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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-285 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜暗雲立罩める生徒会選挙と四大大公家〜(3) scene.8

<三人称全知視点>


 エイリーン――圓から夢物語のような選挙公約を実現する方法を全て聞き終えたリオンナハトとアモンはその日一番の衝撃を受けた。


「た、確かに……確かにそれならリズフィーナ様に大差を付けて勝つことも可能だ。俺達にとっても悪い話ではない。ライズムーン王国の利益を考えれば乗るべき話だ。そうだな、この商談は応じるべき話だ。俺もできる範囲で協力しよう。だが、土木業者との商談の場を用意することしか俺にはできない。そこからの交渉には恐らく力を貸すことができないと思うが……」


「そこまでセッティングして頂けたら大丈夫です。そういう交渉ごとは得意ですから……ボクは商人ですからねぇ」


「勿論、ボクも協力させてもらおう。少し出遅れてしまってやることがないんじゃないかと心配していたけど、ボクにもできる仕事があって本当に良かったよ」


「頼りにしていますわ、アモン!」


「ああ、それと今回話したこの無茶な選挙公約を実行する具体的な方法だけど、生徒会長選挙公開討論まで隠しておくつもりだ。とっておきは最後まで残しておきたいからねぇ。まあ、その分選挙期間はかなりキツくなると思うけど」


「元々風当たりが強いですし、あんまり変わらないと思いますわ」


 圓の予想では本来の生徒会選挙よりも苦戦を強いられることが避けられない選挙期間。その風は当たりは本来の生徒会選挙よりも強くなるだろう。

 しかし、生徒会長選挙公開討論で形成を大逆転させることができる可能性があるのであればその逆境も決して耐えられないものではなくなる。


 それに、ミレーユには全世界が敵に回る体験を実際にした経験がある。あの革命期のダイアモンド帝国に比べたら向けられる視線も大したものでもない。


 その後、圓達はダイアモンド帝国、ライズムーン王国、プレゲトーン王国に秘密裏に戻り、職人達との交渉を行うまでの段取りと日程を協議した。

 選挙期間終了まであまり時間がないため、ミレーユ、リオンナハト、アモンの三国への一時帰国は翌日に行われることになり、その後、国内の有力な土木業者に声を掛けて交渉の席を設けることになる。


 その一時帰国には各国の皇族(王族)への説明と移動に時空魔法を使った転移のためにアネモネの姿で圓も同行することも決まっている。まあ、そもそも時空魔法が使える圓がいなければ成り立たない話のため、同行しないという選択肢は存在しないのだが。


「とりあえず、開会宣言ミサまでに交渉のテーブルは用意したいですねぇ。……さて、明日からまた忙しくなりますねぇ」


「……圓様はいつも忙しいのではないかしら?」


「ん? 何か言った?」


「な、なんでもありませんわ!!」



 翌日の夕刻、ミレーユ、リオンナハト、アモンの三人は図書館に集まっていた。

 その目的は勿論、ダイアモンド帝国、ライズムーン王国、プレゲトーン王国への一時帰国のためである。


 既にライネやカラックにも今回の一時帰国について説明が終わっており、ダイアモンド帝国、ライズムーン王国、プレゲトーン王国に一泊する準備は全て整えられていた。

 帰国は明日の早朝を予定しているので、勿論、明日の授業にも支障はない。


 一夜だけで何ができるのかという意見があるかもしれないが、そもそも今回の打ち合わせの場のセッティングに関してミレーユ達ができることはそう多くない。

 大国の姫や王子であっても実際に権力を握り、政治を主導している訳ではないからだ。ミレーユ、リオンナハト、アモンに与えられている権力を使ってもできることには限界があるのである。


 今回は各国の皇帝や国王、有力な臣下達の協力を取り付けることが目的のため、ミレーユ達の役割はそのための謁見の場を準備することのみ。

 とはいえ、アポイントメント無しで別大陸の知名度の低い商人と一国の君主の謁見の準備をするというのは実際なかなかハードルの高いことではある。もし、アネモネが一人で乗り込んでも門前払いされてしまうか、運良く謁見の機会を得られても数週間後、或いは数ヶ月後という状況になりかねない。


 今回は常識外れなかなりの無茶を通そうとしている。その実行のためにはミレーユ、リオンナハト、アモンの協力が必要不可欠だが、逆に謁見の準備さえできてしまえばミレーユ達にできることはない。

 その後の皇帝や王族との交渉では多少なりミレーユ達も力を貸すことができるかもしれないが、その後の実際の土木業者との商談もアネモネ一人で挑まなければならない戦いだ。


 まあ、前世からこうした失敗できない商談にたった一人で挑み幾度となく成功に導いてきたアネモネにとっては「いつも通り」でしかないのだが……。


「さて、ここからの予定を改めて確認させてもらうよ。ダイアモンド帝国、ライズムーン王国、プレゲトーン王国への一時帰国は明日の七時頃まで、翌朝に直接各国の城までボクが迎えに行く。順番はミレーユ姫殿下、アモン殿下、リオンナハト殿下の順……といってもほとんど誤差みたいなものだけどねぇ。ここまでで何か質問は?」


