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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-224 臨時班の再始動と三大闇ギルド同盟の崩壊(3) scene.6

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


 残る呪華七皇セブンスター・ラグナロクはジャッロにとって因縁の敵である幻術使いと死霊術師(ネクロマンサー)の二つの顔を持つ髑髏――ワイゼルと改造執刀医の異名を持つ『妖刀ティエルファング』。

 先程まで別々の区画にいた二体は五体の呪華七皇セブンスター・ラグナロクとの戦闘が開始した時点で危機感を持ったのか合流していたらしく、なんと『大魔闘時代最後の騒乱〜闇を照らす不死鳥の光〜』の中でも実現しなかった呪華七皇セブンスター・ラグナロク二人の共闘が実現してしまっていた。


 ……うん、後に呪華七皇セブンスター・ラグナロク全員の呪歌を使える『呪皇』が出てくるからイマイチなインパクトだねぇ。……どうすればいいんだろう?


 ワイゼルが大量の屍人を飲み込んだ状態で『妖刀ティエルファング』で最適化を施したのだろう。

 無数の髑髏と黒い霧によって構成された化け物……そう、完全に化け物と成り果てている。取り込んだ大量の屍人も制御し切れず、言葉を解することもできなくなってしまったみたいだ。……ぶっつけ本番で無茶をするからそんなことになるんだよ。


『グォォォロォォ!』


「なんなんだありゃ……あれが本当にオーロを……俺の親父を操っていた奴なのか?」


「そうだったみたいだけどねぇ……呪華七皇セブンスター・ラグナロク二体掛かりでも取り込んだ屍人を処理できなかったみたいで絶賛暴走状態みたいだよ。ほら、限りなく生きている状態に近づけるってことは、それだけ造反のリスクがあるってことだ。オーロ然りねぇ。……まあ、彼に関しては泳がせていたみたいだけど。そんなのを何体も取り込んだら、そりゃ制御不能に陥るでしょう」


『グォォォロォォ……殺……殺スぅ……グォォォロォォ』


「ああ、でもあんまり放置していると制御取り戻す可能性もあるねぇ。……とりあえず、ジャッロさんと、フリオさん、後はアメジスタさんにお願いしようかな? 汀さんとトーマス先生にはティンダロス=フローズヴィトニル戦をお願いするということで」


「もう既に次の戦いまで視野に入れているのか。……私は構わないが、しかしいいのか? あまり圓殿の出番がないようだが」


「まあ、『六魔修羅道(グラズヘイム)』と『冥王の心臓(デーモン・ハート)』で随分と楽しませてもらったし、個人的には満足かな? それに、これが終わったら別のお楽しみもあるからねぇ」


 ワイゼルの身体を構成する闇の霧の正体は魔元素(エーテリアル)をその身に宿す者――つまり魔法師にとっては猛毒となる反魔元素(アンチ・エーテリアル)で構成されている。そのため、フリオ、シャルル、ジャッロ、ゼルドマンが黒い霧を吸い込めば致命傷は避けられない。


四方聖域結界スクエア・ホーリーフィールド! 黒い霧を聖なる結界の内部に留めたわ!』


 ワイゼルとティエルファングだったもの――ワイゼル=ティエルファングは膨大な黒い霧を放ってきた。

 しかし、アメジスタが展開した聖属性の結界に阻まれ、黒い霧は結界の内部に押し止められる。


四方聖域結界スクエア・ホーリーフィールド! 四方聖域結界スクエア・ホーリーフィールド! これで準備が整ったわ。フリオさん、ジャッロさん。あの結界を貫通するつもりで攻撃の範囲を絞って遠距離攻撃を放ってもらえないかしら?』


「それくらい楽勝だぜ!」


「だが、それだと結界ごと貫通しちまうよな? そうなると、あの黒い霧が結界の外に出てくることになる。あの黒い霧は俺達魔法師にとっては猛毒なんだろう? 本当に大丈夫なのか?」


