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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-327 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜決着! セントピュセル学院生徒会選挙〜 scene.1

<三人称全知視点>


 一連の儀式は投票の儀をもって幕を閉じた。その後、生徒達が投じた票を教師陣が開票して集計し、最短で二時間後に集計の結果を学院本校舎一階の掲示板に貼り出すことになる。


 投票の儀が終了した後、ミレーユ達は選挙対策本部として借りている教室に集まっていた。

 まだ開票結果発表まで時間があるということで「今回の選挙のお疲れ様会を選挙対策本部として借りている教室でするのはどうだろうか?」とエイリーンが提案し、今回の選挙で協力してくれた者達への労いをしたいと思っていたミレーユがそれに賛同したことで急遽開催されることとなった慰労会。……しかし、開催が決まったのが数分前なのでせいぜい食堂からお菓子と飲み物を分けてもらって歓談するくらいしかできないと思っていたのだが。


「皆様お疲れ様でした。お嬢様からご依頼された通り、パーティの準備は整えておきました」


「カレンさん、準備ありがとうございます。さて皆様、お疲れ様でした。本日は細やかながらお茶とお菓子をご用意させて頂きましたので疲れを癒しつつ楽しんで頂けたらと思います」


「エイリーン様、まさかこのお茶菓子は……」


「えぇ、僭越ながら私の方で作らせて頂いたものです。お口に合えば良いのですが」


 などと謙遜するエイリーンだが、圓の作る料理が多種族同盟の者達であっても滅多に食べることができないものであることをラインヴェルド達から聞かされていたミレーユにはその価値が分かっていた。

 お菓子好きとしてラインヴェルド達から話を聞いていた圓お手製のお菓子を食べられると聞き、ミレーユのテンションがかつてないほど高まる。


 そして、それはライネ、ミラーナ、アモン、フィリィス、マリア――エイリーンの正体が圓であることを知る協力者達、結果的にミレーユの味方をしたことでこの場に呼ばれたリオンナハトとカラック、ミレーユと選挙戦で戦いながら当然のことに慰労会に参加することになったリズフィーナにも言えることである。今日ばかりはミレーユの体型変化を心配してお菓子を減らそうとするライネも止めるつもりは無さそうである。


「本当に私まで参加していいのかしら?」


「私が何も言わなくてもミレーユさんはリズフィーナ様を誘いたいと仰りました。立場は違えど、共に生徒会長戦を戦い抜いた戦友ですから参加する権利はあると思いますわ。それに、たった一人で戦い抜いた努力は讃えられて然るべきだと私は思います」


 リズフィーナは自分が参加していることに場違い感を抱いていたようだったが、この場に集まった者達にはリズフィーナが参加していることに驚く者はいても参加を咎めようとするような者はいなかった。


「あら? そういえばジェーオ様はいらっしゃらないのかしら? 今回の各国の交渉で尽力してくださったジェーオ様にも参加して頂きたかったのですけれど……」


「ミレーユ姫殿下、お気遣いありがとうございます。ジェーオ様なら次の仕事に向かいましたよ。勿論、しっかりと埋め合わせはしておくのであまりお気になさらず」


「ああ、お姉様のケーキを食べられるなんて本当に至福な時間ですわ」


 ミレーユがジェーオがこの場に参加していない理由をエイリーンに尋ね、エイリーンからミレーユの気遣いに感謝を述べている間にケーキを口に運んだエルシーが同性すら惚れてしまいそうな蕩けた微笑を浮かべた。

 流石は【魔性の伯爵】と呼ばれるニルヴァスの妹――破壊力が異常である。


「流石はベーシックヘイム大陸随一の腕を持つエイリーン殿のドルチェ……噂に聞いていたが、まさかこれほどとは」


「リオンナハト殿下、流石に大陸随一は言い過ぎだと思いますわ。私などまだまだ半人前、もっと修練を積まなければならない身であることを痛感しております」


「……いやいや、これほどのケーキなんてなかなか食べられませんよ。まだこれ以上先を目指すのですか!?」


 リオンナハトの隣でケーキを食べてあまりの美味しさに意識を飛ばしかけていたカラックがその言葉で一気に現実に引き戻され、そのまま向上心のお化けのエイリーンに突っ込みを入れる。


 「こんなに美味しい食べ物は初めて」と息をつく間も無くケーキを食べ、お代わりをカレンに要求するミラーナ、カレン一人に給仕をさせてしまっていることに罪悪感を抱いてカレンの手伝いをしようと立ち上がろうとしてカレンに止められるライネ、ミレーユと仲良く談笑しながらケーキを食べるアモン、選挙期間のことを振り返りながら楽しそうに談笑するフィリィス、マリア、ウォロスを筆頭とする帝国貴族達、ルーナドーラを初めとするミレーユの取り巻き達をエイリーンが微笑ましそうに眺めていると、リズフィーナがエイリーンに声を掛けてきた。


「選挙期間中に一つ賭けをしたわね。その内容って、普通教育の実施に協力するってことでいいのかしら?」


「まあ、私のお願いは普通教育を実施するために協力してもらいたいということでしたが、決してミレーユ姫とリズフィーナ様に強制するつもりはありません。お二人が最終的にどうしたいかを決めて結論を出して頂けたら十分です。それに、ベーシックヘイム大陸でも順次進めていく予定であってまだまだ遠い未来のことですから、実施できるかどうかも微妙ですからねぇ」


