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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-207 ナラカヒメノミコト scene.1

<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・グラリオーサ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


 三千世界の烏を殺して王女宮に戻った後、パーティが終わって戻ってきたプリムラを出迎える。

 パーティ用のドレスから部屋用のドレスに着替えてもらい、夕食を配膳している間にパーティでの出来事をプリムラから聞く。


 どうやらルークディーンとは楽しい時間を過ごすことができたらしい。プリムラがパーティ会場から下がるギリギリまで歓談とダンスを楽しんだみたいだねぇ。

 ……ただ、パーティの最中に起きた件の騒動には心を痛めているようだった。


「母さま、これからどうなってしまうのかしら?」


「そうですね……正直、アネモネ閣下の予想以上の状況なので私も閣下も頭を抱えているところです。……頭の痛い問題がいくつも飛び出していたので、まずは情報を精査して共有、対策を一つ一つ講じていくということになると思います。ただ、この件に関してもプリムラ様にはそれほど関係のない話だと思います……プリムラ様を害そうとする輩を陛下は決して許さないでしょうから。……世界の情勢に関しては、より先の見えない時代に突入していくことになると思います。間違いなく荒れることになるでしょうねぇ……ただ、未来というものは見通せないのが普通ですからねぇ。この大海原をどのように渡っていくかは舵取り次第かと思います」


「……お父様やアネモネ閣下の力があれば、きっと大丈夫よね?」


「私もそうであって欲しいと信じています」


 『管理者権限』を持つ唯一神達はどいつもこいつも危険度が高い。間違いなく誰が『管理者権限』を集め切っても最悪の時代が訪れることになる。……それを止めるためにもボクがある種の抑止力として『管理者権限』を集め切らなければならないと思っている。

 ……負けられないよねぇ、この平穏な世界を守るためにも。


 プリムラの就寝を確認して部屋に戻り、情報を整理していく。


 まずは、ボク自身が新年祭の間に得た情報。……「六魔修羅道(グラズヘイム)」のアジトと四大闇ギルド同盟。このうち、「阿羅覇刃鬼ゾンダーリング・ネスト」以外の『大魔闘時代最後の騒乱〜闇を照らす不死鳥の光〜』に登場する闇ギルドは芋蔓式に討伐するために明日には臨時班を動かすつもりだ。既に候補者達には夕刻の時点で連絡を入れて快諾の連絡をもらっているので「六魔修羅道(グラズヘイム)」及び他の二つの闇ギルドに関しては問題ない。


 後のことに関しては今すぐに手を打てるものではないけど、新年のゴタゴタが落ち着いた後に行われる予定だったオルゴーゥン魔族王国加盟後初となる多種族同盟会議の前に時空騎士(クロノス・マスター)と各国中枢に例の闇ギルドの件と共に報告しておいた方がいい……とちうか、恐らく早急に情報共有をしておくべきだよねぇ。


 まずは、会場に現れた謎の機械について。あの機械の正体は『大魔闘時代最後の騒乱〜闇を照らす不死鳥の光〜』に設定のみ登場するアンドリューワーズ魔導王国の技術で作られた魔導機兵(エーテリアス)であることが確認済みだ。

 この世界の魔法とは違い、『大魔闘時代最後の騒乱〜闇を照らす不死鳥の光〜』における魔法には魔元素(エーテリアル)が必要となる。魔導機兵(エーテリアス)はこの魔元素(エーテリアル)で動く機械のようなものということになる。


 アンドリューワーズ魔導王国は作中においては既に滅んだ王国。ラスボスで恐らく『管理者権限』を有するカズワリオ=フィシオロゴスにとっては因縁あるあの王国まで絡んでいるとは正直驚きだったけど、魔導機兵(エーテリアス)に掛けられた魔法……正確には「縮小魔法(ミニ・ミニマジック)」から魔導機兵(エーテリアス)を作った者、つまりシャッテンの協力者については想定がつく。……だから、シャッテンもあえて名前を出さなかったんじゃないかな?

 表向きは仲間を売らないみたいな態度を取っておいて分かりやすいヒントを出すって……まあ、そのおかげでボクはあっさりと答えに辿り着けたからいいんだけどねぇ。


 恐らく、というかもう断定しちゃっていいだろうけど、シャッテンの協力者はラクツ=ファーナー。

 アンドリューワーズ魔導王国の大臣で魔導工学者で異名は『縮小大臣(ミニ・ミニスター)』。……「縮小魔法(ミニ・ミニマジック)」の使い手で万物を縮小する魔法を持つ。


 でも、シャッテンもラクツも存在を隠蔽する魔法なんて持っていなかった筈だけどねぇ……他に仲間がいるのか、それとも新たな力をどこかで得たのか? ……これ以上の推理は無理そうだねぇ。


 続いて互助倶楽部『綺羅星の夢』。那由多彼方の名前を出していたってことは、プシューケー=ファルファッラ、那由多彼方(ナユタ≠カナタ)、コルヴォ=ロンディネ、オルタ=ティブロン、太多繁松(ギィーサム)、ギョドゥ=ドラヴァズが所属しているグループの正式名称なんだろうねぇ。

 そこにシャッテンとラクツも合流しているんだろうけど……凄い規模の組織だよねぇ。まあ、組織っていうよりはそれぞれの夢を叶えるために一時休戦をしているって関係が近いんだろうけど。


