Act.9-212 臨時班の再始動と三大闇ギルド同盟の崩壊 scene.5
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
ジギタリスの「神毒の身体」は制御できるような魔法ではない。それは残念ながらこの世界においても変わらない事実だ。
まあ、裏技を使えばほとんどノーリスクで魔法を扱えるようになるんだけどねぇ。
「じゃあ、早速やっていこうか? 極大付与術!」
ジギタリスに施す処置は「極大付与術」によるジギタリス自身と「神毒の身体」の分離。
ジギタリスの身体に取り憑いているこの魔法を付与術を利用して分離して仕舞えば、ジギタリスをこの呪いから救うことができるんじゃないかと思っていたけど、ボクの予想は正しくジギタリスから「神毒の身体」が分離した。
代わりにジギタリスから抜き出された「神毒の身体」が黄金の劇毒の竜の姿となって暴れ出した。
これが「神毒の身体」の正体……まあ、なかなかヤバそうだねぇ。
「とりあえず、ジギタリスさんは退避して。分離しちゃったから恐らく『神毒の身体』への耐性が切れているからねぇ。龍宿魔法! ――超越する絶対零度!」
スティーリアの魔力をその身に宿し、ダイアモンドダストを媒介に氷点下二百七十三度を超えた物理限界の先にある極寒の氷点下五百度の極寒で敵を瞬時に凍結させる「凍結する大気」の強化版で「神毒の身体」を凍結させる。
……氷が腐食で内部から破壊されることは無かった。よし、作戦の第一段階は成功。
続いて氷を僅かに砕いて、武装闘気を纏わせた手で掴み、属性再染魔法で事前に作っておいた指輪に神毒の身体」の属性を付与。……試しに魔力を流してみると、「神毒の身体」と同じ神毒属性の魔法が発動し、小さな毒液の球体が放たれた。
「よし、第二段階も成功。ジギタリスさんにはこの指輪をあげるよ。魔力っていうこの世界の魔法に必要なエネルギーを流せば『神毒の身体』と同じ神毒をある程度だけど操れるようになるよ。これまでとは違って任意で発動も可能だからねぇ」
「ありがとう。……驚いた。ワタシの魔法、どうにもならないと思っていた」
ジギタリスを抱き締めて頭を撫でてあげると、ジギタリスはとても嬉しそうに微笑んだ。
ジギタリスの望み、叶って良かったねぇ。
流石にジギタリスと捕縛したエンゼルトランペットを抱えては先に進めないので、エセイリア=ドーマジックルの残骸とジギタリスとエンゼルトランペットを呼び出したシャルティローサに頼んで屋敷の一つに送ってもらった。
ジギタリスの扱いに関しては微妙。本人が望むなら普通の女の子としての暮らしができるように援助するつもりだし、それ以外を望むのであればその望みに合ったサポートをするつもりだ。……まあ、救うっていうことはアフターケアまでばっちりするってことだからねぇ。
エンゼルトランペットに対する処置は三つの闇ギルドを壊滅させてから。……楽しみは後に取っておくとしよう。
階段を降りて地下五階へ。待ち受けていたのは最後の六魔将であるクシフォス=ファランクス。
「障壁魔法」のエキスパートで巨大な障壁を展開して身を守る他、無数の障壁を重ねて高速で叩きつける攻撃に利用したり、障壁を変形させて剣などの武器を作り出すこともできると攻守共に隙がなく、マーラ=ニヒリティに次ぐ実力者と言われている。
「まさか五人の魔将を倒してここまで辿りつく者がいるとは思いも寄りませんでした。ですが、その快進撃もここまでです。障壁ノ太刀」
障壁を変形させて剣を創り出すと、一気呵成に切り掛かって来た。
狙いはマグノーリエか。……この中で一番弱いと踏んだのかな?
