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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-272 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣再始動〜暴君と妖魔と暗殺貴族〜 scene.1

<三人称全知視点>


 円華達が皇子宮に侵入した日から三日が経過した。


 円華達自身、いつ起こるのか……それどころかそもそも起きるかどうかすら分からないと語った『暴君』イリオットの襲撃は、イリオットの予想よりも遥かに早く――その日の真夜中に起きた。


 ――もし、セレンティナが来るのがもう少し遅かったら私は殺されていたかも知れないな。


 護身用に忍ばせていた剣で『管理者権限・全移動』という言葉と共に突如部屋に現れた襲撃者――冷たい殺意を湛えた双眸を持つ美青年にも見える男が放った斬撃を受け止める……が、やはり二十年後のイリオットと今のイリオットでは剣の練度にも乗せられている感情の量にも圧倒的な差が存在しており、襲撃を知っていたにも拘らずイリオットは一瞬にして防戦一方の状況に追い込まれた。


「――死ね」


 圧倒的な殺意が込められた剣が振り下ろされ、イリオットが死を覚悟した時――イリオットの部屋の机の上に置かれていた短刀が輝きを放った。


「――ッ! イリオット!!」


「――ッ! ラスヴェート=アウトゥンノ男爵令嬢!? 何故、貴女が! ――ッ!! 何故、何故この男を庇う! コイツがいなければ貴女が、セレンティナが苦しむことは無かった……婚約を破棄され、汚名を濯ぐ機会を与えられないまま失意のまま死を迎えることはなかった! 今なら、まだ間に合う!! コイツが、セレンティナの婚約者が死ねば、セレンティナは――」


「――いい加減にしなさいよ! イリオット、貴方はまるで成長していないわ! 今、ここでこの世界のイリオット様を殺したらセレンティナは悲しむことになるわ! 一生癒えない傷を背負ってこれから彼女は生きていくことになる。確かにそれで断罪は防げるかも知れない……でも、それでは別の傷をセレンティナに与えることになるのよ!」


 『管理者権限』を持つとはいえ、『暴君』イリオットの戦闘力は決して高いとは言えない。

 剣の腕はラスヴェートとの直接対決でほぼ互角だったが、円華は闘気や八技を会得しており、魔法少女に変身せずとも圧倒的な強さを手にしている。


 イリオットと『暴君』イリオットの間に割り込む形でイリオットに加勢したラスヴェートが形成を逆転させるまでにそれほど時間は掛からなかった。


「それに、まだこの世界のセレンティナは断罪されていないわ。ギィーサムの自殺も、イリオット様が『暴君』するのもまだ決まった訳じゃない。……運命はまだ変えられるのよ」


「……セレンティナ」


「……私が死んでしまって、イリオット様とギィーサムは沢山苦しんで変わってしまった。二人にはとても辛い思いをさせてしまったことは後悔しているわ」


「……あれはセレンティナのせいじゃ」


「でも、それが理由で関係のない他人に迷惑を掛けるのは違うと思うのよ。『暴君』と成り果てて国を破壊することも、私に関係ない人を巻き込んで傷つけようとすることも……だから、私は貴方とギィーサムの前に立ち塞がった。……その気持ちが伝わっていなかったのね」


 命を懸けてセレンティナはイリオットとギィーサムを止めようとした。その気持ちが伝わっていなかったことを理解し、セレンティナは心底がっかりしたと呆れ顔を浮かべた。


「……私はギィーサムに頼まれたのよ。あの悲劇を二度と繰り返さないようにして欲しいって。貴方はどうなのかしら? イリオット皇帝陛下。貴方は、できるならあの悲劇を二度と繰り返したくないと思っているんじゃないかしら?」


「それは、勿論そうだ! だからこそ!」


「でも貴方の方法じゃセレンティナが傷つくだけだわ。別の悲劇が生まれるだけ……。だから、貴方自身への復讐は諦めなさい。いいわね?」


 イリオットはこの世界のイリオットを睨め付け、不承不承という態度で頷いた。


「話は済んだみたいだな? 円華」


「ラインヴェルド陛下、ご協力頂きありがとうございます」


「良いってことよ、親友からの頼みだったからな。はじめましてだな、イリオット皇帝陛下。俺はブライトネス王国で国王をしているラインヴェルド=ブライトネスだ。多種族同盟を構成する一国家の君主としてイリオット皇帝陛下に一つ提案したいことがある。俺達の仲間になるつもりはねぇか? 俺の親友は全ての『管理者権限』を集め、本来の持ち主を復活させてその手元に戻すつもりでいる。そこの円華と同じだ……この世界の住人の手だけで営まれる世界を作りたい。そのために親友や俺達は行動している。そのために俺達に協力してくれないか? そこの円華のようにさぁ」


