Act.9-236 【同盟大公】防衛戦〜ラインヴェルドvs琉璃〜 scene.3
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
ラインヴェルドと琉璃の戦いもまだまだ序章。
お互いまだまだ様子見をしているようだけど、そろそろ本格的にバトルが動き出してもいい頃合いだよねぇ?
「魂魄の霸気《転移》!!」
『水雨の領域』
ラインヴェルドは魂魄の霸気を使って無数のナイフを作り出してバトルフィールドの各所にばら撒く。
ラインヴェルドの転移にかかる時間は一瞬――連続で使用し続ける「《蒼穹の門・飛閃神威》」を上手く使えば琉璃の高い水準に達している見気の未来視も突破可能なんじゃないかな?
一方、琉璃は水属性、木属性、雷属性の魔法の効果を二倍、それ以外の属性の効果を二分の一、火属性の効果を四分の一にする効果がある水の戦場を作り上げるオリジナルの水属性魔法を発動してラインヴェルドに全力で挑むための準備を整えていく。
『竜舞!』
「ちっ、早速一回分積まれたか!! 終焉齎す断魔の神聖劒! 燦く星の流星群!」
猛烈な聖なる光が凝縮させ、一つの天体のように変化させ、そこから収束した命中先に有機物・無機物、硬度、可塑性、耐熱性、弾力性を問わず対象物に光が通り抜けられる穴を穿つ光条を放射する……つまり、当たれば武装闘気を纏っていようと問答無用で突破してしまう聖属性魔法を放つラインヴェルドだけど、見気の未来視と紙躱を駆使して回避する琉璃に攻撃は当たらない。
とはいえ、「燦く星の流星群」で琉璃を撃破できるとはラインヴェルドも思っていなかったようで、ブライトネス王家に伝わる王族口伝魔法で天空まで伸びるほどの巨大な焔の剣を振り下ろす「終焉齎す断魔の紅炎劒」を聖属性に置き換えた「終焉齎す断魔の神聖劒」を発動し、膨大な覇王の霸気を纏わせた状態で「《蒼穹の門・飛閃神威》」を使って撹乱しつつ上手く琉璃の背後を取って剣を振り下ろした。
絶対絶命の状況でも琉璃は冷静さを保っていた。
水の精霊としての琉璃が使用できる技の中で最大攻撃力を誇る精霊術法「大海竜の大狂奏曲」で創り出した無数の水の球を武装闘気で硬化して背後へと放ち、ラインヴェルドの剣を受け止める一瞬の隙を作り出すと、瞬時に背後を向き直って「水葬竜の怒號」を放った。
「おおっと、やべぇ!! 《蒼穹の門》!」
あの状況、琉璃とラインヴェルドの距離は近く、例え神速闘気を纏った状態で俊身を使っても到底躱すことができなかった。光速移動が使えるなら話は別だけど、あの状況なら回避の選択肢など一番に切り捨てて攻撃の威力をいかに軽減するかに全力を注ぐのが定石だった。
武装闘気と覇王の霸気を纏えば、武装闘気も覇王の霸気も神光闘気も込められていない「水葬竜の怒號」なら辛うじて耐えられる。そういう計算をするべき局面だったんだけど、ラインヴェルドには瞬間転移の手段が存在していたから琉璃の攻撃を回避することが可能だった。
時空魔法では発動するまでに若干の時間が必要で、琉璃のブレスを回避することは難しかった筈だ。
これがラインヴェルドの恐ろしいところだねぇ。――もし、逃げに徹されるような事態になってしまえば捕らえることはなかなか難しい。
とはいえ、ラインヴェルドは好戦的でああいう逃げの戦法はなかなか取らない。
流石にこのまま逃げ続けるということもないだろうけど、今後琉璃が《蒼穹の門》による瞬間転移にも対策を考える必要が出てきたのは確かだ。
互いに決定打を欠いたまま戦いは続いていく。
琉璃の切り札である「崩滅雷龍咆哮三重連撃」も当たらなければ意味がない。こうしたブレス系の技は一度封印し、「砕城覇槍」などの比較的簡単に放てる遠当ての技や八技の「刃躰」を応用した『黒扇・霈』による飛ぶ斬撃を放つもやはりラインヴェルドには当たらず。
一方、ラインヴェルドの方もかなり攻めあぐねている状況だった。
「ジュワイユーズ流聖剣術 聖ノ型 聖纏魔祓」を使って剣に聖属性の魔力を乗せ、「王室剣技」と八技の「刃躰」を組み合わせた飛ぶ斬撃を放つも、やはりこちらも琉璃には当たらず。
