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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-359 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜学院都市計画を妨害する緑の影〜(2) scene.1

<三人称全知視点>


 授業を終えたエメラルダはその日もダイアモンド帝国四大公爵家の親睦を図るためのお茶会――「四煌金剛会(ディアマンテ)」に参加するべくセントピュセル学院の一角に存在するサロンを目指していた。


「あら? ミレーユ様……あの方向は研究棟でしたわね?」


 その道中、ミレーユが研究棟の方へと消えていく姿を目撃したエメラルダは即座にミレーユを尾行することを決めるとミレーユの後を追った。


 通常、研究棟を生徒が訪れることは滅多にない。仮に質問したいことがあれば授業後に質問するか、職員室の事務員を経由するのが一般的だ。

 そもそも、研究棟にある研究室は教授のプライベートの研究のための空間のため、生徒が立ち寄る理由がないのである。生徒が赴く機会があるとすれば、教授が管理している論文を閲覧する時くらいだ。


 まあ、格別その教授と仲が良ければ研究室にお呼ばれし、お茶を片手に議論を交わすということもあるかもしれないが、そういった生徒は学園中を見渡しても一人や二人居ればいい方である。少なくともミレーユはそういうタイプではないとエメラルダは考えていたため、研究棟にミレーユが赴くことに違和感を抱いたのである。


 ミレーユが向かった先は研究棟の三階にあるとある研究室だった。


「ルクシア殿下、今お時間よろしいかしら?」


 三度のノックの音を聞き、扉を開けた人物は銀縁の丸眼鏡を掛け、床に擦れてしまいそうな大きな白衣を身に纏った少し背の低い銀色の髪を持つ美男子だった。


(……確か、ブライトネス王国の第二王子でしたわね)


 ルクシアが生徒達の前に現れたのは婚約者の令嬢と侍女を伴って講堂で挨拶をした一度きりだが、面食いのエメラルダはその名を覚えていた。

 エメラルダが敵視する多種族同盟に加盟するブライトネス王国の王子であることと既に婚約者がいることは残念だが、その美貌はエメラルダのお眼鏡に適うものだったのである。


「ご連絡頂けたらこちらから訪問させていただいたのですが」


「こちらがお願いする立場ですのに、殿下をお呼び立てするような真似はできませんわ」


「お願い……ですか? 私にできることであれば良いのですが。しかし、良いタイミングでした。実は私の方からミレーユ姫殿下に一つ提案したいことがあって先触れを出そうしていたところだったんです。……立ち話もなんですし、どうぞ中へ。少々散らかっていますが、大目に見て頂けると助かります」


 ルクシアと共にミレーユが研究室に入っていき、ガタンという音を立てて研究室の扉が閉まった。

 尾行していたエメラルダは何とか中の様子を知ろうと研究室の扉に近づき、聞き耳を立てる。


『フレイ様、クレマンス様。学院での生活には馴染めまして?』


『お気遣いありがとうございます、ミレーユ様。そうですね……フィールドワークの準備が整うまでは研究室暮らしですが、十分気分転換をさせて頂いておりますわ』


『確か、ルクシア殿下はフレイ様に気分転換をして頂くためにフレイ様を学院にお連れしたのでしたわね?』


『えぇ、ずっと父上から押し付けられた仕事がかなり過酷でフレイもかなり疲弊していたので、少し気分転換になればと。現在、その仕事は圓様の配下の諜報員達が引き受けてくれています』


『フロラシオンさん達に任せきりにしているのは心苦しいのですが……今は少しだけ休ませて頂きたいと思っているところです』


『見ているこちらが辛くなるくらい、フレイ様は終わらない周回の悪夢に魘されていらっしゃいます。……できることなら、フレイ様に良い夢を見て頂けるようにしたいのですが』


『圓様が製作に関わったというだけあってどのシナリオも素晴らしいものなのは間違いないのですが……分岐一つ一つを丁寧に確認しているといつまで経っても終わりが見えなくて……デバッグを担当したデバッグ班の皆様には本当に頭が上がりませんわ。圓様からデバッグ班の一員として数々のゲームのデバッグを担当したホワリエル様という方がプライベートで動画サイトに投稿しているという動画のいくつかを見せて頂いたことがあるのですが、私には絶対真似できないと思いましたわ』


 圓の食客である天使のホワリエルは「怠惰天使のアンジュ」の名でいくつもの実況動画を上げている。

 その動画の大半はノーブル・フェニックス以外が発表しているゲームに限定したほぼデバッグといっても過言ではないレベルの緻密な調査の積み重ねであり、「一体誰が見るんだ?」と言いたくなるような地味な内容になっている。……まあ、中には任意コード実行を利用したRTA動画や裏技解説といった普段の動画とはかけ離れた派手な動画も含まれてはいるのだが。


 このつまらなさそうな動画が動画サイトのゲーム部門で首位をキープし、かなり纏まった金額を収益としてホワリエルが得ている最大の理由は天使のイメージに相応しいホワリエルの美少女の外見にあるといっても過言ではない。

 ――やはり可愛いは正義なのである。

 

