Act.9-354 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜オッサタルスァ王国革命・動〜 scene.3
予定している新作を投稿するにあたり、本作を初出として出す必要のある情報があるため、連投期間を設けました。
連投が終わり次第、週一投稿に戻ります。
<三人称全知視点>
美姫がカーシャルの解毒を行っている頃、シャルティアは「千羽鬼殺流・禄存-気散-」と八技の「絶音」、八技の「空歩」、裏の見気の一つで気配を極限まで消すことで自らを希薄にすることで見気を掻い潜る薄隠気を組み合わせ、騎士達に気取られることなく王城の中を目的地を目指して進んでいた。
「……あら? キウェント王子……火憐様はどこにいたかしら?」
その道中でキウェントを発見したシャルティアは見気で火憐の居場所を探し出すと、火憐にキウェントの居場所を連絡すると共に、キウェントに気取られないように遁甲盤を取り出して「奇門遁甲」を発動した。
シャルティアが今回の任務で何よりも避けなければならないのはキウェントがシャルティアとフラーニャの戦う戦場に現れることである。
キウェントはシャルティアのことを優しい母だと思っている。そんな彼が母親の醜い一面を知れば激しく絶望することになるだろう。それでは、穏便にシャルティアを優しい王妃へと改変させるという作戦の意味が根本から崩れ去ってしまうことになる。
まあ、キウェントの記憶も奪ってしまえば問題ないことではあるのだが、回避できるものは事前に回避しておくに越したことはない。そう手間が掛かるものでもないため、折角見つけることができたからとシャルティアは戦場にキウェントが現れる可能性を事前に潰したのである。
「……どうなっているの!? お母様!!」
「……貴方がキウェント王子殿下ね」
「誰なの?」
「私は火憐、訳あってこのお城に侵入した者よ。目的はいくつかあるけど、一つは貴方のお父上、国王陛下の病気を治すためね。ちょっと手荒な潜入になっちゃったけど、大丈夫、騎士達は無事よ」
「お父様のご病気を治すため……お父様の病気が治るの!?」
「えぇ、つい先ほど、美姫さん――私の仲間から無事に病が癒えたという報告を受けたわ。だけど、私、国王陛下の居場所を知らないの。キウェント王子殿下、私のことを国王陛下のところまで連れて行ってもらえないかしら?」
「……でも、お母様は……」
「大丈夫……今の居場所は残念ながら分からないけどきっとすぐに会えるわ」
「無事……なんだよね?」
「えぇ、無事よ。私が保証するわ」
火憐がキウェントを説得してカーシャルの元へ向かったことを見気で確認すると、シャルティアはフラーニャのいる王妃の執務室に突入した。
「きゃぁ! 侵入者よ!! 騎士様ッ!!」
「無駄ですわよ。全員気絶させましたから。……お初にお目に掛かりますわ、古き蛇の流れに属する蛇導士の家系、ミトフォルト公爵家のご令嬢。私はシャルティア、ビオラの諜報員ですわ」
「あら? わたくしはもうミトフォルト公爵令嬢ではなく、オッサタルスァ王国の王妃よ?」
「それはどうでしょうか? カーシャル=オッサタルスァ国王陛下を貴女は確かに一途に愛していた。しかし、貴女は国王陛下は一途に愛しながらもオッサタルスァ王国を混沌の渦中に落とすためにミトフォルト公爵家の目的を優先した。……まさに、性格破綻者よね。愛しながら、その最愛の人を殺す訳だから」
「わたくしも心苦しかったわ。でも、それがミトフォルト公爵家の役目だったから、仕方が無かったの。貴女の言う通り、わたくしは性格破綻者。国王陛下のことを心から愛しているのに、キウェントにも母としての愛情を持っているのに、国王陛下に毒を盛ることにも、キウェントを傀儡に使うことにも何の罪悪感も持たなかった。わたくしはもう止まれないところまで来てしまっている。『這い寄る混沌の蛇』の一員として敵である貴女を殺し、この国を混沌に陥れる。さあ、わたくしを殺して見せなさい! もっとも、わたくしが死んだら死んだでもう一つのプランが完成してしまうのだけれど。最愛の母を失ったキウェントは、一体どうなってしまうんでしょうね?」
国を混沌に陥れるためだけに王妃となり、母となるようにと施された蛇の教育と、王妃として国王や王子を愛する当然の感情が錯綜し、フラーニャは完全に壊れてしまっていた。
「……これは、なかなか大変そうね。この混線具合を直そうとすると、かなり時間が掛かるかしら?」
