Act.9-244 開幕! ULTIMATE EIGHT!! 第一回戦第二試合 scene.2
<三人称全知視点>
「ムーンライト・ファントム!!」
月の魔力と武装闘気で実体のある自身の分身を創り出した後、自身の刀身に月属性の魔力を宿す付与術式を発動し、円を描いて中心を突く形で突撃し、巨体化させた複数の刀身でラインヴェルドに突き技を放ってきたプリムヴェール。
「晩鐘の断光壁! ジュワイユーズ流聖剣術 聖ノ型 聖纏魔祓! ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連!」
流石に正面からプリムヴェールの巨大化した刀身全てを相手するのは厳しいと判断したラインヴェルドはマグノーリエのオリジナル光属性魔法「穿光条の流星群」を基にしつつヴィクトスのオリジナル魔法「月銀の断光壁」の要素を加え作り出したローザのオリジナル魔法を一瞬だけ発動して光の分布を強制的に偏らせることで光が存在する座標を自身の前に設定し、いかなるものも消滅させる壁でプリムヴェールの細剣の刀身を消滅させてから聖属性の魔力を纏わせた剣でジュワイユーズ流聖剣術の大技を放ち、プリムヴェールを撃破しようと考えたようだ。
「ダブルディスターバー!」
「おいおい! 刀身を巨大化させた状態でダブルディスターバーって発動できるのかよ!?」
しかし、その目論見は「ムーンライト・ファントム」を発動した状態で特殊な波長の月の魔力で気の流れやエネルギーなどを掻き乱して暴発させながら、強化を完全に無効化する「ダブルディスターバー」を「晩鐘の断光壁」に打ち込まれたことで打ち砕かれてしまう。
プリムヴェールは細剣に膨大な求道の霸気を収束させることで、「晩鐘の断光壁」により細剣の鋒が消滅する前に「晩鐘の断光壁」を構成する光系統の魔力を暴発させることに成功、そのまま全身に武装闘気と求道の霸気を纏った状態で暴発によって生じた光の爆発を突っ切ってラインヴェルドの「ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連」に真っ向勝負を挑んだのである。
「――ッ! このまま巨大化した刀身を俺の斬撃にぶつけられたら纏っている聖属性の魔力も『ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連』のために乗せた魔力も……いや、それだけじゃねぇ! 武装闘気も覇王の霸気も全部消滅させられてこっちがダメージを負っちまう! それに剣に当たらなければあの巨大化な刀身が俺に直撃ルートじゃねぇか! 回復も封じられているのにあんなの食らったら負けちまうぜ! こうなれば奥の手だ! 審判の王権! 《蒼穹の門》!!」
ラインヴェルドはプリムヴェールと真っ向から剣を交えるのを《蒼穹の門》を発動して回避し、置き土産に残した火、水、風、土の魔力を強引に重ね合わせることで生み出した虚数エネルギーを広範囲に放つブライトネス王家に伝わる口伝戦略級魔法でプリムヴェールを仕留めに掛かる。
一気に窮地に立たされたプリムヴェールだが、自身の捉えた範囲に斬撃を含めあらゆる物体を瞬時に転移させる魂魄の霸気《転送》を使って逆に転移したラインヴェルドの元へ「審判の王権」を転送、ラインヴェルドをラインヴェルド自身の魔法で窮地に立たせるがこちらも《蒼穹の門》をギリギリのタイミングで使って窮地を逃れた。
◆
ラインヴェルドとプリムヴェールは互いに決定打を欠いて膠着状態に陥っていた。
ラインヴェルドも本当は全力でプリムヴェールに近距離戦闘を挑みたいが、あらゆる強化を打ち消す「ダブルディスターバー」がある以上、迂闊に近づけば返り討ちに遭うのは目に見えている。
そのため、剣を交えるのを極力回避して危機に陥る度に《蒼穹の門》を使って逃げの手を打つヒットアンドアウェイを繰り返していた。「ガンガン行こうぜ!」がデフォルトのラインヴェルドには珍しい消極的に姿勢である。
ラインヴェルドにそれだけの負荷を与えているプリムヴェールの方だが、こちらも《蒼穹の門》の存在が邪魔をしてなかなか攻撃をラインヴェルドに命中させることができない。
