Act.9-211 臨時班の再始動と三大闇ギルド同盟の崩壊 scene.4
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
「『飴化の天恵』!」
「強奪の天恵」の代わりに瑞穂に与えた「飴化の天恵」は【万物創造】で創り出した「天恵の種」を利用して創り出したノベルRPG『トップ・オブ・パティシエール〜聖なるお菓子と死の茶会〜』本編に登場しない新たな「天恵の実」ということになる。
効果は二種類あって、一つ目は自身の身体を水飴へと変化させる能力。軟化と硬化を使い分けることが可能で、軟化させた場合は物理攻撃を無効化できる。更に身体に欠損が生じても飴を吸収することで再生できるとなかなかに厄介。硬化を使えば鋼鉄並みの強度まで身体の強度を上げることができる。弱点は熱と「強奪の天恵」の効果を無力化することができる闘気などを纏った攻撃だねぇ。
二つ目は様々な飴を造形することができる能力。生み出した飴は様々な加工が可能でこちらは別の素材を混ぜることで弱点である耐熱性を補うことができる。
一つ目の水飴化する能力は別の素材で強化することはできないから、両者は別々の能力として扱われるんだけど、一応、体を構成する水飴を変化させて棘などの武器を作り出すこともできるから、能力の境界が初見では分かりにくい。
身体とどこかで繋がっているものは水飴から、身体から完全に切り離されているものは飴生成の能力……まあ、それに気づいても攻略できるかはまた別問題なんだけど。
「攻撃しなさいッ!」
エンゼルトランペットの命令を受けた天使が翼を羽搏かせて一気に瑞穂に迫る。……ちょっと動きが短調過ぎじゃないかな?
「飴玉炸裂爆」
瑞穂は天使と距離を取って大きめの飴玉を投げつける。飴玉は天使に命中すると同時に炸裂し、無数の破片と飴玉の内部に込められていた無数の尖った雨の破片が天使に突き刺さった。
なかなかの威力だけど流石に倒れないか。
天使はそのまま瑞穂に向かって拳を振るうけど、「飴化の天恵」を食べた瑞穂にただの物理攻撃は通用しない。……これが光条による魔法攻撃とかだったらまだダメージを与えられる可能性があったんだけどねぇ。えっ、どっちの味方なんだって? そりゃ、瑞穂の味方陣営だよ?
「水飴の身体」
天使の拳が瑞穂の体の中に飲み込まれた。まさか殴ったら手が抜けなくなるとは思っていなかった天使が必死に踠いているけど抜け出せる気配はない。
「侵食する水飴」
瑞穂の身体が大量の水飴へと変化、そのまま天使を完全に包み込んで窒息死させる。
天使の死を確認した後、瑞穂は水飴に完全にコーティングされた天使と分離して棒状の飴を創り出した。
「千歳の棒飴」
武装闘気を棒状の飴に纏わせた瑞穂は寿命を消費して次のコインを生み出して天使を召喚しようとするエンゼルトランペットに向かって無数の飴玉を投げつけてコインを弾いた後、俊身と神速闘気を駆使してエンゼルトランペットに肉薄して鳩尾に棒状の飴を思いっきり叩きつけた。
「飴の拘束」
気を失ったエンゼルトランペットに念のために飴の手枷と足枷を装着して任務完了。……あれだけ無茶とか無理とか言っていたのに、結果は危なげなく勝利。
瑞穂、やればできるじゃないか。
◆
マグノーリエが担当することになったのはエセイリア=ドーマジックル、『大魔導師』を自称する魔法使いの人形だ。
『大魔闘時代最後の騒乱〜闇を照らす不死鳥の光〜』の世界では正体不明の暗殺者として知られ、ギルドが壊滅するような抗争で姿を現すとされていた。作中では討ち取っても人形だけが残ることから、人形を操る魔法使いが本体なのではないかと言われていたけど、後にその正体は、「冥王の心臓」の最高幹部、九冥公の一人であるヴィクター・アレハンドロの作品で永遠の時を共に生きる子供としてデザインされた自我を持った人形であることが判明する。
まあ、ボク達はその情報を知っているからこの人形を倒したところでエセイリア=ドーマジックルを撃破したことにはならないことは分かっているんだけどねぇ。
ただ、今の時点ではあまり警戒されたくないから人形だということには気づいていない風を装う必要があるんだけど。
『ドォーリィ・ショットォ!』
指を鳴らすと同時に無数の光弾を放ってくるエセイリア。
「雷纏激奔流」
マグノーリエはその全てを見気と紙躱を駆使して回避すると、水属性と雷属性のオリジナル複合魔法を発動して無数の小さな青い魔法陣を六角形状に敷き詰め、そこから雷撃を纏った無数の細い水撃を放って攻撃をする「雷纏激奔流」を放つ。
『ウイッチズ・ドラァイブ!』
跨っていた箒に大量の魔元素を込めて高速移動で激流を回避すると、空中で旋回しながら無数の光弾をマグノーリエへと放ってくる。
『タァーン・バム・ブリッツ!』
「雷迸水広弾」
今度は無数の光弾を水属性と雷属性のオリジナル複合魔法で作り出した雷を纏った無数の水弾で相殺したマグノーリエ。
流石に何度も攻撃を相殺されて苛立ちを覚えたからか、空中に浮遊したまま箒の穂をマグノーリエに向けて内部に仕込まれた大量の刃を放ちつつ、無数の光弾をマグノーリエに向けて放った。
