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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-258 偽天使族の隠れ里とブルカニロ博士の野望 scene.2

<一人称視点・リーリエ>


 ブレスを掻い潜って迫り来る炎の竜は《神の見えざる手インビジブル・ハンズ・オブ・ジュピター》で抱えている他のメンバーに討伐してもらい、ボクは噴火を止めることだけに注視する。

 先程までの退屈な時間を塗り潰すほどの焦りと緊迫感に彩られた噴火との戦いはその後も続き……氷の古代竜エンシェント・ドラゴンのブレスでも止めきれないことを悟って、ローザがレベル99で習得する固有最上級闇魔法「ブラックホール」で消滅させる作戦に切り替えたところでようやく幕を閉じた。


 いや、本当にギリギリだった。もう噴火のマグマが十合目付近まで迫っていたからねぇ。


「アスカリッド魔王陛下!? ご、ご無事ですか!?」


 火口から姿を見せたアスカリッドの安否を偽天翼族(セラフェル)と思われる女性が確認するために近づいてきて、ボクの姿を見て顔を少し顰めた。

 仇敵であった吸命鬼族(ドラキュバス)の血を引く吸血鬼や淫魔に思うところがあるんだろうねぇ。顔にこそ出していないものの淫魔であるエイレィーンにもあまり良い感情を持っていないようだし。


「今日の多種族同盟会議で偽天翼族(セラフェル)の多種族同盟入りについて話し合いをして多種族同盟側の意見を纏め、多種族同盟の全権代理……というより事実上の代表じゃな。その代表と偽天翼族(セラフェル)の間で交渉を行いたいと伺ったのじゃが、まさか噴火に巻き込まれるとは思わなかった。圓殿……リーリエ殿がいなければネファシェム山は噴火し、オルゴーゥン魔族王国は壊滅しておっただろう」


「……そちらの吸血鬼の方が、オルゴーゥン魔族王国の噴火を止めたと仰るのですが?」


「いかにも、彼女こそ多種族同盟の議長を務めるリーリエ殿じゃ。……正確にはその姿の一つということになる。もっともしっくり来る姿というところじゃな? 他に人間、エルフ、兎人族、龍人――様々な姿と肩書きを持っておる」


吸命鬼族(ドラキュバス)の血を引く吸血鬼を不快に思うのであればリーリエではなく、アネモネの姿でお話し致しましょう」


 リーリエからアネモネの姿にアカウントを切り替えると、偽天翼族(セラフェル)の女性は何が起きたのか理解できずに思考がショートして倒れた。……これは、色々とゆっくり説明しないといけないねぇ。

 まあ、その前にもう一戦やらないといけないことがあるみたいだけど。


「……うむ、失敗じゃったな。標高三万メートルの長きに渡り噴火を抑制されていた火山の噴火を使えば宇宙まで行けると思ったのじゃが、まさか第二次宇宙速度に達するまでに邪魔が入るとは」


 出るところは出て引っ込むところは引っ込んだ妖艶な肢体を純白のボディスーツで包み、純白の髪を短く切っている。

 美少女といって差し支えない容姿とそれに似合わぬ老人めいた喋り方。…………誰?


「圓殿、こやつは一体何者なのじゃ? 三十のゲームの登場人物ではないのか?」


「……いや、誰なんだろう? こんな美少女設定した記憶がないけど」


「儂のことを知らぬのか? 創造主なんじゃろお主? 儂はブルカニロ=ドフランシス、人は儂を天才科学者ブルカニロ博士と呼ぶ」


 ……いや、分かる訳ないでしょ!? ボクが知るアフロヘアにモノクルをかけたマッドサイエンティスト風の白衣の男だし、ヴァーナムから聞いていた転生体である初代冒険者ギルド総長コルヴォ=ロンディネも男だった。

 性別まで変わっている状態で推理するなんて不可能だよ! 分かる訳ないじゃん!!


