Act.9-233 バトル・アイランドにて〜施設長選定戦 琉璃vsリーリエ〜 scene.1
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
基礎訓練の纏めの戦いはシャルティローサの敗北で幕を閉じた。
指名依頼では琉璃とボクの施設長選定戦は予定には入っていなかったものの、参加した全員が興味を持ってくれたようなのでそのまま全員でバトル・シャトーに向かうことになった。
その道中で『時空魔窮剣』を手渡していないメンバーに『時空魔窮剣』を渡しつつ、武器や魔物達の強化の件をアトラマ、ベンヤミン、ザックス、クレスセンシア、ロウェナ、ヴィルジニー、アーデルトラウト、ルドヴィカに提案したら全員乗り気のようで、あっという間に強化日の予定が決まってしまった。
ちなみに、アニエスとリュビアに関してはそれ以前から彼女の愛銃を強化する約束をしている。フリオ達四人とジギタリスは武器を使わないタイプで追加装備の希望もないそうだから、この五人に関しては特に武器の強化はないねぇ。
そうそう、今回の件でクレスセンシアがアニエス、リュビア、ジギタリスを勧誘し、この内ジギタリスの『紅の華』入りが決まったようだ。今回の件がなければ絶対にジギタリスが『紅の華』に入ることは無かっただろうし、良い出会いの機会に今回の件はなったみたいだねぇ。
「よっ、圓! 遅かったな!」
バトル・シャトーに到着すると、エントランスで真っ先に声を掛けてきたのはラインヴェルドだった。
他にも見覚えのある顔……つまり、時空騎士が大勢集まっている。
いきなりの国家君主の登場にクレスセンシア達は驚き、すぐに跪いたけどラインヴェルドは「今はオフだし、お前らも時空騎士になったんだろ? いずれ刃を交えることもあるだろうし、そんな恭しくするな」とフレンドリーに頭を上げさせた。
「おいおい、親友! そんな睨むなよ! ちゃんと仕事をしてから来ているって!!」
「それが普通なんだよ。……しかし、凄いねぇ、この人数」
「そりゃ、お前の本気を間近で見たいって奴が大勢詰めかけているからな。……といっても危険過ぎて画面越しでしか見れないのが残念だが。……まあ、俺はもっと差し迫った問題のためにこの戦いを見ておく必要があるんだけどなぁ。お前と戦う権利から遠退く可能性があるみたいだからなぁ、お前の今の全力よりもそっちの方が気になっているぜ」
「まあ、今回の戦いをしっかり目に焼き付けて琉璃との戦いに活用しなよ。……でも、負けたところで奪い返せばいいだけのことだ。三月まではまだ時間がある。それじゃあ、ボクはもう行くよ」
ラインヴェルド達とはここで分かれ、ボクはバトル・シャトーの受付からエレベーターに乗り込んで最上階に向かう。
バトル・シャトーのお披露目を兼ねた剣武大会からバトル・シャトーは更に改装を重ねている。
基本的に入れるのはエレベーターで移動可能な無数の小部屋と、かつての最上階にあった大ホール、舞踏室や食堂などがある地下のみ。
しかし、施設長選定戦の時のみに限り解禁されるバトル・シャトー最上層のフロアが存在する。
全面ガラス張りでバトル・アイランドの全てを見下ろせる最高のバトルフィールド――「天空の間」。
そこで繰り広げられるのは施設長選定戦専用のBGM(実は施設長との戦闘でも特別なBGMが流れる仕様になっていて、挑戦者達の闘争心を煽る仕掛けがなされている)が流れる中行われる最高の死闘。
リーリエの姿で「天空の間」に入るとそこには既に職員によってこの場に案内されていた琉璃の姿があった。
