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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-324 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜生徒会選挙当日、激突するミレーユとリズフィーナ、エイリーンとトーマス〜 scene.2

<三人称全知視点>


 大聖堂の内陣の目の前――中央交差部と呼ばれる場所には聖堂には似つかわしくない二つの長机が置かれている。

 生徒会長選挙公開討論を行うにあたり、急遽用意されたミレーユ陣営とリズフィーナ陣営の席である。


 既にエイリーンはミレーユ陣営側の椅子に座り、「E.DEVISE」を使って資料の最終チェックをしている。

 そこにライネに協力してもらい、聖衣を纏ったミレーユが到着。リズフィーナも既に到着していたので、ミレーユの到着と同時に生徒会長選挙公開討論の開始が会を仕切る司祭によって宣言された。


「では、まずミレーユ様の陣営からリズフィーナ様への質疑を行います。リズフィーナ様の掲げる公約等に対して質問はありませんか?」


「わたくしは特にありませんわ。エイリーン様は特にございませんの?」


「私からも特にリズフィーナ様の公約に対して質問をしたいことはございません。リズフィーナ様の公約は極めて完成度の高い……いえ、最善手といっても過言ではないものでございますわ。セントピュセル学院の予算、その中で生徒会活動で使える額をしっかりと把握し、そのリソースを十全に使って今行える最大手を打っているのがリズフィーナ様の選挙公約ですからねぇ」


 リズフィーナを手放して賞賛するエイリーンと一切質問をしないミレーユに司祭が「こいつらやる気があるのかよ?」という視線を向ける。


「では、続いてリズフィーナ様の陣営からミレーユ様の陣営への質疑を行います」


「私から聞きたいことは一つよ。エイリーン様が仰ったように私は私の打てる最大手を打ったわ。これ以上の公約の実現は物理的に不可能。……それは、他ならぬミレーユさん達がよく分かっているんじゃないかしら? その上であの夢物語のような公約を実現する方法があるのか、それともあの公約は実現できない嘘偽りで塗り固められたものなのか……あの公約をどう実現するつもりなのかを教えてもらえないかしら?」


 それはリズフィーナだけでなく、ミレーユ陣営以外の学院関係者全員が問いたい疑問だった。

 そして、同時に圓が生徒会長選挙公開討論を企画した目的でもある。


 全てはこの質問を最高の舞台で引き出すための布石――この瞬間、勝利の方程式は九割型完成したのである。……まあ、最終演説が残っているので百パーセントと言い切れないのだが。


「エイリーン様、後はお任せしてもよろしいかしら?」


「承知しました。では、不肖私から少々説明の方をさせて頂きます」


 エイリーンは立ち上がりミレーユ陣営とリズフィーナの机の丁度真ん中、内陣を背にして教師陣、来賓、生徒達の方へと向き直った。


「まずはこちらの画面をご覧ください」


 『管理者権限』と「E.DEVISE」を接続して画面を実体化させるとエイリーンは「E.DEVISE」を操作して資料を開いた。

 突如出現した立体映像に生徒達だけでなく教師達も何が起きているのか分からず呆然とする中、エイリーンは彼らを気にせず話を進めていく。


「今映し出されているのはセントピュセル学院の予算を算出した結果です。学院全体での予算が一年でこれくらい……そのうち生徒会が利用可能なのはこの辺りになるかと思います」


「……予算については非公開なのによく金額を算出できたわね」


「フェルミ推定って……ご存知ではありませんか。例えば、この世界に蟻は一体何匹いると思いますか? 本当にそのような数を算出できるのかとお思いになるでしょうが、このように一見見当もつかないような量に関して推定することをフェルミ推定と言います。では、続いて二枚目の資料です。こちらはリズフィーナ様の公約に掛かる費用を概算したものになります。先程の生徒会で動かすことができる予算額と見比べて頂ければ分かると思いますが、予算枠ギリギリで上手く纏めています。私が先ほどリズフィーナ様の公約を最大手と言った理由はこの二枚の資料が雄弁に語っていると思います。……まあ、リズフィーナ様の公約を誉めていても仕方がないので次の資料に行きましょう。皆様ご存知だとは思いますが、こちらがミレーユ様の公約となります」


 学院関係者達に強い印象を刻んだ公約だが、改めて見るとその実現不可能な内容に圧倒される。


「実は食堂のメニューの拡充も公約の一つと考えていたのですが、食堂と交渉をしようとしたところ拡充案が全て採用されてしまい、残念ながら公約が一つ減ってしまいました。皆様、例えリズフィーナ様が選挙で勝利しても食堂のメニューの拡充されますのでご安心ください」


