Act.9-248 開幕! ULTIMATE EIGHT!! 第二回戦第二試合 scene.1
<三人称全知視点>
「杖の天使、全力で援護してくれ! 俺がプリムヴェールさんを仕留める! 【起死回生】――圓式!!」
「――ッ! アクアさんが見たことのない真っ白なオーラを纏った!? あの剣、嫌な予感がする。魂魄の霸気《月虹》! 消滅の立方鳥弾」
「真っ白な立方体? まあいい、俺が何かされる前にプリムヴェールさんを叩き切ればそれで解決だ! 覇王の霸気最終領域・覇王神! 《万象切斬する剣》! 魂魄の霸気《昇華》!」
何かされる前に先に撃破してしまえばいいと覇王神の領域まで覇王の霸気を高めて剣に乗せ、更に魂魄の霸気《昇華》を発動してアクアは自身の攻撃力を強化する。
清々しいほどまでに攻撃に極振りして逆手に構えた剣を振り下ろすアクアに対し、プリムヴェールは覚悟を決めた。
「魂魄の霸気《転送》!」
アクアが剣を振り下ろした瞬間、謎の立方体を抱えたままプリムヴェールの姿が掻き消える。
「まさか、自分を《転送》した……のか!? でも、斬撃以外の転送は……確か条件は認識だった。ってことは、見気で認識した自分自身も《転送》できるってことか!? ――ッ! プリムヴェールさん、ずっと自分自身は《転送》できないと意図して錯覚させていたのか!! やられた……けど、俺の攻撃は一度で終わりじゃない!!」
「解き放て! 消滅の立方鳥弾」
アクアが見気で《転送》を利用して転移したプリムヴェールを捕捉し、振り返り様に背後に転移したプリムヴェールを切り裂こうとした瞬間、アクアが目にしたのは自分の視界を埋め尽くすほどの無数の白い鳥の群れだった。
「マグノーリエさん考案の消滅魔法――これが私の奥の手だ!!」
プリムヴェールの手から消えた立方体、その全てを消費して作り上げた鳥型の弾丸がアクアに殺到する。
弾丸はアクアに命中すると同時に内部に込められていた火・氷・雷の三属性の魔力を隔てる無属性の壁が消滅の、一気に中心部に流れ込んだ三つの魔力が融合したことで生じた消滅の力が瞬く間にアクアを包み込んだ。
プリムヴェールが最後に放った魔法「消滅の立方鳥弾」はマグノーリエが考案したオリジナルの無属性魔法である。
その原理そのものは元となった火・氷・雷の三属性の魔力を強引に重ね合わせることで生み出した虚数エネルギーにより対象を最小の単位までレベルまで分解消滅させる魔法「破滅光芒」と同じだ。
しかし、より敵に当てやすくなるようにと魔法に仕掛けを仕組んでおり、「破滅光芒」よりも厄介な魔法に仕上がっている。
最初の段階として消滅魔法を発動する特殊な弾丸作りを行う。
具体的には火・氷・雷の三属性の魔力を接触しないように無属性で包み込んだ構造を繋げた巨大な立方体を作り出すというもので、この立方体を解体することで無数の消滅魔法を発生させることができる弾丸を作り出すことができる。
この立方体はそのままの状態であれば害なく持ち歩きが可能なため、戦闘中に立方体を複数作っておくことも可能だ。
実際に弾丸として使う際には立方体を解体して型の弾丸を創り出し、敵に命中する直前で上手く混ざり合うように魔法を調整して解き放つ。
こうして放った鳥型の弾丸にはある程度の時間であれば敵を追尾することができる無属性魔法が組み込まれており、弾丸を解き放つと同時に狙った対象に向かって鳥型の弾丸は勢いよく飛んでいき、対象に到達すると同時に無属性魔法の隔壁が消滅――三つの属性が混ざり合って生じた虚数エネルギーにより攻撃対象を最小の単位までレベルまで分解消滅させる。
遠隔で隔壁を消滅させる構造ではないため、隔壁消滅のタイミングまで粘って振り切ることも可能ではあるが、一つの立方体からは何百という量の鳥型の弾丸が放たれることになるため、圧倒的な物量で攻めてくる鳥型の弾丸が逃げ切ることはまず不可能。
何らかの魔法などで防壁を展開して盾にするのが最も簡単な対抗手段となる。
今回のプリムヴェールとアクアの戦いでは全く情報がない中で「消滅の立方鳥弾」を使用したことがアクアにとっては不意打ちになった。攻撃に極振りしていたこともあって防御にまで手が回らず、何も準備できない状況で「消滅の立方鳥弾」を食らって敗北することになったが、アクアとプリムヴェールの戦いを見ていた面々――次にプリムヴェールが戦うことになる可能性のあるディランと白夜は確実に対策を立ててくる筈だ。
時空騎士の上位陣に同じ手はまず二度と通じないと思った方がいい。プリムヴェールは今回の大会のためにとっておいた最大の隠し球を失った状態で決勝の舞台に立つことになる。
