Act.9-210 臨時班の再始動と三大闇ギルド同盟の崩壊 scene.3
<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
『六魔修羅道』のギルドホールへと続くと思しき階段を駆け降りて『六魔修羅道』のアジトに突入する。
「――ッ! 敵襲だ!!」
「雑魚に用事はないんでさっさと片付けさせてもらうよ。圓式比翼! ダークマター!!」
『銀星ツインシルヴァー』に武装闘気と覇王の霸気を纏わせて圓式の斬撃で『六魔修羅道』の荒くれ者達を瞬殺。残りのメンバーは「ダークマター」を浴びせて全滅に追い込む。
「これ、俺達要らなかったんじゃねぇか? 親友?」
「『六魔修羅道』の幹部達はこんな雑魚とは比較ならないからねぇ。こっからが本番だよ」
アイゼンの記憶では『六魔修羅道』のギルドホールは地下三階まで。
でも、『六魔修羅道』の傘下に全ての情報を開示するとは到底思えないから真の『六魔修羅道』のアジトはまた別のところにあると思われる。
つまり、隠し扉だねぇ。見気で確認したところ、『六魔修羅道』のアジトは地下六階まである。地下三階で隠し扉を見つけ、隠し階段を降りることができれば隠された地下四階以降に行ける筈だ。
その隠し扉の位置も地下へと続く階段を見気で捕捉しているので絞り込める。正規の方法で扉を探すのが正しいんだろうけど、情報が圧倒的に少ないし、謎解きに使える時間は正直多いとは思えない。……先程の戦闘の音で敵に襲撃がバレていると思った方がいいだろうし、逃げの一手を打たれる危険性がある。
まあ、壁ごとぶっ壊して先に進んだ方が逃走の可能性を潰せていいよねぇ。
地下四階に到着。見気で捕捉したように、地下四階にはシェイドリング=レーゼイ、ゾア=モンストル、エンゼルトランペット、ジギタリス、エセイリア=ドーマジックル――五人の六魔将の姿があった。
残りは六魔将クシフォス=ファランクスとギルドマスターのマーラ=ニヒリティか。……この二人は地下五階と地下六階にそれぞれ居て逃げる気配は今のところない。
「……襲撃か、珍しいな」
「おうおうおうおう! いい度胸じゃねぇか! たった五人で闇ギルド最強の一角である『六魔修羅道』を止められるとでも思っているのか!?」
『甘いィ、甘いィ〜考えだねェ! でも、嫌いじゃないかなァ!』
「たった五人でアタシ達に本気で勝てるとでも思っているのかしら? まあ、全員アタシの『天使魔法』でイチコロにしてやるんだけどね」
「おい、きったねぇぞ! 俺にも戦わせろ!」
「……私の毒、強力。この毒で、みんな死ぬ?」
とりあえず、エセイリアを通して『冥王の心臓』の現在位置は分かった。……フォルトナ=フィートランド連合王国の辺境か。
そして、エセイリア以外は『冥王の心臓』を含む他の闇ギルドの拠点に関する情報を掴んでいないようだねぇ。一応、それぞれのギルドマスターは定吉経由で顔を合わせて四大闇ギルド同盟を締結したみたいだけど。
見気の派生で記憶を読み取ったところ、彼らは異世界転移したような状況らしい。突然七人だけで異世界に放り込まれ、そこから自力で傘下を増やしていったみたいだ。
予想していた通り、『管理者権限』は保有していないと思われる。つまり、補正は一切無しで本当に一から闇ギルドのシステムを構築していったということになる。随分と時間も掛かったんじゃないかな? しかし、水面下で動いていたとはいえ、もっと早く気づいて対処するべきだったねぇ。……もっとリサーチ力を高めないといけないなぁ、とちょっとだけ反省したよ。
まあ、手遅れになってないし、この場でぶっ叩けばいいんだけどねぇ。
「影に溶ける」
「おっと、させるかよ! 魂魄の霸気《両影》! 《黒影の抱擁》」
影に飛び込もうとしたシェイドリングに、ディランがそうはさせまいと魂魄の霸気で影に干渉――武装闘気と求道の霸気を纏わせた影でシェイドリングを拘束する。
シェイドリングの保有する魔法は二つ、影の中を自在に移動することができる影魔法の「影に溶ける」と、自身の移動速度の累積することができる加速魔法「速く駆ける」。前者は影の中に飛び込む必要があり、拘束されている状態で影をすり抜けることはできない。後者は発動に助走が必要で、身動きが取れない状況では魔法は発動できない。……完全に無力化されたねぇ。
「シェイドリング、お前、俺達と一緒に来る気はねぇか?」
「……そのつもりはない。酷く苦痛な『実験場』から俺を解放してくれたのが『六魔修羅道』だった。目一杯走ることができる環境を与えてくれた『六魔修羅道』を裏切るつもりは毛頭ない」
「まあ、こうやって持ちかけられて裏切る奴は正直あんまり信用できないしなぁ。……残念だけど仕方ねぇか」
ディランは武装闘気と覇王の霸気を纏わせた剣でシェイドリングの胸あたりで両断した。
せめて苦しむこともないように即死させてあげようと思ったのか、肋骨諸共結構大胆に斬ったものの痛みを感じる前に死ぬことができたんじゃないかな? ……『六魔修羅道』の中ではまだ同情の余地ありだったんだけど、『六魔修羅道』への忠誠心は高いし仲間にすることは無理だったか。まあ、それがシェイドリングの選んだ道なら致し方ないねぇ。
「シェイドリングがこんなにあっさり!? どうやら只者じゃねぇみたいだな! 魂魄接収・漆黒の爪ブエルマナス」
