Act.9-255 時空騎士の頂点vs真なる頂点〜ULTIMATE EIGHT延長戦! vs同盟皇帝〜 scene.1
<三人称全知視点>
現時点において、圓と公式戦を行う方法は三つ用意されている。
一つ目は全施設の施設長の金シンボルを獲得した後に挑戦できる施設長選定戦。
二つ目は琉璃が施設長になったことを期にエンドコンテンツの一つとして時空騎士の爵位防衛戦や施設長選定戦の会場として使われているバトル・シャトーを大幅に改築する形で作られた新たなバトル施設――バトル・シャトーの統括施設長である女城主との戦いである。
ちなみに、この新施設は施設長選定戦の資格と全シンボルを入手後に追加される『高難易度クエスト』と月刊チャレンジクエスト以外の全てのクエスト、つまり通常の常設クエストとミラークエストをクリア後に挑戦可能になる場所であり、琉璃が施設長になってから一週間後に建てられてから現在に至るまで誰一人として挑戦者が現れていない状況にある。
十戦目、百戦目、千戦目、一万戦目と桁が一つ変化するタイミングで戦うことが可能になっており、統括施設長に勝つ度に凄まじい量のポイントを獲得することがルール上はできるのだが、辿り着くための道のりも長く、統括施設長以外の敵も施設長に匹敵、場合によっては凌駕するほどに仕上がっているため(『管理者権限』持ちの神やレイド級のボス、時空騎士などが全員『王の資質』を解禁された状態でランダムに姿を見せる。更にそのランダムに現れる猛者に高性能なAIが積まれているとなれば、その恐ろしさがどれほどのものかよく分かるだろう)、仮に挑戦できても一回戦に勝てるだけで賞賛に値するという難易度で、統括施設長に挑める可能性は限りなくゼロに近いのだが……。
多くの人の場合は二つ目の方法は解禁されておらず、必然的に一つ目の方法か三つ目の方法――つまり、君臨する八人の戦争の優勝者として同盟皇帝である圓に挑むことになる。
施設長選定戦で一度のみ戦える「バトル・アイランド総支配人の圓」、バトル・シャトーで戦える「女城主の圓」、君臨する八人の戦争の優勝者となることで挑める「同盟皇帝の圓」――この中で年に一度必ず一人は戦うことができる、敵側の主人公補正に左右されないという点を考えれば三つの方法の中で最も簡単に圓に挑むことができる方法なのかもしれない。……まあ、猛者犇く時空騎士の中で上位を維持し続け、君臨する八人の戦争の中で優勝するということは並大抵のことではないが。
◆
「今日の日をとても楽しみにしていたよ。プリムヴェールさん、調子はどうかな?」
「勿論、万全だ」
「うんうん、さっきマグノーリエさんから愛の篭った応援を受け取っていたようだし、気持ちの面でも体調面でも万全の準備は整っているみたいだねぇ。……さて、今日のボクは全力を持ってプリムヴェールさんを潰しに行かせてもらう。プリムヴェールさんも持てる全ての力を一切出し惜しみなくぶつけて欲しい。くれぐれも悔いを残さないようにねぇ……まあ、悔いが残ったならそれをまたバネにして来年、この場所で再チャレンジか、金シンボルを集めて施設長選定戦に挑んでもらけばいいんだけど。それじゃあ、始めようか?」
『漆黒魔剣ブラッドリリー』と『白光聖剣ベラドンナリリー』を鞘から抜き払い、武装闘気を纏わせたリーリエ――確かにMMORPG『Eternal Fairytale On-line』においてはその姿が全力には他ならない。
しかし、覇王の霸気や求道の霸気、魂魄の霸気《八百万遍く照らす神軍》などを併用しない状態を果たして全力と呼んでいいのだろうか? 最初から覇王の霸気や求道の霸気、魂魄の霸気《八百万遍く照らす神軍》などを駆使した全力の戦闘を仕掛けてくると思って身構えていたプリムヴェールにとっては少し拍子抜けだった。
「消滅の立方鳥弾! 月光の立方鳥弾! 観測不能の立方帳」
プリムヴェールが発動したのは、消滅効果を発生させることができる仕掛けが施された鳥型の弾丸に変化させることができる真っ白な立方体を生み出す火・氷・雷・無属性の融合魔法「消滅の立方鳥弾」と、「消滅の立方鳥弾」に見た目だけは瓜二つの月属性の鳥弾を作り出す魔法「月光の立方鳥弾」――この二つをいかなる観測、鑑定を無効化する効果がある闇の帳で覆う闇魔法で覆い、黒い立方体を複数創り出す。
「なるほど、『消滅の立方鳥弾』にフェイクを織り交ぜる戦法か。なかなか考えられているねぇ。……いや、プリムヴェールさんだけじゃない。君臨する八人の戦争では参加者それぞれが新技という名の隠し球を持ち寄り、最高の戦いを繰り広げていた。じゃあ、その最終戦に相応しいこの舞台でボクも誰にも見せていない手札をいくつか見せようと思ってねぇ。まずは、常夜流忍術奥義・禍焔飛龍!!」
「――ッ! まずい!!」
リーリエが放った見えない何かをプリムヴェールは見気で察知した瞬間、複数の黒い立方体を抱えたまま魂魄の霸気《転送》を発動して転移した。
そして、三つの立方体を無数の鳥弾へと変化させてリーリエと先ほど自分が立っていた地点目掛けて放つ。
「圓式鬼斬技・浄土滅焔斬!!」