「Dr.ブルカニロ、初代冒険者ギルド総長コルヴォ=ロンディネだねぇ」


「うむ、やはり儂が冒険者ギルドを設立したことも知っておったか」


「聞いていた情報とあまりにも違うんで気づかなかったよ」


「そういえば、冒険者ギルド総長を止めた後好みの姿に自分の身体を改造して美少女になっておったことを忘れておった」


「……ということは魔法少女の姿って訳でもないんだねぇ」


「ほう、儂が魔法少女になったことを知っておるのか? ということは、互助倶楽部『綺羅星の夢』のことも知っておるのか? 言っておくが、儂は彼方やオルタのような過激派ではないぞ? お主らとも敵対するつもりはない」


「……ネファシェム山を噴火させ、多種族同盟加盟国のオルゴーゥン魔族王国を壊滅させようとした君がボクらと敵対する気がない? 君になくてもボクにはあるんだよ! 多種族同盟加盟国の一員として君には侵した罪の責任を取ってもらうよ!」


「おおう、怖い怖い。怖いから、儂、逃げる! お主の相手は他の者に任せるとしよう。行くがいい、レーザーシェパード! ガトリングマンモス!」


 レーサー兵器を搭載した犬型のサイボーグに、ガトリングを搭載したマンモス型のサイボーグ。

 片方はこの世界でも絶滅しているし、遺伝情報を取り出してクローンを作成し、サイボーグ化ってところたろうねぇ。


 更に厄介なのは全身から炎を燃え上がらせていること。シェパードにもマンモスにも発火能力はない……となると恐らく――。


偽天翼族(セラフェル)の遺伝子を取り込んだってところか?」


「正解じゃ! ほう、こういった分野にも造詣が深いのじゃな。さてはお主もマッドサイエンティスト」


「いや、ボクはただのオタク趣味な投資家だよ」


「圓殿も十分マッドだと思うが。VSSC――あの機関で研究しているのは倫理など踏み越えた先にある研究であろう?」


 アスカリッドの正論を無言で無かったことにする。……それ、ここで言うことじゃないよねぇ? 一応、ビオラが保有する闇の三大勢力の一角――情報規制していないってだけであって、本来は存在しない筈の組織なんだよ? 悪役令嬢の所業なんて真っ青の倫理何それ美味しいのっていう禁忌の研究をしている機関だから情報が漏れると結構危険だし。


「VSSCとやらについても聞きたいが、ここにいるのは危険じゃからな! ということで、さよならじゃ!! お互い生きておったらまた会おうぞ!!」


 ブルカニロは乗っていた謎の飛行物体? 球体の何かに乗り込むと物凄い速度で空の彼方へと飛んでいった。……ってか、それほどの技術あるならロケット作ろうよ。


「さて、偽天翼族(セラフェル)の性質を持つクローンは厄介だねぇ。どうしたものか」


『ここは私にお任せください! セイクリッド・ウラノメトリア! 絶対切断(ワールド・ブレイク)


 カトリジャーヌがレベル120で習得する光属性魔法を使って天空の星々の力を宿した神剣を召喚し、イベント職の世界最強の騎士ワールド・チャンピオンが習得できる奥義を発動してあらゆる防御を無視した究極の斬撃を放ってレーザーシェパードとガトリングマンモスを一刀両断した。

 ……最強生物と言ってもあらゆる防御を無視した攻撃の相手は無理だったか。まあ、あれを防ぐなら求道神クラスの求道の霸気は必須だしねぇ。



 撃破したレーザーシェパードとガトリングマンモスを『統合アイテムストレージ』に放り込んでから、ボク達は山を少し降りて偽天翼族(セラフェル)の隠れ里に向かう。

 気絶していたアスフォナが起きるのを待ってから隠れ里に住む偽天翼族(セラフェル)全員(偽天翼族(セラフェル)の総人口は百人に満たず、そのほとんどがこの隠れ里にいるらしい)、この世界が三十のゲームから作られたことなどを説明した。


