Act.9-232 バトル・アイランドにて〜時空騎士適性試験と新人強化基本訓練〜 scene.5
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
クレスセンシアにロウェナとルドヴィカの意識が集中しているうちに、魔法の暴発でダメージを負ったヴィルジニーに武装闘気と覇王の霸気を纏わせた右の太刀で圓式の斬撃を浴びせて撃破する。
「神毒砲!」
ジギタリスの放った「神毒」の球体を見気と紙躱の組み合わせで回避しつつ、襲い掛かってきた暴食の純魔粘性王のスラリン(ベンヤミンにより武装闘気を纏わせて硬化済み)に斬撃を浴びせる。
流石に配下の魔物達にまで闘気や八技の扱い方を教えていた訳では無かったようで、紙躱を駆使すれば回避できる可能性があった斬撃も躱し切れず、武装闘気を纏わせただけの圓式ですらないただの斬撃で暴食の純魔粘性王の防御を突破してスラリンを両断し、撃破した。
死霊騎士のサザンラスの方も武装闘気を纏わせた剣であっさり撃破。……今後はベンヤミン本人だけでなく配下の魔物達にも今後は闘気や八技を獲得させることがベンヤミンの課題になりそうだねぇ。
バトルフィールドの天井はそこまで高くなく鷲獅子のグリファが活躍できる環境ではない。
魔物使いであるベンヤミンもここからは一人だ。……まあ、ベンヤミンも魔物の力抜きじゃ戦えないということもないだろうし、闘気や八技を習得していない魔物達よりも戦えるんじゃないかな? 魔物達の方は今後に期待だねぇ。
それに、クレスセンシア達の武器と同様、ベンヤミンの魔物達も強化の余地は大いに残している。この試合が終わってからまた後日にはなるけど魔物の強化や武器の強化を提案してみようと思っている。
今後相対する未知の敵達やシャッテンのことを考えると強い味方が多く居た方が心強いからねぇ。
「ロウェナさん、アーデルトラウトさん。私の援護をお願いします」
「……ルドヴィカさん」
「八技や闘気を習得したと言ってもお二人は接近戦が苦手ですわ。少しでも遠距離攻撃を放てる時間を稼げるように私が前に出ます」
「神毒の悪竜……ワタシも、手伝う!」
前衛はルドヴィカとジギタリスが創り出した黄金の劇毒の竜(「極大付与術」で抜き出した「神毒の身体」と同じ姿)、後衛はロウェナ、アーデルトラウト、ジギタリス、そしてこの期に乗じることにした配下の魔物を失ったベンヤミンの四人か。
後衛の四人をそのまま放置しておくのは厄介だけど、先に後衛の四人を撃破するのをルドヴィカが許してくれるとは思えない。
今のところシャルティローサが動き出す気配はないから暫く放置でいいとして、まずはルドヴィカと黄金の劇毒の竜を撃破する必要がありそうだねぇ。
「流星の如き拳」
「強化・物理攻撃上昇」を拳に発動し、更に膨大な光属性の魔力を拳に収束――その上で武装闘気と神光闘気を纏わせた上でルドヴィカは渾身の右ストレートを放った。
しかし、ルドヴィカは前衛と呼ぶべき位置にはいるものの、ボクとの間には武気衝撃も届かない程度の距離がある。至近距離技である「流星の如き拳」をその位置から放って意味があるのかと一瞬思ったけど、どうやらルドヴィカは八技の「刃躰」の技術を応用して拳に込めた光属性の魔力と武装闘気、神光闘気を纏めて放つ、名付けるなら飛ぶ拳撃と呼ぶべきものを撃つつもりでいたらしい。
ぶっつけ本番で放ったルドヴィカの飛ぶ拳撃バージョンの「流星の如き拳」は見事に成功し、拳型の強大なエネルギーがボクに向かって殺到した。
「龍宿魔法! 雷炎竜帝の鐵拳」
まさか、「龍宿魔法」まで解放することになるとはねぇ。
剣を鞘に戻して右手を灼熱の焔と赫雷を纏わせ、武装闘気と覇王の霸気でコーティングし、放たれた「流星の如き拳」に向かって右ストレートを放って「流星の如き拳」を霧散させると、そのままルドヴィカに肉薄して二発目の右ストレートを放った。
咄嗟に武装闘気を全身に纏って防御に徹したルドヴィカだけど、流石に灼熱の焔と赫雷、武装闘気、覇王の霸気を纏った拳相手では焼石に水で身体の半分以上を焼失し、残る部分もそれほど掛からずに無数のポリゴンと化して消滅した。
「龍宿魔法! ――超越する絶対零度!」
黄金の劇毒の竜も一度撃破した経験があるから対処方法も分かっている。
「龍宿魔法」の属性を氷に変更して、スティーリアの魔力をその身に宿し、ダイアモンドダストを媒介に氷点下二百七十三度を超えた物理限界の先にある極寒の氷点下五百度の極寒で敵を瞬時に凍結させる「凍結する大気」の強化版で黄金の劇毒の竜を凍結させて無力化。
「槍焔星群」
降り注ぐ無数の炎の槍を躱しながらジギタリスに肉薄し、すれ違いざまに圓式の斬撃を浴びせてジギタリスを撃破する。