「ようこそ、挑戦者様。全ての施設長を撃破した貴方には施設長に至る権利を賭けた最後の戦いに挑んで頂きます。戦いの遊技場バトル・アイランドが贈る本当に本当の最終試練! さあ、持てる力の全てで掛かってきてください!」
◆
<三人称全知視点>
『漆黒魔剣ブラッドリリー』を抜き払ったリーリエと、神話級の扇である『黒扇・霈』を閉じて構えた琉璃。
互いに武装闘気を剣と扇に纏わせ、その上から膨大な覇王の霸気を乗せると地を蹴って加速――互いに振るった剣と扇は決して衝突することなく拮抗し、膨大な衝撃波が戦場に吹き荒れ、漆黒の稲妻が戦場を駆け巡った。
覇王の霸気を極めた者同士の戦いで発生する膨大な覇王の霸気の衝突――しかし、それは互いに挨拶代わりのつもりで放った一撃で生じたものに過ぎない。
生半可な者では二人の放つ圧倒的な霸気に当てられただけで意識を飛ばしかねないほどの衝突を引き起こしてもリーリエと琉璃は涼しい顔である。
「《八百万遍く照らす神軍》!」
『白光聖剣ベラドンナリリー』を抜き払うと同時に光背を背負った巫女の姿に変化するリーリエ。
『水雨の領域』
リーリエが全力を出すための準備を着実に進めていく中、琉璃もオリジナルの水属性魔法を発動してリーリエに全力で挑むための準備を整えていく。
「なるほど、水属性、木属性、雷属性の魔法の効果を二倍、それ以外の属性の効果を二分の一、火属性の効果を四分の一にする効果がある水の戦場を作り上げる魔法か。……琉璃の攻撃はかなり水属性に偏っているからこの魔法一つでかなり有利になるねぇ。そして、ボクの得意な光属性系統や闇属性の魔法を半減されるのもなかなかに痛い。――まあ、でもそれくらいしてくれないとねぇ!!」
琉璃は水の精霊としての琉璃が使用できる技の中で最大攻撃力を誇る精霊術法「大海竜の大狂奏曲」を使用し、無数の水の球を創り出し、内部に大量の覇王の霸気と神光闘気を込めてから一斉に槍状に変化させて次々とリーリエへと放っていく。
しかし、琉璃の見気の未来視と互角かそれ以上の未来視を有するリーリエが《太陽神》の光速移動と未来視を併用して回避行動を取っているため琉璃の攻撃はたったの一撃もリーリエに命中することはない。
「万象無ニ還ス靈劔!」
更に回避しながら一条、二条、三条、四条――無数に伸びる線状の斬撃を琉璃へと放つリーリエ。
浴びれば流石に琉璃の纏う求道の霸気であっても容易く貫通され、瞬く間に消滅してしまう一撃だが、琉璃は未来視と水の精霊の有する流動的な水の身体を併用し、斬撃全てをスレスレのところで回避することに成功する。
「これまであんまり回避されたことがない一撃だけど、やっぱり琉璃には通用しないか。当てるならもっと策を練って逃げ場を奪う必要があるんだろうねぇ。……さて、極技・終焉波動剣! ダークマター!」
イベント職の剣聖が習得する最上級のバフ特技で物理攻撃力とクリティカルを大幅上昇させ、物理攻撃を仕掛ける……と見せかけて暗黒物質を顕現して勢いよく地面から噴き上げるローザがレベル95で習得する闇魔法を発動するリーリエ。
見気の未来視でリーリエの攻撃を読んでいた琉璃は「ダークマター」を躱しつつ「水葬竜の咆哮」を放つが、リーリエに躱されてしまう。
互いに互いの技を当てられないまま一進一退の攻防が続く。
『水葬竜の輪唱咆吼! こうなったら上空から纏めて一斉掃射です! ご主人様、お覚悟を!!』
小さな魔法陣を天井を埋め尽くすように展開し、魔法陣を口代わりにして「水葬竜の咆哮」を放つ。
「マルチプルブラックホール・ジャッジメント」
