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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-302 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜サンアヴァロン連邦帝国の愚かな第一皇子に囁く蛇〜 scene.2

<三人称全知視点>


 サンアヴァロン連邦帝国の帝都を目指すエイミーン、マグノーリエ、プリムヴェール、レミュア、シーラ、ラファエロの六人はサンアヴァロン連邦帝国に派遣された諜報員達を統括するダフネと行動を共にしていた。

 行動指針は海洋都市レインフォールを名指していた臨時班と同じく周辺の妖魔を討伐しながらだったため、サンアヴァロン連邦帝国との国境に到着したのはフィクスシュテルン皇国の皇都を出発してから六日後のことである。


 ダフネと行動を共にしたことで、ダフネ達諜報員がサンアヴァロン連邦帝国で暗躍して手に入れた現在のサンアヴァロン連邦帝国の情勢に関する情報をエイミーン達はいち早く入手することができた。

 得られた情報の内容は決して良いものとは言えなかったが、国に入る前に入手することができたため事前に情報を加味して国内での方針を決定することができた点だけは僥倖だったという点でエイミーン達の意見は一致している。


「最新の情報をお伝え致しますわ。サンアヴァロン連邦帝国は新たにフォストス王国とゲドリア王国に宣戦布告を行い、両国に騎士団を派遣しました。国内は既に臨戦体制に入っており、国境付近には多数の騎士が派遣されて防御が固められています。また、全世界への戦力派遣を行うため、サンアヴァロン連邦帝国は大規模な徴兵を開始しました。このようなサンアヴァロン連邦帝国の方針転換にサンアヴァロン連邦帝国の民衆達は困惑……中には現在のサンアヴァロン連邦帝国の帝国政府と帝国政府を指揮するカスティール第一皇子に不信感を募せている者達も多く、革命の火種はサンアヴァロン連邦帝国の各地で燻り続けている状況です」


「帝国政府に対して不満を持っている人々が多いこの状況で民衆側の誰かが行動を起こすか、或いは帝国政府が民衆が許容し切れないほどの悪手を打つか、いずれにしても何かしらの事件が起きたら一気にも革命の焔が帝国全土に燃え広がってしまいそうな状況ね。ダフネさん、この件に『這い寄る混沌の蛇』が関与していると貴女達は考えているのかしら?」


「レミュア様の仰る通り、今回の件に『這い寄る混沌の蛇』が関与しているのは間違いありません。周辺国を巻き込んだ戦争は関係のない周りの国を混沌にもたらします。そして、それら国々を併合した場合、サンアヴァロン連邦帝国は多くのサンアヴァロン連邦帝国に憎しみを持つ国民を国内に招き入れることになります。それに、この戦争はサンアヴァロン連邦帝国の民達にとっても望まぬもの。皇帝ゲルネイーラ三世の時代に人々は平和な日常を知りました。侵略戦争とは無縁の平穏な日常は民衆達にとって何物にも変え難い大切なものであった筈です。人は一度幸福を手にするとそれまでの日常へは戻れないもの――帝国の暗黒時代に逆戻りするようなカスティール第一皇子の政策に不信感や憤りを覚えるものが多いのも事実。……まあ、カスティール第一皇子はそれに気づいておられないご様子のようですが。カスティール第一皇子にとって大切なのはサンアヴァロン連邦帝国の国土を広めてこの大陸全土を支配すること……そのために戦禍で民が苦しんでも、多くの民が生き絶えても仕方がないと思っているのでしょうね。いえ、そもそも民衆のことなど視野にすら入っていないのかもしれません。革命が起こる可能性も危惧していないご様子のようですし」


「凄まじいほどの愚皇子なのですよぉ〜」


「お母様に『愚皇子』と呼ばれるのはよっぽどです。……実際、私も話を聞く限り相当な阿呆な皇子なのだと思いましたけど」


「エイミーン様に『愚皇子』と呼ばれるだけのことはしているようだな……」


「マグノーリエもプリムヴェールも酷いのですよぉ〜!!」


 嘘泣きをするエイミーンは完全に無視され、話はマグノーリエ、プリムヴェール、レミュア、シーラ、ラファエロ、ダフネの六人だけで進められていくことになる。

 放置プレイを食らったエイミーンは再び嘘泣きをしたが、誰もエイミーンを気遣ってはくれない。


「確か、今回の件の限りを握っているのはマジュルド=サンアヴァロン第二皇子だったわね」


「はい、シーラ様、その通りです。厳密にはマジュルド第二皇子と穏健派で有名なヴォガスレス=ヒューペロワ宰相のお二人ですが。……お二人は難攻不落のエルジューク監獄に投獄されているようです。どちらもカスティール第一皇子一派に濡れ衣を着せられ、投獄されたようですわ。そのエルジューク監獄があるのはこれから向かう国境の城塞都市ナガスの隣にあるクエラスの街――帝都から離れたところに二人を追いやりたいと考えたカスティール第一皇子にとっては丁度いい場所だったのかもしれませんが、当然ながら帝都から離れればそれだけ監視も届きにくくなります。解放するこちら側にとっても都合の良い場所にある監獄で本当に良かったですわね」


