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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-288 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜プレゲトーン王国への一時帰国〜 scene.2

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


 ヴォードラルとの模擬戦を終えた後、訓練場にやってきた騎士の一人から謁見の準備が整ったという報告を受け、ボクはヴォードラルと共に王宮の謁見の間に向かった。

 謁見の間には既に国王インドォーズ・プレゲトーン、第二王子のアモン、グレンダール・ドーヴラン宰相、『剣聖』ギルディアズ――主要メンバーが勢揃いしていた。


「ヴォードラル、どうした? あまり顔色が優れぬようだが」


「畏れながら……先程、アネモネ閣下と模擬戦をさせて頂いた後に少しお話しをさせて頂いたのですが、そこで正直、知らなかった方が良いお話を聞いてしまいまして」


「ほう、どのような話か分からぬが、ヴォードラルとアネモネ閣下の話となると戦いに関することか?」


「まあ、そうですねぇ。既にアモン第二王子殿下にはお話ししたものですが、今回のペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸への臨時班派遣において、最も厄介な敵として立ちはだかる可能性の高い敵です。新たに手に入れた情報により、ボクの前世の世界の並行世界から四天王と呼ばれる配下と共に召喚された可能性が高いことが判明したため、ボクの持つ情報と多少異なる可能性もありますが。……奈落迦媛命とは、ボクが前世で暮らしていた世界に暮らしていた鬼と呼ばれる種族の一体です。見た目は圧倒的な美貌を持つ少女ではあったものの、その容姿に似合わぬ圧倒的な力と凶悪な思想を持ち、個人の圧倒的な強さとカリスマ性で仲間(信徒)を集め、遂には国家に対抗できるほどの勢力――『天魔教団』と呼ばれる宗教団体を組織するに至りました。彼女の野望は『世界の神となる』こと――それを可能にするほどの潜在能力を開花させ、神の子を自称する当時の朝廷に真っ向から対立しました。当然、朝廷側も当時の最高戦力を招集して討伐部隊を組織しましたが、当時の英雄達をもってしても可能だったことは封印のみ」


「まさか、それほどの力を持つとは……しかし、それはアネモネ閣下の前世の話ではないのか?」


「残念ながら、プレゲトーン王国で王国政府と革命派に潜入し、戦争を手引きしたことが記憶に新しいと思われる『這い寄る混沌の蛇』によりこの世界に召喚された可能性があります。そして、今回の臨時班の活動期間中に戦うことになる可能性が高いとボクは考えています」


「……しかし、それほどの力を持つものを『這い寄る混沌の蛇』が率いるとは」


「それはないと思いますよ。あの化け物が誰かの配下につくとは思えない。扱いは恐らく食客待遇――対等な関係での同盟を結んでいるのでしょう。……まあ、軍事国家のプレゲトーン王国としては味方につければこの大陸の征服も余裕なので喉から手が出るほど欲しい戦力かもしれませんが、正直あまりおすすめできない話です。力で捩じ伏せれば可能性があるかもしれませんが、とても現実的ではありませんし、万が一、奈落迦媛命と敵対して敗北した場合、選べるのは恭順か死の二択ですからねぇ。まあ、ギルディアズ様やヴォードラル様クラスであれば拾ってもらえるかもしれませんが、忠誠心が高いお二方が国を裏切るとも思えませんし。まあ、実際に戦ったことがないので分かりませんが、個人の強さという一点に絞れば奈落迦媛命を超える者はそうそう思いつきませんねぇ」


「そして、一騎当千の猛者は騎士団を凌駕する働きをすることも多い。ギルディアズやヴォードラルは一軍に匹敵する実力者であるから、我もそれは実感している。多種族同盟も数の力より質の力を重視しているのではないか?」


「一応、こちらもしっかりと連携を取って戦えるようにしたいと思っているのですが、多種族・多国籍からなる軍ですし、個性的が強い方が多いですから、個の力を重視していると思われても仕方ありませんね。まあ、各国に騎士団やそれに准ずる組織はありますし、かく言うビオラも連携をメインに据えた戦力を持っています。流石に国家機密なので詳しく話すことはできませんが、プレゲトーン王国の巨兵歩兵旅団――あれが可愛く見えるくらいには現在進行形で色々と倫理的禁忌(タブー)を犯していますねぇ」


 巨兵歩兵旅団も巨軀の男女同士を交配させてより巨大な子を作り出すといった倫理的にアウトな行いをしていたけど、こっちはクローン技術とか、サイボーグ化とか色々としているからねぇ。

 人造魔法少女のマイナースートやプリンセス・エクレールに、サイボーグ兵器のブリスコラ――まあ、世間に情報が流出すればイメージダウンどころの騒ぎじゃない研究も割と進めている。だから、プレゲトーン王国の巨兵歩兵旅団もあんまり非難できる立場じゃないんだよねぇ。


