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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-304 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜サンアヴァロン連邦帝国の愚かな第一皇子に囁く蛇〜 scene.4

<三人称全知視点>


「しかし、流石はビオラの諜報員。心を折るのが本当に上手だな」


 敵とはいえ、これから味方に引き入れる気で交渉している相手の相手の大切な仲間達を凶禍龔工を除いて皆殺しにするという凄惨極まりない所業を行ったペオーニアにプリムヴェールがマグノーリエ、レミュア、シーラ、ラファエロと共にジト目を向ける。


「これは遊びではなく命を懸けた戦いですわ。真剣勝負に臨む以上はいかなる手を使っても勝利を目指さなければなりません。殺される覚悟がない者が戦場に立ってはならない……プリムヴェール様もご承知のことだと思っておりましたが」


「……確かにそれはそうだが……しかし」


「……まあ、それに私も別に鬼ではありませんわ。白夜様や圓様に比べたらまだまだ甘い方ですわよ」


「……確かに、圓様はお優しい方ですけど、本当に怒りを覚えた相手には歯止めが掛からなくなってしまいますね」


 マグノーリエはペオーニアの意見を肯定するが、その表情は決してペオーニアの言動全てを完全には肯定していなかった。

 ダフネに「圓様と白夜様のことを『恐ろしい』と言っていたことは貴女の独断専行共々しっかりと報告させて頂きます」とアイコンタクトで言われて半泣きになるペオーニアに、シーラが「さっきの所業のどこに慈悲があったのかしら?」とジト目を向ける。


「このままでは私がまるで悪逆非道な人間のように思われてしまいますから、弁解させて頂きますわね。まず、凶禍龔工様の仲間の妖魔達ですが生きておりますわ。……いえ、実際に生きていると言える状況ではありませんが」


『……どういうことかしら? アタシの部下達はみんなアナタに殺されたわよね?』


「えぇ、私は妖魔を凶禍龔工様を除いて皆殺しに致しましたわ。……まあ、正確に言えば凶禍龔工様の仲間の妖魔達に関しては肉体のみを滅ぼしました。ちなみに、凶禍檮杌には処置を施していないので他の妖魔達と同様にご臨終しております。まあ、肉片の一つでも残っていれば目標は達成できますので問題ありませんわ」


「……その肉片を利用して何をしようとしているのか想像するだけでゾッとするな。なるほど、ペオーニア殿が言おうとしていることは理解した」


「でも、それはおかしいと思うのですよぉ〜。『転生を阻害して魂を留まらせる結界を張ることは魂魄属性魔法をもってしても不可能なリコリスさんにしかできない技術』って他ならぬ圓さんが言っていたのですよぉ〜」


「結論から申しますと、私は妖魔達の魂に干渉し、転生を阻害しています。その結果、妖魔達の魂は肉体が滅んだ今も生存しているのですわ。……さて、エイミーン様の疑問にお答えしましょう。転生を阻害して魂を留まらせる結界を張ることは魂魄属性魔法をもってしても不可能です。なので、その方法は私には使えません」


『魂に干渉して……転生を阻害? アナタ、一体何を言っているのよ!?』


「つまり、結界以外の何かしらの方法を使って魂を保護したのね」


「流石はシーラ様、聡明ですわね。魂を留めて置けないのであれば、魂を留めなければいい――予め魂に魂魄魔法で細工をし、魂が転生する前に回収できるようにすれば良いと圓様はお考えになりました。転生を阻害する擬似魂魄で事前に対象の魂魄を包み込んでおき、擬似魂魄の中に事前に時空魔法を一緒に仕込んでおきます。死亡と同時に魔法を起動するようにプログラミングを仕込んでおけば、魂は転生することなく時空魔法で作られた空間に転送されることになる訳ですわ。これこそが、時空魂魄保護魔法――『魂魄包球スピリット・スフィアバリア』。弱点があるとすれば、事前に一人ずつ相手の魂魄に干渉して対象の魂魄を包み込んでおく必要があるため手間が掛かり、消費魔力も多いことでしょうか?」


『そんなことが……本当にできるの!? 百合薗圓はもしかして本当に神なのかしら!?』


「神っていうよりマッドサイエンティストだと私は思うのですよぉ〜!」


 エイミーンが圓をマッドサイエンティスト扱いしたことに凶禍龔工を除く残る全員が揃って首肯した。どうやら、ダフネやペオーニアも圓のことをマッドサイエンティストだと思っていたらしい。


「……しかし、本当によくこんなこと思いつくわよね。話を聞けば理解はできるけど、それを一から構築するって本当に色々とおかしいわ。師匠もそうだけど、やっぱり私とは次元が違うわよね」


 どんどん新しい魔法を量産していく圓やミーフィリアの姿を頭に思い浮かべ、「やっぱり敵わないな」と自嘲気味にレミュアは笑った。


「ビオラの諜報員にとって科学関係は正直専門外なのでお力にはなれませんが、ビオラにはビオラ特殊科学部隊――VSSCがございます。圓様に連絡後、私がVSSCへの引き継ぎを行いますので、私が確保している魂の新たな肉体への受肉はVSSCを頼ってくださいませ。きっと力になってくださると思いますわ。……まあ、かなり癖の強い方々ではありますが、ご要望にはしっかりと応え、嫌なことはなさらないと思いますのでご安心を……」


