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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-370 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜学院都市計画を妨害する緑の影〜(2) scene.12

<三人称全知視点>


 当初は昼頃に予定されていた宴会だが、圓の野兎の王家風リエーブル・ア・ラ・ロワイヤルの仕込みが終わらないことや生態調査に赴いたルクシア達が戻ってきていないこと、夜に焚き火を囲んで宴会をした方がムードがあっていいんじゃないかというメイッサからの提案もあり、その日の夜に行われることとなった。


 ルクシア達も調査から戻り、ミレーユ、ライネ、ルードヴァッハ、ガルヴァノス、メイッサ、ルクシア、フレイ、クレマンス、バノス達近衛騎士達、ブライウ達ウィリディス族の面々――全員で焚き火を囲んで鍋が煮えるのを待っていると、エイリーンが真月を伴って無数の皿を宙に浮かせて現れた。


「魔法かしら?」


「いえ、超能力です。お待たせ致しました、野兎の王家風リエーブル・ア・ラ・ロワイヤルでございます」


 ミレーユ達の前に置かれたのは濃厚な黒のソースが輝く円形の料理だった。一瞬ケーキと見紛うが、顔を近づけると肉やハーブが混ざった濃厚でどっしりとした香りが鼻腔を擽る。


「ふむ、あまり兎の面影は感じられませんわね」


「……ほう、なかなか柔らかい。臭みもなく、濃厚な味わいじゃな。濃厚なソース、肉の味、そしてなめらかな味わいが完璧なバランスで成り立っておる。儂も色々なものを食べてきたつもりだが、正直、初めて食べる味じゃ」


「なるほど、兎肉には、このような使い方が、あるのですね」


「皆様、ご堪能頂けているようで何よりです。……皆様には馴染みがない料理と思いますので、この料理についての詳細を少々説明させて頂きます。この料理は歯が抜けてしまった仏蘭西国王ルイ十四世が、歯がなくても楽しめるジビエ料理を料理人に作らせたことから生み出された料理と言われています。王家風(ロワイヤル)の名を冠する通り、膨大な手間と貴重な食材を使うため、ボクの前世の世界でも作れる料理人も少なく一時は『忘れられた料理』と言われていました。まあ、近年は伝統料理の見直しで、再び関心が高まっているようですけどねぇ。普通に作ろうとすれば準備に約十日、更に材料にはフォアグラ、トリュフなどの高級食材、煮込みに使うワインやコニャックなどの材料が必要となりますから、まさに贅を尽くした料理と言えるでしょう。今回は足りない材料は【万物創造】で、足りない時間は時空魔法で補いました。……さて、再現するかは別として作り方ですが、様々なパターンがありますので、今回はボクの作り方で。野兎は丁寧に皮を剥ぎ、内臓は絶対に破らないように内臓も取り除いた後、ラーブルの部分だけ取り除き、兎を解体――背骨の部分よりゆっくりとバターで炒めて、大量のコニャック、赤ワインで十二時間ほど煮詰めた後、前足や後ろ足などの肉部分をバターで焼き上げ、コニャックでデグラッセして、先ほどのソースの中に入れます。沸騰させて灰汁を取りつつ今度は二十六時間ほど煮詰めます。煮詰め終わったところで手でリエット状に繊維を一本ずつバラバラにして、細かく

切った豚足、トリュフ、キノコを煮詰めたソースのデュクセルシャンピニオン、先ほどの煮汁――キュイッソンを入れて、リエットを作ります。それをシート状にして冷蔵庫……ボクは氷魔法を使いましたが、冷やし固めてから真ん中にフォアグラ、そのフォアグラを大量のトリュフで巻いて、シートで春巻きのように巻き込みます。更にトリュフとバターを染み込ませた縮緬キャベツで巻きこみ、更に上にもトリュフ、最後に背肉をローストして乗っければできあがりとなります。もし、また食べたいのでしたら是非『クラブ・アスセーナ』まで足をお運びくださいませ」


「……それができたら苦労はしないのですが」


 『クラブ・アスセーナ』に来店するために越えなければならないハードルの高さをこのメンバーの中では最も理解しているルクシアが圓にジト目を向けた。

 『クラブ・アスセーナ』の来店をこれから目指したとして、一体どれだけの者が実際に来店することができるだろうか? バノス達近衛騎士や素晴らしい弓の使い手であるウィリディス族の面々ならまだ可能性があるかもしれないが、ミレーユを含め、この場にいる非戦闘員達はその条件を満たすことができない。


 これほど素晴らしい料理を自分を含め大多数の者はもう二度と口にできないと考えると、ミレーユは美食の味を教えて舌を肥えさせてしまった圓にほんの僅かだけ恨みを抱いてしまった。

 まあ、美味しい料理に罪はないとミレーユは食事を食べる手を一切止めるどころか加速させているのだが。挙げ句ライネが止めないことをいいことにお代わりまで――もう食べられないのなら今のうちに沢山食べておこうという大国の姫君とは思えない少々貧乏くさい考えだが、ミレーユらしいと言えば実にミレーユらしい。


