるか分かるのかよ!?」


「いや? さっぱり思いつかねぇ」


 そんなラインヴェルドとオルパタータダの姿を冷ややかに見ながら、テティスは雪菜と黒華と菊夜と沙羅に「いつもこうなのかしら?」と尋ね、黒華と菊夜と沙羅から「あの二人はいつもあんな感じだから色々と諦めた方がいいわ」という諦めの篭った返答をもらっていた。


「それで、結局農耕国ウェセスタリスのスクライブギルドはどこにあるのかしら?」


「これは私も聞いた時に驚いたのですが……農耕国ウェセスタリスの王宮の地下だそうです」


「「「「「「「王宮の地下!?」」」」」」」


 ギルベルタの思っても見ない回答に質問をした弓月だけでなく、菊夜、沙羅、千聖、雪菜、黒華、テティスまでもが衝撃を受けた。

 と同時に、嫌な予感が脳裏を過ったのだろう――菊夜、沙羅、黒華の表情が翳る。


 そんな三人とは対照的にラインヴェルドとオルパタータダのテンションは大きく跳ね上がっていた。……この二人が喜んでいる時点で良いことがある訳がない。


「……事前情報で『這い寄る混沌の蛇』と蜜月の国とは聞いていたけど、まさかここまでだったとはねー。そういえば、なんで圓さんはここを対象から外したのかしら?」


「攻撃の大義名分がないからですね。革命の兆候がある訳でもありませんし、向こうから攻撃を仕掛けられた訳でもありませんから、ただの侵略となってしまいます。旅の道中で偶然、決定的な証拠を掴んだとかであればまた話は変わるのですが、そういったことも当初はないと圓様も考えていましたので、この国のことはミレーユ姫殿下達大陸の方々に任せようという話になっていました。……しかし、スクライブギルドがあるとなれば話が変わります。それも、国が関与しているということですからね。圓様から事前にリズフィーナ様を通じてオルレアン神教会側に話は通したようですし、ダイアモンド帝国の皇帝陛下にも説明はしたようなので、問題はないと思いますよ。まあ、問題があってもスクライブギルドは野放しにはできませんからね」


「……なんでこうも物騒な人しかいないのかしら?」


 つい先日、ギルベルタが諜報員になったばかりと聞いて「この人は比較的真面なんじゃないかしら?」と思っていた千聖はギルベルタの口から飛び出した物騒な言葉を聞いて「やっぱり圓さんの部下は圓さんの部下なのね」と溜息を吐いた。


「それで、作戦は?」


「まずは穏便に交渉ですね。農耕国ウェセスタリスの国王陛下と交渉してスクライブギルドへの道案内と彼らの身柄の引き渡しを依頼します」


「……非常に聞いたく無いのだけど、もし、相手が断ったら?」


 「というか、まず間違いなく断ってくるでしょうけど」という言葉を呑み込み、テティスが尋ねるとギルベルタに尋ねるとギルベルタは満面の笑みを浮かべた答えた。


「圓様の世界で言うところの『よろしい、ならば戦争だ』ですね」


「……ああ、やっぱりこうなるのね」


「もっとこう、穏便にはできないのでしょうか?」


 ギルベルタの言葉に呼応し、「よし! このまま国を簒奪してやろうぜ! 後始末は圓に任せれば大丈夫! 臨時班の全責任は圓が持つって言っていたし!」と殺る気満々な凶悪な笑みを浮かべるラインヴェルドとオルパタータダに黒華は盛大に溜息を吐き、このメンバーではかなり慈悲深い部類に属する雪菜はなんとか戦闘を回避できないかと思案を巡らせ始めた。


「……正直、初めから全て圓様に丸投げしてしまうという考えはいくらお二人が圓様の親友であったとしても許容できるものではありませんわね。まあ、今回は圓様も何かお考えがあるご様子。状況によっては圓様が動いて対処なされるそうなので、我々がその後を考える必要はありませんが」


「ってことは、やっぱり圓の直接統治か!?」


「オルパタータダ陛下、圓様に負担を掛け過ぎですわよ。今回は、圓様ご自身やビオラの方々ではなく大陸の方々にその後の統治を委ねたいとお考えのようですから、新国家の建国はありません。……そもそも、ペドレリーア大陸の国家を乗っ取った上での国の建国はオルレアン神教会の心象を悪くするものですし、そう易々と選択できる選択肢ではありませんからね」


「まあ、それもそうか。とりあえず、俺達は何も考えずにただ暴れればいいということだろ?」


「もう交渉を飛び越えて戦う気満々になっているわね」


 ラインヴェルドとオルパタータダ――二人のクソ陛下の暴走に「もう嫌」という表情を隠しもしないテティスだった。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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