『そのための三重結界よ。攻撃に合わせて部分的に結界を解除、再生を繰り返すことで二つの結界を維持した状態であの『呪皇』に攻撃を届かせることができるわ』


「なるほど、それで三つの結界か。分かった!」


「よっしゃ!! いくぜ! 氷王の叫吼アイシクル・スクリーム収束(コンバージェンス)!」


「気が早い過ぎだろ! 焔神の激昂(オーロ・イーラ)!!」


『……似た者同士じゃないかしら? アメテュストゥス・ショット!!』


 フリオの収束した冷気のブレス、ジャッロの金色の炎のブレス、そしてアメジスタが放った武装闘気と覇王の霸気を纏った無数のアメジストの結晶が結界に吸い込まれるように殺到する。

 次の瞬間、結界に穴が空いて冷気と炎のブレスと無数のアメジストが一つ目の結界の内部に侵入、二つ目の結界に穴が開くと同時に一つ目の結界の穴が閉まり、三つ目の結界に穴が空いてワイゼル=ティエルファングに三人の攻撃が殺到した。


 ワイゼル=ティエルファングは耐え切れずに三人の攻撃を浴びて消滅。しかし、まだ結界の内部には大量の黒い霧――反魔元素(アンチ・エーテリアル)が残されている。


「それで? アメジスタさん、あの反魔元素(アンチ・エーテリアル)はどうするの?」


『こうするのよ! 三位(トリムールティ・)魂霊崩壊エーテリアス・ディスインティグレーション


 アメジスタは三つの結界を全て飲み込む形で聖なる魔法陣を展開――光の速度で光の奔流が発生し、相手の防御も回避も許すことなく、細胞から魂までを完全消滅させる神聖魔法三つ分の光を氾濫させる。

 ワイゼル=ティエルファングの残滓は圧倒的な消滅の光の中に消えていった。……それ使うなら三重結界を使わずとも纏めて撃破できたんじゃないかな? ……まあ、フリオとジャッロのために活躍のチャンスを作ってあげたことは分かっているけどねぇ。



 ワイゼル=ティエルファングを撃破したボク達はいよいよアジトの最下層に足を踏み入れた。

 破壊された培養槽と散乱したガラス片。『幻界魔狼(マルコシアス)』のアジトとして再利用されている研究施設の中でも最大の部屋に待ち受けていたのは純白の人狼――『幻界魔狼(マルコシアス)』のギルドマスターで『魔狼王』の異名を持つ世界を喰らい尽くす巨神狼ティンダロス=フローズヴィトニルだった。


『ほう。呪華七皇セブンスター・ラグナロクを――創造主様が創りし七体の『呪皇』を全て討ち滅ぼしてここまで辿り着いたか。しかし、我はまだここで死ぬ訳にはいかぬ』


「『呪皇』の使命は君達の創造主を殺すこと……まあ、他の『呪皇』達は創造主の元へと戻ろうとする帰巣本能だと思っているみたいだけどねぇ。違うかい?」


『……なかなか事情を知っているようだな。いかにも、我以外にその事実を知る『呪皇』は少なくとも我が知る限りいない。……しかし、妙な存在だな、貴様は。創造主にどこか似ている気配がある』


「……気のせいじゃない?」


 わざわざティンダロスにこの世界の真実を教えてあげる義理はないしねぇ。……しかし、ボクに『呪皇』達の創造主と同じ気配か。『大魔闘時代最後の騒乱〜闇を照らす不死鳥の光〜』の開発に関わりはしたけど、それで同じ? 似たような? 気配になるかな? ……気のせいだと思うけど。


『流れ着いたこの世界に創造主はいる……しかし、それがどこにいるのかまでは分からない』


「それが『呪皇』の帰巣本能の限界なんだろうねぇ。……『呪皇』とはこの世界を憎んだある人物によって創造された生物兵器だ。その存在理由は、理不尽な世界への報復と、魔法無き世界の創造……そして、不老不死となってしまった創造主自身を殺してもらうため。すぐにでも不老不死を打ち破って愛する人の元に行きたい。しかし、大切な人を奪った理不尽な世界に復讐せずにそのまま消え去る訳にはいかない。彼は……いや、彼女と呼ぶべきなのかな? まあ、ここは彼と統一しておこうか? 彼は憤っていた。君達の世界に……だけど、この世界に対して怒っているかどうかは分からないねぇ。それだけの罪を犯し、世界の敵となった彼を彼女が許すかは別として、彼はこの世界で彼女を甦らせる力を手に入れている筈だから」


