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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-205 新年祭の騒動〜動き出す四人目の三賢者と夢追い人の互助倶楽部『綺羅星の夢』〜 scene.1

<三人称全知視点>


 新年祭は昼頃の騒動が嘘のように恙なく進んでいた。


 英雄の娘マリエッタも流石にあの騒動の後でもうひと騒動起こす気が起きなかったのか、或いはアルベルトさえ関わらなければ少しだけ世間知らずの平民上がりの男爵令嬢なのか、特に大きな失敗をやらかすこともなく、英雄オートリアスはヴェモンハルトとルクシア――二人の王子から優しいお言葉を掛けられ、感激していた。


 ラインヴェルドからはあまりよく思われていないことをマリエッタの起こした騒動の場で思い知ったオートリアスだが、王子達からは嫌われてはいないと感じ取り、そこにオートリアスは希望を見出したのだろう。……まあ、オートリアスは野心のある男ではないので、「やっぱり王侯貴族からは嫌われたくないなぁ」と思っているだけなのだが。


 第三王子のヘンリーはマリエッタをダンスに誘い、一曲分マリエッタと踊った。

 ヘンリー狙いの貴族令嬢達やヘンリーとの結婚を利用してブライトネス王国とより強い結びつきを構築しようと目論んでいたブルーマリーン王国の第二王女のカトリシンシアと第三王女フィライザ(彼女に関しては国の利益の方はあまり考えていないようである。とはいえ、ヘンリーに対して好意を持っている様子であり、マリエッタのことは他の令嬢達のように軽んじることはなく最大級の警戒をして動向を窺っていた)にとっては面白くない展開だが、可憐な美少女であるマリエッタと美しい王子であるヘンリーは容姿という一点においてはお似合いであり、それが貴族令嬢達の嫉妬を煽る。


 無論、王子と平民上がりの男爵令嬢では格が圧倒的に違う。例え二人が愛し合うことになっても二人が結ばれることはまずあり得ないだろう。それよりも、婚約者候補として一時期名前が上がっていたローザ=ラピスラズリ公爵令嬢の方がまだ釣り合いが取れる話だ。……まあ、その話は完全に流れた話であり、例え家格という一点で釣り合いが取れていてもあの傲慢な令嬢が第三王子の婚約者に相応しいと思っている者は皆無なのだが(逆にローザの素性を知る者はヘンリーの方がローザに相応しくないと考えているので、結局のところどちらが原因かは別として二人の釣り合いが取れていないというのが王侯貴族の一般の考えということになる)。


 これは、第三王子が平民上がりの男爵令嬢に与えた一夜の奇跡であるとヘンリーを狙う貴族令嬢達は溜飲を下げた。


 新年祭の場では参加したアスカリッドから自身が魔王に就任したことと、オルゴーゥン魔族王国が多種族同盟に加盟することが宣言され、一部の者達に大きな波紋を呼んだ。

 新年祭にアスカリッドが参加していたことや多種族同盟の理念を考えれば、オルゴーゥン魔族王国が多種族同盟に加盟することは自然の流れである。だが、ヘンリーやマリエッタが知る『スターチス・レコード』では魔族や魔物は明確な敵であった。


 その魔王という『スターチス・レコード』最大の敵が敵ではなくなった。どんどん『スターチス・レコード』から乖離していく世界……それは『スターチス・レコード』をプレイした記憶を導とするマリエッタにとっては由々しき事態だ。


『うふふ、大丈夫よ。貴女は主人公ですもの。貴女ならきっとみんなを本当の幸福に導くことができるわ』


 甘い蜜のような声が少しだけ不安になったマリエッタの、八嶋奈穂子の心が軽くなる。

 いつからか聴こえるようになった声、もう一人のマリエッタの声。この声が不安になる度にマリエッタを優しい蜜で包み、不安を消し去ってくれた。


 その声を聞く度に自分は主人公なのだと、みんなを幸せにする力が自分にはあるとマリエッタは希望を持つことができる。アルベルトと結ばれることだってきっとできると信じることができる。

 マリエッタはその声の正体に疑問を持つことは無かった。決して疑問を持たないように闇の魔力が働いていたのである。


 その声がマリエッタと百合薗圓を激突させようという思惑を持つローザ=ラピスラズリ公爵令嬢のものであることにマリエッタは気づかない。



 その平穏が崩されたのは、新年祭のパーティが始まってから二時間が経過した頃だった。


「おい、オルパタータダ。なんか感じねぇか?」


「ん? ああ、さっきからなんか変な感じがしていたんだが……ラインヴェルド、お前もか?」


 会話はたったそれだけ。しかし、長年パーティを組んでいた者同士それだけで互いの意図を把握したのだろう。

 ラインヴェルドとオルパタータダは裏武装闘気で剣を創り出して構える。この二人の王の乱心にパーティに参加している者達のほとんどが驚愕したのは言うまでもない。


「父上、何を感じ取ったのですか? ……私の見気には何も引っ掛かっていないのですが」


「ヴェモンハルト、俺の見気にも反応無しだぜ」


「……確かに何かいる気がしますね。見気には反応無しですが、僅かながらカサカサという音がしたような気がします」


「親友もか……しかし、なんなんだろうなぁ。今まで見気が反応しなかったってこと無かっただろう?」


「いっそ、兄上やオルパタータダ陛下、アクアやディランの勘違いって方があり得るんじゃないか? そう思わないか? ジルイグス騎士団長、シューベルト総隊長殿」


「バルトロメオ、あまりにも希望的過ぎる観測をし過ぎじゃないか!! あたしも感じているよ……何かに見られているっていう感覚をね。だけど、見気にも反応はないし、魔力反応を探っても何も出てこない。……そこで感覚の方を勘違いだって断ずるよりも前に、その見気や魔力反応探索の方が欺かれているって可能性を少しは考えるべきだとあたしは思うけどね!!」


