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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-284 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜暗雲立罩める生徒会選挙と四大大公家〜(3) scene.7

<三人称全知視点>


 エイリーンがどこからともなく紙束を取り出す中、ミレーユの説明を聞き終えたフィリィス、マリア、ウォロスを筆頭とする帝国貴族、ルーナドーラを初めとするミレーユの取り巻き達、そして後から図書館に到着したライネとミラーナは衝撃のあまり固まっていた。


 学院の生徒会長を決めるための選挙――学院の中だけの話を、いつの間にか大陸全土を巻き込む巨大な事業へと飛躍させるというその鮮やかな手法もフィリィス達を驚かせたが、それ以上に恐ろしいことはその事業に関わる者達全員に何らかの形で得があるという点だった。


 事業に協力する国は新しい仕事とその見返りとなる報酬をビオラの保有する技術と共に手にすることができる。


 オルレアン教国に至っては無償で学院が改修してもらえる上に、他の事業に協力する国と同じく新しい仕事とその見返りとなる報酬、ビオラの保有する技術を得られるという破格の待遇だ。


 そして、出資するビオラ商会合同会社も一見すると損をするように思えるが、大陸中から学徒が集まるセントピュセル学院の改修に全面協力することが大きな宣伝効果を生むことは間違いないため、ビオラ商会合同会社にとって得がないという訳でもない。

 ペドレリーア大陸でビオラ商会合同会社の知名度は低く、また、オルレアン神教会の常識から外れた者達ということで忌避感を抱く者も少なくはない。しかし、セントピュセル学院の改修の資金負担が実現すれば、ビオラ商会合同会社に対する評価は百八十度変わることになるだろう。


「流石はミレーユお姉様です!」


「確かにミレーユ様のお考えが実現すればリズフィーナ様に選挙で勝利することも十分に可能ですね。……というより、これが実現したらリズフィーナ様の勝機は完全に失われてしまうのではないでしょうか?」


 片や現職の生徒会長であり、実績も人望もミレーユを上回るリズフィーナ、片やミレーユの打ち出す選挙公約は実績がなく、政治手腕が未知数。

 どちらが勝つかなど最初から明々白々の筈だが、ミレーユの選挙公約にはその劣勢をひっくり返してしまうほどの魅力があった。


「しかし、よくビオラ商会合同会社の会長を説得できましたね。ミレーユ姫殿下の人望でしょうか?」


「いえ、わたくしではございませんわ。エイリーン様のコネクションのおかげですわね」


「まあ、実際に苦戦を強いられたのはアネモネ閣下の説得ではなく、ビオラ商会合同会社の大幹部三人の説得だったようですけどね。セントピュセル学院の改修の資金負担をするか否かは速やかに決まりましたが、その後、『自身が依頼者になることでビオラの負担をゼロにしたい』と提案したアネモネ会長と、『アネモネ会長にお金を出させる訳にはいかない。資金はビオラ商会合同会社が会社として出すべきだ』と断固としてこれを拒否したジェーオ様、アンクワール様、モレッティ様の意見が決裂し、会議は二時間を超える長丁場になり、最終的にビオラ商会合同会社の大幹部三人が折れる結果で収束したようですわ」


 「資金負担をするかどうかで揉めるんじゃなくて、誰がお金を出すかで揉めたのかよ!?(意訳)」とそのあまりにも予想外な会議の内容にフィリィス達は心の中でツッコミを入れた。


「とりあえず、資金については既に用意できているのでご心配には及びません。後はリオンナハト殿下とアモン殿下に仲介依頼をして承諾してもらえるか、ダイアモンド帝国、ライズムーン王国、プレゲトーン王国の建築業者の方々と直談判して協力を取り付けられるか、この二つが問題となりますが、その前にある程度構想を纏めなければなりません。そこで、皆様のお力を借りたいと思いまして本日はお集まり頂きました。ここからは皆様、それぞれ学院にあったらいいなぁ、と思う施設や改修してもらいたいと思っている施設について案を出してください。私はそれを聞きながらこの紙に纏めていこうと思いますわ。ああ、別に順番は誰からでも構いませんし、何度も発言して頂いて構いません。全て聞き取れますので、ご心配には及びませんわ」


 鉛筆を片方に微笑を浮かべるエイリーンの言葉を皮切りに、フィリィス達は一切躊躇することなく改修案を口にし始めた。

 エイリーンはその一つ一つに耳を傾け、箇条書き……ではなく、猛烈なスピードで鉛筆を動かし、精密なイラストを描き上げていく。


「図書館の蔵書を増やす……確かに、フィイリス様の仰るように私も蔵書が少々少ないように思います。もうちょっと増やしたいですよねぇ? 図書館の増築、私も賛成ですわ。老朽化している寮棟や校舎のリフォーム……確かに、少々年季が入っていますわね。では、いくつかパターンを描いてみましょうか?」