『ウィッチーズ・メタルレイン!! ドォーリィ・ブリッツシャワァー!』
「雷纏激奔流! 雷迸水広弾」
マグノーリエは迫り来る大量の刃を激流で、無数の光弾を水弾で封殺、続けて圧縮した風を鉄槌のように降らせる汎用風魔法「蒼穹衝槌」を基にローザが改良を加えた汎用強撃風魔法「天からの一撃」をエセイリアに浴びせた。
『まさかここまで強いとはねェ〜。このままだとやられちゃいそうかなァ? 流石に一人も仕留められずに全滅は悲しいしィ、せめて一人くらいは倒したいねェ〜。――ウイッチズ・ドラァイブ!』
跨っていた箒に大量の魔元素を込め、再び高速移動――今度はマグノーリエ目掛けて襲い掛かる。
そして、マグノーリエの間近に来た瞬間にエセイリアの身体が光り輝く。
『ドォーリィ・エクスプロージョン!』
マグノーリエを巻き込むようにエセイリアを中心に巨大な爆発が生じた。
「作戦通りですね」
エセイリアはこれでマグノーリエを仕留められたと思っただろうけど、時間的、空間的に断絶を一時的に発生させることで一切の攻撃を遮断する究極の物理防御「第四防衛術式」を爆発する直前で発動することでマグノーリエは身を守っていた。
これはエセイリアの主人であるヴィクター・アレハンドロと「冥王の心臓」を油断させるためにボクとマグノーリエで予め決めていた作戦だった。
あんまり勝ち過ぎていると相手に余計な危機感を与えてしまうからねぇ。そうなると次の「冥王の心臓」で苦戦することになる。
だから、エセイリアと互角かそれより少し上の実力を持ち、エセイリアを警戒させる戦いを演じたが、エセイリアに自爆攻撃には耐えきれず命を落とした……っていうシナリオを演じて少しだけ警戒を解こうと考えたって訳。
まあ、「穿光条の流星群」とかエセイリアを一撃で仕留められる魔法は普通にあったからねぇ。長い目で考えなければもっと簡単にエセイリアは撃破できたと思うよ。
◆
残るはジギタリスただ一人。この娘は「神毒の身体」という強大な魔法を持って生まれたけど、本来は任意で発動できる筈の魔法が常に暴走状態になっていて、それ故に彼女を産み落とした母親は出産と同時に命を落とし、ジギタリスの父親も怒りを募らせ、早々に彼女を捨てた……っていうなかなかにハードなバックグラウンドを抱えている。
森に捨てられ、本来ならばすぐに死ぬ筈だった彼女が生き残っているのはあの世界でヒューマンショップと呼ばれる奴隷商に見出され、闇ギルドに売り渡されたから。それから、ジギタリスは暗殺専門の魔法使いとして教育され、「 『六魔修羅道』の最高幹部、六魔将にまでなった。
他の六魔将のように残虐性があれば、その魔法を肯定的に捉えることができたんだろうけど、彼女のメンタルは人並みで持ち合わせる倫理観も真面だった。あれだけの境遇なんだから歪んでも仕方がないと思うけど、ジギタリスはあまり歪まずに成長してしまった。
人を殺すことに罪悪感を覚えながらも、それでも生きるためには人を殺さないといけない。そうして生きてきた彼女の『大魔闘時代最後の騒乱〜闇を照らす不死鳥の光〜』での末路は『不死鳥の尾羽』の魔法師達によって命を絶たれるというものだった。
暴走状態の「神毒の身体」をどうにかすることもできず、彼女に非がないと理解しながらも命を奪わなければならない。
『不死鳥の尾羽』の魔法師達と彼女の戦いはジギタリスに掛けられた呪いを解けないという後味の悪い形で幕引きがなされ、アンケートにも運営側がジギタリスに強いた残酷な仕打ちに対する批判が殺到した。……まあ、その運営側でも割と賛否両論だったんたけどねぇ。
『大魔闘時代最後の騒乱〜闇を照らす不死鳥の光〜』では救われるための方法が無かったジギタリスだけど、この世界にはその方法がある。
ボクもジギタリスに強いた運命は少々残酷だったんじゃないかって立場だったし、救える方法があるなら、そしてそれをジギタリス自身が望むのであれば呪いみたいな「神毒の身体」から彼女を救ってあげたい。
「さて、ジギタリス。君に掛かったその呪いみたいな魔法を解除できる方法がある。今ここで『六魔修羅道』の一員として死ぬか、それともボク達と共に来るか、好きな方を選ぶといいよ」
「……この魔法は、誰にもどうすることもできないって、言っていた。この毒、どうにもできない。貴女達、みんな死ぬ?」
「まあ、簡単には信じられないと思うけどねぇ。でも、この世界はかつて君がいた世界じゃない。あの世界の魔法とは別の技術体系の魔法もある……って言っても難しいか。それで、君自身はどうしたいのかな? ここで命を落としたいか、それとも生きたいのか?」
「…………生きたい。……ワタシ、生きたい。抱きしめられたい、褒めてもらいたい」
「その願い聞き届けたよ。さて、始めようか――君の運命を変える魔法を」
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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