Act.9-230 バトル・アイランドにて〜時空騎士適性試験と新人強化基本訓練〜 scene.3
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
「先制攻撃を仕掛けるんよ! 野獣の魔弾!!」
アトラマ、ベンヤミン、ザックス、クレスセンシア、ロウェナ、ヴィルジニー、アーデルトラウト、ルドヴィカ、ジギタリス、アニエス、リュビア、フリオ、ゼルドマン、シャルル、ジャッロ、シャルティローサ――十六人の中で最初に動いたのはアニエスだった。
放ったのは発射と同時に狼のようなエネルギーを弾丸に宿し、駆けるように対象に噛みつき、狼のようなエネルギーの口から対象の体内に弾丸を貫通させる「野獣の魔弾」――しかし、「冥王の心臓」のアジトでの戦いの時とは異なり弾丸に武装闘気を纏わせているから威力が段違いに向上している。
「天狐妖術・狐火火葬砲」
神速闘気を纏い、見気の未来視と紙躱を駆使して最低限の動きで「野獣の魔弾」を躱すと、「獣化の天恵(モデル:天狐)」の力を発動させて九尾の狐の姿となったシャルティローサが躱した先に的確に狐火の弾丸を放ってくる。
ガトリング砲の如き分厚い炎の弾幕……一秒間に六十発の速度で放たれる狐火の弾丸の嵐を流石に躱し切ることは難しい。
空歩の技術を駆使して上空まで瞬時に移動して狐火の弾丸の嵐が吹き荒れる領域から脱出すると、風魔法に弾力を持たせることであらゆるものを触れた瞬間に勢いよく弾き飛ばす「弾力空気」を駆使してシャルティローサの背後を取る。
「天狐妖術・狐火炎界!」
勿論、ビオラ商会合同会社警備部門警備企画課諜報工作局、諜報部隊フルール・ド・アンブラルのサブリーダーであるシャルティローサにとっては背後を取られることも想定の範囲だろう。背後を取られた瞬間にボクを巻き込む形で狐火の火柱を発生させつつ、俊身と神速闘気を組み合わせた高速移動でボクから距離を取る。
至近距離から接近戦で反撃を仕掛けてもいいのに頑なに距離を取ろうとするのはボク相手に接近戦を選ぶより遠距離戦を選んだ方が勝てる可能性が高いと踏んでいるんだろう。……ボクは遠距離攻撃が苦手なタイプではないことはシャルティローサも承知している筈だけど、魔法などによる遠距離攻撃よりも圓式基礎剣術の方が危険だと考えたんじゃないかな?
シャルティローサは距離を取ると裏武装闘気で剣を創り上げる。
接近戦を仕掛けるべきタイミングで距離を取ったにも拘らず、このタイミングで接近戦の間合いで使われることが多い剣を創り出したとなると……アレを使う気か。
「砕城覇槍!」
「覇槍」は武器を使用する遠当ての技として開発した技で、武装闘気を衝撃波として放つことで吹き飛ばす武気衝撃を応用して衝撃波を槍の形状に打ち出して攻撃する。
大量の武装闘気を使用するもののその威力は圧倒的で一人で放つ廉価版の「砕城覇槍」ですら城一つを破壊するほどの威力が期待できる。
そこに膨大な覇王の霸気を込めているのだからその威力は押して知るべし。
膨大な黒い稲妻を纏い放たれた巨大な槍型の衝撃波はシャルティローサの前方にいたボク目掛けて放たれる。
「お返しするよ。砕城覇槍!」
軽く剣を構え、前方に向かって軽く剣を振った勢いで膨大な黒い稲妻を纏った巨大な槍型の衝撃波をシャルティローサの放った「砕城覇槍」に向けて放つ。
狙い通りシャルティローサの放った「砕城覇槍」を相殺できたことを確認し、ボクはゼルドマンが放った「レイジング・サンダー」を武装闘気を纏わせた掌で受け止めた。
「……やはり、この程度の電撃では倒せぬか。ならば、これならどうじゃ! 巨兵! 雷霆巨掌」
雷と共にゼルドマンの代名詞と言える「巨兵」で巨大化し、掌に雷撃を纏って掌底を放ってくる。
「巨兵」と「雷霆掌」の組み合わせはゼルドマンが使える魔法の中でもかなり強力な技だったのだけど、新たに武装闘気を硬化させる技術を獲得したことでただでさえ強力な技が更に強化されることになった。……それに硬化以外にも警戒しなければならない点がある。
『王の資質』を持つとはいえ、ゼルドマンの霸気は未開放。覇王の霸気による更なる強化の心配はないけど、武装闘気と見気については一定レベルに達している。