「ふむ、この兎鍋も美味しいですわね。ウィリディス族の皆様、ありがとうございますわ」


「……あれほど、素晴らしい料理の後では、霞んでしまい、申し訳ないと思っております」


「素材の味の引き出し方は様々――これもまた一つの完成形であると思いますよ。本当に美味しいですねぇ」


 兎鍋を囲み、舌鼓を打つ談笑するうちに、次第に夜が更けていった。



 エメラルダによって過去最大の危機に見舞われた学園都市計画だったが、ミレーユがガルヴァノスを味方に引き入れたことで事態は大きく好転していくこととなる。

 ハムラ神父が推薦した教員数名とメイッサ、そしてガルヴァノスが声を掛けた彼の弟子達によって学園都市の講師陣の問題は一気に解決したのである。


 勿論、まだアーシェリウム・ビリーリーフ・ラージャーム第二王女を講師に招くための交渉が残っているのだが……。

 ガルヴァノス達を連れてヴァルマト子爵領の学園都市予定地に戻った後、ミレーユはヴァルマト子爵とガルヴァノスを引き合わせてから学園に戻り、事の顛末を第三王女レティーシエルに説明すると共にアーシェリウムを学園都市の講師として迎えたいという意思を伝えた。

 この話をレティーシエルは良いものだと捉えてくれたのだろう。アーシェリウムとの話は全てレティーシエルがしてくれることにはなったのだが、姉の望まぬ結婚を回避する光明を見出して「私からが必ず説得してみせますわ!」と鼻息を荒くするレティーシエルの姿に少しだけ不安を感じたミレーユだった。



 ――ミレーユ達がダイアモンド帝国とセントピュセル学院を行き来している丁度その頃、セントピュセル学院に二人の女性が来訪した。


 一人は漆黒の髪を背中に届くほど伸ばした真紅の瞳の女性――小さな牙が艶やかな唇から顔を覗かせているその姿は『神聖典』に登場する吸血鬼を彷彿とさせる。

 美しい漆黒のドレスを身に纏い、歩く姿は男女問わず多くの生徒達の目を惹きつけた。


 しかし、それ以上に目を惹きつけたのはもう一人の女性の方である。


 白金色の髪を腰まで伸ばした青空を彷彿とさせる澄んだ青の瞳を持つ純白の異国の修道服に身を包んだ女性――その姿はまさに絶世という意外に表現のしようがないものである。


 そんな二人は学院の廊下を進み、目的の教室へと入った。


「リオンナハト王子殿下、側近のカラック様。少々お時間を頂戴してもよろしいでしょうか?」


「……私達の正体を知っているということは多種族同盟の関係者というところかな?」


『名乗るのが遅れて申し訳ないございませんでした。わたくしはマリシア=ミッドナイトサン、元々は聖女候補の一人でしたが、我らが女神様から指名を受け、黒百合聖女神聖法神聖教会の最上位組織である中庸枢軸教会の最高権力者である総法導皇を務めております』


「……あのリーリエ様を信仰するベーシックヘイム大陸最大の宗教組織のトップということですか。しかし、ただの宗教のトップとしてはあまりにも隙がありませんね。……それに、その後ろの方も只者ではないようですし」


「名乗るほどの者ではございませんが、私のことは『陰者(ヒドゥン)』とお呼びください」


「……殿下、どうしますか?」


「どうもこうも何も、私達では勝ち目がある相手じゃない。とりあえず、目的を聞くしかないだろう?」


 ソフィスから闘気と八技の扱い方を学んだからこそ分かる――例え、リオンナハトとカラックが二人掛かりでもどちらか一人すらも撃破することはできない。それほど圧倒的な隔絶した実力差が存在している。


『本日は多種族同盟からのメッセンジャーとして参りました。単刀直入に申し上げますと、リオンナハト殿下、カラック様、お二人を臨時班のゲストとして招きたいと我らが主人はお考えです』


「――ッ!? それはつまり、あの時口にした私の要望を叶えてくれるということか!?」


 スクライブギルドへの臨時班派遣の話がされた際にリオンナハトは実力を試したいからと臨時班への参加を希望した。

 その時のエイリーンの反応は芳しいものでは無かった筈だが……。


『勿論、皆様に危険が及ばぬよう我々も最高の戦力を揃えました。今回の臨時班はこれまでの修行の成果を確認できる良い機会となるでしょう。リオンナハト殿下とカラック様の他にはディオン様、アモン殿下、マリア様、リオラ様、リズフィーナ様にもお話をした上で参加するか否かを確認したいと考えております。具体的なメンバーはディオン様以外のメンバーが一グループとなり、アクア様、ディラン閣下、マグノーリエ殿下、プリムヴェール様、ジョナサン様が同行するという形になります』


「……どうしますか、殿下」


「それは勿論、折角の機会だ。是非、参加させて頂きたい」


「では、私も参加させて頂きます」


「承知致しました。では、これが今回の契約書になります。内容を確認した上でサインをお願い致します」


「……当たり前だが、自己責任の部分が大きいな。まあ、危険な場所に赴くのだ。自分だけ安全にとはいかないのは当たり前だ。王子だからと特別扱いしてもらえないのは承知の上。……しかし、この報酬の額は……おかしくないか?」


「臨時報酬、とんでもない額が書かれていますけど、これ本当に大丈夫なんでしょうか?」


『お安過ぎたでしょうか? 臨時班に参加する時空騎士(クロノス・マスター)の臨時報酬はこれくらいなのですが』


「いや、逆! 逆ですよ!! 本当に大丈夫なんですか、この金額!?」


 本当にこれだけの額を支払って大丈夫なのかと不安になるリオンナハトとカラックだった。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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