Act.9-256 ペドレリーア大陸・ラスパーツィ大陸臨時班派遣直前の多種族同盟会議 scene.1
<一人称視点・リーリエ>
同盟皇帝防衛戦と呼ばれる君臨する八人の戦争の翌日――三月三十日に予定通り臨時班再開前最後の多種族同盟会議が行われた。
今回の臨時班のメンバーとサポートを行う諜報員達には既に昨日の時点でメールで担当する区域について連絡をしている。
今回の多種族同盟会議の議題は今回の臨時班に参加しないメンバーも含め各国の代表達に昨日連絡したメールの内容を説明するのがメインとなる。……後はいつも通り各国の代表達が議題を持ち寄る感じだねぇ。
ちなみに、オルレアン教国組以外のペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸に派遣される臨時班のメンバーは四月一日にそれぞれの担当することになる区域にある諜報員が作ったアジトに転移し、そこから各国の要職持ちや希望者は時空魔法を使った二重生活をしばらく送ることになる。……ラインヴェルド達要職持ちがあんまり国を空ける訳にはいかないからねぇ。
オルレアン教国組――ボク、ソフィス、リーシャリス、ガラハッドの四人は前日の三月三十一日、つまり明日から一日早く臨時班の活動を始めることになる。
新入生、在学生共に一日以上前から学院都市セントピュセルに入り、荷物の運び込みなどを行い万全の準備をした上で入学式・始業式を迎えるのが決まりだから、その決まりに合わせてボク達四人も学院都市セントピュセルに入らないといけないって訳。……まあ、寮の部屋に荷物を運び込むといってもあんまり大きな引っ越しはしないんだけど。リーシャリスとガラハッドはともかくボクとソフィスは二重生活組だからねぇ。
さて、臨時班のメンバーと担当区域だけどこんな感じになった。
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★ペドレリーア大陸
◆オルレアン教国
・百合薗圓
・ソフィス
・カレン
◆イェンドル王国
・トーマス(★1)
・欅
・梛
・樒
・椛
・槭
・楪
・櫻
◆グルーウォンス王国
・トーマス(★2)
・ルーネス
・サレム
・アインス
・榊
・槐
・椿
・榎
・楸
・柊
◆オッサタルスァ王国
・トーマス(★3)
・メアレイズ
・アルティナ
・サーレ
・美姫
・火憐
★ラスパーツィ大陸
◆フィクスシュテルン皇国
・円華
・ネスト
・汀
・クレール
・デルフィーナ
・ラインヴェルド
・オルパタータダ
・アクア
・ディラン
・エイミーン
・マグノーリエ
・プリムヴェール
・ミーフィリア
・レミュア
・レナード
・シーラ
・ラファエロ
・ミリアム
・アルベルト
・スティーリア
・菊夜
・沙羅
・雪菜
・黒華
・桃花
・篝火
・美結
・小筆
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ここには書かれていないけど、ソフィスの従者としてアクアマリン伯爵家の侍女の一人であるマンジュリカとアクアマリン伯爵家の影でバルトロメオと同じ『スターチス・レコード』の隠し攻略キャラになる筈だったアクアマリン伯爵家の影である銀髪に透き通るような白い肌を持つ【伯爵家の白い影】の異名を持つフリストフォルが、リーシャリスとガラハッドの従者としてスドォールト伯爵家の侍女メイリィース=ヘルハルドとオーデルヘルム伯爵家の家令補佐を務めるオールフェル=フォジェルドが同行することが決まっている。