「……レジーナ殿と同意見だ。くだらん何者かが侵入しているならとっととぶった斬った方が早い」


「随分と荒れてますな、フォルトナ王国の総隊長殿」


「ああ、こいつフォルトナ=フィートランド連合王国の方の新年祭に参加してからブライトネス王国の王都を散策していたアネモネに喧嘩を売りに行ったそうだが、武闘大会のバトルロイヤルでアネモネにボコボコにされて気が立っていやがるんだ」


「つまり、自業自得ですね、シューベルト総隊長。……全くいつになったらアネモネ先生に迷惑を掛けないようになれるんですか?」


「……貴方様が王族でなければ今すぐぶった斬っていましたよ、ルーネス殿下」


「おい、シューベルト! 貴様、ルーネス殿下に何ということを!!」


「五月蠅くなってきましたな。……ラインヴェルド陛下、オルパタータダ陛下、それでどうなさるおつもりですか? 一応、警備を担う王国騎士の一人としては陛下に剣を持って暴れられては大変困るのですが」


「今回に関してはいつものお巫山戯じゃねぇぞ? 今回は本当に何か嫌な予感がするんだ。……当たってもらいたくはねぇけどな」


「バトルジャンキーな陛下なのに珍しいですね。……我々王国に仕える騎士としてはお巫山戯で剣を振るって暴れられるのは是非ともやめて頂きたいところですが。……くれぐれもお客様には斬撃を飛ばさないでくださいよ」


「分かっているぜ。……どんだけ俺達に信用がねぇんだよ? ジルイグス」


 ラインヴェルドとオルパタータダは膨大な霸気を剣に纏わせた。込められた霸気はオートリアスとマリエッタに向けられたものを遥かに上回り、一度殺された掛けた二人はその力を向けられてもいないのに恐怖で萎縮して動けなくなる。


神威神退(シンイカムサリ)」「神威神去(シンイカムサリ)


 霸気の斬撃はそれぞれ絶妙な軌道でラインヴェルドとオルパタータダ……その背後へと飛んでいき、それぞれ目には見えない何かを切り裂いた。

 その拍子に何かに掛けられていた術が解除されたのだろう、鼠大の六角形の身体に脚型のブレードが六つ生えた機械の何かが姿を見せた。


「……まさか、本当に兄上の勘が当たっているとは。で、これは一体何なんだ?」


「さあ? アネモネに聞けば分かるだろう? しかし、こいつ何か持っているみたいだな? 小さくてよく見えないなぁ……黒い、百合の、花?」


「――ッ! ラインヴェルド陛下、本当に黒い百合の花なのね。魔法の国としてこの件は正式に謝罪しなければならないわ。……その花は間違いなく」


「ああ、俺も思い出したぜ。……黒華、お前が謝ることでは少なくともないと思う。これはお前達が新政権を樹立する以前の魔法の国の失態だ。……ったく、そういうことかよ。アネモネが刑務部門の管理下にある魔法大監獄の最下層であるレベル七に収監されている大魔法使いの脱獄の話を聞いて顔を真っ青にしていたって聞いていたが。クソッ! そういうことかよ……ってことは、嘘だろ? おい、これはブライトネス王国だけで起きていることなのか!? いや、それこそ希望的観測だ……ブライトネス王国まで来ているってことは魔法の国は奴のお膝元と言えるし、ルヴェリオス共和国も、フォルトナ=フィートランド連合王国も? おいおいおいおい! それってつまり多種族同盟加盟国のほとんどが大失態をやらかしたってことじゃねぇか!! ……これはヤベェぞ! 王城に潜入されて王妃を殺されたとかそのレベルの失態じゃねぇ。どれだけだ? どれだけ厄介な奴らが敵に回る!?」


 ラインヴェルドの思考の断片を聞いただけで状況を理解できる者達……つまり、多種族同盟の本質に関わっている者達の表情は絶望に染まっている。

 得体の知れない賊に侵入されたことに抗議の声を上げている貴族達もこの事件の真の恐ろしさには気づいていないのだろう。


『流石は聡明な王であらせられるラインヴェルド陛下、僅かな情報からその意味を汲み取って頂けたこととても嬉しく思います。やはり、そうでなくてはいけませんよね、あの御方と肩を並べられるのであれば』


 両断された筈の鼠大の六角形の身体に脚型のブレードが六つ生えた機械の一つから声がして、ラインヴェルド達の視線は侵入者の機械に向けられた。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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