Act.9-214 臨時班の再始動と三大闇ギルド同盟の崩壊(2) scene.2
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
『おっ、俺の名前を知ってんのか? 突然、良く分からない世界に召喚されて困っていたんだ! まあ、敵意剥き出しで仕掛けてきたし、ご丁寧に情報を教えてはくれねぇだろ。これは全員捕らえて拷問で吐かせるしかねぇか』
「相変わらずの悪人っぷりだねぇ。君の今の姿をジャッロ=ブルチャーレが見たらどう思うかな?」
『……その名前を口にするんじゃねぇよ!』
敵意剥き出しで「神の焔」を放ってきたオーロ。
ボクも「神の焔」に対抗するために「凍焔劫華」を放って「神の焔」を凍結させる。
「神の焔」は万物を燃やす力を持つ金色の炎――当然、その力は強大だ。ほんの小さな火球であっても倍以上の「凍焔劫華」でなければ凍結させることができない。『神殺しの焔』よりはマシとはいえ、なかなか厄介な能力だねぇ。
「妻や息子を奪ったカズワリオが生み出した世界を破壊する生態兵器である『呪皇』――フレーズヴォンドへの憎悪を糧に生き延び、死霊術師ワイゼルの配下として『冥王の心臓』に潜り込み、その後は『冥王の心臓』や『幻界魔狼』の目を盗みながら各地で『呪皇』狩りを進めてきた。しかし、ジャッロは生きていた。彼の活躍を知った君は、自分の手が血で汚れきっていることにも気づいてしまい、自らが役目を終えたことを痛感し、最後は彼に君が得た『神の焔』を授けて本来帰るべき黄泉の世界に帰る。……まあ、ボクの知るような未来になる可能性は限りなくゼロに近いけどねぇ。ジャッロを含む『不死鳥の尾羽』のメンバーの姿は確認されていないようだし。それに、この後の君の返答次第ではここで君には悪いけど消えてもらうことになるからねぇ」
『……お前、どうやら俺達について詳しいみたいだな。……でもおかしくないか? ここは違う世界なんだろ?』
「ここは、君達の世界を含む三十の世界が融合した世界……いや、今後三十の世界全てが融合するであろう世界だよ。……いや? 三十一個の世界か? まあ、別に細かい数字は別として、この世界はユーニファイドと呼ばれる君の感覚で言うところの異世界だよ。まあ、君達の感覚で言えば、三十分の一か、三十一分の一は君達の世界なんだけどねぇ。今のところ発展途上だけど、ボクの予想だと最終的には君の世界も完全な形で実装されるんじゃないかな? まあ、地形云々はぐちゃぐちゃになりそうな気がするけどねぇ」
『異世界って言うのもよく分からねぇし、どうやらそれより複雑な状況っていうことは分かった。……しかし、そんなにペラペラと情報を話してくれるとは思わなかったぜ』
「別に秘匿するような情報でもないからねぇ。……さて、君は屍人だ。限りなく生きている人間に近い屍人ではあるけどねぇ。ボクの知る世界では救われなかった君だけど、この世界には君を救う方法がある。……君はどうしたい? 生きて息子と、ジャッロと再会したいか? それとも?」
『……有難い話だが、聞くまでもなく答えは分かっているだろう? 俺の手は汚れちまってんだ。今更どのツラ下げてジャッロに会えって言うんだァ? ……無論勝つつもりでいくが、もし俺が負けたらジャッロにこの『神の焔』を渡してはくれないか?』
「構わないよ。まあ、こっちで実際に会えるかどうか分からないけどねぇ」
「おい、圓! こいつとの戦いをあたしに譲れ!」
「……譲ってもいいけど、ルクスさんじゃ相性悪いよ?」
「――ッ! 仕方ねぇな! ここは圓に譲ってやるぜ!!」
「だから、最初からそういう雰囲気でしょう? 空気読みなよ、脳筋シスター」
全く見た目は清楚系シスターなのに、中身に筋肉しか詰まってないのかよ? そういうギャップには萌えないんだけどなぁ、ボクって。
『焔神の焼鎚!! 焔神の弾咆!!』
『神の焔』で創り出した鎚を構え、ボクに迫ると同時に無数の『神の焔』の弾丸を放ってくる。
「凍焔劫華・焔域!」
「凍焔劫華」を壁のように展開して『神の焔』の弾丸を全て無効化し、『神の焔』の鎚を勢いよく撃ち下ろす瞬間に「凍焔劫華」の壁を解除――。
「龍宿魔法! 白氷竜の咆哮!!」
『なんだと!? 氷のブレス!?』
しかし、ブレスの中でもオーロは諦めずに『神の焔』の鎚を振り回してブレスを焼き尽くそうとする。
更に『神の焔』の領域を展開してブレスを無効化しに掛かっている。……これはなかなか厄介だねぇ。
じゃあ、少しやり方を変えようか?
