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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-350 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜グルーウォンス王国革命・動〜 scene.5

<三人称全知視点>


「……かつて聡明な王子と呼ばれていたラールフレット国王陛下の豹変の裏にはそのような事情があったのですね」


 ワポワール辺境伯領に視察に赴いたまま一時期消息不明となっていたラールフレットがデスマウンテンに棲まうマシャナ=ブリユーノによって誘拐された後、『這い寄るモノの書』を強制的に読まされて洗脳され、グルーウォンス王国を崩壊に至らしめる猛毒に仕立てられていたというトーマスの話はライフォール達にとって驚きに満ちたものであったが、決して信じられない荒唐無稽な話という訳では無かった。


 寧ろ、欠けていたパズルのピースがカチリと嵌ったように感じ、トーマスの話はストンと腑に落ちた。


「では、トーマス様は『這い寄る混沌の蛇』が王国政府を蝕んでいたという情報を我々に提供するためにこの場に赴いたのですが?」


「半分は正解だ。余談だが、王国政府側に紛れた『這い寄る混沌の蛇』の間者はラールフレット=グルーウォンの他に内務大臣の秘書官ナザニエル=ワポード、第二騎士団副団長ケインゼス=ウォーナート、次席執事のドラベル=ゲラントゥス、王宮総侍女長のアンネミリエット=ジュラヴィクスがいる」


「……エスタージュ=ネコリシアは『這い寄る混沌の蛇』ではないのですね」


「その通りだ。エスタージュはラールフレットの真意に賛同して中央情報局局長及びオルレアン神教会対策委員長をしていた訳ではないと我々は考えている。ラールフレットの治世は長かった。そのため、ラールフレットの治世に賛同する者、堕落の味を覚えて酒池肉林を築き、国の腐敗を加速させた貴族も現れた。いや、寧ろ残っている真面な貴族を数える方が簡単なほどまでグルーウォンス王国は腐敗している。最早、王の首をすげ替えればいいという段階ではない。王国の貴族の大半を処刑しなければ国は良くならないだろう。それは、君達革命軍の方がよく分かっていることだろう?」


「確かに……グルーウォンス王国は取り返しのつかないレベルまで腐敗している。だから、我々は国を変えるために立ち上がった。例え多くの血を流そうと、心から民が笑える国にするためにな」


「まあ、その血は貴君らが手を汚して流す必要は無くなった訳だがな。我々臨時班の任務はグルーウォンス王国に潜み、国を腐敗させる邪教徒の殲滅だったが、今回の任務をバックアップしてくれていた多種族同盟加盟国の中でも最も敵に回すと危険な国の諜報員達が残る貴族の処刑に動いている。進捗状況は分からないが、恐らくそう遠くないうちに王国政府内の掃除は片付くと思われる」


「……恐ろしいことですね」


「全くだ。私もビオラの闇の三大勢力だけは敵に回したくないと常々考えているよ。さて、君達革命軍には近々王城に赴いて頂かなくてはならないのだが……残念ながら、そこに同席してはならない者達がいる」


「トーマス様、それは一体どういう……」


「察しが悪いな。……ライフォール、貴様が『這い寄る混沌の蛇』の信徒だったとしよう。王国を腐敗させるとして、その中心人物であるラールフレットは革命で生き絶えることになる可能性が高い。そもそも、ライフォールの願う混沌は自らの死によって完成するもの……君達が失敗したとしても、第二第三の革命軍が誕生するように手を打つだろう。しかし、自身の死後、果たして自分の思い描いた混沌の時代はやってくるだろうか? 強者と弱者、貴族と民の立場は逆転し、奪う者は奪われる側に、奪われる側は奪う側に反転する――罪を問われ、殺された貴族の身内達は革命軍を恨むことになるだろう。だが、もし君達が素晴らしい治世をしたらどうだ? 未来は誰にも分からないのだ。もしかしたら、その元貴族達も素直に納得してしまうほどの素晴らしい治世にしてしまうかもしれない。そのような未知の未来に果たしてライフォールが例え狂人だったとしても賭けるとは思えない。つまり、後々に革命軍に対する評判をガタ落ちさせ、信頼を憎悪へと塗り替え、更なる混沌を呼び起こす種が革命軍に植え付けられている可能性が高いと思われる。……要するに裏切り者が革命軍の中枢に組み込まれているということだ」


「――ッ!? 革命軍に裏切り者!? トーマス様、私の仲間を愚弄しないで頂きたい。私達は同じ志を持って集まった同志――この中に裏切り者などいる筈がない!!」


「ところで、ライフォール。何故我々が王国政府内に紛れた『這い寄る混沌の蛇』を的確に見つけられたと思う? 彼らの手口は巧妙で、決して分かりやすい場所にはいない。要所を押さえつつも、決して芋蔓式に発見できない分布。それなのに、何故、我々がたった一度の侵攻で的確に『這い寄る混沌の蛇』の信徒だけを狙い撃ちできたのか、お分かりになるかな?」


