Act.9-245 開幕! ULTIMATE EIGHT!! 第一回戦第三試合 scene.1
<三人称全知視点>
優勝候補の一人であるラインヴェルドの敗退という衝撃的な展開を見せた君臨する八人の戦争。
その第一回戦第三試合で激闘するオルパタータダとディランがプリムヴェールと入れ替わるように戦場に入った。
「まさか、あのラインヴェルドが負けちまうとはなぁ」
「本当にびっくりだよなぁ。ラインヴェルド陛下もオルパタータダ陛下も化け物級の強さだ。……まあ、それだけ成長しているってことだろ? 俺達も負けてられないな! オルパタータダ陛下」
『闇を斬り裂く真魔剣』を構えたディランと、『国王陛下の月影双剣』を構えたオルパタータダが同時に地を蹴って加速――互いに武装闘気と覇王の霸気を込め、互いに斬撃を放ち合う。
互いに剣が触れ合わない拮抗状態に陥り、黒い稲妻が衝撃波と共に迸る。
「魂魄の霸気――《影の世界》!! 《影の錐塔》、からの《影の翼》! ――《影撃部隊》! 後は任せたぜ!!」
《影の世界》を発動して、影の中へと落下していくディラン。
後を追い、影の中に突入しようとしたオルパタータダを阻むようにオルパタータダの影が鋭い影の槍と化して一斉に牙を剥く。
流石に武装闘気を纏っていないので全身に武装闘気を纏わせればダメージを受けないが、守りに転じたことでオルパタータダはディランを追い影の中に突入する機会を逸した。
影の内部で漆黒の翼を生やし、展開した《影の世界》を飛び回りつつ、ディランは影の内部からオルパタータダの姿を模した《影撃部隊》を嗾ける。
一体一体が武装闘気によって全身を強化済み。
流石にオルパタータダの魔法まではコピーできないが、長年オルパタータダと剣を交えてきたファントの記憶を持つディランはオルパタータダの剣技は全て《影撃部隊》に模倣させているため、純粋な剣技という一点だけを見ればオルパタータダと互角の力を有している。
そんなオルパタータダの影が十体、二十体、と影の中からどんどん飛び出して数を増やしていく。
このまま増えていけばオルパタータダも剣技だけでは捌き切れない状況に瞬く間になってしまう。
「やってくれるな! 結晶騎士軍! 武装闘気によって黒く染まれッ! お前ら、俺の影達の相手は任せたぜ!!」
オリジナル結晶魔法で無数の結晶の騎士を創り上げたオルパタータダはその騎士達に武装闘気を纏わせて硬化させ、オルパタータダを模した影達に嗾けると、自らは《影撃部隊》を外に送り込むために開いている影の入り口に飛び込んで《影の世界》に突入する。
「もう来やがったか! 【積乱雲】!!」
「落雷を発生させる黒い嵐の雲か。んなもん吹き飛ばせば無効化できる! 暴風爆飛砲!」
落雷を発生させる黒い嵐の雲をスキルを発動して生み出したディランだが、黒い嵐の雲が完全に発達する前にオルパタータダが命中と同時に暴風を巻き起こす風の弾丸を放つ風属性魔法を発動し、落雷による攻撃は失敗に終わる。
「あんまりいい状況じゃねぇな! とりあえず、一時撤退だ! 魂魄の霸気《両影》! 《白影の影撃部隊》! 《白影の槍衾》!」
「ちっ、何を考えていやがる!! 逃げの手ばかり打ちやがって! こうなったら追いかけて直接対決に追い込んでやる! 結晶騎士軍!」
無数の白い影の槍を武装闘気を全身に纏って無効化し、オルパタータダを模した白影達に武装闘気を纏わせた結晶の騎士達を嗾ける。
ディランの《両影》はその名の通り二つの影を自在に操る技だ。《影の世界》の内部では《白影》を、《白影の世界》の中では《影》を使って攻撃できるが、《影の世界》と《白影の世界》を使って更に影の深層に逃げ込むといってもどこかで限界が来る筈である。
それに逃げたところで勝敗が決する訳ではない。ディランが勝つためにはどこかで仕掛けてくる筈だ。
しかし、戦闘開始からずっとディランは逃げの手を打ち続けている。真っ向勝負を好むディランらしからぬ手に若干の苛立ちを覚えつつ、同時にオルパタータダはまるで自分が徐々に術中に落ちつつあるような嫌な予感を抱いていた。
「……っ、それが狙いだったのか!!」
《影の世界》と《白影の世界》が交互に展開され、オルパタータダはそれぞれの世界で《影の影撃部隊》と《白影の影撃部隊》と戦いながら次の世界へと進んでいった。
謎の追いかけっこが終わったのは通算で七つ目の《白影の世界》に突入した時、その世界には千を超える数のディランの影達が待ち構えていた。