この拮抗する間に琉璃は「竜舞」を最大まで積んでしまい、ラインヴェルドの恐れていた最悪の事態に直面していた。
「……あまりラインヴェルドらしくないわね」
「そうですね。琉璃様もですが、互いに臆病になっているように見えます。一撃でも浴びれば一気に形勢が傾きますから、膠着状態に陥るのも納得できますが……」
「いえ、そろそろ戦いが動く筈ですよ。そろそろラインヴェルド陛下が痺れを切らす頃でしょうから」
ボクの読みは的中。ラインヴェルドが「琉璃、そろそろ決着をつけようぜ!」と宣言し、「《蒼穹の門》」を使って琉璃の目の前に転移する。
「ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連」
『――ッ! させませんよ! 瞬間大氷結!!』
ここで琉璃は切り札を切ってきた。
切り札といっても技の火力そのものは琉璃の「水葬竜の咆哮」、「水葬竜の怒號」、「水葬竜の輪唱咆吼」、「崩滅雷龍咆哮」、「崩滅雷龍咆哮三重連撃」といった大技には到底及ばない。
しかし、琉璃はここまで氷属性の魔法を一度も使うことは無かった。
その力は氷の古代竜には到底及ばない……が、チャレンジメダル交換所で交換可能な氷のクリスタルカートリッジが砕け散るほどの膨大な魔力を込めて放たれた氷属性魔法はラインヴェルドに命中し、一瞬にしてラインヴェルドを氷漬けにしてしまった。
「お、お父様!?」
プリムラは完全に氷に閉ざされてしまったラインヴェルドに衝撃を受けているようだった。涙すら出ないほどの絶望を受け、ラインヴェルドを応援しに来たビアンカ、バルトロメオ、ヴェモンハルト、ルクシア、ヴァン、レインも殺してもしなないようなラインヴェルドが氷に閉ざされてしまったという事実に衝撃を受ける中、ボクはこの瞬間に勝敗が決したことを悟り、「勝負あったようですわね」と言葉を紡いだ。
「……お父様、負けちゃうのかしら?」
『これでトドメです! 崩滅雷龍咆哮三重連撃!!』
勝利を確信した琉璃は膨大は覇王の霸気を込めた「崩滅雷龍咆哮三重連撃」をラインヴェルドに向けて放つ。
「崩滅雷龍咆哮三重連撃」では倒しきれない可能性を考えて火力を上げた……という判断は正しいものではあると思うけど、それを帳消しにするほどの大きなミスを琉璃がしてしまっていることには気づいていないようだ。
施設長に至る実力があったとはいえ、まだまだ琉璃も成長途中だってことだねぇ。
「今回は琉璃の詰めが少し甘かったことに救われた形ですが、次に戦えばどうなるかは分かりませんねぇ」
「……おい、アネモネ。まさか、この状況から兄上が琉璃を撃破できると本気で思っているのか!?」
「えぇ、その通りです、バルトロメオ王弟殿下。……琉璃の氷魔法は火力不足でラインヴェルド陛下の芯まで凍り付いてはいません。そして、その状況なら武装闘気と覇王の霸気を使って強引に氷を打ち破ることができます。いえ、武装闘気だけでも可能なことですわねぇ」
「崩滅雷龍咆哮三重連撃」が命中する直前で氷が砕け散った。
氷から解放された瞬間、ラインヴェルドが使ったのは「《蒼穹の門》」。
素早く琉璃の真横に向かって転移用のナイフを投げ、即座に「《蒼穹の門》」で転移。
一方、琉璃は「崩滅雷龍咆哮三重連撃」を止めてラインヴェルドの攻撃を受け止めようとするも、先程の「崩滅雷龍咆哮三重連撃」でラインヴェルドを仕留められると確信した時の油断が心の隙を生み、対処がワンテンポ遅れた。
そして、その隙をラインヴェルドが逃すことなどあり得ない。
「ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連! それとコイツはオマケだ! 魂霊崩壊」
ラインヴェルドの放った連撃と光の速度で光の奔流が発生し、相手の防御も回避も許すことなく、細胞から魂までを完全消滅させる神聖魔法、そのどちらも琉璃に対処する術はなく、光に包まれた琉璃はポリゴン化する間も無く消滅した。
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