ジギタリスの毒は強力無比だからねぇ。今の時点で「神毒の悪竜」を超える技はない筈だし、後衛四人の中では最初に落としておきたかったから大技を撃ち終えたタイミングで撃破させてもらったよ。
「アクセラレーション・スパーク! アクセラレーション・ソニック! アクセラレーション・フラッシュ! アクセラレーション・ライトニング! アクセラレーション・ゴー・ビヨンド! 疾風怒刀」
残る三人は神速闘気を纏った上で次々とダメージを負う代わりに速度を上昇させる魔法を発動し、トップスピードに達したところで武器を短刀の二刀流に持ち替え、疾風怒濤の三連辻斬りで撃破し、いよいよ残るはシャルティローサただ一人。
先程の圓式を使わない「疾風怒刀」ならシャルティローサは恐らく反撃できただろう。それくらい他のメンバーとの間に圧倒的な戦力差がある。
しかし、シャルティローサの食べた「獣化の天恵(モデル:天狐)」は変身能力がメインで残る能力は妖術と獣化の天恵全般に共通する身体強化の二つのみ。……流石に変身した相手の能力までコピーできるなら反則だけど、能力は諜報に特化していて実単体の戦闘に関してはリコリスの持つ青龍刀「偃月蒼雲」が食べた「泳魚の天恵(モデル:青龍)」に大きく劣る。
だけど、それ以外の能力を全て合算すればビオラ商会合同会社警備部門警備企画課諜報工作局、諜報部隊フルール・ド・アンブラルのサブリーダー……つまり、白夜に続く第二位の実力者に相応しい力を持っている。恐らくここから戦いは大きくランクアップしたものになるだろうねぇ。
「聖法清浄聖域! 燦く星の流星群」
どうやら今回のシャルティローサは光系統をメインに据えたパターンで仕掛けてくるつもりらしい。
闇属性魔法「闇法邪悪黒域」と対になるこの光属性魔法には光属性系統の魔法の効果を二倍、それ以外の属性の効果を二分の一、闇系統の属性の効果を四分の一にする効果がある。ちなみに、「闇法邪悪黒域」の効果は光系統と闇系統を入れ替えたものになるねぇ。
白夜の援護を目的の一つとしてシャルティローサが開発し、その後徐々に使用者が増えてきている魔法だけど、特定の属性以外の効果を半減以下にしてしまうことから光系統と闇系統以外の属性を使う人がいる場合は使用されることがほとんどない。シャルティローサも残り一人になったから使用してきたのだろう。
そして、光系統にとって万全の状態から繰り出されるのはアルベルトが開発した猛烈な聖なる光が凝縮させ、一つの天体のように変化させ、そこから収束した光条を放射する光属性魔法。
光条の命中先に有機物・無機物、硬度、可塑性、耐熱性、弾力性を問わず対象物に光が通り抜けられる穴を穿つという厄介な効果を持っているけど、これは恐らく挨拶代わり。回避されるのは想定済みなんだろうねぇ。
「空の穴!」
シャルティローサも長々と試合をするつもりはないらしく、次の一撃に全てを賭けるつもりのようだ。
無数の「空の穴」を展開し、神速闘気と武装闘気、更には求道の霸気をも纏った状態で俊身を使ったシャルティローサは「空の穴」の中へと飛び込む。
念を入れた防御強化は負荷を耐え切るため――「空の穴」から「空の穴」へと転移を繰り返すごとに移動速度を加速されていく。そして、遂には光速を超えた速度に到達、その状態でボクの上空に開いた「空の穴」から飛び出し、速度を乗せた物理攻撃を放つ。
全身に聖属性の魔力を纏わせ、攻撃の際には武装闘気と覇王の霸気を纏わせる。
特にこれといって特定の得物に執着しないシャルティローサの獣化した爪から放たれる「白指」は最早必殺技と呼んでも差し支えはない筈だ。
「そっちがその気ならこっちも全力で受け止めるまで!! 万象無ニ還ス靈劔!!」
武装闘気と覇王の霸気を剣に乗せ、膨大な神聖属性の魔力を纏わせた上で放つのは剣士系四次元職の剣帝の奥義。
一条、二条、三条、四条――無数に伸びた線状の斬撃が対象を貫く同時に一瞬で消滅させる剣属性と消滅属性を持つ攻撃だ。
『Eternal Fairytale On-line』の特技は強力無比とはいえ、勿論突破される可能性もある。
さて、シャルティローサ! 勝負だ!!
膨大な黒い稲妻を迸らせ、バトルフィールドの天井や壁、床に亀裂を生じさせ、轟音を立てながら拮抗する爪と斬撃。
覇王の霸気の衝突特有の触れ合わない拮抗がしばらく続いたが、互いに覇王の霸気の量を少しずつ増やしていくこと五分、拮抗が崩れ始めて無数に伸びた線状の斬撃がシャルティローサに殺到し、シャルティローサを消滅させた。
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