「この影は特別性で、《影撃部隊》とは違い《影》に変化した俺と入れ替えることができる。《影化》と《影分身》のコンボ、オルパタータダ陛下、止められるものなら止めてみやがれ!! 覇者鳴神! 《影軀逆転》!!」
「おいおい嘘だろ! そのために準備を整えていやがったのか!?」
《影分身》はディランと全く同じ力を持つ影を生み出す技である。それ故に《影撃部隊》のように一度に複数のディランの分身を作ることができなかった。
《影の世界》と《白影の世界》を交互に展開するという遅延を仕掛けたのは《影分身》を量産するため。
ディランが《影分身》を作り、ディランと《影分身》が再び《影分身》を作る。二人、四人、八人……と数を増やしていき、準備が整ったタイミングで一気に攻撃に打って出たのだ。
武装闘気と覇王の霸気を纏わせた状態で本来実体の動きに従って動く影という概念そのものに干渉し、影を動かすことで実体を動かすことで、身体に掛けられたリミッター関係無しの超高速攻撃を放つディランの最強の一太刀を放つ。
その圓式を超える速度の飛斬撃はオルパタータダの力を持ってしても耐え切ることは不可能。
「ならば、やられる前にやるしかない! これだけはやりたくなかったんだけどな!! 月影の法則」
オルパタータダはブライトネス王家に伝わる口伝戦略級魔法「審判の王権」と対になるフォルトナ王家に伝わる口伝戦略級魔法を発動し、自分が「敵」と判断した者を不可避の聖なる光で攻撃した。
その「敵」は勿論、ディランの本体を含む《影分身》達全てである。
オルパタータダの持つ魔力を全てを差し出した一撃の威力は凄まじくオルパタータダに斬撃を放とうとしていたディラン達は全て回避不能の光に包まれて消滅した。
そう、消滅した……筈だった。
「はぁ……はぁ……どうなってやがる! 俺の、勝ち……だろう!!」
「いや、残念だったな。オルパタータダ、お前の親友である俺が『月影の法則』の存在を忘れている? そんな訳ねぇだろ?」
『闇を斬り裂く真魔剣』に大量の武装闘気と覇王の霸気を纏わせたディランが《影の翼》で俊身の技術を応用した怒涛の羽搏きを行い、あっという間にオルパタータダとの距離を詰めて切り掛かってくる。
オルパタータダも『国王陛下の月影双剣』に膨大な武装闘気と覇王の霸気を纏わせてこれに応戦し、再び覇王の霸気の衝突で天を割るほどの衝撃波が黒稲妻と共に迸った。
「ディラン、お前何をしやがった?」
「それじゃあネタバラシをしようか? オルパタータダ、『月影の法則』の発動条件を言えるか?」
「発動にはフォルトナ王家の血を色濃く受け継いでいる必要があり、全ての魔力を消費する。それだけの代償を払うだけはある魔法だ。自分が『敵』と判断した者を不可避の聖なる光で攻撃する。その攻撃の範囲は認識している全て……つまり、俺に認識されていたディラン、お前はさっきの攻撃で消されていた筈だ!」
「そう、『認識』ってのがキーワードだ。この『認識』ってのはどこにいるか分からない誰かではなく、この場所にいる誰かを確実に指定しなければならない。あやふやなキーワードで魔法に巻き込んだ相手を消滅させられるような便利魔法じゃないだろう?」
「……まあ、そうだな。おい、まさか!! そういうことか!! 本物はいなかったってことかよ!!」
「そういうことだぜ。俺は魂魄の霸気《影同化》で《白影の世界》そのものと同化していた。オルパタータダ、お前が攻撃したのは全て俺の《影分身》だ。俺は最初から『月影の法則』を使わせるためだけにあの場を整えたんだよ。流石に《影軀逆転》だけでは決定打にならないことは目に見えていたしなぁ。おじさんは元漆黒騎士団の参謀だぜ、何も考えていない訳じゃねぇよ!」
「で、どうするんだ? 俺の覇王の霸気を真正面から打ち破る気かよ? 魔法が無くたって俺は強いぞ!」
「ああ、知っているぜ! だから、剣なんて最初から交える気はねぇ!」
低く構えを取って剣を背に担ぎ、思いっきり剣を薙ぎ払う。
「覇王の霸気最終領域・覇王神! 一瞬で終わらせてやる! 《影軀逆転》!!」
「覇王の霸気最終領域・覇王神! ――ッ! 間に合わねぇ!!」
オルパタータダもディランに僅かに遅れて覇王の霸気最終領域・覇王神の領域まで覇王の霸気を高めるが、ディランの神速の斬撃はオルパタータダが斬撃を放って迎え撃つ前にオルパタータダの胴に命中し、オルパタータダの上半身と下半身の繋がりを断ち切る。
無数のポリゴンが切り口から溢れ出し、瞬く間にオルパタータダは無数のポリゴンと化して消滅した。
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