 などとエイリーンが真面目ぶった顔でそんなことを言うので大聖堂のあちこちで堪えられなくなった者達の吹き出し笑いや笑い声が響く。


「勿論、冬のキノコ鍋パーティーは死守しましたのでキノコの鍋を囲いたい方は是非ミレーユ様に清き一票をお願いします」


 重苦しかった空気を笑いで一変させつつ流れがミレーユ陣営側に傾いたことを確信したエイリーンはいよいよ本題に入ることにした。


「さて、四枚目の資料ですがミレーユ様の公約を全て現実なものにした場合に掛かる予算を纏めたものになります。ご覧になれば分かると思いますが、全く足りておりません。それは勿論、承知の上です。既に皆様の中にも何人か気づいている方もいらっしゃると思いますが、この公約は生徒会が自由に使用できるリソースのほとんどを学校施設の改修以外に極振りするという公約です」


 リズフィーナを含め、大聖堂のほぼ全員がエイリーンの発した言葉の意味を理解できなかった。

 つまり、それは学校施設の改修という公約の要を完全に捨てたということであり……。


「勿論、神に誓って嘘の公約をでっち上げるつもりは毛頭ありませんわ」


「……エイリーン様が言うと随分と嘘くさいですわね」


「酷いですわ、ミレーユ様。……さて、これが私達の公約の肝であり、更にはこの選挙そのものの行方を左右するものになります。そうですわね……例えば、生徒会が使えるリソースを十としましょう。その十のリソース全てを完璧に使ってしまうのがリズフィーナ様です。そのような完璧で、ちょっとだけ狡く思えてしまうリズフィーナ様に勝つにはどうすればいいか? 二十のリソースで、或いは三十のリソースで、或いは四十のリソースで……リズフィーナ様を上回るリソースの数の暴力に頼るのが一番手っ取り早いと思いませんか?」


 エイリーンの言葉の意味は理解できるが、その真の意味を理解できる者はエイミーンとミレーユから直接話を聞いたものを除けばごく少数――このうち、ラインヴェルド、オルパタータダ、トーマスは圓達の思惑を理解し、「やっぱいつもの圓じゃねぇか」とあまりにも圓らしい策をラインヴェルドとオルパタータダは同時に声を上げて笑った。


「リズフィーナ、ちょっといいか? 俺、ようやく今回、親友が何を企んでいるか何なのか分かったから答え合わせをさせてもらってもいいか?」


 大聖堂の静謐をぶち壊して大笑いしたラインヴェルドとオルパタータダを司祭が睨み付ける中、リズフィーナは司祭を制してラインヴェルドの発言を許した。出遅れたオルパタータダは若干不満そうである。


「今回、会場にビオラの幹部がいることが不思議だったんだ。……まあ、あるかもしれないとは思っていたが、まさか本気でそんな採算度外視のことをやってのけるとは本当にクソ笑えてくるぜ。リズフィーナ、本当にまだ分からないのかよ? リソースは足りないってことが分かりきっているんだ。だったら外から持ってこればいいだろう?」


「まさか……融資」


「流石ですわ、リズフィーナ様。ご明察です。それと陛下、以前も申し上げましたが聖堂は神聖な場、例えオルレアン神教会の教えを信じていなくとも郷にいれば郷に従え、その国の信仰を尊重すべきです。それ以上巫山戯れば、アネモネ閣下とローザ様に報告します。オルパタータダ陛下も同様です」


「……ううっ、分かったよ」


 ラインヴェルドとオルパタータダを一瞬だけ纏った霸気で威圧した後、エイリーンは再び微笑を浮かべて話を再開する。


「結論から申しますと、今回、ビオラ商会合同会社はセントピュセル学院の施設改修に必要な費用を全額負担することを検討しています。勿論、これはミレーユ様が生徒会長になる場合に限りという条件付きではありますが。詳しい内容はビオラ商会合同会社幹部のジェーオ=フォルノア様からお話頂こうと思います。それでは、よろしくお願いします」


 エイリーンが席に戻り、代わりにジェーオが登壇する。

 そのタイミングでジェーオはリオンナハトとアモンに目配せして合図を送った。


「我々ビオラ商会はセントピュセル学院の施設改修に必要な費用の全額負担を検討しています。しかし、ただビオラ商会が施設の改修を全てを引き受けてもペドレリーア大陸の皆様にとってはあまり関係のない話になってしまいますね。セントピュセル学院はオルレアン教国のものではありますが、同時にペドレリーア大陸で暮らす皆様のものでもあります。皆様の拠り所であるこの愛する学院の改修はやはり皆様の手で行いたいと思う筈です。我々はその皆様の希望を叶えたいと考えております。我々が費用を負担し、皆様の国々の手で学院を改修していくというのが最も良い形であると私共は考えております。では、具体的な方針を説明する前にまずは学院の未来予想図を皆様のお目に入れたいと思います。エイリーン様、お願いします」


 画面が切り替わり、図面から起こされ立体映像となった未来の学院の姿が映し出される。

 近未来的な、リズフィーナ達――ペドレリーア大陸の技術力では実現不可能な学院の姿に唖然とする中、ジェーオは更に話を進めていく。


「ビオラ商会合同会社はベーシックヘイム大陸随一の技術力を有しております。皆様の技術力では再現できなくても、この素晴らしい学院を現実のものにすることは可能です。そして、その技術力を是非この機会に皆様の国々でも会得してもらいたいと我々は考えています」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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