「……セレンティナ、それは本当なのか?」


「えぇ、私も圓さんには恩があってね。彼女の望む『神のいない世界』も私の理想に近いものだし協力させてもらっているわ」


「そうか……ラインヴェルド陛下、私も貴方達に協力しよう。私の保有する『日蝕〜絆縁奇譚巻ノ三〜』の『管理者権限』をお返しすれば良いのだな?」


「まあ、そうだな。とりあえず、どこかで親友と面会して返却してくれ。円華、仲介役は頼んだぜ」


「勿論、そのつもりです」


「さて、一件落着……って言いたいところだが?」


 誰よりも最初に異変に気づいたラインヴェルドが剣を鞘から抜き払った瞬間――時空の歪みが生じ、ラインヴェルド達の目の前に現れたのは金色の髪を床に触れるほど伸ばし、真っ赤な扇状的な衣装を身に纏った九本の尻尾を持つ狐耳の女性だった。


「……白面金毛九尾の狐」


『久しぶりじゃな、夏江朔那。そなたと妾の仲じゃ、摩理冴(まりさ)と呼ぶが良い。しかし、『管理者権限』を持つ者が二人か……その力を妾に献上するのであれば妖魔を世界に解き放つのはやめてやっても良い。無論、そなたらの持つ全ての『管理者権限』を差し出すならばな!』


「そんなことする訳ねぇだろ? 白面金毛九尾の狐」


『『管理者権限』を持たぬ低俗な人間の分際でこの妾の優しい提案を拒否した……その罪、必ず償わせてやるからのぅ!!』


「やれるもんなら、やってみやがれ!!」


 ラインヴェルドの放った皇子宮の壁にヒビを入れてしまうほどの膨大な霸気は白面金毛九尾の狐を動揺させるだけの力があった。

 半透明な白面金毛九尾の狐――摩理冴の姿が歪み、四散する。


「……あの化け物を倒したのか?」


「いや、あれは恐らく妖魔の力で作られた分身体みたいなものだ。あの程度の霸気で消え去るような奴が本物の訳がない。……ってか、それじゃあクソつまんねぇだろ? さて、あの様子だと近いうちにこの大陸に妖魔が大量発生することになりそうだな。イリオットとの戦いが済んだ以上、この国でのイベントごとはほとんど残っていないだろうし、俺は妖魔討伐に行かせてもらうぜ!」


 強い奴と戦いたいという自分の欲求のためだけに生きているラインヴェルドの発言になんとも言えない顔になる円華。

 とはいえ、こんな性格でも円華よりも強い頼りになる戦力である。妖魔討伐に動いてもらえるのは円華としてもありがたい。


「……とりあえず、今回の騒動と今後について父上も交えて相談したい。明日の昼頃、ラインヴェルド陛下の仲間達も連れて皇城に来ては頂けないだろうか? ……セレンティナや未来の私にも参加してもらいたい」


「じゃあ、そのタイミングでフィクスシュテルン皇国残留組と妖魔討伐組を決めるか。臨時班メンバーとこっちを拠点にしている諜報員には俺の方から連絡を入れておいてやる。円華、イリオット、ここにいても仕方ないし一旦隠れ家に戻ろうぜ?」



 その翌日の昼頃、皇城の謁見の間には多種族同盟側として円華と皇帝イリオット、ラインヴェルド達臨時班の面々とラスパーツィ大陸の諜報員を統括するシトロリーナ、フィクスシュテルン皇国からはセレンティナ、ギィーサム、イリオット、ラポワント一世、ラポワント一世とイリオットの護衛としてアンガートン騎士団長が集結していた。


「……何故、セレンティナとギィーサムが」


「二人には私から事情を説明してある。……二人にも知っておいてもらうべきだと思ったからな」


「円華、イリオット殿下、積もる話はあるだろうがそいつは会議が終わってからやってもらっていいか? ……イリオット殿下、昨晩起きたことに関してはそっちで情報の共有は終わっているんだろう?」


「えぇ、今日の午前中に必要と判断した方に情報は提供し終えてあります」


「んじゃ、余計な説明は全て省いて本題に入ろうぜ? シトロリーナ、今、この場で最も情報を持っているのはお前だろ? 説明を頼む」


「……私はラインヴェルド陛下の部下ではないのですが。……まず、妖魔についてですが昨晩から各地に派遣されている諜報員から目撃情報が多数寄せられています。我々の上司である白夜様、ペドレリーア大陸を統括している諜報員の統括者、圓様には既に妖魔の出現とイリオット皇帝陛下が味方に加わったことを連絡し、現在の臨時班をフィクスシュテルン皇国残留組と妖魔討伐組に分けることを伝えてあります。今回の会議でその内容が決定し次第、圓様達に他の会議で決定したことと共に報告させて頂きますのでご安心ください」


「……凄まじい情報共有力であるな」


 別の大陸から多数の諜報員がフィクスシュテルン皇国に潜入していたという事実は皇帝として見過ごせないものではあったが、その情報網が無ければ最悪の事態に陥っていた可能性もあるため、ラポワント一世もイリオットも多種族同盟に抗議の声をぶつけることはできない。

 本来は国際問題にするべきことではあるが、ラポワント一世達はフィクスシュテルン皇国への諜報員の潜入に関しては完全に見て見ぬ振りをしてやり過ごすつもりでいた。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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