一応、カレンはマンジュリカ、フリストフォル、メイリィース、オールフェルと同じくボクの従者として連れて行く扱いにはなるねぇ。まあ、実際は暗部として高い腕を持つとはいえ時空騎士ではないフリストフォルを含めた四人と違い、完全に戦力として連れて行くんだけど。……まあ、他に辺境伯及び宮中伯令嬢として従者の一人くらい流石に連れて行かないとまずいっていうのもあるんだけどねぇ。勿論、従者としてカレンに仕事をしてもらおうということは今のところ考えていないよ。まあ、必要になったらそっち方面でも頑張ってもらうことになると思うけど。
「さて、臨時班に関する話は以上になるけど、他に何か共有しておきたい話がある人はいるかな?」
「オルゴーゥン魔族王国から一つ共有しておきたい話がある。ノスフェラトゥ王国出身のセルーシャ殿には馴染み深いと思うが、旧ノスフェラトゥ王国の領内で現在オルゴーゥン魔族王国の北東の最果てにある空白地帯――ネファシェム山から昨日、オルゴーゥン魔族王国に使者が送られてきた」
「ネファシェム山ですか……しかし、あの地はとても生命が生きられる環境ではない筈ですが」
ノスフェラトゥ王国がドラキリア島に拠点を移してから初となる多種族同盟会議にノスフェラトゥ王国の代表として出席していたセルーシャがアスカリッドの言葉に疑問を投げかける。まあ、それも無理のない話か。
「このベーシックへイム大陸において最高峰の山であり、最後の秘境と呼ばれるネファシェム山。標高は三万四千メートルで、フォトロズ大山脈地帯の最高峰一万百メートルと比べるとその異常さがよく分かるんじゃないかな? まあ、フォトロズ大山脈地帯は一万メートルクラスの山を中心に高い山が連なっているから厄介っていうのもあるんだけど」
「……長きに渡りド=ワンド大洞窟王国へのシャマシュ教国と魔族の侵攻を防いできたあのフォトロズ大山脈の最高峰の三倍か」
「ディグラン陛下、そう単純に比較できる話ではありませんよ。上空三万メートル……それってもう成層圏、宇宙の入り口ですからねぇ? しかし、それほどの高さの山となると生命が暮らしているとは思えないんだけどねぇ。……魔物にとっても厳しい環境でしょう?」
「うむ、だから暮らしている種族も当然ながら普通ではなかった。使者としてやってきたのは偽天翼族の女性アスフォナ――彼女はネファシェム山の山頂にあるネファシェムの隠れ里が多種族同盟に加盟するための口添えを欲しいと言ってきた」
ボクを含めこの場にいた全員がアスカリッドの言葉に衝撃を受けた。
……いや、まあ、確かにあの種族なら成層圏でも暮らせるとは思うけど。
「巨人族、吸命鬼族と共にかつて世界を支配していた古代の伝説の種族の一つか。生きていたのも驚きだし、それがまさか多種族同盟への加盟を求めてくるとはねぇ」
吸血鬼と淫魔の祖で生命を吸収することができる能力と身体を植物に変えることができる能力を持っていたと言われている吸命鬼族。
獣人族の祖となった獣の巨人、ドワーフの祖となった大地の巨人、海人族、魚人族、人魚族の祖となった魚の巨人――様々な特性を有し、巨体を持つというたった一点の共通点を持っていたとされる謎大き『神の天敵』巨人族。
そして、吸命鬼族、巨人族と敵対して一時代を築いたのが『神』の別名を持つ最強の種族偽天翼族。
全身が灼熱の炎に包まれている翼を持つ種族で、発火能力と極めて高い身体能力と生存能力を持っていると言われている。……確か銀色の髪と褐色の肌が特徴だったっけ?
