Act.9-251 開幕! ULTIMATE EIGHT!! 第三回戦最下位決定戦 scene.1
<三人称全知視点>
三回戦の最初の戦いは最下位決定戦――七位と八位を決めるラインヴェルドとオルパタータダの対戦となった。
七位と八位でも得られる賞金には大きな差があるのだが、ここまで負けに負けまくっているラインヴェルドとオルパタータダのテンションは低い。
「なあ、オルパタータダ。もう今期も最終戦だし、ガツガツと順位を上げようって気にもなれねぇな。……ここで勝ったって七位だろ? 七位と八位なんて誤差じゃねぇか。最後の戦いまで凄まじい読み合いをして、魔法打ち合って……って戦うの何だか面倒くさくなってきた。もう普通に剣だけで決着付けねぇか」
「いい提案だな。じゃあ、魔法攻撃禁止、回復と蘇生禁止、光系統魔法は『ジュワイユーズ流聖剣術』に含まれるものだけに限る、紙躱と見聞の気禁止、魂魄の霸気禁止でどうだ?」
「よし、決まりだな! 逃げの手も遅延も一切禁止、思考停止で派手に切り結ぼうぜ!! あっ、聖紋禁止も追加だ。まあ、俺しか使えないけどな! それじゃあ行くぜ!! ジュワイユーズ流聖剣術 聖ノ型 聖纏魔祓! 武装闘気・硬化! 求道の霸気! 覇王の霸気! ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連」
「ジュワイユーズ流聖剣術 聖ノ型 聖纏魔祓! 武装闘気・硬化! 求道の霸気! 覇王の霸気! ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連」
聖属性の魔力と武装闘気、覇王の霸気、求道の霸気を互いの剣に乗せて放つのは膨大な魔力を乗せ、超高速の連撃を繰り出す「ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連」。
一回一回の切結びで覇王の霸気の衝突が生じ、互いに剣が触れ合わないまま二人の斬撃の回数は互いの限界である二十五連撃を突破、尋常ならざる衝撃波と黒稲妻を迸らせながら更に回数を増やしていく。
四十五連撃と互いに新記録を樹立したタイミングでラインヴェルドとオルパタータダは一旦互いに距離を取った。
「神威神退」「神威神去」
ラインヴェルドとオルパタータダは互いに覇王の霸気を纏わせて薙ぎ払い、斬撃を飛ばす。
覇王の霸気の斬撃はラインヴェルドとオルパタータダの丁度真ん中で衝突し、膨大な黒稲妻を撒き散らした。
「やっぱり互角か。『剣聖』の技も互角、霸気のレベルも互角……となれば、決着をつけられる差は『王室剣技』と『王家伝剣』か?」
「いや? もう一つあるじゃねぇか? 神裁」
俊身と神速闘気を駆使してラインヴェルドとの距離を詰めたオルパタータダは裏武装闘気で創り出した鞘に剣を納め、霸気により生じる黒稲妻を使った電磁抜刀で強力の居合による斬撃を繰り出す。
「――ッ! 衝闘超激波!」
「ぐっ! 吹っ飛ばされるッ!」
「二連・惟神!!」
大量の武装闘気を衝撃波に変化させてオルパタータダを吹き飛ばし、「神裁」の間合いから外れつつ、吹き飛ばしたオルパタータダを狙い、霸気を凝縮して斬撃や刺突を飛ばし、敵に命中するタイミングで解放する「惟神」を二刀で放つラインヴェルド。
「くっ、神威神去! 神去!!」
一つ目の「惟神」を覇王の霸気を纏わせて薙ぎ払い、斬撃を飛ばす「神威神去」で破壊するが、二つ目の「惟神」には「神威神去」を放つ余裕がないと判断し、ダメージを受ける覚悟で「神去」を放つ。
斬撃を放つと同時に黒稲妻が解き放たれたことで側にいたオルパタータダもダメージを受けたが、直撃で「惟神」を浴びるよりはダメージを抑えることができた。
しかし、小さなダメージとはいえ被弾は被弾である。
このオルパタータダの初被弾がその後の展開に大きな影響を与える……かと思いきや、オルパタータダは瞬時に気持ちを切り替えて立て直し、大崩れを回避することに成功。
その後も一進一退の攻防が続き、どちらも大したダメージを与えられないまま戦いは長期化していく。
ラインヴェルドとオルパタータダも実力が完全に伯仲していることを理解し、霸気比べの持久戦に順次切り替えていった。
王室剣技をベースに戦うのラインヴェルドと王家伝剣をベースに戦うオルパタータダの切り結びは遂に一万回を超え、無数の黒稲妻が絶えず戦場に迸り、衝撃波が戦場を駆け巡るのがデフォルトとなりつつある。
霸気を垂れ流しにし続ける状況が続き、求道神や覇王神を使わずともラインヴェルドとオルパタータダの霸気が猛烈な勢いで減っていく。
そして、一万五千回目の切り結び――もうすぐ霸気が底を突くというタイミングになり、互いに後が無くなったことを悟ったラインヴェルドとオルパタータダは同時に残った全ての霸気を消費して大勝負に踏み切った。
「求道の霸気最終領域・求道神! 覇王の霸気最終領域・覇王神!」