リーリエへと放たれた鳥弾は全て浄化の性質と火の属性を付加された膨大な霊力の飛斬撃によって粉砕される。
一方、プリムヴェールの居た地点に飛んでいった鳥弾は何かに命中して消滅の輝きを放った。
「……透明な焔、それが常夜流忍術奥義ということか」
「プリムヴェールさんの推察通りだよ。常夜流の奥義は、圧倒的高温の透明な焔を操る究極の火遁忍術『透明禍焔』――これを応用して巨大な竜を創り出すのが月紫さんの十八番『常夜流忍術奥義・禍焔飛龍』だ。そして、先ほどの『消滅の立方鳥弾』と『月光の立方鳥弾』の混成弾幕を打ち破ったのは浄化の性質を付加した膨大な霊力を飛斬撃として飛ばす『圓式鬼斬技・浄土滅斬』の派生だ。派生技には『圓式鬼斬技・浄土滅焔斬』の他に『圓式鬼斬技・浄土滅水斬』、『圓式鬼斬技・浄土滅風斬』、『圓式鬼斬技・浄土滅雷斬』がある。それ以外に、『圓式鬼斬技・浄土滅斬』そのものを強化した技に浄化の性質を付加した膨大な霊力と膨大な覇王の霸気を纏わせて放つ飛斬撃『圓式鬼斬技・浄土滅斬』がある。それと、今回は紹介程度に済ませておくけど、先ほど挙げた『透明禍焔』を応用して巨大な掌で攻撃する『圓式常夜忍術・禍焔巨掌』、無数の巨大な狼を嗾ける『圓式常夜忍術・禍焔真神』、呪いが付与された蟲を操り災いをもたらす東洋呪術によって生み出した呪いを『絶望堕ち』の反転を応用して正の属性に変化させることで膨大な正属性のエネルギーっていう余りにも強過ぎるエネルギーによる自壊覚悟のブースト技『圓式鬼道・反転蠱毒』もある。……さて、このまま戦ってもいいんだけど、プリムヴェールさんはお好みじゃないようだし、ここからは一気に本気を見せるとするよ。魂魄の霸気《八百万遍く照らす神軍》!!」
「――ッ! 来たか!!」
巫女の姿へと変化し、光背を背負った姿となったリーリエは《太陽神》の光変化で六人に分裂する。
「バトル・シャトーの剣武大会で見せた《太陽神》での光への変化を応用した分割だな。戦闘力は素の状態から下がり、最大HPも分割した数に合わせて分割される。……しかし、特技の威力は据え置き、実質リーリエ様を六人同時に相手をするということになるのか。憂鬱だな」
「六人のリーリエじゃないよ?「「「アカウント・チェンジ!!!!」」」」
四人のリーリエが同時にアカウントを切り替え、アネモネ、マリーゴールド、ネメシア、ラナンキュラスへと姿を変える。
「「「「「「求道の霸気最終領域・求道神! 覇王の霸気最終領域・覇王神!」」」」」」
武器と自身の身体に単一宇宙に匹敵する求道神レベルの求道の霸気を纏わせ、剣に、杖に、拳に――それぞれの武器に覇王神レベルの覇王の霸気を纏わせる。
六人に分割してなお、尋常ならざる霸気――世界に求道神を付与してしまえる規格外の霸気とはこれほどのものかとプリムヴェールはゴクリと無意識に唾を飲んだ。
「……私は負けるだろう。まあ、そんなことは挑んだ時点で分かっていたがな。時空騎士の頂点に立ったとしても、その頂点と真の頂点にはこれほどの差があるということか。……だが、私もただ負けるつもりはない。リーリエ、リーリエ、アネモネ、マリーゴールド、ネメシア、ラナンキュラス――誰か一人でも道連れにする! これが私の全力だ!! 求道の霸気最終領域・求道神! 覇王の霸気最終領域・覇王神! ルナティック・ムーンライト・ファントム! 魂魄の霸気《転送》フルスロットルッ!!」
プリムヴェールは霸気を全開放する勢いで求道神と覇王神のレベルまで純度を高めると、月の魔力と武装闘気で実体のある自身の分身を創り出した後、自身の刀身に月属性の魔力を宿す付与術式を発動し、円を描いて同時に三つの魔法陣を展開し、全身に月属性の魔力を纏った状態で巨体化させた刀身を突き立てて突撃する「ルナティック・ムーンライト・ファントム」を発動し、六つの巨大化した刀身全てをリーリエ、リーリエ、アネモネ、マリーゴールド、ネメシア、ラナンキュラスに放つ……が。
「紙躱と《太陽神》の光化、光速に匹敵する速度での移動能力を組み合わせて私の放った六つ全ての刀身を躱したのか!?」
「虚空ヨリ降リ注グ真ナル神意ノ劒!」
「万象無ニ還ス靈劔!」
「深淵より顕現せし大焦熱の極焔!」
「阿修羅刹降龍拳!」
「殺戮者の一太刀」
「圓式極速比翼!」
天より降り注ぐ無数の黒く染まった虚空属性の大剣、無数に伸びた黒い稲妻を纏う線状の消滅属性の斬撃、焔すらも喰らい燃やす、あらゆるものを焼き尽くす貪欲な焔の奔流、武装闘気を変化させた衝撃波――武気衝撃と内部破壊の一撃――武流爆撃を伴った突きと蹴りの暴風雨、高確率の即死効果が付与された死神の鎌の如き斬撃、そして圓式と《血動加速》と《太陽神》の光速移動を掛け合わせた二刀流最速の一撃――プリムヴェール一人を倒すためにはあまりにも強大な力がプリムヴェールに襲い掛かった。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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