炎の性質を変化させることで「攻撃力は高いが防御力が紙装甲になる攻撃形態」、「防御力は極めて高いが攻撃力と敏捷が低下する防御形態」、「敏捷が極めて高いが防御力が紙装甲になる敏捷形態」の三つの形態を使い分けるが、見た目からどの形態かは判別できないとなかなかに厄介な特性を持っているらしい。
大きい括りで見れば魔族って扱いになるけど、魔族に分類される純魔族以下様々な種族と比べても素の能力値は明らかに桁違い。伝説が本当なら最早別の生き物の括りに括るべきだと思う。
……そんな最強の種族が今まで姿を隠してきたのに、何故このタイミングで動き出したのかは分からない。
オルゴーゥン魔族王国に従属を示すのではなく多種族同盟の加盟の助力を願ったのは、魔族の傘下に下る気はなく対等なお付き合いをしたいという意思表示だし、それは至極当然の考えなので特に何かを言うつもりはない。
輪を乱すような輩なら即刻出て行ってもらうように働きかけるつもりだけど、今までの敵意剥き出しな連中とは違って、多種族同盟加盟国と対等なお付き合いをしていきたいって意志が感じ取れるから加盟してもらっても特に不都合はないからねぇ。
「近いうちに再び使者を送って多種族同盟側の反応を確認し、その後多種族同盟加盟国の首脳と話をしたいと思っているそうだ」
「……いつ来るかも分からないその使者が来るのを待っているのもあれだし、こっちの意見を纏めてボクが伝えに行こうか?」
「いや、しかし圓殿達は明後日……いや、明日から臨時班が再始動するのだろう? このタイミングでネファシェム山に行くのは……」
「まあ、引越しの方は他の新入生に比べたらマシだし、普段から一日を周回しているボクにとっては誤差の範疇だよ。それに、臨時班に選ばれているメンバーを動かすつもりはない」
「おいおい! 俺とオルパタータダも参加させろよ! 絶滅した筈の種族だろ!? クソ面白そうじゃねぇか!」
「私も参加させるのですよぉ〜!!」
「ラインヴェルド陛下、オルパタータダ陛下、エイミーン陛下、お前ら首脳陣は国の首長としての仕事をしなさいよ。……アスカリッドさん、この後予定開けられるかな?」
「うむ、問題はないぞ。……警戒されることにならぬよう少数精鋭で行くべきだろう」
「まあ、アスカリッドさんが行くならエリーザベトさんは決定だし……後のメンバーは適当に見繕って会議中にメールを送っておくよ。さて、それじゃあ偽天翼族の多種族同盟加盟について参加者達の意見を聞きたい」
今回の会議には黒百合聖女神聖法神聖教会及びクレセントムーン聖皇国の代表として白夜が、ブライトネス王国の代表としてラインヴェルドとアーネストが、フォルトナ=フィートランド連合王国の代表としてオルパタータダ、アルマン、ティアミリスが、フォティゾ大教会の代表としてレイティアが、ニウェウス自治領の代表としてレジーナとユリアが、翠光エルフ国家連合の代表としてエイミーン、ミスルトウ、フレッシオ、ポーチュラカ、リーティアナが、ユミル自由同盟の代表としてヴェルディエとメアレイズ、サーレが、ド=ワンド大洞窟王国の代表としてディグランが、エナリオス海洋王国の代表としてバダヴァロートが、ルヴェリオス共和国の代表としてピトフューイが、風の国ウェントゥスの代表としてアリシータが、ラングリス王国の代表としてクラウディアが、ムーランドーブ王国の代表としてダルフとウォンカが、神嶺オリンポスの代表としてナトゥーフとオリヴィアが、魔法の国の代表として雪菜と黒華が、オルゴーゥン魔族王国の代表としたアスカリッドが、ノスフェラトゥ王国の代表としてセルーシャが、冒険者ギルドの代表としてヴァーナムとイルワが、魔法師ギルド『不死鳥の尾羽』の代表としてゼルドマンが、クラン『烈風の旅人』の代表としてアトラマが、クラン『紅の華』の代表としてクレスセンシアがそれぞれ出席している。
ビオラ=マラキア商主国の代表として出席しているボクを含め、このうち三分の二以上の合意が得られれば承認になる。
その後、採決を取って満場一致の形で「多種族同盟側は偽天翼族の加盟を認めるという形で交渉に臨む」ことが決まり、全権を託されたボクとアスカリッドが実際に現地に赴いて交渉を行い、加盟を認めるかどうかを見極めることになった。
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