「エイリーン様、よくそんなに素早くそこまで精密な絵を描けますわね」


「私の本業は小説家兼漫画家兼イラストレーター兼アニメーター兼ゲームデザイナーですからねぇ」


「……あなたの本業は辺境伯令嬢と宮中伯令嬢じゃなくて?」


「それはただの肩書きですわ」


 その後もエイリーンは取り留めもなく出される意見を聞きながら猛スピードにペンを走らせていく。

 そして全員の意見がようやく一通り出し終わった頃、紙上には全員の意見を形にした一つの学院の未来予想図が浮かび上がっていた。


「こ、これが未来の学院の形なのですわね」


「では、これを明日までに立体(3D)の模型にしてきますわね。その方が説明もしやすいでしょうし」


「よ……よろしくお願いしますわ!」


 完全に話についていけなくなったミレーユはイエスマンと化してエイリーンに残る作業を丸投げした。



 翌日の夕刻、エイリーンとミレーユは二人で図書館を訪れていた。

 その目的は事前に約束をしたリオンナハトとアモンと話し合いをするためである。


「リオンナハト殿下、アモン殿下、本日はお時間を取って頂きありがとうございます」


「いや、そう畏ってもらうことでもないよ。今回の選挙、ボクもミレーユの手伝いをしたいと思っていたからね」


「俺もミレーユに協力したいのは山々だが、今回は中立の立場を取らせてもらおうと思う。ライズムーンとダイアモンドが手を結び、オルレアンに逆らうなんて、シャレになってないだろう」


「リオンナハトならそういうと思っていましたわ!」


 「それならば、何故この場に自分を呼んだのか?」とリオンナハトが首を傾げる中、口火を切ったのはミレーユ……ではなく、エイリーンだった。

 見気を使いつつ周囲を見渡して自分達以外に誰もいないことを改めて確認したエイリーンは猫を被るのをやめて圓の口調に戻す。


「今回の選挙は残念ながら裏工作が無ければリズフィーナ様に勝つことはできないというところで、ボクとミレーユ姫殿下の意見は一致している。じゃあ、具体的にどのように裏工作をするかという点が問題になってくる。リオンナハト殿下も真っ先に思いつくと思うけど、簡単なのはダイアモンド帝国派の票、ライズムーン王国派、プレゲトーン王国派、それぞれの票を取り纏める……そうすれば、確かにリズフィーナ様に拮抗する、或いはほんの僅かに上回ることができるかもしれません。……で、それで? 果たしてギリギリの勝利を収めたとしてラングドン教授の依頼は達成できたと本当にそう思いますか? それに、ボクも選挙に挑むならギリギリの勝利ではなく、圧倒的な大差を付けて勝利する方法を模索するべきだと思うのです。ダイアモンド帝国派、ライズムーン王国派、プレゲトーン王国派だけではない、ボクとミレーユ姫殿下はそれ以外の有権者の票――リズフィーナ様の支持層も含め、できる限り多くの支持を集めたい。今回はそのためにリオンナハト殿下とアモン殿下のお力をお借りしたいと思いミレーユ姫殿下と共同で交渉の席を設けさせて頂きました」


 リオンナハトとアモンが予想する以上に強欲に勝利に貪欲な姿勢を見せるエイリーンに二人が衝撃を隠せない中、エイリーンは二人の前に二枚の紙を配った。


「それは、今回の選挙公約を纏めたものだよ。まずは、それを読んで頂きたい」


「……なるほど、確かに素晴らしい選挙公約だ。……一部気になるところもあるが、なるほど、確かにこれならリズフィーナ様に勝つことができるかもしれない。しかし……」


「ミレーユ……ボクもこれはちょっと無理があり過ぎると思うよ」


 二人の反応はミレーユも想定していたものだ。自分だって同じ立場に置かれたら同じ態度を取っただろう。


「えぇ、無理なことは百も承知ですわ。そもそも、この選挙公約は本来、学院の改修に充てるべき財源を全てそれ以外に極振りしたものですから」


「…………それは、どういう、ことだ?」


「まさか、ミレーユ。……いや、流石に選挙公約に嘘は」


「いえ、ボクもミレーユ姫殿下もこの公約を全て実現するつもりです。……というか、実現しないとリズフィーナ様に勝つことはできないんだよ。だけど、学院の財源ではこの夢物語のような公約を全て叶えることはできない。それじゃあ、どうするのか? そこで、リオンナハト殿下とアモン殿下に力を貸してもらいたいと思って今日は時間を作ってもらったんだ。――さて、ライズムーン王国第一王子リオンナハト殿下、プレゲトーン王国第二王子アモン殿下、本日はビオラ商会合同会社の会長アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーンとして一つお二人と商談をさせて頂きたいと思っております。これからもう暫くお時間を頂戴できないでしょうか? 勿論、悪いようにはしませんので」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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