 アントローポス達の復活は予測していた最悪のシナリオだった。復活する可能性のある者達のリストは一応個人の詳細と共にメールに添付しておくとしよう。……結構な人数になりそうだよねぇ、死者の軍勢。まあ、それだけの数を殺してきたってことなんだけど。


 アントローポスとエクレシアを経由してアイオーンとヌースに謁見をしたシャッテンは確実に『管理者権限』を手に入れていると思われる。……これに関しては完全な形の『魔法少女暗躍記録〜白い少女と黒の使徒達〜』の『管理者権限』は得ているだろうけど、もしかしたらそれ以上のものを受け取っている可能性もあるよねぇ。こればかりは戦ってみないと分からないけど。


 そして、「霸気こそが全てを凌駕し、神域へと誘う」という言葉。……シャッテンが闘気や霸気の存在を知ったというのはかなりの痛手だけど、それ以上にこの言葉を座右の銘にしていたあの人物がこの世界に召喚されているとしたらかなり拙い状況だ。

 恐らく、シャッテンの所属する互助倶楽部『綺羅星の夢』の繋がりで出会い、直接霸気の手解きを受けたのだろう。……つまり、それは恐らく彼女を召喚した『這い寄る混沌の蛇』にも闘気や霸気、場合によってはそれ以外の技術も流出した可能性を示していて……うん、多種族同盟側のみにあった筈のアドバンテージが徐々に削られていっている音が聞こえる。まあ、それよりも召喚された彼女の方が拙いんだけどねぇ……違ったらいいんだけどなぁ。


 奈落迦媛命(ならかひめのみこと)……「天魔・奈落」の異名で知られる強大な鬼。現在はあらゆる公文書からその名を消され、その存在を知る者も完全に口をつぐんでいるため、ほとんどの人間はその存在を知ることはない。知っているのは、ごく僅かな鬼斬関係者や陰陽師の上層部、一部妖怪や皇導院というほんの僅かな者達くらいじゃないかな?


 見た目は圧倒的な美貌を持つ鬼の少女だったそうだけど、かつて抱いた野心から斎嶋霽月、菅原道真(天満大自在天神)、渡辺綱、桃郷太郎、鞍馬玄瑞、羅生童子、安倍晴明、蘆屋道満という錚々たる呉越同舟の混成部隊と衝突したが当時の戦力でもってしても完全に倒すことはできず、決戦の地となった信濃国の山中に封印されたとされる。封印の地はその存在を知る者から奈落神社と呼ばれるが情報は一切表に出ず、GPSでも発見することはできないという。


 彼女の野望は「世界の神となる」というものだった。彼女は虚像の地球の神のシステムを理解しており、闘気の先にある霸気が神に至るための鍵であると考えていた。

 常人離れした霸気を持っており、類い稀なる『王の資質』のカリスマ性で多くの鬼や彼女の思想に賛同した人間達を従えていた。その手の鬼とは違い、鬼のほとんどが興味を持つ生贄には然程興味を示さなかったと言われている。


 力こそが全てと考え、「高い霸気を持つ者との戦いこそが己を高め、神へと至らしめる」と考えていたため、大多数の鬼が避ける追手の鬼斬との戦いも嬉々として演じた。逆に弱き者には微塵も興味を示さなかったが、窮地に立たせることで覚醒する可能性に期待し、残虐な死を与える、生贄を陵辱するなどの非道な行為に手を染めることもあったという。


 その封印は長らく菅原道真が監視していたんだけど、ボクがこの世界に来る数年前に謎の光に包まれて神社の中に封印されていた奈落迦媛命が消失してしまったらしく、その後は行方不明に……まあ、辻褄は合うけどまさかあの伝説の化け物が異世界ユーニファイドに召喚されているとはねぇ。


 その考えは神帝を中心とした大倭秋津洲という国を破壊して新たな「暴力」という唯一絶対の指標で支配したいと考える荒くれ者達や神帝と貴族を中心とした治世で何らかの不利益を被ってきた者達に熱狂的に支持され、一時期「天魔教団」と呼ばれる邪教組織が誕生したほど。弱肉強食の世界のため、生贄に出された少女が教団の幹部までのし上がったという事例もあったらしい。


 手始めに朝廷に狙いを定めた理由は近場だったということもあるんだけど、本来上に立つ者が持つべき資質である『王の資質』を神帝家が有していなかったことも大きく関係しているという。

 ……恐らくだけど、彼女は王朝簒奪の歴史についても知っていたんじゃないかな? 本来は王になる資質の無かった神煌帝を皇導院が神輿に担ぎ上げ、本来王となるべき筈だった若御毛沼命という人物を殺害……これが、大倭秋津洲において初代が神武天皇ではなく、神煌神帝であったという大きな分岐を生み出すことに繋がっているのは間違いない。……まあ、神帝を神とする大倭秋津洲帝国連邦においては確実にタブーに当たる話なんだけどねぇ。


 まあ、それよりも重要なのは奈落迦媛命(ならかひめのみこと)。……あれは、かなり危険な存在ということになる。話を聞いた頃は霸気の存在を知らなかったから、僅かに残った伝承から想像を膨らませるしか無かったけど、霸気を覚醒させることができた今なら分かる。

 奈落迦媛命(ならかひめのみこと)は危険だし、そんな危険な存在が『這い寄る混沌の蛇』と組んだとしたらもっと拙い……もしかしたら荒れるかもしれないねぇ、次のペドレリーア大陸への臨時班派遣。

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 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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