Act.9-246 開幕! ULTIMATE EIGHT!! 第一回戦第四試合 scene.1
<三人称全知視点>
君臨する八人の戦争、第四回戦の対戦カードはスティーリアと白夜の従魔対決となった。
古代竜と圓の力によって生み出された魔物――同じ従魔であってもその性質はかなり異なる。
白夜はマリシアとして振る舞う時と同様、虎耳と虎の尻尾を隠し、総法導皇であることを示す最高位聖職者の法衣を身に纏っている。
まさに神聖魔法の擬人化と呼ぶべき彼女の力は桁外れだ。触れるだけでその部位を抹消することができる「限定型魂霊崩壊」の存在からもその圧倒的な力をコントロールし切ってしまう驚異的な魔法のコントロール力がよく分かるだろう。
しかし、白夜に対峙するスティーリアもまた化け物クラスの猛者である。
主人である圓に対する愛を燃やすスティーリアは強い。決して無様を晒さないと誓い振るう『氷百合の魔剣』と『氷百合の聖剣』が折られた前例はいくつかあるが、その度に自分に対する怒りを剣に込め、敵を粉砕してきた。
互いに強敵同士、一つでも手を間違えれば忽ち命を落とすことになるだろう。
『聖剣昇華の儀・天絶』
神聖魔法の昇華魔法を発動し、裏武装闘気で作り上げた剣を最上級の聖剣へと変化させる白夜。
『氷武創造』
対するスティーリアも『漆黒魔剣ブラッドリリー』と『白光聖剣ベラドンナリリー』を忠実に再現した『氷百合の魔剣』と『氷百合の聖剣』を作り上げた。
『氷百合の魔剣』と『氷百合の聖剣』に求道の霸気を収束させたスティーリアは、『氷百合の魔剣』を構え、前方に向かって軽く剣を振った勢いで猛吹雪と膨大な黒い稲妻を纏った巨大な槍型の衝撃波を白夜に向けて打ち出す。
『猛吹雪纏う砕城覇槍!』
『霊力纏う砕城覇槍!』
対する白夜も膨大な霊力と覇王の霸気を纏わせた巨大な槍型の衝撃波をスティーリアの放った「猛吹雪纏う砕城覇槍」に向けて解き放つ。
白夜とスティーリアの「砕城覇槍」を衝撃波と轟音を発生させながらしばらく拮抗したが、時間経過と共に自然に相殺された。
『やはり、ご主人様から聖なる力を与えられた四神の従魔、恐ろしい力を持っているのね。開幕勝負は引き分けというところかしら? 本番はこれからね』
続いてスティーリアは本体の三分の一程度のの力を有する分身を創り出す「極寒の分身」を使用し、人間の姿のスティーリアの分身を十体作り上げると白夜へと嗾しかけた。
『氷の捕食者! 冷纏の白龍!』
更に氷の小さな翼竜と純白の冷気を纏う東洋竜を創り出してスティーリアの分身達の後を追わせるように嗾ける。
『なるほど、まずは物量で攻める作戦ですか。いずれもスティーリア様の戦闘力に遠く及ばないとはいえ、武装闘気で全身を強化されているのは厄介ですね。神霊大聖威徳天! 降り注ぎなさい!』
白夜は自身の身体を構成する霊力を神霊力のレベルまで濾過し、雷の性質を与えて天井へと解き放つ。
凄まじい威力の雷撃が縦横無尽に戦場を駆け巡り、スティーリアの分身と氷の小さな翼竜と純白の冷気を纏う東洋竜は雷撃を浴びた瞬間に武装闘気を貫通され、浄化の力と凄まじい電圧によって焼き尽くされて消滅させられてしまった。
しかし、それでもスティーリア本体を守る求道の霸気と武装闘気を破るほどの力は無かった。
既に武装闘気の究極の領域――生半可な攻撃を遮断することができるレベルまで達しているスティーリアの防御を突破するためには武装闘気を打ち破るほどの力を技に込める必要がある。それに仮に武装闘気を突破できても今度は求道の霸気の圧倒的防御力が立ち塞がる。
流石に単一宇宙程度の防御力は求道神を発動していない現時点では有していないが、逆に言えばスティーリアが必要と判断すれば求道神の防御を発動できる状態にあるということである。
それに、そもそも尋常ならざる未来視と紙躱の技術を持つスティーリアにはそもそも攻撃が当たりにくい。
「神霊大聖威徳天」は初見の技だったため、どれほとの威力が見極めるために喰らったが、次回以降の攻撃は確実に躱してくると考えるべきだろう。
つまり、白夜がスティーリアに勝つためにはそもそも躱す予知の存在しない広範囲攻撃かスティーリアの未来視を上回る不意打ちを叩き込むしかない。
『やっぱり雑兵を寄せ集めても大した戦果は得られないわね。……それならば、わたくしらしい方法で一気に仕掛けさせて頂きますわ! 大紅蓮凍寒摩訶鉢特摩!』
スティーリアは極寒の魔力の風を解き放つ。
白夜ほどの力を持っていても絶えず治癒闘気を循環させなければ凍えそうな極寒のバトルフィールドを手にしたスティーリアはダイアモンドダストを媒介に狙った対象を周囲の大気諸共凍結させる「凍結する大気」を放ち、白夜を一瞬にして氷漬けにすると、極寒の吹雪を収束させたような竜巻を放つ「氷雪の大竜巻」を七つ同時に展開し、武装闘気と覇王の霸気を纏わせた状態で氷に閉ざされた白夜に向けて放つ。