「お姉様ならきっとできますわ! それに、お姉様にはその未来が見えているのでしょう?」


「さて、それはどうでしょうね?」


 エルシーの問いに嫣然と微笑んで有耶無耶にしたエイリーンだったが、その瞳は圓の理想を体現した未来を映し出しているように見えた。



 開票結果が発表されたのは投票の儀の終了から三時間後のことだった。

 準備と給仕に続いて後片付けを引き受けたカレンを手伝うために残ったエルシー以外のメンバーは借りていた教室を出て生徒会長選挙の結果が貼り出されている学院本校舎一階を目指す。


「今回の選挙、結果を見るまでもなく私の完敗ね」


「リズフィーナ様、そうとも言い切れませんよ。前半は場を圧倒していましたが、私の語った普通教育の実現とミレーユ姫殿下の最終演説が足を引っ張った可能性は十分にありますからねぇ。ミレーユ姫殿下の言葉は後の時代に大きな影響を及ぼすことになるでしょうが、インパクトに欠ける内容でした。普通教育に関しては思いっきりセントピュセル学院の態勢に対する誹謗中傷も含まれていますし、何よりも貴族の特権性を排除する危険性を孕んでいます。私が王権制度を否定し、民主化を推し進めようとしていると勘違いされた可能性もあります。まあ、私は安易な民主化に否定的な立場ですけどねぇ」


「……少し意外だったな。エイリーン殿は一部特権階級が頂点に君臨することに否定的な立場だと思っていたが」


「リオンナハト殿下、仮に民衆達が革命を起こして君主制を崩壊に追い込み、共和制を実現したとして果たして本当に世界が豊かになると思いますか? 例え王侯貴族という特権階級が消えても今度は民衆の中に上下が生まれるだけ。人間は封建主義、資本主義、社会主義……様々な経済的・政治的システムを生み出してきましたが、結局誰かが誰かを支配するという構造はどこの国でも変わりません。この世に完璧な統治の方法など存在しないのです。例え、そのシステムがどんなに崇高な理念を持つ者に生み出されたとしても使う人によって薬にも毒にもなる。重要なのはシステムではなくそれを運用する人なのですわ。……それに革命という行いが正しいものであるかも微妙ですからね。革命が起こった結果、かえって税が上がり人々が困窮するというケースもありますから」


「……プレゲトーン王国の革命が成功したら、そういった事態になった可能性もあるとエイリーンさんは言いたいのかな?」


「その可能性は高いでしょうねぇ。革命派の背後にいたのはアイツらですから。……まあ、歴史のifなんていくらでもありますから、断言できるような話でもありませんが」


 エイリーン達が話している間に一行は掲示板の付近に到着した。既に掲示板の周りには人垣ができており、すぐに選挙結果を確認できる状況ではない。


「……もう少し良い方法もあったのではありませんか? 混雑することは分かりきっていたでしょう?」


「ごめんなさい……教師陣には後で伝えるわ」


「ここで待っていても仕方がありませんし、直接集計をした教師陣に結果を聞きにいくのはどうでしょうか?」


 エイリーンの提案でミレーユ達は掲示板で結果を確認することを諦めて職員室に向かう。


「少し良いかしら? 選挙の結果についてお聞きしたいのだけど。掲示板の前に人垣ができてとても見に行ける状況では無かったわ」


「リズフィーナ様! も、申し訳ございませんでした。すぐに掲示場所を追加して生徒を分散させます! それで、選挙結果ですね! 少々お待ちください」


 リズフィーナの対応をした教員の一人は他の教員に指示を出して選挙結果の書かれた紙を複製させた後、投票の結果を纏めたノートを持って廊下に姿を見せた。


「選挙結果ですが、ミレーユ様の得票率が89%、リズフィーナ様の得票率が10%、無効票が1%となりました。無効票は二枚で、どちらにもエイリーンさん、貴女の名前が書かれていましたが……」


「私はミレーユ様に投票しましたし、お姉様が自分に投票する訳がありませんから……犯人はあの莫迦二人ですわね。全くお姉様はご多忙ですわ! 就任すれば間違いなくミレーユ様やリズフィーナ様以上に素晴らしい学院へと改革をしてくださると思いますが、そのような雑事まで行っている余裕があるとはとても思えませんわ。……お姉様、後であの莫迦二人には説教しておきますので」


「リーシャリス様、ガラハッド様……まさか、ここまで阿呆だったとは。……本当に同郷の方々がご迷惑をお掛けしましたわ」


 まさか、リーシャリスとガラハッドが自分に投票して無効票になるとは思っていなかったのかエイリーンが衝撃のあまり阿呆面を晒している。


「でも、お二人の気持ちも分からないことはありませんわ。……わたくしの得票率が89%、信じられませんわ! わたくしが、生徒会長!?」


 状況を処理できないミレーユが素直に喜びを顔に表せない中、ミレーユ以上にミレーユの生徒会長就任を喜んだのはミレーユと共にこの生徒会選挙を戦い抜いた仲間達であり、ミレーユと生徒会選挙で戦ったリズフィーナだった。


「おめでとう、ミレーユさん」


 リズフィーナの祝福の言葉を受け、ようやく状況を理解できたミレーユの目から涙が溢れた。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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