「何をごちゃごちゃ言っているのかしら!? 苦痛の叫び」
フラーニャが放った対象人物に、死の方がましだと思わせるほどの苦痛を与える暗黒属性魔法を状態異常を無効化する魔法で防ぎつつ、シャルティアは見気を発動し、フラーニャの記憶を解析し始めた。
まず、どこを切り取ればフラーニャを優しい王妃に変えることができるのかを知らなければ、「飴玉取出・記憶」を使用した記憶の外科手術を実行に移せないからである。
「漆黒の十字架! あらあら、どうしたのかしら? わたくしを殺すんじゃなかったの?」
「……一言も貴女を殺すなんて、私は言ってませんけどね」
「苦痛の叫び」が効かないと分かるとフラーニャは直接攻撃に切り替えてきた。
聖なる信仰を冒涜する真紅の稲妻が奔る闇の魔力を固めた闇の十字架を放つ闇魔法をシャルティアは紙躱を駆使して華麗に躱すとフラーニャから大きく距離を取りつつ、フラーニャの記憶を更に深く読み解いていく。
「もしかして、時間を稼げば何かが変わるとでも思っているのかしら?」
「さあ、どうでしょうか?」
シャルティアの余裕な笑みに嫌な予感を感じつつもフラーニャはその後も攻撃を続けていく。
「暗黒瘴気! 鈍い呪い! 石毒の蛇槍! 石毒の蛇槍! 石毒の蛇槍! 黒闇弾丸! 黒闇弾丸! 黒闇弾丸! 黒闇弾丸!! はぁはぁ……なんでどの攻撃も当たらないのよ!」
「どれも既に見たことがある魔法ですから、当然ながら対策もしっかり立てていますわ。……さて、そろそろ反撃を始めましょうか?」
シャルティアはそう言いつつ手品のように飴玉を一つ掌に出現させた。
「飴玉? そんなものでこの戦局を変えられるとでも? 漆黒の十字架!!」
フラーニャが放った闇の十字架をシャルティアは神速闘気を纏い、紙躱で躱しつつフラーニャに肉薄、腹部に触れると同時に「飴玉取出・記憶」を使ってフラーニャの記憶を抜き去った。
飴玉が地面に落下する直前に左手で飴玉を回収しつつ、フラーニャの口に「飴玉取出・記憶」で生成した飴玉を放り込んで飲み込ませるとバックステップで距離を取る。
「私……は……」
「フラーニャ王妃殿下」
「あっ、貴女は……まさか、侵入者!?」
「私はシャルティアと申します。海を越えた先にあるベーシックヘイム大陸の国際互助組織、多種族同盟から参りました。その国の中枢には『這い寄る混沌の蛇』という邪教徒が潜入しています。その邪教徒を捕らえ、オッサタルスァ王国を救うために活動していますわ。仲間から既に国王陛下の病の治癒が終わり、キウェント王子殿下も無事合流することができたという報告を受けています」
「国王陛下が目を覚まされたのね! それは良かったわ! でも……その病とは一体何だったのかしら?」
「原因は毒物だったようです」
「毒……でも、一体誰が……」
「フラーニャ王妃殿下、貴女です」
「わ、わたくし!? でも、わたくしがそんなことを……」
「よくよく思い出してください。貴女はグラシュダ摂政閣下に魔法で洗脳され、毒物を少しずつ食事に混ぜさせられていたのです」
「あぁぁぁぁぁッ!! 頭が割れるように痛いわッ!! わ、わたくしは、なんてことを!? 陛下ッ! 陛下ッ!! わたくしは、わたくしはッ!?」
蘇った偽の記憶に錯乱した様子を見せるフラーニャを内心では満足げに見つめつつ、シャルティアはその内心を欠片も見せずにシャルティアを気遣うように笑い掛けた。
「フラーニャ様がやってしまったことは事実ですわ。ですが、それは貴女の責任ではありません。悪いのはフラーニャ様を洗脳したグラシュダ摂政閣下です」
「お兄様はそんな人じゃ……うぐっ……頭が……お兄様が私を洗脳して、陛下に毒を盛るように強要して……わたくし、必死に抵抗したのに、それでも抗えなくて……わたくしは、わたくしは……」
「きっちり陛下に謝罪をすれば、きっと許してくれる筈ですわ。グラシュダ摂政閣下は必ず我々の手で討伐し、この王国を救います。どうかフラーニャ様は安心して国王陛下の元へ向かってくださいませ。道中は私が警護致しますのでご安心を」
「ありがとう」
その後、フラーニャはグラシュダとカーネルの居場所を避けるルートでカーシャルの寝室に向かい、フラーニャとカーシャル、キウェントを再会させた。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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