 ライフォールは当初、トーマスが革命軍に共闘を持ちかけてきたと考えていた。これから王城に攻め込み、王の首を取るつもりだと。

 しかし、話が進むごとにその認識が間違いだと、革命軍が成そうとした革命はとっくの昔に終わってしまったのだと気づいた。


 そして、その考えは正しかった。何故なら、榊がライフォールの目の前に置いたナニカにはトーマス達の手で討伐させるラールフレット達『這い寄る混沌の蛇』の信徒達の姿が映し出されていたのだから。


「本来の歴史において、イェンドル王国の第一王子エシャル・デル・イェンドル殿下からの依頼でイェンドル王国の革命の裏に隠された真実を調査した私は、戦禍で崩壊し、王族がエシャル殿下が除き全員命を落としたイェンドル王国でその革命の裏で手を引いていたのがイシュトーラス=サルドゥム公爵とサルドゥム公爵派閥のユドラグ=ノーツヘッド子爵であったことを知り、二人を討伐して依頼を達成した。その後、故郷を失ったエシャル殿下を新たに仲間に加え、挑むこととなったのがグルーウォンス王国の革命だ。……『這い寄る混沌の蛇』は常に革命の裏で操っている。グルーウォンス王国に赴いたのは当然の判断だと今の私も思っている」


「――トーマス様は何を仰って……」


「そして、革命軍の拠点をこのように見つけ出した私はライフォール殿達と合流し、共闘関係を築いた。紆余曲折を経てラールフレットを討伐して国の憂いを消し去った後、私達は革命軍にその後のことを任せて国を去ったようだ。……まあ、今回の件は共闘ではなく私達が先に動いたこと。革命軍に後始末をさせるつもりはないさ。まあ、このように我々はこの先に起こる未来のことについて大体を知り得ている。その知識を私達はシナリオと呼称している」


「シナリオ……ですか?」


「どういった事情でこの先の未来を知っているのかということは今の貴君らに話すことはできない。多種族同盟の最重要機密事項の一つだからな。その指針があるおかげで我々は『這い寄る混沌の蛇』の間者を最短距離で撃破することができている。……だが、決して万能な知識ではない。理由は二つ、一つはその知識が限定的なものであること……即ち、全ての未来を知っているという訳ではないということだな。そして、もう一つが例えシナリオに含まれる期間のことであっても目の前の現実との間に差異があることが多々あること。つまり、シナリオは参考程度にするべきということだ。……ただ、シナリオの情報に間違いはない。現に、先ほど述べた王国政府に潜入した蛇は全てシナリオと一致していた。さて、革命軍に潜む蛇――邪教徒についてだが、確実なのは二番隊隊長のメルヴォロン=ケッツァールトと四番隊隊長補佐のギアッチオ=スメトナ、貴様達だ」


「――ッ!? ライフォール様、コイツは出鱈目を言っています!! 俺は『這い寄る混沌の蛇』なんて聞いたことがない!!」


「ライフォール様、俺達を信じてください!!」


「二人はそのシナリオとやらの中では『這い寄る混沌の蛇』として革命軍に潜入していた裏切り者だったのですね。……彼らのことは私が一番よく分かっています。俄には信じられませんが、仮に事実だったとしましょう。……そうしなければ話が進まないですからね。しかし、トーマス様の仰り方だとまだ裏切り者が紛れているように聞こえるのですが?」


「ああ、その通りだ。……より正確には、その可能性が極めて高いということだな。私も実際にここに赴くまでは実のところ確証は持てなかった。シナリオにも裏付けがないのだから、探すのも一苦労だ。そして、その最後の一人――革命軍にとっては裏切り者だが、その存在はメルヴォロンやギアッチオはおろか、グルーウォンス王国の腐敗を主導していたラールフレットやある意味黒幕と言えるマシャナすら、その存在を掴めていなかったと考えられる」


「……はっ? いやいや、同じ『這い寄る混沌の蛇』なんですよね!? 仮にトーマス様の仰ることが事実だったとして、何故『這い寄る混沌の蛇』の関係者同士協力せず、素性を隠すような真似を?」


「仲間意識が皆無だからだろう? そもそも、ソイツの目的はラールフレット達の動向を監視するためだったのだからな。『這い寄る混沌の蛇』には冥黎域の十三使徒と呼ばれる幹部がいる。その中の一人ロベリア=カーディナリスの直属の配下――混沌の指徒。他の『這い寄る混沌の蛇』の関係者を蔑む自称エリート共だ。今回の臨時班が各所で始動した頃から、我々は既に混沌の指徒と各地で交戦している。ラスパーツィ大陸海洋都市レインフォールで交戦したラム=バカルディ、ラスパーツィ大陸サンアヴァロン連邦帝国エルジューク監獄で交戦した朦朧とした影(シャドウ)、ペドレリーア大陸イェンドル王国ノーツヘッド子爵領で交戦したギジュタールの三人だ。そして、私はこの革命軍に四人目がいると確信している。……貴様のことだ、ヘラナローラ=シェルフェッド」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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