◆
プリムヴェールが退場したバトルフィールドでは、プリムヴェールの命運を決める重大な戦いが幕を開けようとしていた。
準決勝第二試合――ディランと白夜の試合である。
『先程、アクア様はディラン様が勝つと微塵も疑っていなかったご様子でした。私に勝てる秘策というのは本当に存在するのでしょうか?』
「ああ、白夜さんの予想している通り対策のとっておきは用意してあるぜ? 一応、他のメンツの対策にもなっているが、一番効果的なのは間違い無く白夜さんだな。それじゃあ、遠慮なく使わせてもらうぜ! 魂魄の霸気《闇影の世界》」
ディランの足元の影が急速に広がっていき、バトルフィールドを覆うほどの広さとなると影の領域は今度は上へと上り始める。
やがて黒い影の領域はバトルフィールド全体を包み込んだ。
「俺の奥の手の一つ《闇影の世界》が発動している空間では光系統の能力が維持できる時間が最大で五秒となる。……まあ、それだけの力だから維持に必要な霸気も相当な量なんだけどな。一番は親友の《八百万遍く照らす神軍》への直接的な対策になると思って編み出した技だが、白夜さんにとってもかなり厄介な技だと思うぜ」
『確かに光系統の魔法が封じられるのは厄介ですわね。しかし、私には光系統の魔法以外にも霊力という手札がありますわ』
「流石に霊力の方はしっかりと対処しなければと思っているぜ? それでも、霊力系と魔法系の二つの攻撃方法を持っている相手と戦うよりも片方を封じられている相手と戦う方が勝率が高いからな。おじさんも流石に正面から白夜さんと戦ったら分が悪過ぎる。これくらいは許してくれ」
『相手の攻撃手段を減らすのも立派な戦い方ですわ。……いいでしょう、神霊纏剣!』
白夜は裏武装闘気で創り出し、求道の霸気を収束させた剣に神霊力のレベルまで濾過した霊力と武装闘気、覇王の霸気を纏わせると地を蹴って加速し、一気にディランとの距離を詰める。
「《白影の大迷路》! 《白影の翼》!!」
ディランは白夜の行手を阻むように影の壁を無数に出現させて迷路を形成する。
白夜が神霊力のレベルまで濾過した霊力を纏わせた剣で斬撃を放つ「神霊破斬」を使って壁を破壊したタイミングでディランは《影の翼》を顕現して飛翔した。
『空に飛んではわざわざ迷路を作り出した意味がないのではありませんか?』
「《白影の影撃部隊》! 時間を稼げ!!」
『――ッ! また《影化》と《影分身》のコンボを使うつもりですか!?』
「《白影分身》! 《白影分身》! 《白影分身》! 《白影分身》! 《白影分身》! 《白影分身》!」
『……神霊砕突! 神霊砕突! 神霊破斬! 神霊破斬! 焼き払えッ! 神霊三鈷剣! 数が多過ぎる……このままだとまずいわね』
白夜を模した《白影の影撃部隊》に白夜は刺突と斬撃を放っていくが、《闇影の世界》の効果なのか触れていなくても武装闘気と求道の霸気が供給されているようでただの白夜を模した影すらもなかなか撃破することができない。
神霊力のレベルまで濾過した霊力を浄化の力を宿す炎へと変化させる「神霊三鈷剣」を織り交ぜつつ戦っていた白夜も流石に焦りを感じ始め、膨大な霸気を込めた「神霊大聖威徳天」で全体攻撃を仕掛ける。
この一撃を浴びた白夜を模した《白影の影撃部隊》は全て撃破できたものの、ディランに与えてしまったほんの僅かな時間の間にディランは《白影分身》が二百五十六体完成してしまった。
「覇王の霸気最終領域・覇王神! 確実にここで仕留めてやるぜ!! 《影軀逆転》!!」
『覇王の霸気最終領域・覇王神! 神霊大聖威徳天!!』
白影のディラン達が一斉に《影軀逆転》を白夜へと放つ。
白夜は「神霊大聖威徳天」を放って少しでもディラン達を撃破して数を減らそうとする(あわよくば本体のディランを撃破して試合終了に持ち込む)が、ディランは巧みに《影交換》を使って本体の居場所を入れ替えていき、白夜の攻撃はなかなかディランに届かない。
それでも白夜は限られた時間の中でディランの本体を撃破するべく「神霊大聖威徳天」に更なる神霊力を込めたが、神聖な雷撃が部屋全体を塗り潰す前に五十人程度のディランが一斉に放った神速の飛斬撃が白夜に殺到する。
流石に求道の霸気を纏って防御力を強化して戦っていた白夜でも「覇王の霸気最終領域・覇王神」による強化を受けた神速の斬撃を五十人分は耐えきれず、白夜は無数のポリゴンと化して消滅した。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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