つまり、あの掌から武気衝撃や武流爆撃が放たれる可能性がないとは言い切れないということ。……纏う範囲が広い分消耗も激しいとはいえ、あの巨大な掌から衝撃波が打ち出されれば今ボクが纏っているレベルの武装闘気なら簡単に吹き飛ばされる。
武装闘気の練度を上げれば「雷霆巨掌」から武気衝撃や武流爆撃へと繋げるコンボを無傷で耐え切ることもできるけど、そうやって全部耐え切っちゃうのはつまらないし、真正面から打ち破るとしますか。
「援護するぜ! じっちゃん! 氷王の叫吼・収束」
「焔神の激昂!!」
「武装瞬換術・天翼の鎧! 武装硬化・白翼の乱剣!」
フリオ、ジャッロ、シャルルもゼルドマンと同時に三方向から丁度ボクを囲むように攻撃を仕掛け、一気に仕留めるつもりらしい。
「神毒砲! ワタシ、も、援護する!」
「おう、ありがとな!! ジギタリス!」
「……褒められた。ワタシ、嬉しい」
「槍焔星群! 流石に一斉攻撃を浴びせたんですから、ちょっとくらいダメージ負ってください!!」
更にジギタリスが「神毒」の球体に大量の武装闘気を込めて打ち出し、ボクから距離を取った地点で召喚した暴食の純魔粘性王のスラリンと死霊騎士のサザンラスと共に静観を決め込んできたベンヤミンが無数の灼熱の炎の槍を上空から降らせてくる。
戦闘開始早々の様子見ムードは無くなり、同時攻撃で仕留められる可能性に賭ける気になった者達が続々と攻撃を仕掛けてきているのだろう。
とはいえ、まだ動かない者達も多い。乱戦になることで同士討ちが発生する危険を警戒しているんだろうねぇ。
流石にこれだけの攻撃に真面に対処するとなれば強固な防御魔法を発動するか、武装闘気最大出力による生半可の攻撃の無効化、求道の霸気の使用などの手段を講じる必要が出てくる。
でも、真面に対処しないというのであれば、この状況を不意打ちに繋げるてが一つ存在する。……流石に落とせても一人か二人が限界そうではあるけど、ここら辺でもう少し戦いやすくするために多少は人数を絞っておきたいし、ここらで解放しようかな? 魂魄の霸気。
「《蒼穹の門・飛閃神威》!!」
「――ッ!」
ボクが無数のナイフを地面に向かって投擲した瞬間、ナイフから一気に距離を取ったのはシャルティローサただ一人。
……いや、他の面々も一度《蒼穹の門》を目にしているから危険を察知していたようだけど対処が遅れたみたいだねぇ。
双剣の刀身に武装闘気と覇王の霸気を纏わせて一度目の転移――まずはゼルドマンの右横に転移して圓式の斬撃を放ってゼルドマンの首を落とし、ポリゴン化するのを見届けることなく二度目の転移――シャルルの目の前に転移する。
「――ッ! 間に合わん!!」
シャルルは剣を「武装瞬換術」で召喚して真正面からボクを打ち破るつもりだったようだけど、剣を召喚した瞬間にボクの双剣は大気を擦過する際に生じる輝きを大気に残した後だった。
鋭い斬撃がシャルルの胴を鎧諸共両断し、腹部から無数のポリゴンが溢れ出す。
ゼルドマンに続いてシャルルも撃破されたことを見気で確信したフリオとジャッロが憤怒の形相を見せる中、ボクは三度目の転移する。
「オーロ――」
「遅いよ」
「焔神の激昂」を解除してシャルル付近に転移していたボクに向かって「焔神の激昂」を再び放つジャッロの左横に転移し、圓式の斬撃を浴びせて撃破する。
――そして、四度目の転移。
「氷王の鉄拳」
高速転移とはいえ、流石に四回目となれば対処手段を講じるには十分な時間がある。
フリオは「氷王の叫吼・収束」を解除し、極寒の冷気を纏った拳を転移したボク目掛けて放ってきた。
「……これでも勝てねぇのかよ!」
武装闘気を纏った剣でフリオの拳を受け止めると同時に僅かに押し返し、バランスを崩した一瞬の隙を突いて圓式の斬撃を浴びせてフリオを撃破する。
フリオもしっかり武装闘気を拳に宿して硬化させていたけど、ボクの双剣を破壊するどころか武装闘気を突破することすらできなかった。僅かにボクの武装闘気に綻びが生じれば冷気を流し込むこともできたけど、完全に武装闘気を纏わせていた状態じゃ突破はできない。
まあ、フリオ達四人は今日闘気と八技を学んだばかりだから伸び代しかない。
今後どんなふうに成長を遂げるか楽しみだよ。
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