ゾアは「魂魄接収」を発動して筋骨隆々な悪魔の姿へと変貌する。
そんなゾアとの戦いを引き受けたのはレナードだった。……てっきり、シェイドリングとのスピード対決になると思ったんだけどねぇ。まあ、でもレナードがゾアに負ける可能性は皆無だから誰が誰と戦おうと大局的に見れば問題は生じないんだけど。
『そんな貧相な身体で俺に勝てると思っているのか?』
「一ついいことを教えてやるぜ。いくら筋力が凄まじくても攻撃を当てられなければ意味がないんだぜ!」
神速闘気と俊身を駆使してゾアに肉薄、武装闘気を衝撃波として放つことで吹き飛ばす武気衝撃を放ってゾアを吹き飛ばす。
『どういうことだ!? あんな細腕で何故俺を吹き飛ばせる!?』
「アクセラレーション・スパーク! アクセラレーション・ソニック! アクセラレーション・フラッシュ! アクセラレーション・ライトニング! なんというか、もっと厄介な相手だと思っていたんだけどなぁ……もしかして、弱いのか?」
『舐めやがって! 悪魔の闇咆!』
「遅いぜ! 武流斬爆!」
壁まで吹き飛ばされながらもなんとか立ち上がり、収束した闇のエネルギーを紡錘形を描いて狙撃地点に収束する無数のレーザーとして放ったゾアだけど、レナードは呆気なくゾアに肉薄してレーザーの収束地点から離脱――そのまま裏武装闘気で創り出した剣に覇王の霸気を纏わせてゾアの心臓に突き刺し、相手の身体に直接武装闘気を流し込むことで内部から敵の身体を破壊する武流爆撃を応用して剣から衝撃波を流し込んでゾアの体を爆裂四散させた。
ゾアと融合していたブエルマナスとの融合が解除されて無数の光と化して消滅し、後にはゾアだった無数の肉片が戦場に残されているだけだった。
『大魔闘時代最後の騒乱〜闇を照らす不死鳥の光〜』では割の初期に登場するとはいえ、そこそこの強敵の設定だったんだけどねぇ……それだけボク達が強くなっているってことか。それとも、闘気や霸気と呼ばれる虚像の地球由来の技術が凶悪過ぎるのかな? ……まあ、一応鍛えれば神の領域に至れる技術、この世界における『管理者権限』みたいなものだしねぇ。
「コインを三枚消費して、天使顕現! 契約改竄魔法を発動して三年分の寿命をそこの貴女に支払わせるわ! アハハハ! アタシの魔法の対価を支払いなさいッ!」
エンゼルトランペットが指を指して指定したのはボク……というかアネモネ。
彼女の魔法「天使顕現」には対価として寿命が必要で、コイン一枚につき一年分の寿命となる。
天使なんて彼女は呼んでいるけど、その正体は術者の寿命を削って天使の皮を被った天使とは似ても似つかぬ化け物なんだよねぇ。まあ、エンゼルトランペットもその醜悪な正体を知った上で魔法を行使し、「天使魔法」と同じくらい得意とする「契約魔法」の派生である「契約改竄魔法」を駆使してコストを消滅させたり、対価を敵に払わせたりと、コストを自分が払わないように立ち回るっていう結構醜悪な性格のキャラなんだけど。
『大魔闘時代最後の騒乱〜闇を照らす不死鳥の光〜』で新章な追加キャラの情報が出た当時は「絶世の天使降臨!」とか騒がれたけど、『六魔修羅道』編をクリアしたプレイヤー達の意見は「見た目は絶世の美女だけど、それ以外に長所がない最低のクズ」に集約されていた。それくらい派手に暴れたんだよねぇ、エンゼルトランペットって。
「術式霧散。……さて、興梠さん?」
「はっ、はい!!」
「そこの天使擬きをサクッと倒してエンゼルトランペットを撃破してくださいねぇ」
「…….あの撃破というのは、殺害ですか? それとも……」
「決まっているじゃないか。殺すよりも利用する方がいいに決まっているでしょう? もちろん生捕りで、戦闘不能の気絶状態が一番かな?」
「(また、無茶なことを! 生捕りなんて簡単に言ってくれるわね! た、確かに絶世の美貌を得られたのは嬉しいし、感謝しても仕切れないのは事実だけど……でも、それだって『強奪の天恵』を奪われなければ私は絶世の美少女だったし、あの時は気づかなかったけどマッチポンプだったのよね! 悪魔の取引に応じてしまっていたんだわ! でも、今更諜報員を辞めるなんて言ったら絶対に消されてしまうし、仮に消されないとしても私が私じゃないものにされてしまう気がする。やれば、やればいいんでしょ! こうなったらやってやるわよ!!)分かりました! 殺さない程度に倒せばいいんですね!!」
その声、全部見気で筒抜けなんだけどなぁ。……まあ、聞かなかったことにしよう。
「術式霧散」で「契約改竄魔法」は無効化して三年分の寿命はエンゼルトランペットが支払うことになったんだけど、多分彼女は気づいていないだろう。……煽りは得意だけど、割と煽りに弱いタイプだから「殺さない程度に倒せばいいんですね!!」っていう興梠の言葉で割と簡単に怒り狂って完全に興梠をロックオンしちゃったし。
そんな冷静さを欠いた状態では瑞穂には勝てないと思うけどなぁ。一応、諜報員の一人だしねぇ。
お読みくださり、ありがとうございます。
よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)
もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。
それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。