 この世界の真実については驚いていたけど、外界に関する情報についてはさほど驚いていなかったみたいだねぇ。

 偽天翼族(セラフェル)は下界との交流は持っていない筈なのに多種族同盟に関する情報を持っていて加盟したいと言ってきた……ここにずっと疑問を持っていたんだけど、どうやら情報はブルカニロから得ていたらしい。


「あのブルカニロという人間らしき女性は今から二年前から約一年間、この山頂の隠れ里に留まっていました。今、偽天翼族(セラフェル)の持っている下界の情報は全て彼女から仕入れたものです。彼女は空の果てに行かなければならないと口癖のように言っていました。なんでも、自分には天国に行き、邪悪を打ち払わなければならないという使命があるとか。銀河ステーションなる場所を探して求めても見つけられず、この大陸で最も宇宙に近いこの地にやってきたそうです。……確かに、彼女に火山の封印について話してはいましたが、まさか封印を破って火山を噴火させるなんて……あのまま噴火していれば私達は確実に死を迎えていたでしょう。本当に何とお礼を言えば」


「いやいや、あれは我ら魔族にとっても由々しき事態じゃった。それに、あの噴火を止めたのは圓殿の功績じゃ。もし、今日偽天翼族(セラフェル)に会いに行こうと圓殿が言わなかったらと思うとゾッとする」


「先程、アスフォナが圓様とエイレィーン様に失礼な態度を取ってしまったこと謹んでお詫び致します。……我々にとって吸命鬼族(ドラキュバス)巨人族(ジャイアント)と並んで天敵でした。その血を受け継ぐ吸血鬼や淫魔、亜人族に対して我々はあまり良い印象を抱いていないのです。しかし、多種族同盟に加盟する以上は対等なお付き合いを吸血鬼や淫魔、亜人族の皆様としていかなければなりません。我々も色眼鏡を捨て、前に進む覚悟をしなければなりませんね」


 偽天翼族(セラフェル)の長老であるウェルフィンド=アンベルはこれまで会ってきた首長の中で一二を争う人格者かもしれないねぇ。

 人間との間に負の歴史がないってことがやっぱり大きいと思う。エルフ、ドワーフ、獣人族、海棲族、魔族――彼らは人間からの迫害を受けてきた側だからねぇ。まあ、魔族の場合は迫害というより敵対だったけど。


「君達はそれだけの力を持ちながらどうして多種族同盟に入ろうと思ったのかな? 偽天翼族(セラフェル)はずっと姿を隠して生きてきた。これからも、そうして生きていく道もあったと思うんだけど」


「ブルカニロから地上世界の混乱について話を聞いています。三十の神々の戦争は、新たなる参戦者を得て更なる混沌に突入し、いずれは世界を巻き込む巨大な争いに発展すると。……その三十という数字が基となったゲームとやらの数ということは分かりませんでしたが、この世界に危機が迫っていること、そしてその問題に我々偽天翼族(セラフェル)が無関係でいられないことは分かっていました。ならば、最も生き残る可能性が高いグループに所属して生存できる可能性を掴んだ方が良いと考えた次第です。……ただ、それに賛同できない偽天翼族(セラフェル)至上主義者の偽天翼族(セラフェル)が一人山を降りてしまいましたが」


 ブルカニロから地上世界の大部分が人間に支配されていることを知ったその偽天翼族(セラフェル)は「人間を根絶やしにして世界を偽天翼族(セラフェル)が支配する」という野望を抱いて山を降りたらしい。

 ……もう嫌な予感しかしないよねぇ。最強の種族といっても一人でやれることには限界があるし、ブルカニロの持つ人脈を考えると互助倶楽部『綺羅星の夢』か『這い寄る混沌の蛇』か。

 『這い寄る混沌の蛇』なら冥黎域の十三使徒の一人になっていそうだねぇ。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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