しかし、琉璃の放った渾身の一撃はリーリエの放った二体以上の対象に同時に「ブラックホール」を発動し、範囲内の物体を同時に消し去る「ブラックホール」系の最上級魔法によって全て消滅させられてしまう。
琉璃は「水葬竜の咆哮」を回避されることを想定していた。その場合は戦場を「水葬竜の咆哮」で生じた水で埋め尽くして更に有利な戦場を作り上げるつもりだったのだが、琉璃のもう一つの狙いも看破していたリーリエは「水葬竜の輪唱咆吼」を完全に消滅させることを選択――琉璃のもう一つの狙いも纏めて潰してしまったのである。
「そろそろ幕引きにしようかな? ――ここからは接近戦を仕掛けさせてもらう。ボクが負けるか、琉璃が負けるか、決着が付くまでそう時間は掛からないだろう! さあ、ラストバトルを始めよう!!」
リーリエは神速闘気を纏い、《太陽神》の光速移動と《血動加速》を組み合わせて最高速度に到達、『白光聖剣ベラドンナリリー』を鞘に戻した上で『漆黒魔剣ブラッドリリー』も鞘に戻し、鞘ごと持って構えて放つのは圓式の剣で最速を誇る「圓式総集秘剣 冥影-Meiei-」。
ただでさえ常人の目どころか一流の暗殺者ですら追えぬほどの圧倒的速度の圓式基礎剣術の剣を更に即席で作り上げた鞘を利用して力を溜めて加速させ、その上複写した《影》の霸気によって影を動かすことで実体を動かす効果を補助として使うことで安定させた神速無比の一撃が《血動加速》と光速移動によって強化され、異次元の領域に到達――流石に琉璃も未来視と紙躱を併用したところで勝てないと判断したのか、武装闘気と求道の霸気、膨大な覇王の霸気を纏わせた剣が琉璃に到達する前に仕留めようと琉璃の放てる最強の技を放つための準備を整えていく。
『竜舞! 滅雷龍咆哮三重連撃!!』
「竜舞」を一回積むだけでリーリエの纏った求道神レベルの求道の霸気と覇王神レベルの覇王の霸気を突破できるか自信は無かった琉璃だが、間近に迫っているリーリエが与えてくれる僅かな猶予では「竜舞」を一回積むのが関の山だ。
贅沢は言ってられないと琉璃は「竜舞」を一回積んだ瞬間に琉璃の放てる最強の一撃である「崩滅雷龍咆哮三重連撃」にありったけの覇王の霸気を注ぎ込んで解き放つ。
「弾力空気! 空の穴」
リーリエすら冷や汗を流すほど絶体絶命の状況がそこにはあった。
しかし、絶体絶命に置かれてもリーリエの光速まで加速された思考は瞬時に最良の一手を導く。
風魔法に弾力を持たせることであらゆるものを触れた瞬間に勢いよく弾き飛ばすことができる「弾力空気」を発動し、琉璃の攻撃範囲から逃れるという手である。
しかし、それでは琉璃の背後に回り込めない可能性が存在していた。そこで、リーリエは「弾力空気」を発動して横へと飛ばされ、飛ばされた先と琉璃の背後から横に移動した地点に「空の穴」を設置し、飛ばされながら琉璃の背後に移動し、《血動加速》と圓式の斬撃を合わせた「圓式高速斬り」、《太陽神》の光速移動と圓式の斬撃を組み合わせた「圓式超光速斬り」――この二つを掛け合わせた圓式の極地――「圓式極速斬」の状態で放つ圓の最速の居合を琉璃に浴びせるという策を思いつき、実行したのである。
完璧なタイミングで放たれた圓の最速の一撃は琉璃の見気だけでなく、圓自身の見気ですら捉えられないほどの速度で琉璃を両断し、琉璃は自らが背後から斬られたこと自覚することすらできぬまま無数のポリゴンと化して消滅した。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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