その後もラインヴェルドは「終焉齎す断魔の紅炎劒」、「終焉齎す断魔の神聖劒」、「焔王の破壊狙連撃」、「審判の王権」、「魂霊崩壊」、「三位魂霊崩壊」、「暁の流星群」、「燦く星、宙より堕ちる」、「燦く星の流星群」を、プリムヴェールは「ムーンライト・フレア」、 「ルナティック・フレア」、「クレセント・イロード」、「エナジー・イロード」、「ブラックリリィ・スパイラル」、「ホワイトリリィ・スパイラル」、「ファンタズマゴリア」、「ルナティック・バースト」、「ルナティックストーム」、「ルナティック・バーストストリーム」、「ムーンフォースピラー・コンセクティブ」、「ムーンフォース・メテオライン」、「ムーンフォース・コンプレッション」、「ダークマター・フォージ」、「ダークマター・カンタフェイト」、「ダークマター・ファブリケーション」を互いに放ち合うも決定打には繋がらず、このまま互いに相手の魔力切れを狙う更なる長期戦に突入するかと思われたが……。
「よし、もう逃げるのはやめだ!」
「ん? もしや『ダブルディスターバー』の攻略方法を思いついたのか?」
「ああ、そうだぜ。求道の霸気っていうのは極めれば一つの宇宙そのものの強度になる。あらゆるものからの干渉を阻害するこの力は例え『ダブルディスターバー』であっても阻害し切れない」
「……まあ、理論上はそうだな。求道の霸気は他の強化に比べて阻害しにくい感覚はある」
「そして、覇王の霸気。その突き詰めた先にあるのは自らの法則で上書きし自分の望むままに変化させる力だ。覇王の霸気を極めれば『ダブルディスターバー』によって強化が消されるという不都合な真実も塗り替えることができる」
「……理論上はそうだな。だが、どちらも多大な霸気を消費する。ただ纏うならともかく求道と覇道の本来の性質を引き出すためにはそれこそ莫大な霸気を消費する覚悟が必要になるぞ。あのアネモネ閣下ですら一戦するだけで限界が来る。ラインヴェルド陛下であっても長期間の維持は不可能だろう?」
「ああ、承知しているぜ! でもほんの僅かな時間で充分だ。俺はその時間でお前を叩き切って先に進めばいいだけだからな!」
「霸気や闘気が使えなくなるのは承知の上、全てを賭けた一撃か! ならば、私も相応の覚悟をしなければならないな」
『国王陛下の燦煌双剣』を構え直し、ラインヴェルドは求道の霸気を求道神の領域まで引き上げた。
『国王陛下の燦煌双剣』を持つラインヴェルド自身の強度を単一宇宙のレベルまで引き上げた後、世界を自らの願いで塗りつぶす覇王神の領域に達した覇王の霸気を双剣に纏わせ、ラインヴェルドは《蒼穹の門》を発動――プリムヴェールの目の前に転移する。
「王室剣技!」
放つのはブライトネス王国初代国王テオノア=ブライトネスが完成させた剣技――テオノアが築き上げ、歴代のブライトネス王国国王の間で連綿と継承されてきた洗練された王家の剣がプリムヴェールへと放たれる。
「この時を待っていた! 求道の霸気最終領域・求道神! 覇王の霸気最終領域・覇王神! 我が師アネモネ閣下の究極の剣でラインヴェルド陛下、貴方を倒して先に行く!! 圓式独創秘剣術 一ノ型 圓-Madoka-!!」
「くそっ! 『ダブルディスターバー』を警戒し過ぎちまった! プリムヴェールにはあの剣技があるじゃねぇか!!」
膨大な黒い稲妻が戦場を駆け巡り、衝撃波が吹き荒れる。
触れ合うことなく拮抗するかと思われた二人の剣はラインヴェルドの覇王の霸気の方が優ったのか斬撃を受け止める側に回ったプリムヴェールだったが、この瞬間、負けを悟ったのはラインヴェルドの方だった。
「……っ、負けたぜ。プリムヴェール、強くなったな。だが、次のシーズンは必ず俺が頂点に立ってみせるぜ!!」
プリムヴェールの隣に親友の幻想を見たラインヴェルドは、プリムヴェールの成長を実感しながら自身の剣の重みと衝撃を乗せた親友の名を冠するカウンター技をその身に受け、無数のポリゴンと化して消滅した。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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