Act.9-223 臨時班の再始動と三大闇ギルド同盟の崩壊(3) scene.5
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
オルキアスに続いて『呪皇』の中で三番目に討ち取られたのはボマー・ボンバー。
その名の通り、触ったものを爆弾に変える、自身に触れたものを爆弾に変える、手の甲から敵を追尾する圧倒的な強度を誇る自動追尾型の爆弾を放つといった能力を有する爆弾魔だけど、最も厄介な敵を爆弾に変える能力は触れられなければ発動しないため距離を取って攻撃を仕掛けるのが正攻法だ。
『追尾する悪夢の爆弾!』
ボマー・ボンバーは左手の掌から無数のキャタピラと回転翼のついた自動追尾型の爆弾を生成、アメジスタとフリオに向けて放つ。
脅威の頑丈さを誇り、まず破壊は不可能に近いというどう攻略していいか初見では分かりにくいこの爆弾にも実は対処方法がある。
自動追尾型で操作せずとも勝手に爆撃を仕掛けてくれるというのが最大の長所である一方、敵の探知には温度の高さを利用している。温度が高いものに狙いを定めて追いかけ、命中して爆発する性質上、ある一定以上の温度を持つものは全て攻撃の対象となる。
更に、ボマー・ボンバー自身も気づいていないようだけど、「追尾する悪夢の爆弾」はより高い温度のものに狙いを変えてしまうという弱点があり、対象となる熱源以上の温度のあるものが間近に存在している場合は例え至近距離であっても全く役に立たない。完全自動追尾型故に遠隔操作も通用せず、一度放ったら最後、爆発するまでボマー・ボンバーの制御から外れてしまう。
そして、これだけ爆発の呪歌を得意としているにも拘らず、ボマー・ボンバー自身に爆発耐性は一切存在しない。
「氷王の冷域」
まずはフリオが氷属性魔法を発動してフリオとアメジスタの周囲の温度を下げる。これで「追尾する悪夢の爆弾」の標的からフリオとアメジスタは外れたが、まだ味方側に流れ弾が飛ぶ可能性がある。
『マキシマムフレア!!』
続いてアメジスタは『不思議のダンジョン;ゲートウェイフロンティア』に登場する火属性最終奥義魔法を発動した。圧倒的な火力で敵を焼く魔法だが、流石にボマーを一撃で焼き尽くすほどの火力は存在しない。
『ワイはその程度の炎じゃ焼き尽くせないで!!』
『えぇ、最初からこの魔法で焼き尽くすつもりなんて更々ないから大丈夫よ。……フリオさん、一気にとどめを刺すわよ! アメテュストゥス・ルーメン! アメテュストゥス・ショット!!』
「氷王の叫吼!!」
「追尾する悪夢の爆弾」が迫るのも気にせずアメジスタは巨大なアメジストの結晶を顕現し、結晶から無数の紫の光条が放つと同時に生成した無数のアメジストを結晶を弾丸のように放った。
膨大な武装闘気と覇王の霸気を纏ったアメジストの結晶は、膨大な霸気の込められた紫の光条とフリオの放った極寒のブレス、そして逆走を始めた「追尾する悪夢の爆弾」と共にボマー・ボンバーに殺到した。
アメジスタの「アメテュストゥス・ルーメン」と「アメテュストゥス・ショット」ですらもオーバーキルになりかねないのに、そこにボマー・ボンバー自慢の「追尾する悪夢の爆弾」とフリオの氷のブレスが加わるとなればボマー・ボンバーに耐え切れる余地などある筈もなく、攻撃を浴びたボマーはコア諸共跡形もなく消し飛ばされた。
◆
五人の呪華七皇の中では一番厄介な能力を持つワースティタース。
一瞬にして水分を奪って乾涸びさせてしまうほどの圧倒的な渇きの力を宿しているため接近して攻撃するのは自殺行為、更に自身の身体を砂へと変える力を持つため物理攻撃も通用しないとなかなか強力な相手だ。
とはいえ、作中ではジャッロ相手に敗北した敵――『神の焔』で身体を構成する砂を全て焼き尽くされてしまえば流石のワースティタースと雖も復活することはできない。
「水天喰蛇」
『俺に水は効かん! 渇きの嵐』
呪歌の発動により、渇きの概念が竜巻の形を与えられて顕現した。
ワースティタースが展開した竜巻は瞬く間にトーマスの放った激流を吸収してしまう。
砂系の能力を使う相手に水系の能力は有効なことが多いけど、瞬時に渇きの概念を発生してしまうワースティタースの場合はかえって逆効果。寧ろ、全ての水分を根こそぎ吸い尽くされて無効化されてしまう。
ワースティタースに水系魔法が有効打にならないのはトーマスも知っている。……でも、実際に試して確認するまでは納得できないから無効化されてしまうことを承知で水属性魔法を発動したんだろうねぇ。
「やはり水は通用しないか」
『沙漠の大喰い』
ワースティータスは砂の呪歌を発動してトーマスの足元に流砂を展開する。勿論、見気で行動を予測していたトータスは空歩を使って上空に飛んで回避すると天井付近に浄焔により生まれた無数の剣を展開し、ワースティータスに向けて降らせた。
「倶利迦楼羅剣! 帝釈天雷!」