「ところで、今回の目的はセントピュセル学院の改修に我が国の土木業者の協力が必要不可欠であり、そのために我が国の主要な土木業者との交渉の場を用意してもらいたいという話だったな。他にダイアモンド帝国とライズムーン王国が加わるとなれば、他の国の土木業者からも立候補が相次ぐことになるだろう。……いやしかし、話を聞いた時に我もグレンダールも随分驚いた。流石は『帝国の深遠なる叡智姫』と『ブライトネス王国の智聖』というところか? 我にはあれだけ多くの国を巻き込んで全ての国に利益を与える政策を思いつくことはきっとできない。それに、仮に思いつけたとしてもそれを実行できるだけの胆力は我にはない。これはプレゲトーン王国にとっても大きな利のある話だ。交渉のテーブルはプレゲトーン王国政府が総力を上げてセッティングさせてもらおう」


「ありがとうございます」


 これでダイアモンド帝国に続いてプレゲトーン王国でも交渉の準備が整った。

 後はライズムーン王国か。プレゲトーン王国やダイアモンド帝国と違って関わりが薄いし、ダイアモンド帝国やプレゲトーン王国よりも多少難航しそうな感じなんだけどねぇ。


 まあ、ダイアモンド帝国とプレゲトーン王国には「白烏」の暴走の件で大きな貸しがあるし、ライズムーン王国にも大きな利がある話だからそこまで心配するようなものでもないと言えばないんだけど。


 プレゲトーン王国で王国政府の協力を無事に取り付けることができたところでボクは改めて明日の早朝にアモンを迎えに来ることを伝えてから三千世界の烏を殺してセントピュセル学院に戻った。

 じゃあ、ラスト行ってみようか?



 学院の図書館に戻り、リオンナハトを連れて転移した先はライズムーン王国の王都にある隠れ家(アジト)へ向かう。

 ちなみに、ライズムーン王国の中の諜報員が集めた情報が一挙に集まる場所――ハブの役割を果たす隠れ家(アジト)は王都郊外にある。つまり、ただのライズムーン王宮から見て最寄りの位置にある隠れ家(アジト)ということになるねぇ。


「まさか、王宮からこれほど間近に諜報員の拠点があるとは……」


「こちらの拠点の諜報員に依頼して貰えばライズムーン王国とオルレアン教国の行き来は可能です。他の国への転移については許可を得られれば可能になりますので、そのつもりで」


「セントピュセル学院とライズムーン王国の行き来が簡単になるのは有り難いな。ちなみに、いつ頃までこの転移を使用した行き来は可能なんだ?」


「そうですねぇ。今回の臨時班の終了と共にペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸に派遣している全諜報員を引き上げるつもりですから、それまでは使用可能です。その後の時空魔法による転移のサービスについては行う予定はありません。まあ、ライズムーン王国が多種族同盟に加盟すれば、リオンナハト殿下は間違いなく時空騎士(クロノス・マスター)になれますから、時空騎士(クロノス・マスター)になったら思う存分権利を行使すればいいんじゃないでしょうか?」


「まあ、そう考えると多種族同盟に加盟する方が恩恵があるな。その時になれば、俺も父上に真剣に多種族同盟加盟を奏上させてもらおう」


 その後、ボクとリオンナハトはライズムーン王宮に向けて歩き始めた。

 別に徒歩でも行けない距離じゃないからねぇ。


「しかし、随分と諜報員をライズムーン王国に派遣しているようだな」


「ライズムーン王国……ではなく、ペドレリーア大陸の全土とラスパーツィ大陸の主要地域に、ですよ。まあ、ライズムーン王国にはちょっと多めに増員していますけどねぇ」


「つまり、圓殿はこのライズムーン王国でも何かしらの事件が起こると?」


「さあ、どうでしょう? ……ただ、正直、ボクの予想も悪い意味で超えてきそうな気配はずっとあるんですけどねぇ。シナリオという本来の流れから外れたことが最近になってかなり増えてきています。時系列も無茶苦茶に新たな要素を交えながら各地で引き起こされることになるだろう混乱を想像すると本当に胃が痛くなりますよ。……まあ、今は想像の範疇ですが、そう遠くない未来に現実にはなりそうな気配ですねぇ。……本来なら物語の終盤に畳み掛けるようにやってくる災害の筈なんですけどねぇ。まあ、所詮はプレゲトーン王国の一件のように種火を強制発火させるようなインスタント災害ですから、そこまで危険視する必要もないのかもしれませんが」


「いや、プレゲトーン王国の革命の一件も重大な事件だったのではないのか?」


 まあ、当事者のリオンナハトにとってはそう思うことかもしれないけど、『ダイアモンドプリンセス〜這い寄る蛇の邪教〜』の終盤に各所で起こる災害級の革命の嵐を知れば、あれがボヤ騒ぎだって思えるような小規模なものだと思うようになると思うけど。

 しかし、今回はそれよりも厄介なことが沢山……冥黎域の十三使徒を初めとする『這い寄る混沌の蛇』の戦力に、囚われた火走狼(カ・ソウロウ)と斎羽朝陽、その上、奈落迦媛命と四天王まで……まあ、ブライトネス王国戦争に比べたらマシ……なのかな?

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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