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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-329 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜決着! セントピュセル学院生徒会選挙〜 scene.3

<三人称全知視点>


「なんだか気持ち悪い部屋だねぇ」


 部屋に入った直後、開口一番にエイリーンが放った言葉はミレーユ達に衝撃を与えた。


 研究室にあるのは論文や本が置かれたゼミナールで使っていたと思われる長机と研究用の小さな机。

 他の教授達の中には書類が散乱していたり、研究とは関係ないものが置かれていたり、といったことがあるのだが、この研究室には余計な私物は一切置かれておらず、論文や書類、本などは綺麗に整頓されて置かれている。


 本棚も綺麗に整頓されていて、トーマスの几帳面な性格が部屋からだけでも読み取ることができる。

 エイリーンが「気持ち悪い」と評する原因がこの研究室にあるとは思えない。


「あの……どういうことでしょうか? ボクにはこの部屋がとても整理されているように見えるのですが」


「分かったわ。綺麗過ぎるんじゃないかしら? トーマス先生が学院を去ってから随分経っているのにこの部屋には埃すら落ちていない……圓さんがこの部屋を気持ち悪いと評する理由はこれじゃないかしら?」


「……いや、全然違うよ? ラングドン教授が一定の割合でこの研究室の掃除をしている筈だから綺麗でも別段不思議じゃないよねぇ? 問題はそこじゃなくて……」


 エイリーンの話に納得し掛け……リズフィーナはそこに聞き捨てならない言葉が紛れたことに気づいた。


「どういうことなのかしら!? トーマス先生が学院に来る方法なんて空間魔法を会得する以前には無かった筈よ!!」


「頭硬いねぇ、リズフィーナさん。もっと柔軟に考えようよ。ラングドン教授はリズフィーナさんの最終決定により処刑されそうになった……ここまではいいよね?」


「……えぇ、確かに私はトーマス先生の提唱した理論は危険なものだと考えて処刑に踏み切ったわ」


「既に自分が処刑されることは周知の事実となっていた筈だ。そのような状況で学院都市セントピュセルがあるこの島から果たして湖を渡り、学院の外に行くことはできるのかな?」


「……トーマス先生がどのようにして島を脱出したのかは長年の疑問だったわ。でも、別に島を出る方法が無い訳ではないわ。例えば、船を使って…」


「船での脱出は現実的ではないよ? 一つ、そこまでしてラングドン教授を助ける利益(メリット)がない。罪人であるラングドン教授の闘争を幇助するということはオルレアン神教会を敵に回ることに他ならないからねぇ。二つ、船での脱出は誰もが想像する手法だから真っ先に湖の方に警戒の視線が向けられた筈だ。つまり……」


「そうなると、湖を使わずに学院から島外に脱出できる方法があるということですわね……」


 エイリーンの言葉を引き続きそこまでミレーユが言葉にした時、ミレーユは大きな違和感を抱いた。

 半ば無意識に口にした言葉を改めて心の中で反芻し、「あれ? もしかしてわたくし正解を引き当てたんじゃ!?」と有頂天になる。


「もしかして、この研究室に学院から島外に脱出できる方法が隠されているんじゃないかしら?」


「ミレーユさん、正解だよ」


「おば……お姉様、凄いです!!」


 「これが『帝国の深遠なる叡智姫』なのですね!」とミラーナに感動の籠った視線を向けられ、更に調子に乗ってしまう調子に乗りやすいお祖母ちゃんである。


「ラングドン教授の処刑が失敗に終わった後、警戒の視線はたった一つの湖に向けられた。そうなると学院側は手薄になる。その隙を突いて研究室を使ってこの島から脱出したってのが真相なんじゃないかな? 研究室を購入したのも学院と島の外を繋ぐ道を作ったり研究室内を改造するため……研究室は人の出入りが完全にない場所じゃないから、入口を露出させておく訳にはいかなかっただろうし、当然ながら入口を隠す仕掛けくらいは用意しているんじゃないかなっと思ってねぇ。それで、最初この部屋に入った時のボクの感想に戻るんだけど、この部屋の本の配置、気持ち悪いと思わないかな? ラングドン教授はかなり几帳面な性格で本も年代順、作者名順、題名の順番など規則的に本を片付けている。実際、ダイアモンド帝国のラングドン探偵事務所でも本は順番に並んでいた。しかし、この部屋ではいくつかの本が順番を無視して置かれている」


「……つまり、その本に仕掛けがあるということかしら?」


 まず、ミレーユ達は本を一つずつ取り出してみることにした。

 本の裏に隠しボタンが仕掛けられている可能性をエイリーンは指摘していたが、そういったものは存在せず本の表紙、裏表紙、背表紙にもヒントになりそうなものはない。


 ミラーナがパラパラと本を捲っていると、ポロんと何かが床に落ちた。


「ミラーナ様、お怪我はありませんか!」


「ライネか……ライネさん大丈夫です! それよりも本が壊れてしまいました……。ごめんなさい! ボクがもっと気をつけていれば」


「ミラーナさん、謝ることはないよ。どうやら、それは外れるのが仕様みたいだからねぇ。巧妙に本の一部のように偽装されているけど、少しだけ紙の大きさが違う。ミレーユさん、リズフィーナさん、ライネさん、本の中にこれと同じ小冊子が隠されていないかを調べてもらってもいいかな?」