火属性と聖属性の複合魔法に続き、雷属性と聖属性の複合魔法を発動――聖なる力を宿した雷撃をワースティータスへと降り注がせる。
どちらもワースティータスの能力では無効化できない相性不利の魔法だ。
『砂の半球』
咄嗟にワースティータスは砂を集めてドームを展開、雷撃と炎の剣から身を守る。
「水天喰蛇」
しかし、トーマスが放った霸気を込めた激流が砂のドームの一角を粉砕、そのまま大量の水が砂のドームの内部に流れ込んだ。
『渇きの嵐』
「ほう、至近距離まで水が来ていても渇きの力で消し去ることができるのか。なかなか厄介だな。……では、これならどうだ? 時鎖牢獄」
無数の鎖がワースティータスの周囲から現れ、鎖が次々とワースティータスの身体に巻きついていく。
『なんだと!? 身体が、動かせ――』
トーマスが発動したのは自身のオリジナル時間属性魔法「時鎖牢獄」だ。
その効果は時間停止の魔法が付与された鎖で対象を拘束するというものである。
時間停止の効果は鎖に触れただけで作用するが、ただ触れただけの場合は部分的に時間が停止して動かせなくなるだけで他の魔法のように瞬時に敵の全身を停止させるような効果はない。
しかし、鎖が全身に巻き付けば他の時間停止系魔法と同じく敵の時間を完全に止めてしまうことが可能だ。
魔法の主な解除方法は鎖の破壊と見た目通りではあるが、鎖自体にあらゆる現象を停止させるという効果があるため時間停止魔法が作用する前に鎖を完全に破壊してしまう必要がある。そのため、他の時間停止魔法と同じく一度掛けられてしまえば無効化することは不可能に近い。
最も簡単に解除する方法は他の時間停止魔法と同じく魔法そのものの無効化だろうけど、そういう魔法を使える人ってほとんどいないからねぇ。
時間魔法も希少故に交戦することが想定されていないから対策されることもほとんどないし、そもそも初見では魔法が発動した瞬間に鎖から逃れることも不可能に近い(そもそも、時間属性魔法が付与されているかどうかも分からないだろうし、厄介そうな束縛魔法にしか見えないんじゃないかな?)、その上、今回は砂のドーム内という極めて動き辛い場所だったからワースティータスに「時鎖牢獄」から逃れることは不可能だったんじゃないかな?
時間停止の鎖に束縛されてしまえばワースティータスは渇きの呪歌も砂の呪歌も使えずただの攻撃の的と化す。
「これで終わりだな。倶利迦楼羅剣」
トーマスは火属性と聖属性の複合魔法で浄焔により生まれた剣一振りに触れると武装闘気と覇王の霸気を込め、ワースティータスに向かって投擲する。
「焔神の激昂」
人並み以上に剣が使える筈のトーマスがあえて投擲を選んだ理由は恐らくトーマスの背後に陣取ったジャッロの魔法に巻き込まれる可能性を危惧したからだろう。
トーマスが剣を投擲したのとほぼ同時にジャッロは『神の焔』を収束――渾身のブレスを放つ。
トーマスの剣もジャッロのブレスもワースティータスにとってはオーバーキルになりかねない一撃だ。
しかし、ワースティータスは時間停止魔法に囚われて動けない。これはもう勝敗が決したねぇ。……あのトーマスが動かない的に向けた攻撃を外す筈がないし。
トーマスの投擲した剣はワースティータスのコアを一撃で貫く。
砂になって崩れ始めた残された身体もジャッロの放った金色の炎によって焼き尽くされて消滅した。
◆
――さて、少しだけ時を戻すとしよう。
セーラ=マリオネッターが発動した『命令操作』に対し、発動したジャムの得意魔法だった「闇魂操身」によってボクの魂を肉体から切り離し、ボクの魂を身体に憑依させて人形のように操ることで支配権を奪い返して無効化したボクはソフィスの魂魄の霸気《黒百合の眷属》を使用して《血動加速》を発動、血液の流れを加速させることで爆発的な瞬発力を獲得――セーラの目でも追えない速度でセーラに肉薄し、セーラの額に触れた。
その状態で「飴玉取出・記憶」と「飴玉取出・人格」を発動してセーラの記憶と人格を飴玉として取り出す。
そして、取り出した飴玉二つを粉砕して終了。これで、セーラは精神的な死を迎えることとなった。
スマートフォンで連絡を入れ、シャルティローサを呼び出してセーラの身柄を引き渡す。
セーラの調整はエンゼルトランペットと同様に三つの闇ギルドを全て壊滅させた後のお楽しみだねぇ。
その後、ボクは残る四体の呪華七皇の討伐が終わるのを待ち、全員が討伐を終えたタイミングで次の区画へと進んだ。
お読みくださり、ありがとうございます。
よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)
もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。
それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。