「特にありませんわ」


「右に同じだ」


「ボクも特にありません」


「じゃあ、早速ダイアモンド帝国に向かおうか?」


 『管理者権限・全移動』を発動し、アネモネとミレーユが転移した先は見慣れた宮殿……ではなく、見知らぬ屋敷だった。

 中では数人の侍女服姿の女性が働いているようで、そのうち二人の女性たちはミレーユの見たことのない絡繰を耳に当てながら何事か紙に書き込んでおり、時折絡繰に向かって何事か言葉を発してはまた、何事かを書き込んでいくという作業を繰り返していた。

 他には膨大な書類に目を通す者、屋敷の奥に消えていったと思いきや、町娘のような変装をして戻ってくる者――と、どうやら全員が同じ仕事をしているという様子ではない。


「お疲れ様でございます、圓様」


「お疲れ様、レイチェロッテ。ああ、ミレーユ姫殿下、紹介するのを忘れていた。彼女はダイアモンド帝国に派遣されている諜報員を統括しているレイチェロッテさんだ」


「ということは、ここはダイアモンド帝国にある諜報部隊フルール・ド・アンブラルの隠れ家(アジト)ということですの?」


「まあ、そういうことになるねぇ。ちなみに、ここはダイアモンド帝国の皇都にある七つの拠点の一つ。拠点はいくつもあるけど、ダイアモンド帝国中に存在する拠点から情報が集められる場所だから重要度はダイアモンド帝国国内だとぶっちぎりに高いよ。ああ、今回わざわざここに寄った理由は今後、ダイアモンド帝国とオルレアン教国間を転移魔法で行き来したい場合はこの場所を利用してもらいたいと思っているからだ。ダイアモンド帝国からだと諜報員の誰か……まあ、レイチェロッテさんに頼めばいいと思うけど、とにかく諜報員の誰かに、オルレアン教国からだとアフロディーテさんかミスシスさんに頼めば、時空魔法で転移させてもらうことができる。ただ、ダイアモンド帝国とオルレアン教国の行き来以外の許可は出すつもりはないから、他の国に行く場合は要相談ということで。いいかな?」


「勿論ですわ。しかし、あれだけ距離が離れたオルレアン教国とダイアモンド帝国の行き来が一瞬でできるなんて凄いですわね」


 ミレーユとレイチェロッテの顔合わせが終わったところで、アネモネとミレーユは屋敷の外に出た。


「ここは……元帝都貧民街ですの?」


「まあ、馴染みのある場所だからすぐに気づけるよねぇ? ここから皇城は目と鼻の先だから馬車に乗ってサクッと行こうか?」



「ミレーユ姫殿下、お久しぶりです」


「お久しぶりですわね、ルードヴァッハ」


「アネモネ閣下からお話は聞いております。生徒会選挙へ出馬すると聞いた時には驚きましたが……その秘策をアネモネ閣下からお聞きした時、俺は感服致しました。まさか、セントピュセル学院の生徒会選挙をオルレアン教国だけに留まらない世界規模の事業へと発展させ、雇用創出を図るとは……と申し訳ございません。ついつい熱くなってしまいました。ミレーユ姫殿下、俺もミレーユ姫殿下のお考えを現実のものにするために全力を尽くさせて頂く所存です。既に皇帝陛下には今回のミレーユ姫殿下のお考えについてお伝えし、謁見の準備は万事整っております」


 ルードヴァッハの尽力に感謝を述べてから、ミレーユはアネモネと共に謁見の間へと向かう。

 謁見の間に入る前にルードヴァッハに「謁見が終わり次第、速やかに向かうつもりではいるけど、闘気と八技の修行はいつもより少し遅れるかもしれない」というディオンへの伝言を依頼したため、ディオンが訓練場で待ちぼうけを食らう心配もない。まあ、あのディオンは数十分の遅れを気にするような気の短い性格ではないが。


 これがポラリス師団長なら数秒の遅れでもガミガミ文句を言ってくるだろうなぁ。などと考えながら、アネモネはミレーユと共に謁見の間を進み、玉座……ではなく、階下の右に置かれた椅子に座った皇帝マティタス・ブラン・ダイアモンドの目の前に置かれた椅子にそれぞれ座った。


「おお、ミレーユ、帰っていたか。息災なようでなによりだ」


「ありがとうございます。陛下、無事に先ほど到着致しました」


「いつも言っていると思うが、お父様ないしパパと呼ぶように」


「では、お言葉に甘えまして、お父様。おひさしゅうございます」


 パパ呼びは断固拒否の態度をとって華麗にスルーするミレーユと少しだけ気を落とすマティタスを微笑ましそうに見ていたアネモネだが、ミレーユ達に気づかれる前にすぐに僅かに緩んでいた表情を引き締め、商人の顔になった。


「話はルードヴァッハから聞いておる。時空魔法とやらを使った一時帰国であまり長い時は留まらぬのだろう?」


「そうですねぇ。行き来は可能ですけど、ミレーユ姫殿下への負担もありますので、しっかりとした帰国は学院の休みを待つべきだと思います」


「……うむ、時間が惜しいな。我は一刻も早くミレーユとの時間を過ごしたいのだ。アネモネ大統領閣下、そなたとの交渉、すぐに始めてもらってもいいだろうか?」


「勿論、そう仰ると思っていました。家族水入らずの時間を減らしてしまうのは心苦しいですし、早速交渉を始めていきましょうか?」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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