 明らかに場違いなところに置かれていた本は全部で六冊――ミレーユ達が確認するとその全てに謎の小冊子が挟まれていた。


「小冊子の大半のページはフェイク。三ページから四ページを開いて並べると……最後は謎でもなんでもなく『青の背表紙の本を押せ』って六冊全部合わせると読めるようになるってことだねぇ。この部屋に青の背表紙の本は一冊、後はその本を押せば――」


「押しました!」


 エイリーンが言い終わらないうちにミラーナが青い背表紙の本を棚の奥へと押し込んだ。

 「ガタン」という音が鳴り、ゴゴゴゴと音を立てて本棚が床に入っていく。

 驚いたミラーナが尻餅をつき、ミラーナを心配したライネが素早くミラーナに駆け寄った。そして、二人は本棚で隠されていた壁に不自然に付けられた鍵穴を見つけることになる。


「ミレーユ様、壁に何かありました。……ですが」


「どうしましたの? ライネ」


「それが……鍵穴しかありません」


 困惑するライネの言葉が理解できなかったミレーユはミラーナとライネの方へと歩み寄り、壁に視線を向ける。

 そこには扉にある筈の取手が無かった。ただ真っ白な壁にポッカリと鍵穴だけが存在しているという奇妙な光景にミレーユは首を傾げる。


「はて、確かにこれでは鍵を刺しても扉は開きませんわね」


 一応、もう一つの鍵を差し込んでみると「ガチャリ」と音がして鍵が開いた。しかし、鍵を開けることができても扉を開ける方法はない。

 途方に暮れるミレーユの方にエイリーンとリズフィーナもやってきた。


「さて、これが最後の問題か。目の前には鍵穴のみが存在する白い壁――ドアノブなども特にはないみたいだ。でも、この壁には分かりにくいけど切れ目が入っている。つまり、これが扉の役割を果たしているのは間違いないだろう。……じゃあ、どう開けるかだけど引き戸って訳でも無さそうだし、掴めるところがないならこちら側に引っ張ることもできない。となれば、選択肢は一つしかないねぇ」


 エイリーンは鍵穴を覆うように掌を置き、思いっきり押す。すると、扉は内側へと開いていき小部屋が出現した。部屋の中には地下へと続く階段の入り口がポッカリと口を開いている。


「なるほど、裏側にはちゃんとドアノブが備わっているようだねぇ。こっちはサムターンで鍵無しでも鍵が開けられるようになっているから、こっち側からの出入りは割と簡単みたいだねぇ。近くには本棚を上下に動かせるボタンもあるみたいだし、簡単に研究室側に入れるんじゃないかな? まあ、あちらはあちらで何も仕掛けがないってこともないと思うけど」


 研究室側を厳重に守ってももう一つの入り口の防御が手薄であれば意味がない。トーマスも学院側に簡単に侵入できないように仕掛けを施している筈だ。

 その仕掛けの内容に少しだけワクワクしながら一通り仕掛けを確認したところでエイリーンを先頭にミレーユ達は階段を降りていく。地下内部は当然ながら真っ暗で、エイリーンが光魔法で作り出した灯りが無ければ何も見ることができない。


 地下通路には蝋燭を立てる燭台すら置かれていなかった。トーマスは手に持った蝋燭の僅かな光だけでこの暗黒の地下通路を歩いたのだろうか?

 気の遠くなるような暗闇の世界を光魔法が照らす中、エイリーンを先頭に歩いていく。湖を越えて大陸側に渡るというだけあって、その距離は途方もなく自らの身に破滅が迫った時のために体を鍛えているつもりのミレーユや生まれた時代が時代故に体力を付けざるを得なかったミラーナですらヘトヘトになっている。ライネとリズフィーナは言わずもがな、元気なのはエイリーンくらいだ。


 そのエイリーンの回復魔法で体力を回復してもらうことはできるが気力までは回復しない。永遠に続くと錯覚するほどの長い地下通路を歩き続け、ミレーユ達の精神が擦り切れそうになっていたその時、上へと続く階段が姿を見せた。


「……流石にこの地下通路をそのままにしておくのは良くないねぇ。何かに使うにしても照明の設備くらいは付けておかないといけないかな? 地下通路の整備についてはこっちでやっておくよ」


「はぁはぁ……助かりますわ。……でも、この通路って使う機会が本当にあるのかしら?」


「さぁねぇ……とりあえず地上まで出ようか? ああ、流石に帰りは時空魔法でラングドン教授の研究室まで送るから安心してねぇ」


「助かるわ。ありがとう、圓様」


 反対側の入り口にも研究室側と全く同じ仕掛けが備わっていた。ただ鍵を開けても外へは出られないと判断したエイリーンはボタンを押して仕掛けを解除した後、扉を開ける。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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