「求道の霸気最終領域・求道神! 覇王の霸気最終領域・覇王神!」
「やっぱり考えることは同じだったか!! 残った霸気全部ベットするぜ!!」
「この一撃に全てを賭ける! 向かい打って返り討ちにしてやるぜ、ラインヴェルド!!」
ラインヴェルドとオルパタータダ――両者の霸気の衝突によって空間そのものが二分化されたと錯覚するように歪み、歪みの圧力で無数の亀裂が走った。
時空間に歪みが生じて時空の裂け目と呼ぶべきものが生じ、尋常ならざる衝撃波と黒稲妻が戦場を駆け巡る中、覇王の霸気の衝突によって生じた拮抗を崩すべく、剣と剣の間に生じている霸気の領域を切り裂くイメージで互いに力を込めていく。
「――行っけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「――吹っ飛びやがれぇぇぇぇぇぇ!!」
そして、遂にラインヴェルドとオルパタータダは霸気の衝突によって生じた拮抗の領域を粉砕し、互いに刃をぶつけ合い始める。
刃を直接交える状況になったにも拘らず実力は伯仲――互いの意思の鬩ぎ合いがしばらく続いていたが、やがてオルパタータダ側が大きく押され始めた。
二人の霸気の残量は完全に互角だった。ラインヴェルドもオルパタータダも霸気に配分に失敗した訳ではなく、このままいけばほとんど同時に霸気切れを起こし、その後は純粋な剣の勝負に発展していただろう。
二人の明暗を分けたのはオルパタータダが受けた小さな被弾だった。オルパタータダ自身、何ともないと思っていた僅かなダメージが終盤で牙を剥く。
三回戦第一試合――ラインヴェルドとオルパタータダは戦いの中で成長を重ね、限界を超え続けてきた。
厄災と形容する他ない剣のぶつかり合いとは思えない死闘はごく自然とオルパタータダ自身も気づかないほどゆっくりな速度でラインヴェルド優勢に傾いていき――。
「やばいッ! 押し切られるッ!!」
オルパタータダの握る剣が吹き飛ばされた瞬間、ラインヴェルドの剣がオルパタータダの胴を両断する。
ポリゴンが傷口から溢れ出し、やがてオルパタータダの身体は無数のポリゴンと化して消滅した。
◆
オルパタータダが消滅すると同時にラインヴェルドもバトルフィールドから現実世界へと転送され、誰もいなくなったバトルフィールドに続いて姿を見せたのはオニキスとスティーリアだった。
「魂魄の霸気《騎士団》!」
『……オルパタータダ陛下に続き、貴方も軍勢でわたくしに勝つおつもりなのですね? いいでしょう! 極寒の分身! 氷の捕食者! 冷纏の白龍!』
オニキスは漆黒騎士団のメンバーを模した漆黒の騎士団を魂魄の霸気《騎士団》によって作り出すと、オニキスを模した黒い騎士と融合した。
『アクア様のみが有する魂魄の霸気《黒騎士》は、前世のオニキス様を模したもの。魂魄の霸気《騎士団》……今は魂魄の霸気《王国》でしたか? あの魂魄の霸気を使う際には前世の自身の分身は作り出しませんのですっかり忘れてしまいましたが、魂魄の霸気《騎士団》や魂魄の霸気《王国》にも自身の分身が含まれておりますわね。……巨大な自身の分身である魂魄の霸気《黒騎士》と魂魄の霸気《王国》を使い分けるアクア様とは違い、オニキス様は魂魄の霸気《騎士団》による強化一択なのでしょうね。……ここまでの戦いで全く使っていなかったので、魂魄の霸気《騎士団》による強化の存在をすっかり忘れていましたわ』
「つまり、上手く作戦がはまったということですね。ずっと使わずに来て良かったです。ちなみに、アクアさん曰く前世の俺の魂魄の霸気《騎士団》と魂魄の霸気《黒騎士》は不可能なようですよ。……まあ、俺もここしばらく魂魄の霸気《騎士団》による自己強化どころか、俺自身の魂魄の霸気《騎士団》すら出していなかったので、久しぶりの解禁になるんですけどね!」
オニキスが剣を振り下ろした瞬間、漆黒騎士団の者達を模した魂魄の霸気《騎士団》が一斉にスティーリアに向かって殺到する。
これを防ぐべくスティーリアが創り出した自らの分身(古代竜本来の姿の分身)、純白の冷気を纏う東洋竜、氷の小さな翼竜からなる大軍が《騎士団》目掛けて襲い掛かり、オルパタータダとスティーリアの戦いと同じく互いが作り出した大軍同士の代理戦争が幕を開けた。
「魂魄の霸気《修羅舞昇》! 魂魄の霸気《修羅舞昇》! 魂魄の霸気《修羅舞昇》!」
『竜舞! 竜舞!! 竜舞!!』
彼らに混じってスティーリアとオニキスも戦いを始めるのかと思いきや、二人はバトルフィールドの真ん中で起きた激突を見ながら積み技を積んでいく。
互いに邪魔をすることなく戦う準備を整えたオニキスとスティーリアは満を持して混沌としたバトルフィールドの中心部へと突入した。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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