『……全然安心できないわね。分かったわ、VSSCね。……待っててね、すぐに生き返らせてあげるから』


「妖魔はこの世界では大変珍しい生き物ですが、凶禍檮杌という素材もありますし、他にもモルモットはいますからそこまで酷い扱いはされないと思いますけどね。……では、私は圓様に報告後、凶禍龔工様と共に本部へ一時帰還致しますので、ダフネ様、後のことはよろしくお願いします」


「えぇ、勿論よ。本日までの潜入捜査、お疲れ様でした」



 ペオーニアと凶禍龔工をその場に残し、ダフネ達は城門へと向かった。

 固く閉ざされた城門が開き、何人かの護衛騎士を連れた屈強な男が姿を現す。


「ジャビス=ナガス辺境伯様ですわね」


「いかにも、私がジャビス=ナガスだ。ペオーニア殿から話は聞いている。エイミーン女王陛下、マグノーリエ王女殿下、プリムヴェール殿、レミュア殿、シーラ殿、ラファエロ殿、ダフネ殿、海を越えて遠路遥々ようこそサンアヴァロン連邦帝国へ。……まあ、国としてはあまり歓迎できる状況ではないがな」


 ジャビスはそう言いつつダフネ達の背後に一瞥を与えた。どうやら、凶禍龔工を生かしたことをあまりよく思っていないらしい。


「我々は決して貴方の部下ではございませんわ。『這い寄る混沌の蛇』と妖魔が共通の敵だからこそ共闘関係を築いているだけ……そして、それぞれに対するスタンスも違いがあるのは当然のこと。こちらはこちらの流儀で任務を遂行させて頂きますわ。ご安心を、彼女は既に我が軍門に降っておりますので」


「もし、ビオラの諜報員の方々がいなかったら我々は壊滅していた。……しかし、結果としてはナガス辺境伯領は何一つ実害を被っていない。何かを言える立場ではないな。早速で申し訳ないが館まで御足労頂けないだろうか? エルジューク監獄は難攻不落とまで言われる少々厄介な場所。攻めるにしてもしっかりと策を練らなければならないからな」


 ジャビスの案内でエイミーン達は領主の館へと向かう。

 ふとプリムヴェールが背後を振り返ると街道に堆く積まれていた妖魔の死体は既に消失しており、ペオーニアと凶禍龔工の姿も消えていた。


 エイミーン達はその後、領主の館で部屋を貸し与えられ、晩餐に招待された。

 ジャビスは独身ではなく妻子もいる筈だが晩餐の席には同席していない。しかし、事前にダフネとペオーニアが情報を共有しており、エイミーン達にも「その点には触れないように」と予め釘を刺していたこともあり、比較的静かな晩餐となった。

 どこかの公爵家の晩餐とは雲泥の差である。


「さて、我々はマシャルド第二皇子とヴォガスレス宰相の奪還にどう協力すれば良いのかな?」


「そうですわね……とりあえず、お二人の身を隠しておける建物を提供して頂ければ十分ですわ」


「やはり、我々を戦力としては必要としないのだな」


「えぇ、領軍との連携は難しそうですし、あんまり大人数で行っても警戒されてしまいますからね」


「では、お二人が身を隠せる場所を用意しておこう。それで、決行はいつにする?」


「本日は旅で疲れておりますので、結構は明日の夜にしようかと思っておりますわ。夜襲の方が警備が少なくなりそうですので。それでは、折角用意して頂きましたので私は先にお部屋で休ませて頂きますわね」


 ダフネに続き、エイミーン達もそれぞれ割り当てられた部屋に向かって歩いていく。

 その姿を見送ったところでジャビスは溜息を吐いた。


「ウィレミアとパメラは……」


「勿論ご無事です。まあ、今後も我々に協力してくだされば安泰でしょうが……」


「……くっ」


 ジャビスが睨め付けた相手は執事長のアーモグド――先代の時代から長きに渡ってナガス辺境伯に仕えてきた信頼に足る執事だったのだが、ビオラの諜報員達が現れる直前に豹変してジャビスの大切な家族――ウィレミアとパメラを誘拐した。

 そして、「二人の命を助けて欲しければ指示に従うように」とジャビスを脅してきたのだ。


 ビオラの諜報員――ペオーニアとの交渉の場にも信頼に足る部下として同席したこの男はどうやら目障りな別大陸の者達を始末するためにジャビスを利用するつもりらしい。

 諜報員達も流石にジャビスを疑ってはいないだろう。信頼して流してくれた情報をアーモグドに流す代わりにウィレミアとパメラの命を保証してもらう。――それ以外にジャビスに大切な家族を守る方法は無かった。


「邪魔なベーシックヘイム大陸の連中が片付いても終わりではありませんよ。貴方には革命を率いる者として愚かな皇帝を殺して頂かなければなりません。指示に従ってくださっている間はご息女と奥方の命は保証致しますが……」


「……分かっている」


 人質が取られている状況でジャビスにできることはない。

 心からジャビスのことを信頼してくれたダフネ達にジャビスは心の中で謝罪した。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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