 こうして美少女天使の外見に惹かれた視聴者はそんな可愛い見た目とは裏腹に一切愛嬌を振り撒く素振りも見せず、やる気の皆無な表情で淡々と辛口なコメントでゲームの解説をしていくというギャップに胸を射抜かれ、動画のファンとなるという場合がほとんどである。

 まあ、中には配信中にたまに出てきては、自堕落なホワリエルをまるで母親のように優しく諌めるヴィーネットの可愛さに心を鷲掴みにされた視聴者や、ホワリエルとヴィーネットの百合な関係を見たいという理由でヴィーネットが登場する回を待ち望むという動画の趣旨とは全く関係のないものを求める視聴者もいるのだが……。


 しかし、こうした容姿やホワリエルとヴィーネットの百合の関係ではなくゲーム実況の内容に心惹かれた視聴者がいない訳ではない。

 「怠惰天使のアンジュのチャンネル」の視聴者は最終的にホワリエルのデバッカーとしての高い実力に気づき、二人の関係から内容の方へと目的の比重を動かしていく場合が多いのだが、ごく僅かながら最初から内容の方を重視する視聴者も存在する。その大半はホワリエルの同業者――つまり、ゲームの開発側の人間である。


 ホワリエルの動画のほとんどはゲームの開発者側のデバッグ不足を曝け出すような内容になっている。自分達が丹精込めて作ったゲームが否定されるという内容を許し難いと思う製作者も存在しない訳ではない。実際、ホワリエルの動画にはこうした開発側と思われる人物からのアンチコメが寄せられたことも何度かある。

 しかし、それ以上に多いのがホワリエルを自社に招きたいという勧誘のコメントだ。


 ホワリエルのデバッグ力はゲーム開発のプロ達から見ても高い水準のものなのである。その力を是非自社のゲーム開発で活かしてもらいたいと思う者は決して少なくはない。

 そんなコメントを付ける視聴者に対し、ホワリエルは決まって一つのコメントを返している。


『――お誘いありがとうございます。しかし、私がこうして動画を上げられているのもとある方の支援があってのことなのです。その方が出資するノーブル・フェニックスで働き、少しでもその恩を返させて頂きたいと思っておりますので申し訳ございませんが、今回のお誘いは辞退させて頂きたいと思います』


 怠惰天使のアンジュがノーブル・フェニックスのデバッカーとして働いていることは動画内で公表しており、視聴者達からも認知されている。

 そのことを知った上でそれ以上の報酬を出すとホワリエルを引き抜こうとしたゲーム会社もいくつかあったが、例えどれほどの法外な報酬を積まれても決してノーブル・フェニックスからの移籍を決めることはなかった。


 一見すると自堕落でしかないデバッカーだが、実際には恩人に対する恩を忘れず一途にその恩に報いようとするホワリエルの姿勢も視聴者に愛される実況者となっている要因なのかもしれない。



 フレイからホワリエルが投稿した動画の一つを見せてもらったミレーユは膨大な地道な作業の積み重ねに圧倒された。

 クレマンスの用意してくれたお茶菓子と紅茶を片手に見ていると、気づいたら皿の中のお菓子が消えていた。

 手が空を切ったことに驚き、頬を触るとクッキーの欠片が付いていた。どうやら、無意識にクッキーを食べ終えてしまったらしい。


 そんなに時間が経ってしまったのかと思いつつ、ミレーユは動画を止め、お礼を言いつつスマホをフレイに返却した。


「ところで、ミレーユ様。ルクシア様へのお願いとは一体どのようなものなのでしょうか?」


「あっ、そうでしたわね。ルクシア殿下、ヴァルマト子爵領に学園を開校するお話はご存知かしら?」


「ああ、聖ミレーユ学園のことですね」


 「その恥ずかしい名前の学園は一体なんですの!?」と内心突っ込みを入れたミレーユだったが、決して表情は崩さず微笑をルクシアに向けたまま一つの提案を口にした。


「その学園でルクシア殿下に教鞭を執っては頂けないかしら?」


「折角のお話しですが、お断りさせて頂きます。既にブライトネス王国の学園で教鞭を執ることが決まっておりまして」


 「……ぐぬぬ、まさかこんなにあっさりと断られるなんて……」とミレーユが内心不満そうにしていると、ルクシアはほんの少し考える素振りを見せた。


「クレマンスさん。確か一昨日、先輩から手紙が届いていましたよね。久しぶりにブライトネス王国に帰国すると」


「先輩……ですか。確かに、あの先輩は優秀ですが……少し難があり過ぎるのではありませんか?」


「まさか、ルクシア様、あの方をミレーユ姫殿下に紹介しようとなさっているのですか? ……その……流石にやめておいた方が良いのではありませんか?」


 ルクシアの言葉を聞いたクレマンスは死んだ魚の目になり、フレイはルクシアを止めようとしていた。


「ミレーユ姫殿下、一人だけ推薦できる人がいます。丁度ブライトネス王国に戻ってきているようなので紹介することはできますが……少し性格に難があると言いますか……」


 歯切れの悪い言い方をするルクシアに嫌な予感を抱きながらも、ミレーユは一応話くらいは聞いてみようと思い、ルクシアに詳細を尋ねることにした。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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