「龍宿魔法! 竜暴食!」
『おいおい、まさか!? この「神の焔」を食うつもりか!?』
カリエンテの魔力を宿してブレスを解除。そのまま展開された『神の焔』の領域を喰らい尽くして掌に『神の焔』を宿す。
「神焔竜の咆哮!!」
『神の焔』の属性を付与した「火竜帝の咆哮」をオーロに向けて放つ。
『焔神の激昂!!』
オーロは『神の焔』を収束して放ち、正面から「神焔竜の咆哮」に対抗したものの、ボクの「神焔竜の咆哮がオーロの『神の焔』を押し切り、オーロの身体を焼き尽くした。
『神の焔』を託される前に焼き尽くしてしまったけど、「竜暴食」経由で獲得することができたし、ジャッロに出会うことができたら「竜暴食」で吸収した『神の焔』をジャッロに渡せばオーロの願いを叶えたことになるよねぇ? ……うん、オーロの望む形の幕引きじゃ絶対にないことは分かっているけど、まあ、『神の焔』は継承できるし誤差ってことで許してもらえないかな?
……うーん、ボクからしたら敵という名の赤の他人に看取られながら死ぬのも、『神の焔』の力を宿したブレスとの力押しに負けて焼き尽くされるのも正直あんまり変わらないと思うんだよねぇ。
ああ、これが仲間に看取られながらとかだったら話は変わってくると思うよ。
◆
オーロを撃破したことで戦艦内部への侵入が可能になった。
ということで、早速戦艦の内部へ潜入。あれだけ暴れたから敵も流石に気づいているだろう。……まあ、『冥王の心臓』の敵だけに留まらず、『幻界魔狼』にも完全にボクらのことを知られてしまったけどねぇ。でも、オーロに掛けられた「死霊魔術」の魔元素の流れから『幻界魔狼』の拠点の位置の逆探知に成功しているし、ほとんど痛み分けの状態になっている。……まあ、こっちが派手に暴れているからボク達のことがバレるリスクは当然覚悟している一方、『幻界魔狼』側はまさかオーロ経由で逆探知されているなんて思いもよらない状況……どっちが有利かは一目瞭然なんだけどねぇ。
「誰だか知らないけど、ここから先は通さないんよ!」
「……ここから先へはこのリュビアが通しませんわ!」
桃色の髪の西部劇のガンマン風の衣装を纏った少女は魔法を付与した特殊な弾丸を込めた二丁拳銃の使い手のアニエス=バレット。
青と黒を基調とするロリィタドレスを纏い、魔女風の三角帽子を被った水色の髪の女性は魔槍「グラン・インパクト」を愛用する水魔法のエキスパートであるリュビア・アントウェルペン。
「ルクスさぁ〜ん?」
「おいおい、まさか今回もお預けかよ!?」
「二人はできれば勧誘したいって思っているからねぇ。勿論、ルクスさんの出番はちゃんと用意してあるよ? ……まあ、お父様にアクア、プリムヴェールさんに先に取られなければの話だけどねぇ」
「つまり、それってあたしの見せ場が無くなるかもしれないってことじゃないか!!」
シスタールクスが「あたしに戦わせろ!!」と暴れているのを無視してアニエスとリュビアに視線を向ける。
「さて、聞いての通りボクは二人を勧誘したいと思っている。要するに、『冥王の心臓』を辞めてボク達多種族同盟の元に来るつもりはないかな?」
「……君、面白い冗談を言うね? ウチ達のアジトに攻撃を仕掛けてきた人がウチ達を勧誘?」
「まあ、その疑問ももっともだよねぇ。……闇ギルドは世間一般においては悪だ。討伐するべき対象である……まあ、それができるかどうかは別として、そういう認識がされているのはボクも承知している。でも、正直ボクにとっては心底どうでもいい話なんだ。……君達はボク達からしてみればどこにも染まっていない浮いた駒。それをボク達と敵対するいずれかの陣営に入られたら厄介だから討伐しに来たっていうのが実態なんだ。敵対するなら倒してしまいたいけど、もし敵対しないなら、ボク達の味方になってくれたらそれに越したことはない。こっちの世界に来て苦労しているでしょう? 衣食住も含め、しっかりとバックアップするよ。それを踏まえて君達はどうしたいのかな? ボク達と敵対してここで死ぬのか、それともボク達の仲間になってくれるのか?」
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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