 今回の臨時班の作戦はマジュルド第二皇子とヴォガスレス宰相を監獄から救出し、帝都に襲撃を仕掛けてカスティール第一皇子を暗殺――可能であればゲルネイーラ三世の毒を解除し、手遅れだった場合はマジュルド第二皇子を皇帝に即位させてこの愚かしい戦争を止めるというものだ。

 戦争のために騎士を各地に派遣している今は帝都が手薄になっている。まさか、革命など起きる筈が無いと思っているカスティール第一皇子の心の隙を突いて襲撃し、カスティール第一皇子を撃破するためには、カスティール第一皇子に気づかれることなく速やかにマジュルド第二皇子とヴォガスレス宰相を解放し、帝城に襲撃を仕掛ける必要がある。

 派手に動いても情報がカスティール第一皇子に届く前に目撃者達の口を封じてしまえば問題はないが(勿論、口封じの方法は息の根を止めるだけではない。協力者に引き込む、拘束して逃げられないようにするなど比較的穏便な方法を取るつもりでエイミーン達はいる)、それでも長い時間を掛ければボロが出てきてしまう。


 今回のサンアヴァロン連邦帝国での臨時班の任務は時間との戦いだ。


「ところで、妖魔達の動きの方はどうなっているのですか?」


 今回の臨時班の敵は『這い寄る混沌の蛇』だけではない。寧ろ、重点が置かれているのは『這い寄る混沌の蛇』ではなく現在進行形で世界各地で禍を振り撒いている妖魔達の方である。

 ラファエロの問いが示すのは勿論、ただの妖魔ではなく凶禍妖魔達の動向である。


「……こちらを先にお話しするべきでしたね。昨日の夕刻、凶禍妖魔――凶禍龔工率いる妖魔の軍勢がサンアヴァロン連邦帝国の城塞都市ナガスに襲撃を仕掛けてきました」


「……城塞都市ナガスってついさっき聞いた気がする名前ね」


「シーラさん、今、僕達が向かっている街の名前が城塞都市ナガスだよ」


「ラファエロ、勿論私も分かっているわよ。……ただ、ボケただけだわ。なんでこんな重要な情報を後出ししたのかしら?」


「私も順を追って説明しようと思っておりましたわ。決して情報を隠匿しようとしていた訳ではありません。……では、城塞都市ナガスの近況をお伝え致しますわね。まず、国境警備の騎士達は妖魔の襲撃と同時に恐れをなして城塞都市ナガスから撤退しました。よって、皆様が恐らく懸念されていると思われる城塞都市ナガスの検問に関しては完全に機能を停止している状況ですわね。この未曾有の危機に城塞都市ナガスを統括するジャビス=ナガス辺境伯は妖魔の軍勢に一歩も引かずに徹底抗戦の構えを見せて国境と接する門を完全封鎖しています。既に城塞都市ナガスに潜入していた諜報員のペオーニアは昨晩、ジャビス辺境伯に接触して交渉を終えています。ジャビス辺境伯は妖魔討伐への協力の対価として臨時班の国内入りと帝国国内での活動に協力してくれると約束してくださいました。ジャビス辺境伯は表明してこそいませんが、穏健派の貴族でゲルネイーラ三世が毒で倒れた一件も不審に思っていたようです。我々が手に入れた情報をお伝えしたら、マジュルド第二皇子とヴォガスレス宰相の脱獄に微力ながら協力させてもらいたいと仰っております。勿論、この難局を無事に乗り切ることができたら……ですが」


「……つまり、諜報部隊フルール・ド・アンブラルの諜報員は既に対策を講じているということか?」


「プリムヴェール様の仰る通りですわ。ペオーニアと彼女が自身の権限で連れてきた五体の旧型ブリスコラの活躍で妖魔の三分の一は敗走しましたが、凶禍龔工は生存しています。プライドの高い彼女は恐らく再び襲撃を仕掛けてくる筈です。凶禍龔工達の注目が城塞都市ナガスに向けられていることを最大限利用し、城塞都市ナガスと反対側から凶禍龔工達妖魔の軍勢に挟撃を仕掛ける――それが今回の作戦になります」


「……本当に最序盤から重たい内容ね。いきなり凶禍妖魔との戦いなんて……先行き不安だわ」


「でも、ここがピークかもしれないよ。後はすんなり……ってまだ難攻不落のエルジューク監獄が待ち受けているんだったね」


「そこまで皆様がご心配になるようなことはないと私は思いますわ。シーラ様もラファエロ様もあの魔法の国派遣の臨時班で五老臣の一人――オルグァの屋敷に襲撃を仕掛けた実績があります。この大陸には魔法もありませんし、世界観的に魔法の国ほどの戦力はいません。……とはいえ、油断して勝てる戦で窮地に追いやられるのは笑い事にもなりませんから適度な緊張感を持つことは大切だと思いますけどね。……と、話をしている間に城塞都市ナガスに到着するようですわ。……おや、あれは……」


 笑顔から一転して少しだけ表情が真剣味を帯びたダフネの視線を追うようにシーラ達が視線を向けた先には凶禍龔工の他にもう一体――凶禍妖魔の姿があった。


「もう一体増えるなんて聞いていないわよ!」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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