裏武装闘気で創り出した剣に武装闘気と覇王の霸気を纏わせてマグノーリエに迫るクシフォスの進路を塞ぎつつクシフォスに斬り掛かる。
どうやらディランも同じ作戦だったらしく、ほぼ二人同時にクシフォスに向かって斬撃を放った。
「障壁ノ射出」
圧倒的な強度を誇る障壁を射出する「障壁魔法」で咄嗟に身を守ったのか。
障壁を破られても斬撃を放つことができる。障壁を破られなければそのまま障壁で吹き飛ばすことができる。最悪の場合でも一瞬の隙は創り出せるから悪い手ではないねぇ。
……相手がボク達じゃなければ。
ボクとディランの斬撃は一瞬にしてクシフォスの障壁を粉砕。そのまま斬撃を放ってきたクシフォスにボクとディランでクシフォスの斬撃を上回る速度で斬撃を放って撃破。
『大魔闘時代最後の騒乱〜闇を照らす不死鳥の光〜』の作中では強敵だったんだけどねぇ。剣の腕はそこまで立つ訳じゃないし、圧倒的強度を誇る障壁も武装闘気と覇王の霸気を合わせた斬撃に耐え切るほどの強度はなかった。まあ、相手が悪かったとしか言いようがないねぇ。
◆
三大闇ギルドの一角である『六魔修羅道』のギルドマスターとなれば、その力は折り紙付き。
マーラ=ニヒリティは『他化自在天』の異名に相応しくあらゆる姿を真似し、能力を五十パーセントのレベルで模倣する『変貌』と複数の姿を掛け合わせることで怪物へと変貌する『怪異変貌』の二つの変身魔法を得意とする。
この『変貌』は初対面の相手にも使用可能で更に一度模倣した相手のデータが蓄積していくため変身できるレパートリーは極めて豊富。
このあまりに万能な魔法設定と釣り合うように設定されたのが、能力を五十パーセントのレベルで模倣するという欠点なんだけど、その弱点を補うために開発された『怪異変貌』によってその欠点を補って余りある力をマーラは手にした。
作中においては、『六魔修羅道』の六魔将と主人公陣営――『不死鳥の尾羽』所属の魔法使い達の姿と能力を同時に模倣して猛威を振るった。
そして、その最強のキメラの力を突破しても更に奥の手の魔法を隠し持っているという二段構え。
初見だとどうやって倒すんだ!? って相手だけど、情報は既にボク達の間で共有済み。
いくら強いと言ってもその手の内を全て知っていれば怖い相手ではない。
アネモネ、ディラン、マグノーリエ、レナード、瑞穂、シェイドリング、ジギタリス、ゾア、エセイリア、エンゼルトランペット、クシフォス――ボク達臨時班と『六魔修羅道』の六魔将の姿を全て融合して化け物と化したマーラ。……もはや原型を留めていなくて、色々と残念な感じになっているねぇ。まあ、元々見た目重視の能力じゃないし、仕方がないか。
結論から言うと、戦闘力はそこまで高く無かった。
レナードが警戒して覇王の霸気を纏わせた「終焉の光条」を放ったら右上半身のほとんどが吹き飛び、マーラはたった一撃で瀕死に追いやられる。……これにはマーラもかなりびっくりしていたねぇ。
うん、レナードの「終焉の光条」ってかなり強力な攻撃なんだよ。それが霸気で強化されているんだから、その威力は推して知るべし。
マーラは流石に相手の武器まで模倣できないし、覇王の霸気に関しても『変貌』で模倣できなかったみたいだ。咄嗟に武装闘気を纏ってクシフォスの障壁で身を守ろうとしたみたいだけど、焼け石に水。レナードの「終焉の覇王光条」を耐え切るだけの耐久力は残念ながら持ち合わせていなかったようだ。
「まだ、だ。まだ、負けてはいない! この傷では、俺は間も無くあの世に、行くことに、なるだろう。……だが、このまま一方的に死ぬつもりはない。貴様らも、一緒にあの世に、連れて行って、やるッ! 無に帰す鬼哭の咆哮ッ!!」
マーラが放ったのは彼の奥の手である虚無の世界の怪物を解き放ち相手の全てを喰らい尽くす大魔法。
まあ、要するに「暗黒魔法-鬼哭怨喰」の魔元素系魔法バージョンってことだねぇ。
実際、無防備な状態で命中すればボクも無事では済まない大技なんだけど、攻撃の軌道が単純だから実は対処そのものは簡単なんだよねぇ。
「魂霊崩壊」
神聖魔法を発動して光の柱をボク達の前に展開し、放たれた虚無の世界の怪物を抹消した後、必殺技を無力化された衝撃を受けて固まったマーラに肉薄して怒涛の「七彩虹輝終焉刺突」を浴びせてマーラを撃破する。
「無に帰す鬼哭の咆哮」は虚無の世界に接続して虚無の世界の怪物を召喚する魔法だからストックが必要な「暗黒魔法-鬼哭怨喰」とは違って連発も不可能ではないんだけど、マーラの力では一発放つのが限界。
まあ、『怪異変貌』を使っても「終焉の覇王光条」で一瞬にして瀕死に追い込まれるような状況だし、ここで更に反撃に出られても間違いなくボク達の勝ちは揺るがなかったんだけど。
マーラを撃破したボク達はその後、「極大付与術」でゼゲファ=トラス大森林の大地から魔力を除去し、続いて魔の大樹の本体を撃破。その後、残った魔の大樹を協力して伐採してからイトラス伯爵家当主のサーヴァルトに報告し、他の臨時班の面々がいる屋敷に戻った。
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