「おいおい、圓! さっきから『彼』とか『彼女』とか、一体何の話をしているんだよ! 俺達にも分かるように説明してくれ!!」


「……まあ、本来『幻界魔狼(マルコシアス)』編の終盤で秘密の半分は明かされていたし、残る秘密も含めて全てここで話しておこうか? ――フリオ=プシュークロン」


「な、なんだよ!」


「君が探しているカナ=メトリシアについてボクは重大な秘密を知っている。黙っていて悪かったねぇ……まあ、いずれは知らなければならないけどこのタイミングで話してもあんまり意味はないかなって話さなかったんだよ。残念ながら、ボクも彼女の居場所は知らない……しかし、確実に彼女はこの世界にいる。『不死鳥の尾羽(フェニックス)』の二代目マスター、カナ=メトリシアこそが全ての『呪皇』の生みの親にして、君達の暮らす西大陸の隣にある東大陸唯一にして最大のギルド『紫焔の悪神鳥(フェイニクス)』のギルドマスターだ」


 フリオも、シャルルも、ジャッロも、そしてゼルドマンも衝撃を受けている。まあ、そりゃ特大のネタバレを投下したからねぇ……でも、これでまだ半分なんだよ?


「ただ、カナ=メトリシアが生きているかどうかっていうと微妙なんだよねぇ。いや、この世界で復活している可能性はあるんだけど、まあ、それについてはまた別件だし今回は割愛させてもらうよ。……話は『不死鳥の尾羽(フェニックス)』の結成された頃まで遡る。当時、初代ギルドマスターだったカズワリオ=フィシオロゴスの右腕だったカナは保有していた『無限の魔力』に目をつけられ、当時権勢を誇っていた魔導王国に囚われていた」


「その話は儂も知っている。その魔導王国との戦いで初代ギルドマスターのカズワリオ殿は命を落としたが、カナ殿だけは生き残った。そのカナ殿がカズワリオ殿の意思を継いで二代目マスターに就任したのだ」


「ゼルドマンさん、それこそが間違いなんだよ。……死んだのはカズワリオではなくカナだった。真相はこうだ。実際は『無限の魔力』に目をつけた魔導王国によって酷使されたことで実際のカナは死亡しており、その失敗を忘れないためにカズワリオは特殊な変身魔法でその容姿を受け継いだ。君達が二代目ギルドマスターだと思っているカナこそが初代ギルドマスターのカズワリオだったんだよ。……ゼルドマンさんの記憶でもカナは昔のままの姿をしていた筈だ。何故か年を取っていない……不思議に思わなかったかい? 歳を取らないのはその特殊な変身魔法の副作用。カナの容姿を含め、あらゆるものを受け継ぐ……それはカナ=メトリシアと同一人物になるといっても過言ではない。それほどの大魔法の副作用、それが不老不死だったんだろうねぇ。三代目マスターにその地位を譲った後に行方をくらませたのはこれ以上留まれば不審に思われる可能性が出るから。それに、世界への復讐を果たすために暗躍する際に『不死鳥の尾羽(フェニックス)』の中に留まっていたらやり難かっただろうしねぇ。ちなみに、本来この段階で明かされるのは『呪皇』の生みの親がカナ=メトリシアであることだけ。その先を、その正体がカズワリオ=フィシオロゴスであることを知るのはもっと後のことだ。……だよねぇ、ティンダロス」


『……なかなか興味深い話だった。確かに、我が知るのは我らの生みの親がカナであることのみ。……しかし、何者なのだ? 貴様は。我以上に『呪皇』の秘密や創造主に精通しているようだが……本当にただの現地民なのか?』


「さあねぇ、君に答える義理はないからねぇ」


『ならば、力づくで聞くとしよう!!』

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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