『聖法清浄聖域! 燦く星の流星群!!』
絶体絶命と思われた白夜だが、芯まで凍結させられていなかった白夜は武装闘気を衝撃波に変化させて氷を粉砕して脱出してから神速闘気を纏った状態で俊身を使い、竜巻の間を擦り抜けてスティーリアから距離を取ると光属性系統の魔法の効果を二倍、それ以外の属性の効果を二分の一、闇系統の属性の効果を四分の一にする効果がある光属性魔法を発動し、白夜側も自分の有利なバトルフィールドを整えていく。
『あらあら困ったわね。これ以上聖属性の力が強化されたらわたくしの勝ち目がなくなるじゃない。……相殺させてもらうわ! 闇法邪悪黒域! 氷寒冷結黒域!』
白夜が有利なフィールドが展開されたことに少しだけ危機感を抱いたスティーリアは闇属性系統の魔法の効果を二倍、それ以外の属性の効果を二分の一、光系統の属性の効果を四分の一にする効果がある闇属性魔法と氷属性系統の魔法の効果を四倍、火系統の属性の効果を八分の一にする効果がある氷属性魔法をそれぞれ展開し、闇属性と光属性と氷属性の弱体化と強化を相殺し、フィールド系魔法が発動する以前の状況へと戻す。
『ダークマター・アイシクル!』
そして、闇属性の弱体化が解除されたタイミングで氷属性を複合させた「フェイク魔法」に分類される闇属性魔法を発動し、白夜の足元から暗黒物質を噴き上がらせた。
白夜にとって相性が悪い闇属性の魔法だが、更に内部に膨大な氷属性の魔力を込めることで命中と同時にその部位を凍らせるという強力な追加効果が備わっている。
求道の霸気を強化することで暗黒物質によるダメージを耐え切った白夜だが、強烈な凍結効果によって氷に閉ざされてしまった。
勿論、その氷も武装闘気を流し込むことで内部から打ち砕くことは可能だが、スティーリアは生じた隙を二度も逃すことはない。
『《リーリエ様に捧げる殺戮者の一太刀》!!』
《親愛》の力によってスティーリアの圓への燃え盛る愛が宿って強化された「殺戮者の一太刀」が氷に閉ざされた白夜に放たれる。
本家の「殺戮者の一太刀」を遥かに超える威力を誇る最強の一撃は生半可な攻撃を通さない武装闘気も求道の霸気も打ち砕いてしまうほどの力を有している。求道神の領域まで強化すれば僅かの時間ならば耐え切れるかもしれないが、それでも稼げるほんの僅かな時間だ。
『まだ負けてはいませんわ! ――光よ!』
『燦く星、宙より堕ちる!? 今更その程度の魔法でわたくしが討ち取れるとでも!! わたくしの剣が貴女を打ち砕く方が早いわ!!』
武装闘気を流し込んで氷を打ち砕いた白夜は小さな光球を上空へと飛ばす。
光球は無数の光条を放つ……が、込められていた魔力が僅かだったからか、「燦く星、宙より堕ちる」よりも規模は小さく、とてもスティーリアを倒せそうにはない。
『――ッ! モード聖氷竜!! 聖氷竜の咆哮ッ!!! これで果てなさいィ!!』
「殺戮者の一太刀」を放った剣に覇道神レベルまで高めた覇王の霸気を込め、白夜の求道神レベルまで強化された防御を打ち砕きに掛かると同時に聖人としての力を解放して聖属性の魔力を込めた渾身の氷のブレスを放ち、ダメ押しに掛かる。
ピキリピキリと音を立て、白夜の防御が砕け始めたことを理解し、勝利を確信してスティーリアが僅かに笑みを浮かべた瞬間、何かがスティーリアの胸を貫いた。
『どうやら、勝負は私の勝ちのようですね。……まあ、本当にギリギリでしたが。神罰の光乱』
普段のスティーリアであれば貫かれることなどあり得ないただの光。しかし、スティーリアは白夜を倒すために防御に回す力を全て攻撃に割いてしまっていた。
白夜が切り札として放ったのはオリジナル光属性暗殺魔法――その内容は光の魔力を収束・屈折させることで操るという内容自体はシンプルなものだ。
光源を生成し、光源から放たれた光に干渉することで収束と反射を行い、より威力を増した光条で敵の急所を一撃で貫くことで確実に絶命に追い込む。
発動の際にほぼ音がせず、認識している範囲であれば遠隔でも発動が可能なため上手く角度を調整して発動すれば意識外から飛んでくる不可避の即死攻撃と化す。流石に見気の未来視で攻撃を察知されてしまえば回避されるが、スティーリアは攻撃に集中していたため、見気を使った回避が行えず、無防備な状況で即死級の一撃を浴びることになってしまったのである。
スティーリアがポリゴン化して消滅する直前、白夜を守る求道の霸気の防御が消滅し、強化された「殺戮者の一太刀」を浴びた白夜もまた無数のポリゴンと化して消滅する。
両者共に戦闘不能に陥ったが、僅差でスティーリアに先にトドメを刺した白夜が勝利を勝ち取り、第一回戦第四試合の勝者は白夜に決まった。
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